Murph's Models アメリカ 試作汎用輸送機 Burnelli UB-14・前編

最近、暗くなってくると電気スタンドを点けても手元が暗く、これが目が衰えてくるということなのか、としみじみと思っていたのだが、良く見たら電気スタンドの光量調節がいつのまにかとってもマイナスになっており、今は明るい手元で陽気に模型を作ってる筆者のお送りする世界のカードモデル情報。
今回も前回に引き続き新年を祝しての無料キット特集。本日紹介するのはアメリカはアリゾナ州のブランド、Murph's Modelsから、アメリカの試作汎用輸送機 Burnelli UB-14 だ。

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ん? ん? ん? なにがどうなってんの?、この飛行機。
キットの写真がこれしかない(Murph's Modelsはダウンロード販売しかしておらず、表紙もない)ので、ここは素直にWikipediaの力を借りよう。

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と、いうわけでWikipediaからの引用(この項、キット写真以外全て同じ)。 わーお。
この画像はUB-14よりも後の機体、CBY-3のモックアップモデルだが、だいたいのレイアウトはUB-14と変わりはない(UB-14は中央の短い機首部分がなく、胴体中央に操縦席風防が直接載っている)。
2本の胴体の間にある扁平な胴体なんだか内翼なんだかよくわからない部分は断面が翼型となっており、この胴体も浮力を発生する、いわゆる「リフティング・ボディ」機だ。
この機体を設計したのは、アメリカの航空エンジニア、ヴィンセント・ブルネリ(Vincent Justus Burnelli)。「ブルネリ」と言っても、「スターオーシャン5」に登場する嬉しけしからん衣装のフィオーレ・ブルネリとは関係ない。あと、イタリアのファッションブランド(マタニティーウェアで有名)に「Pietro Brunelli」というのがあるが、あちらのカナ表記は「ピエトロ・ブルネリ」が一般的だ。

名前からして、いかにもイタリア系のブルネリは1895年テキサスの生まれ。若いうちに東海岸へ引っ越したようで、アメリカ北東部のニュージャージーの大学で学んだあと、生活の場をニューヨークへと移している。
1915年に友人ジョン・カリシー(John Carisi )と協力して最初の飛行機「ブルネリ=カリシー複葉機(Burnelli-Carisi Biplane)」を制作。この機は複葉推進式で、短い胴体の後ろにプロペラがあり左右の細いブームが尾翼で一つにまとまる、Airco DH.2と似たスタイリングだった。まだプロペラ同調装置が一般的に採用されていないのこの時期に機首に武装を集中するのに有利だったこの形式を取ったということは、ヨーロッパで進展中の第一次大戦にアメリカが参戦する時に備えたものなのだろう。

翌年、1916年にブルネリはコンチネンタル航空機(Continental Aircraft Corporation。旅客会社のコンチネンタル航空(Continental Airlines)とは別)で「KB-1」という、なんか重戦車みたいな名前の複葉機を設計している。Bはたぶんブルネリの「B」だが、「K」はなんなのかわからない。このコンチネンタル航空機という会社はメチャクチャ資料が少なくて経営者も誰なんだか良くわからないんで、経営者の頭文字が「K」だったのかもしれない(ブルネリはここのチーフデザイナーだった)。KB-1は米軍航空隊での採用を目指した機体で、ブルネリ=カリシーと同じ複葉推進式だがブルネリ=カリシーで単尾翼にまとめられていた胴体後部がブームがそのまま真っすぐ後ろに伸びて双尾翼となり、胴体(タンデム2座)も短い魚雷型になるなど細かい変更が加えられていた。
KB-1はそれなりの性能だったが、当時ヨーロッパで戦っていた最新鋭の機体に比べると見劣りしたこともあり、不採用に終わっている。資料によっては完成したKB-1はなぜかニューヨーク市警が買っていった、と書かれているが、この話は出典がはっきりしない。
なお、本筋とはあんまり関係ないが、コンチネンタル航空機はKB-1の次に「クリスマス・バレット(Christmas Bullet)」という飛行機を制作したが、これが見るからにヤバいシロモノだった。

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これはヤバい。いままでいろいろとヤバい航空機を紹介してきた当コーナーだが、翼のペラペラ感といい、足回りの手作り感といい、変なスタイリングといい、こいつはどう見てもヤバさが半端ない。この写真ではわかりにくいが、この飛行機一見単葉のように見えて実は複葉機である。なんで単葉に見えるのかというと、翼間支柱が全く無いからで、この機体を設計したウィリアム・クリスマス(William Whitney Christmas)は「翼間支柱なんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」と豪語したが、この人物、「おれが作った飛行機でドイツまで飛んで、ドイツ皇帝ヴィルヘルムを誘拐してくる計画だ」と語るなど、なんというか、ヤバい人だった。
ブルネリはなんとかヤバい設計をまともなものにしようと努力したが機体は当初の設計通り完成してしまい、試験機2機が2機とも最初のフライトで空中分解(翼が吹っ飛んだ)してパイロットが死亡するというアメリカ航空史上に残る最悪の結果に終わった。だめだよ、こんな飛行機で飛んだら。せめて離陸できなきゃよかったのに。ちなみにクリスマスは1機目が空中分解した後に「最高時速197マイル(約320キロ)を達成!」という広告を出したり、マジソン・スクエア・ガーデンに2機目を飾って「世界初の翼間支柱のない飛行機!」と宣伝していたというから、ヤバすぎる。

クリスマス・バレットの予想された大失敗の後、コンチネンタル航空機は「レミントン・ブルネリ航空機(Remington-Burnelli Aircraft )」に名前を変えてるので、たぶんブルネリ自身が社主になったのだろう。
このころから、ブルネリはあるアイデアへと全力を傾注することになる。胴体も翼の役割を果たす「リフティング・ボディ」だ。
これは、飛行中は抵抗でしかない胴体が翼の役割を果たすことで航空機の性能、特に搭載量の増大を狙うアイデアであった。ブルネリ自身はこのスタイルについて「フライング・ウィング」という表現を使っていたが、現在は「フライング・ウィング」といえば尾翼もない全翼機を指すことが多い。
このコンセプトに沿って設計された最初の飛行機がレミントン・ブルネリRB-1であった。

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写真が小さい上に状態も良くないのでわかりづらいが、よく見ると胴体は機体左右方向にビローンと幅が広くて、胴体というよりも分厚い主翼の真ん中部分をぶった切ったような形をしている。翼型胴体の後ろに細い胴体がある後の機体とは違い、胴体の末尾左右に直接垂直尾翼がついているのが特徴だ。なるほど、たしかにこれは「空飛ぶ翼」だ。
胴体の幅は4メートル以上(14フィート)もあり、その中には30人の乗客が乗ることができた。同時期の通常形式の旅客機、例えばフォード・トライモーターが座席数12だから、これは格段に多い(ただし、巡航速度はRB-1の方が30キロほど遅い)。
さらに、2番機の「RB-2」はハドソン・モーター・カー・カンパニー(Hudson Motor Car Company)という自動車会社が買い上げ「空飛ぶショールーム」として運用しており、この機はなんと機内に自動車をそのまま搭載することが可能であった。当時、こんな芸当ができる飛行機はRB-2しか存在しなかった。

(後編に続く)

参考ページは後編にまとめて記載予定。

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注目の最新無料キット2種

先日、所属会社の新年会に参加したところ本格中華のコースが振る舞われ、こんなうまいもんはそうそう食えないぞ、と夢中になって食べていたら最後の最後に炒飯の大皿が登場。完全にペース配分を間違えてすでに満腹だったのに炒飯も美味しくいただいた上にデザートの杏仁豆腐まで平らげて2日間ほど腹具合のヤバかった筆者のお送りする世界のカードモデル最新情報。本日は新年特別企画として、ネットで手に入る無料キットを紹介しよう。

まず紹介するのはイタリアのデザイナー、Enrico Crespi氏のページ、E63papermodelでリリースされたイタリア装甲列車 Ansaldo/Fiat”LIBLI”だ。

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Crespi氏は以前にスーパークオリティでリリースされた第一次大戦のイタリア軍列車砲なんていう、いろんな意味で衝撃的キットを紹介したが、今回も、へー、そうゆーのあったんだー、という感じのイタリア軍装甲列車を堂々リリースだ。

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イタリア軍列車砲もそうだったが、やっぱりこいつも資料が足りないので今回も写真多めでの紹介。完成見本写真は塗装とリベット追加などのディティールアップがされており、フィギュア、ベース、レールなどは付属しない車輌のみがキット内容となる。

1941年3月25日、ユーゴスラビアは日独伊三国同盟に参加し枢軸軍となったが、翌日26日の夜に三国同盟でソビエトと戦争となることに反対した国軍がクーデターを起こし政権は転覆、4月6日にユーゴスラビア-ソビエト不可侵条約を締結したが、条約調印した6時間後にはドイツ、イタリア、ハンガリー、ブルガリア軍がユーゴスラビアに侵攻し、4月17日にユーゴスラビアは全面降伏するという息もつかせぬジェットコースター展開で占領された。
ゲーム「アドバンスド大戦略」(メガドライブ版)のMAP「ユーゴスラビア」ですごく邪魔なことでおなじみなイタリア軍もユーゴスラビアの一部地域を占領したが、ヨシプ・ブロズ・チトー率いるパルチザンによる抵抗運動は熾烈を極めた。
イタリア軍はパルチザンが常に攻撃目標としていた鉄道網を守るために、とりあえずAB40、AB41装甲車に鉄道車輪を履かせた改造車輌を警備のために走らせた(イタリアは主戦場を北アフリカに想定していたので、装甲列車を保有していなかった)が、さらに本格的な装甲列車として1942年から開発が始まったのが”LIBLI”である。
装甲列車を最初っから作るのは大変なので、フィアット鉄道部門のFiat Ferroviariaで1933年から製造されていた鉄道車両「FS ALn 56」レールカーのシャーシを5メートル切り詰めて転用、アンサルドが装甲と武装を施して装甲列車に仕上げ、LIBLI は43年の夏から占領地域に投入された。

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1年で急いで作った車輌にしては、意外とまとまりのいいスタイルだ。武装は砲塔の47ミリ戦車砲x2、45ミリ迫撃砲2門、ブレダ機関銃6丁、ブレダ20ミリ機関砲もしくは火炎放射器となっている(機関銃の数は砲塔同軸機銃を考えると計算が合わない)。
砲塔はM13~M15戦車の砲塔をそのまま載せているように見えるが、よく見ると砲塔後部がM13系列の場合は馬蹄形の曲面となっているのが多面体となっている。ちなみに写真ではわかりにくいが、前後の砲塔はそれぞれ左右(車体中央から見て右)に寄っている。

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迫力のある正面からのショット。LIBLI はベースがレールカーなので車体前後の115馬力ディーゼルエンジンで自走できるが、もちろん他の車輌と連結して運用することもできた。奥に見えるご家族の写真らしきものにも注目だ。いや、個人情報だからあんまり注目しないほうがいいか。
LIBLI は8輌がイタリア軍に引き渡され、さらに8輌が1944年にドイツ軍に引き渡され装甲列車(Pz.Triebwagen)30号~38号となった。と、資料に書いてあるのだが、それでは計算が合わない(30~38なら9輌のはず)。そもそもイタリア降伏後の1944年に引き渡されてるのも変な話だが(資料によっては43年に引き渡され、作戦行動に入ったのが44年となっている)、ドイツ軍はイタリア軍装備車輌も接収して自軍に加えているのでその際に混乱があったのかもしれない。
なお、LIBLI は2輌が現存してトリエステの戦争博物館に展示されているが、なぜかネット上ではこの現存車輌の写真はほとんどみつけることができない。

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組み立て説明書からの抜粋。驚いたことに内部再現モデルとなっており、(内装の一部は推測とのこと)かなり細かい工作が要求されそうだ。キットはタミヤスケール35分の1でのリリースだが、このクオリティならデジタルデータの利点を活かして、いっそ25分の1にスケールアップしてしまうのもありだろう。なお、35分の1での完成サイズは全長約39センチ。

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展開図からの抜粋。Enrico Crespi氏のキットは基本的にホワイトモデル(車内装備の一部だけカラーになっている)だが、このクオリティならいっそホワイトモデルのままでも十分迫力のある仕上がりとなりそうだ。

さて、今回は資料が少なすぎて書くことも少なかったんでもう一点、フリーのキット紹介を連続で。
次に紹介するのはヤマハの超精密ペーパークラフト YA-1 だ。

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日本が世界に誇る2大企業運営無料ペーパークラフトサイト、ヤマハのペーパークラフトからの新キット。ちなみに「2大」のもう片方はキヤノン。というか、プリンタの販促でやってるキヤノンはともかく、ヤマハのこの過剰なサービス精神はなんなんだろう。「世界の希少動物」のペーパークラフトなんて全然ヤマハ関係ないじゃないか。

ヤマハの市販バイク1号となるYA-1は、実は以前に同じYA-1と同様にドイツのDKW RT-125をベースとしたいわば兄弟分に当たるポーランドのSHL M04の紹介時に触れさせてもらったが、まさか公式から「超精密ペーパークラフト」がリリースされるとは、嬉しい驚きだ。

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キットは国産ペーパークラフトのスタンダードとも言える内容。厚紙、針金、フィルムなどのマルチマテリアルを使わずに単一の紙厚だけで仕上げる狭義の「ペーパークラフト」である。ただし、今回はオールドバイクならではのワイヤースポークを糸を貼って再現する「特別仕様」も選べるようになっている。

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東欧式のカードモデルに慣れすぎていると、ノリシロ接着が基本であるために円が多角形となっていたり、ドイツ式展開図(折り線が点線で指示される)なので完成品の表面に折り線が見えてしまうのは正直、残念な点ではある。しかし、このキットは一般的な「ペーパークラフト」を期待するユーザーのためのものなのだから、これらはむしろ「当然」と言うべきだろう。マルチマテリアルに慣れているモデラーならデジタルデータであることを利用して折り線を消すなどの加工を施し、ブレーキケーブルを這わせるなどの徹底的なディティールアップを施すのも一つの楽しみ方だろう。なおマフラーの曲線部がザクの動力パイプみたいになってるのも気になるは気になるのだが、ここはけっこうな太さがあるのでワイヤーなどで置き換えるのは難しい。金属丸棒やチューブを自在に曲げる、それこそバイク作るような機材が手元にあるのなら別だが、どうしても気になるようなら仕上がったものにパテを盛って削り、シルバーで塗ってしまうのが近道だろう。

ヤマハの超精密ペーパークラフト YA-1 は、スケール表記を見つけられなかったが、たぶん4分の1で完成全長約50センチという迫力のサイズ。腕に自信のあるモデラーなら3分の2に縮小して6分の1アクションフィギュアと合わせるのもいいだろう。また、兄弟分SHL M04のMODELIKキット(9分の1)とスケールを統一して、それぞれの違いを確認するのも楽しそうだ。

*写真はそれぞれEnrico Crespi氏のページ、ヤマハのページからの引用。
LIBLIの展開図、組み立て説明書はキットからの引用。

* LIBLIのキットはE63papermodelのDownloadのタブからダウンロードできますが、データの置いてあるファイル共有サイトは(これそのものは別に違法ではない)操作を誤ると独自のダウンロードツールをインストールしようとしたりしてそれなりのリスクがあるため、あくまでもダウンロードは自己の責任においてお願いいたします。また、ダウンロードはフリーですが作者は著作権を放棄していません。データは個人での利用のみが認められており、販売などはできません。

参考ページ:
Ansaldo/Fiat”LIBLI”
https://it.wikipedia.org/wiki/Ansaldo_Libli
ロシア語版も参考とした。
http://www.modellismopiu.it/modules/newbb_plus/print.php?forum=179&topic_id=136343
イタリアの模型フォーラム。Crespi氏が制作過程を投稿しており、細かいディティールを見ることができる。

YA-1
https://global.yamaha-motor.com/jp/showroom/papercraft/ultra/ya-1/gallery/
ペーパークラフトコンテンツの中にあるヤマハのYA-1詳細ページ。非常に多くの情報が詰まっており、オールドバイクファン必見。
美しいギャラリーページはディティールアップの参考としてチェックしておきたい。

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Luis P Igualada Paper Model ドイツ帝国戦闘機 Albatros DVa

謹賀新年2018。
新年開けましたが、正月ボケのところからいきなりいつもの読者置き去りペースでスッとばしていくとうっかり空中分解しかねないんで、ここは一つローギヤからの粘り強い発進を心がけよう。
そんなわけで2018年最初の新製品紹介は、わけのわからないものを避けて極めてスタンダードな、それでいて見逃せないという商品を紹介しよう。今回紹介するのは世界中のカードモデルデザイナーの作品を売り買いできる、21世紀型カードモデルショップEcardmodelsでリリースとなった新製品、Luis P Igualada Paper Model の Albatros DVa だ。

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表紙の写真は基本的にキットそのままだが、スピナーだけ再塗装しているようだ。飛行機の鼻先はどうしても目につくので、これは妥当な処理かもしれない。
「アルバトロス社」というと、「女子高生チェーンソー」とか「チアリーダー忍者」とかの、ぶっちゃけかなりアレな映画のビデオパッケージを多数配給しているアルバトロス・フィルム社を思い浮かべる読者も多いと思うが、もちろん関係ない。飛行機の方の「アルバトロス航空機会社」(Albatros-Flugzeugwerke GmbH)は1909年12月29日という、なんか年の瀬の忙しい時期に設立された会社。
アルバトロスは当初、フランスから購入したアントワネット機、ファルマン(ファルマンIII”ダブルデッカー”)機のライセンス生産を行っており、アルバトロスで制作されたアルバトロス・ファルマンはドイツ帝国陸軍に貸与されパイロットの訓練に使用された後に陸軍が購入し、「B1」の名でドイツ帝国陸軍最初の航空機となった(後のアルバトロスB1は別の機体)。
その後はドイツの航空機メーカーなら誰もが手を出すタウベ機の生産、さらにタウベを複葉にしたらわけわかんなくなったドッペル・タウベなんてものを生産して力をつけ、ファルマンIIIを改良したアルバトロスF-2は生産機5機のうち4機がブルガリア軍に買い取られ、それらは1912年10月16日にバルカン戦争でヨーロッパ初の航空作戦行動を行っている。

第一大戦中は天才ハインケル博士の設計したにしては意外と普通な飛行機、Bシリーズ、そして当時は珍しいモノコックボディのDシリーズで名を馳せ、開戦時830人の従業員は5000人まで増え終戦までに約1万機の航空機を生産した。
しかし、戦後はパッとせず、練習機「Lシリーズ」を何種類か少数生産した後、1931年に国策で新興のフォッケ=ウルフ社と合併。ぶっちゃけフォッケ=ウルフも当時はあんまりパッとしないメーカーだったが、短期間の間「フォッケ=ウルフ・アルバトロス」を名乗っただけで社名はなぜか「フォッケ=ウルフ」に戻りアルバトロスのブランドは消滅した。

合板モノコック構造(正確には縦貫材が機体前後方向に入っている「セミモノコック構造」)のDシリーズは「フォッカーの懲罰」として名高いフォッカー・アインデッカーに対抗してフランス軍が投入した新型機、ニューポール11がベルダン戦で猛威を振るい、今度はドイツ軍が懲罰されちゃってるのに対して初期型D1が投入され、その高性能で一世を風靡した。ドイツ軍はこの機で初めて「戦闘機隊」を編成している。
しかし、もちろん連合軍だってそれを超える機体をどんどん投入してくるんでアルバトロスD1も性能向上が求められ、視界を改善するために翼のレイアウトを微妙に変更したD2を経て翼の形状を改めたD3が開発されたが、D3は下翼がねじれて破損する事故が多発し、一時前線から下げられている。

さらなる性能向上が求められたためアルバトロスでは胴体形状を改め、減速ギヤ付きエンジンを装備(翼はD2と同じ)したD4を開発したが、こいつは振動が発生して使い物にならないのでキャンセルして、D4の胴体、D3の翼とエンジンを組み合わせたD5を戦場に送り出す。しかし、D3で問題になった翼の強度がそれを流用したD5でなんとなく治るはずもなく、D5もやっぱり翼の強度問題で悩まされた。ついでに軽量化したD4/D5胴体も強度的にヤバくて激しい機動はできず、アルバトロスD5に搭乗したドイツ帝国空軍のトップエース、マンフレート・フォン・リヒトホーフェン(レッドバロン)はこの機を『イギリス機に比べてまったく時代遅れで、途方もなく劣っており、この飛行機では何もすることができない』と酷評している(リヒトホーフェンは戦死時の乗機、フォッカー三葉機のイメージが強いが、実際には撃墜80機中約50機がアルバトロスD型での戦果)。
そこまで言われちゃ黙ってられないので、アルバトロスは構造を強化し、重くなった分をカバーするためにエンジンも強化したD5aを開発したが、構造的な不安は完全にはなくならなかったようだ。それでもD5、D5a併せて約2500機が生産され、第一次大戦末期の中央帝国側各国で終戦まで使用された。また、残余機の一部は戦後建国したポーランド軍でも使用されている。

今回、Luis P Igualada Paper Model はこの機体をすばらしいクオリティでキット化した。

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これは凄い! 第一次大戦機の機内をここまで再現したキットは、プラモデルでもそう数はないだろう。その分、組み立てにはテクニックが必要となりそうだが、第一次大戦機ファンなら是非挑戦してみたい。幸い、Ecardmodelsでの販売はダウンロードのみのデータ販売なのでいくらでも再挑戦が可能だし、いざとなればスケールアップするという手もある。このクオリティならスケールアップしても見劣りすることはないだろう。

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構成に負けず劣らず、さらに素晴らしいのがテクスチャのクオリティだ。ローゼンジパターンは当然のことながら、キャンバスの布目、骨組みに縫い付けた縫い目までもが書き込まれた翼、木目だけでなく痛みや汚れまで再現された胴体の美しさは目を見張るばかりだ。なお、機体塗装は30機撃墜のヨーゼフ・マイ(Josef Mai)。マイは1918年8月19日、1日で英軍機3機を撃墜(F.2bx2、S.E.5ax1)を撃墜しておりブルーマックス勲章にも推されていたが授与される前に戦争が終わった。マイはフォッカーD7を斜めの白黒に塗り分けた「ゼブラ塗装」も有名。

Luis P Igualada Paper Model の Albatros DVa は空モノ標準スケール33分の1でのリリース。難易度は5段階評価の「4」(難しい)、Ecardmodelsでの定価は9ドルとなっている。
アルバトロス機はWAKからD3、ModelikからD5が過去にリリースされており、現在でも手に入りやすいので作り比べてみるのもおもしろそうだ。
「Luis P Igualada」氏は個人のページを見つけることができなかったが、今後の作品から目を離すことのできない注目ブランドとなりそうだ。

2018年もよろしくお願いいたします。

画像はEcardmodelsからの引用。

https://www.ecardmodels.com/index.php/1-33-albatros-dva-vfw-josef-mai-jasta-5-paper-model.html
商品直リン


参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/アルバトロス_(航空機メーカー)
https://ja.wikipedia.org/wiki/アルバトロス_D.V
それぞれの英語、ドイツ語のページも参考とした。

https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_victories_of_Manfred_von_Richthofen
マンフレート・フォン・リヒトホーフェンの戦果一覧

http://www.theaerodrome.com/aces/germany/mai.php
ヨーゼフ・マイの戦果一覧

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2017年もありがとうございました。

さて、今年ものこり数時間となりました。このタイミングで小生、風邪を引くという痛恨のダメダメっぷりを発揮しまして、本年のまとめも短めで堪忍してください。

まず、今年の完成品はRPG-7。だけ。
なにやってんですかねー、ほんと。今年は本業の方が少し忙しくって、残業時間が過労死ライン超えて総務から呼び出し食らったりいろいろあったんですが、それにしてもねー。

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何年たっても作りかけの連中はこの通り。T-26はこれ以外にも小物入れもう一箱分作りかけの部品があるんですが、机の上に並ばなかったんで略。あと、GPMのブルムベアも作ってます。来年こそはT-26の公開を……

2017年のカードモデル界隈個人的総括ですが、今年は個人サイトでの販売を終了し、Ecardmodelsなどの大型販売サイトでの販売のみに切り替えたブランドがいくつかありました。たぶん、大型サイトの認知が高まってきたために集客などを考えるとマージンを払ってもEcardmodelsでやっていくほうが割がいいし面倒も少ないという判断なのでしょう(個人サイトでの販売も続けていたり、他の大型サイトでも販売してるブランドもあるのでEcardmodels側からの「囲い込み」ではないと思います)。今後は個人デザイナーの作品が大型サイトに集結していく流れが主流となるかもしれません。大手は今のところ順調。相変わらず、わけのわからないものが飛び出してひっくり返りそうになります。

このブログの方ですが、無人機ネタがとっ散らかったまんまなので、これもおいおい続きをやらせていただきます。着地点は決めてるんですけど、少し進むたんびにオモロイ話が出てきちゃって、進まないこと進まないこと。
もうちょっと読みやすい構成はないのか、これでも試行錯誤はしてるんですがなかなかどうして。勢いで書いちゃってるんでどうにもこうにも読みづらくってもうしわけないです。来年もこんな調子ですが、よろしければ時々冷やかしに来てください。

それでは、2018年も全てのモデラーにとって実り多い年となりますように。あと、兵器ネタがネタで済むような御時世でありますように。
本年もありがとうございました。みなさん、よいお年を!

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ポーランド 観測ロケット ”METEOR-2” 各種・後編

クリスマスなのをいいことに、動物ビスケットを食べすぎてちょいと胴回りの苦しい筆者のお送りする世界のカードモデル最新情報。先週に引き続き、ポーランドのブランド、WEKTORからの新製品、ポーランド 観測ロケット METEOR-2の紹介。

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ロケット花火なんだかロケット弾なんだか、ちょいと宇宙ロケットというには苦しい感じの試作ロケット打ち上げで経験を積んだポーランド宇宙飛行協会は、次なる段階として「METEOR-1」(全長2.5メートル、重さ13.5キロ)の打ち上げ実験に着手する。
1963年(日付不明)、長さ4メートルの移動式ランチャーに載せられたMETEOR-1は2.3秒の燃焼で秒速1100メートルまで加速され、先頭部分を切り離した(先頭部分は推進力がないので2段式ではない)。切り離された先頭部分は発射から80秒後に弾道飛行の頂点でタイマーが作動しチャフ(金属製の小片の束)を放出する。これをレーダーで補足した結果、最高高度は36.5キロに達していた。ポーランドは世界で6番目にこの高度へのロケット打ち上げに成功した国となった。
その後もMETEOR-1の発射実験は続けられたが、いよいよブウェンドゥフ砂漠では手狭となったため、1967年に発射場はバルト海に面したウェバ(Łeba)に移された。発射場となった荒れ地はもともとドイツ軍がロケット砲の発射実験を行うつもりで整備していた場所で、ドイツ軍が建設したバンカーが残っていたそうだ。なお、資料によってはMETEOR-1打ち上げの時点で発射場はウェバに移動している。
1968年には、より大型化した「METEOR-2H」(全長4.3メートル、重さ126キロ)が開発された。METEOR-2Hは18秒間燃焼し、高度68キロに到達した。

今回、WEKTORから発売されたMETEOR-2のキットは3種類だが、そのうちの一つ、青い塗装の7番がこのMETEOR-2Hである。
それでは、ポーランド国産ロケットMETEOR-2Hの勇姿を公式ページの完成見本写真で見てみよう。

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まぁ、高度60キロに届くとは言っても固形燃料だから、基本的には「カチューシャ」なんかのロケット弾を大きくしたようなもんで、キットも複雑な構造ではない。
なお、「7番」となっているが、METEOR-2Hの打ち上げリストには6機しか打ち上げが記載されておらず、たぶん打ち上げ失敗した機体があるのだと思うが詳しいことはわからなかった。また、METEOR-2Hは資料に打ち上げ日時が詳しく記載されておらず、7番の打ち上げの日付も不明。

1970年、これまでのMETEORの打ち上げ成果を結集させたロケット、METEOR-2Kが完成する。これは1機のMETEOR-2Hの両脇にブースターとして2機のMETEOR-1を配置したものだった。
METEOR-1、METEOR-2Hの点火は同時で、2.3秒間の燃焼で高度440メートルに達したところで2機のMETEOR-1ブースターを切り離し、そこからダッシュして打ち上げ18秒後に燃焼終了。この時点で速度は秒速1540メートルに達しており、弾道軌道の頂点でチャフを放出、同時に切り離された観測機(ラジオゾンデ)はパラシュートで回収される。
1970年7月19日に打ち上げられたMETEOR-2Kは高度90キロを記録。これは前述の通りチャフを観測して得た数字であり、非公式ながらロケット本体は宇宙の底である高度100キロに到達していると考えられた。ついにポーランドのロケット開発は、人工衛星に手が届くところまで到達したのだ。

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同じくWEKTORからリリースされた赤塗装の8番。こちらはMETEOR-2K。ブースターがある分、METEOR-2Hより構造は複雑だ。中央のロケットに干渉しないようにブースターのノズルが外側に向けられていることがわかる。ところでこの表紙絵、ブースター切り離さずに宇宙まで行っちゃってるのはいくらなんでも誇大表現だろう。

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続いて同時リリースの黄色+赤塗装の10番。細部写真は色以外8番と同じ過ぎなんで省略。

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7番、8番、10番を並べるとこんな感じ。METEOR-2Kはブースターを横に配置する都合で、正面を45度ずらしている(「METEOR」のロゴを手前に向けると、羽根が斜めを向く)ことがわかる。ブースターの先端が斜めに整形されているのは、切り離した後で空気抵抗で自然と2段目から離れるようにという意図だろうか。
なお、METEOR-2Kは打ち上げリストに4機しかないので、6機も失敗したのでなければ番号はMETEOR-2HとMETEOR-2Kの通し番号のようだ。だとすれば、7番はMETEOR-2H最後の打ち上げ、8番はMETEOR-2K最初の打ち上げ(1970年7月10日)ということになる。無難に考えれば10番はそれより2つ後の打ち上げ、ということになるが、次の打ち上げがMETEOR-2K最高高度を記録した打ち上げなので、9番は欠番か、あるいは打ち上げに失敗しており、最高高度記録を出した10番が模型化された、というのもあり得ると思うのだがどうだろうか。
ちなみにポーランドはMETEOR-2Kと同時に、METEOR-1を2基縦につなげたMETEOR-3の打ち上げ実験も行っている(もちろん、1段目を切り離してから2段目に点火する)。こちらは最高到達高度65キロだった。

METEORロケットは性能的に、日本が1950年代終盤から打ち上げを開始したカッパロケット(「河童」ではなくて、ギリシャアルファベットの「カッパ」)に近い。もちろん、まだ解決しなければならない問題は多いが、日本がカッパロケットの後継機、ラムダロケットで人工衛星の打ち上げに成功(1970年2月11日)したことを考えれば、ポーランドもMETEORの次の世代のロケットで人工衛星の軌道投入に成功していた可能性はかなり高かったと言えるだろう。
たいていの国では宇宙ロケットは大陸間弾道弾の副産物として開発される。日本は、純粋な学術目的として宇宙ロケットを開発した極めて珍しい例である。ポーランドもそうなるはずだったが、そうはならなかった。

1970年代、ポーランドの宇宙開発は急に予算不足となり、そのまま打ち切りとなった。突然に予算が減った理由ははっきりとはわからない。器用にソビエトとのパワーバランスを操作していたゴムウカが失脚したことと関係があるのかも知れない。一説にはソビエトが共産圏の自国以外がロケット技術を持つことを嫌ったのだとも言う。
これ以降現在に至るまでポーランドは国産ロケットを打ち上げていない。
後に共産圏の人民を次々に宇宙へ送り込んだソビエトのインター・コスモス計画によってミロスワフ・ヘルマシェフスキ(Mirosław Hermaszewski)が1978年にソユーズロケットで飛んだのが、ポーランド人の最初で最後の宇宙飛行である。

WEKTORからリリースされた、ポーランド国産観測ロケット METEOR-2 は10分の1スケールで完成全長約45センチの堂々たるサイズ。難易度表記はないが、まぁ5段階評価の「2」(易しい)ってところじゃないだろうか。定価は7番、8番、10番、全て12ポーランドズロチ(約400円)とお手軽価格となっている。全部値段同じだったら2段式の8番、10番がさらにお買い得か。

なお、METEOR-2は以前にOrlikからもリリースされている。WEKTOR、Orlikの両キットを作り比べてタッチの違いを体感するのもおもしろそうだ。

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こちらはスケール15分の1だが、5番、7番の2基が組み立てられるようだ。定価は15ズロチ(約500円)。こちらもまたスペック無視して元気よく宇宙まで飛び出しているが、せめて表紙絵では国産ロケットを衛生軌道まで到達させてやりたいという無念の気持ちの現れだと思えば、これも全然有りな表現だと言えるだろう。
ポーランドロケットファンのモデラーなら、METEOR-2各種が手に入るこの機会を見逃すべきではないだろう。



画像はWEKTOR、Orlikそれぞれの公式サイトから引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。


参考ページ:
http://www2a.biglobe.ne.jp/~mizuki/lifelog/7.htm
旧共産圏のテクノロジーについて詳しい「航天機構」のサイトから、雑記のページの過去ログ。多分、日本で一番詳しくポーランドの宇宙開発の経緯が書かれている。

https://historiamniejznanaizapomniana.wordpress.com/2015/10/09/proby-podboju-kosmosu-przez-polske/
ポーランドの歴史についてのサイトから、ポーランドの宇宙開発について。当然、とても詳しい。貴重な図版も多い。

http://www.astronautix.com/p/poland.html
世界中のロケット打ち上げに関するデータベースからポーランドのページ。打ち上げデータとロケットのスペックはここからの引用。

https://ja.wikipedia.org/wiki/メテオ_(ロケット)
https://pl.wikipedia.org/wiki/Jacek_Walczewski
https://ja.wikipedia.org/wiki/日本の宇宙開発
それぞれポーランド語、英語、日本語版を参考とした。

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