PaperShipwright イギリス 灯台 Eddystone Lighthouse・前編

年相応の下心を発揮して、「勉強や触れ合い、デートで美少女を自分の好みに成長させよう!」という内容のアプリをスマートフォンにインストールしたものの、仕事が終わって帰宅してからしか起動しないもんだからログインしたところで美少女が寝てるのを見てるだけなので「仕事が忙しいお父さんの悲哀体験アプリ」と化している筆者がお送りする世界のカードモデル最新情報。いや、別に叩き起こしてもペナルティないらしいんだけど、なんだか悪くってさぁ。
そんなこんなで今回紹介するのはイギリスのブランドPaperShipwrightからリリースされた イギリスの灯台 Eddystone Lighthouse だ。

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PaperShipwrightと協力関係にあるイギリスの灯台管理及び水先案内人協会である「トリニティ・ハウス」が管理する灯台、エディストン灯台。と、言われたところで「ふーん、そうですか」という感じだが、実はこの灯台、灯台史においては無視できない重要な灯台なのである。
まず、「エディストン」というのはイギリス西部の主要港、プリマス沖合にある岩礁だが、これがプリマス港から出港して大西洋に向かって何にも考えないで進むともれなくブチ当たるという絶妙な場所にあり、古くから英仏海峡の難所として知られていた。
17世紀末、英仏海峡の通行料は増しており、いよいよ航海の安全のためにこれをなんとかしなきゃいかん、と思ったもののさてどうしようか、というとどうしようもない。なにしろエディストン岩礁は最も近い岬から10キロ以上離れているので、岬に灯台建てて「ここから10キロ先に岩礁がありますよ」って言われても船乗りは混乱するだけだ。
そこでイギリスの技師、ヘンリー・ウィンスタンリー(Henry Winstanley)は世界で初めて(本土から離れた)沖合の岩礁に灯台を建設することを決意し、1696年に建設に着工した(単に陸から離れた場所に建設された灯台としてはフランスのCordouan灯台の方が先だが、そっちは「モン・サン・ミシェル修道院」のように遠浅の沖に建てられており、独立した岩礁に建設されたのはエディストン岩礁が世界初となる)。
工事は岩礁の岩に穴を穿ち、12本の支柱を立てることから始まったが、技術的な問題以外にも困難を抱えていた。当時、イギリスはフランスと「九年戦争」の真っ最中。と、言うか、イギリスは14世紀の百年戦争以来、ワーテルローでナポレオンが敗退するまで何度も中休みを挟みながらもフランスと500年の間ずっと戦争ばっかりしていた。少しは仲良くしろよ。当然、灯台の建設においてもフランスの妨害が予想され、イギリス艦隊はエディストン岩礁沖合に護衛の軍艦を派遣していたが、艦が交代する隙をついてフランスの私掠船が来寇。工事を指揮していたウィンスタンリーを始めとする建設要員を拉致し、建設途中の灯台基礎を破壊してしまった。
フランス私掠船は「ひゃっはー! こいつがいなけりゃ灯台は建てられねぇ! イギリス船は岩礁にぶち当たって沈むがいいZE!」と意気揚々フランスに引き上げたが、これを知ったフランス王ルイ14世(太陽王)は「我々が戦っているのはイギリスである。人道(倫理)に対して戦いを挑んでいるのではない」として、ウィンスタンリーの即時解放を命令した。
ルイ14世の英断でイギリスに戻ったウィンスタンリーは工事を再開、1698年11月14日に火が灯され初代エディストーン灯台の運用が開始された。

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図版は京都大学所蔵、「エディストン灯台再建に関する報告書(正式な標題は「A narrative of the building and a description of the construction of the Edystone Lighthouse with stone to which is subjoined, an appendix, giving some account of the lighthouse on the Spurn Point, built upon a sand」昔の書物はタイトルが長い!)」からの引用。なんだか可愛らしい灯台だわね。大げさな屋根飾りが時代を感じさせる。全高18メートル。八角形の建物だった。

完成したものの、最初の冬を乗り切っただけで灯台はかなりダメージを受けており全面的な補修が必要となっていた。そこでウィンスタンリーはエディストン灯台を大規模に改修することとし、灯台全体を包むようにして12角形の外壁を追加している。ちなみに12角形は英語で「ドデカゴン(dodecagon)」という、なんだかとっても強そうな単語になる。

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なんかごっちゃりした初代エディストン灯台・改。右側に釣りしてる人がいたりして、一気に楽しそうになった。なぜか土台の岩礁の形まで変わっていたりして、どう見ても「改修」っていうより別物のようだが、この「エディストン灯台再建に関する報告書」自体が灯台建設より100年も後の1813年に書かれたものであり、混乱があったのかもしれない。なので、資料によってはこの状態を初代・改ではなく、「2代目」としていることもある。

せっかく改修したエディストン灯台だったが、1703年に一帯を大災厄が襲った。
1703年11月27日、空前絶後の巨大サイクロンがイギリス沿岸に来襲。灯火が消えた(嵐との因果関係はよくわからない)ために、ウィンスタンリーはエディストン灯台に留まり修理を行なっていた。夜になりますます強まる暴風雨の中、プリマスの岬からエディストン灯台に明かりが灯るのが見えたが、再び明かりは消えてしまう。
翌日、ようやく静まった海に出た船乗り達は、エディストン灯台が基礎ごと根こそぎ吹き飛ばされ、なにもない岩礁へと戻っていることを発見した。ウィンスタンリーと五人の灯台守は見つからなかったという。
この1703年の大嵐(Great Storm of 1703)は今に至るもイギリスが体験した最大規模の嵐であり、この破滅的な現象は当時の科学力では予知することも備えることも不可能であった。後に「ロビンソン・クルーソー」を記すダニエル・デフォーがその激しさについてルポルタージュを残しているが、その書「The Storm」(1704年刊)によると、「あまりの風の強さに風車が激しく回転し、その摩擦で心棒が発火し多くの風車が炎上した」そうだ。ほんとかいな。
なお、灯台か失われるまでの5年間の間にエディストン岩礁で失われた船舶は1隻もなかったという。
またエディストン灯台の建設・維持費は航行する船舶から徴収するトン当たり1ペニーの通行料で賄われていた。

初代エディストン灯台破壊後、海軍軍人のジョン・ロベット(John Lovett)という人物が議会から岩礁の通行料徴収権を買い取った。ロベットはジョン・ルディアルド(John Rudyard)に二代目灯台の建設を依頼するが、この人、別に技術者ではなくてただの不動産屋だったらしい。また、「ルディアルド」という名前も資料によっては「ルディヤード(Rudyerd)」となっているが、本来の名前が「ルディアルド」で、「ルディヤード」の方は洗礼の時に間違えて書かれちゃったようだ。いい加減だな。なお、ルディアルドは灯台建設費を立て替える見返りとして通行料の一部(定額)を毎年、生涯受け取る契約をロベットと結んでいるが、途中で権利を破棄してしまっている。どうやらロベットとの間で金銭的なトラブルがあったようだ。
そんなゴタゴタはあったものの、灯台は1708年に点灯、1709年に完成した。

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初代よりもぐっと現代的になった2代目エディストン灯台。この画像も前掲の報告書からの引用。高さは21メートルになった。
2代目は巨大嵐に襲われることなく50年に渡って航行の安全を守ってきたが、1755年12月2日、光源の火が屋根に燃え移り炎上。3人の灯台守は必死に消化したものの、海で水を汲んで20メートルの階段駆け上がってぶっかけて、なんてテンポでは火は消えず灯台は全焼(5日間燃え続けた)。この火事では灯台守は救援の船に救われ(波が荒くボートが近寄れなかったために、投げられたロープを腰に結んで海に飛び込んだ)て直接の焼死者は出ていないが、ヘンリー・ホール(Henry Hall)という、なんと94歳の灯台守が屋根を覆う鉛が熱で溶け落ちた時にそれを浴びた上に飲み込んでしまい、二週間後に衰弱死している。なおホールの胃から死後摘出された鉛の小片(とは言っても、約200グラムもある)は、現在スコットランド国立博物館に収蔵されている。

(後編に続く)


表紙画像はPaperShipwrightサイトからの引用。

参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/Eddystone_Lighthouse
https://en.wikipedia.org/wiki/Henry_Winstanley
https://en.wikipedia.org/wiki/John_Rudyard
https://en.wikipedia.org/wiki/Henry_Hall_(lighthouse_keeper)

http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/f05/f05cont.html
「エディストン灯台再建に関する報告書」
京都大学電子図書館貴重資料画像内のコンテンツ。非常に細密、かつ貴重な画像が公開されている。京都大学電子図書館にはこの報告書以外にも貴重な資料が多数ありそうだ。

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