paper-replika.com ソビエト 携帯対戦車無反動砲 "RPG-7"(前編)

庭の栗の収穫が思ってたよりも多くてホクホクの筆者がお送りする世界のカードモデルについて、別に最新でもない情報。今回紹介するのは当コーナーでは初登場となるインドネシアのペーパークラフト発信サイト、paper-replika.com から2013年にリリースされたソビエト 携帯対戦車無反動砲 "RPG-7"だ。

RPG-71_800x600.jpg

あれー、なんか先週の予告と違わない~?
日本国内のカードモデル情報サイトの中でも屈指のいい加減さを誇る当ブログだが、前回と言ってる事が違うのには理由がある。理由というか、言い訳がある。
チェコの"BestPaperModels.com"というサイトは2年ぐらいまえからずっとサイトがリニューアル中で、過去作の価格表ぐらいしかない状態が続いていたのだが、先週からBestPaperModelsにアクセスすると、同じチェコのペーパークラフト出版・販売会社のBETEXAのサイトにリダイレクトされるようになった。
で、BETEXAの取扱商品一覧の版元ソートに「BestPaperModels」ってのがあって、以前にBestPaperModels.comに並んでいた商品をダウンロード販売してたもんだから、てっきりBETEXAに販売委託して仕切り直すのかと思っていたのだが、今週になって見に行ったら、なんと版元ソートから「BestPaperModels」の選択肢が消えてるではないか。もちろん、BestPaperModelsのキットも全部消えていて、ブランド再始動を祝して紹介しようと思ってたパンツァーファウストもアトカタもなし。
いくらうちがいい加減だからって、存在しないものを紹介するわけにはいかないんで、パンツァーファウストのついでに紹介しようと思ってたRPG-7が急遽としてメインになったという次第だ。

さて、RPG-7についてだが、ついさっきまでパンツァーファウストを説明するつもりで書いてたんで、まずはそっちの話から。
19世紀後半アメリカの科学者、チャールズ・E・モンロー(Charles Edward Munroe)は円錐状に凹みをつけた爆薬を爆発させると、あたかもレンズで光が収束するように爆風が収束し、円錐の中心線に沿って前方にププッピドゥと強力な爆発力が発揮されることを発見した。これは「モンロー効果」と呼ばれることとなるが、1910年にはドイツのエゴン・ノイマン(Egon Neumann)が凹みの内側に薄い金属製の内張りを追加することでさらに穿孔力が強力となることを発見する。
この「モンロー/ノイマン効果」は現在でもビルの爆破解体現場などで鉄骨を爆発力で瞬時に「切る」時などに利用されているが、なんといってもその効果が期待されたのが対戦車兵器としての応用であった。
従来の対戦車砲は高速で大質量をぶつけることで装甲をぶち割っていたが、戦車の装甲が厚くなるにしたがってより高初速、より大口径の砲でなければ装甲が破れなくなり、巨大化する一方の対戦車砲は扱いにくく、高価となるばかりであった。
しかし、モンロー/ノイマン効果を応用した砲弾なら、爆風の速度が直接に貫通力となるので砲弾自体の速度は関係ない。極端な事を言えば止まっていても問題ないぐらいで、事実ドイツ軍はカラーコーン状の爆薬を磁石で敵戦車に貼り付けて起爆する(もちろん、時限式になっており仕掛けた方は急いで逃げる)「吸着地雷」というのを実用化している。これさえあれば、巨大化した対戦車砲がなくても歩兵個人が分厚い装甲に守られた敵戦車を倒すことが可能となる。ビバ!
と、思ったものの、良く考えたらこの方式では「ちょっと地雷を仕掛けますよ」と敵戦車まで近づいていって地雷をガチョンコとくっつける必要があり、そんなことができりゃ苦労はしない。そこで、この成形された炸薬、すなわち「成形炸薬」を何らかのプロジェクターで発射し、離れた場所から敵戦車にぶつける方法が色々と考えられたのは必然であった。

アメリカ軍はロケットモーターで成形炸薬が飛んでいく「バズーカ」、イギリス軍はバネで投げ飛ばす「PIAT」を実用化したが、ドイツ軍が実用化したのは簡易な筒に詰めた火薬の力で成形炸薬を飛ばす方式であった。
1942年夏、ドイツ軍は「Faustpatrone」(ファウストパトローネ)と呼ばれる兵器を開発する。これは筒に詰められた黒色火薬(書き間違いではなくて、本当に黒色火薬を使う)で成形炸薬を発射する方式で、筒から飛び出した砲弾は筒の中に巻いて収納してあった薄い金属製のフィンがバネで開いて安定性を得る。ファウストパトローネは筒、成形炸薬弾、装薬の全てがパッケージとなっており、再装填などはできない完全な使い捨てであった(米英のプロジェクターは再使用可能)。ようするに基本的には打ち上げ花火の水平撃ち(←危険なので絶対にやってはいけない)と同じだ。ただし、打ち上げ花火は底が塞がっているが、ファウストパトローネは反動を小さくするために後ろは筒抜けになっている。飛距離は30メートルしかないが、30センチまで近づかないといけない吸着地雷よりは文字通り100倍マシである。
勘違いされがちだが、ファウストパトローネは筒に入っている装薬の爆発で弾頭をポーンと放り投げる「無反動砲」であって、弾頭にロケットなどの推進装置は一切搭載していない。なので、米軍のバズーカ(あっちはロケット弾の発射ランチャー)とは根本的に仕組みが異なる。

ファウストパトローネを手に入れたドイツ軍はやったぜ! もう戦車なんて怖くない! とただちに量産を開始したが、もちろん全く問題がないわけではなく、初期型の細く絞った形状の弾頭はソビエト戦車の傾斜装甲に当たると滑ってしまうことが多かった。また、初期型には暴発、不発も多かったようだ。
そこで弾頭形状が改修されるなどの修正がされた改良型を開発するが、このあたりから資料が混乱してくる。この改良型を「Faustpatrone 2」とする資料、「Panzerfaust 30」とする資料があり、もともとの「Faustpatrone」も時として「Panzerfaust 30 Klein(クライン、「小」)」と呼ばれたりしてどれが正式なんだか良くわからない。

ファウストパトローネは貴重な歩兵が携帯できる対戦車兵器だったが、重戦車を相手とするとやや貫通力(約140ミリ)が不足しており、また、やっぱり飛距離30メートルは短かった。
そこで、ドイツ軍は弾頭を大型化し、装薬もマシマシとした「Panzerfaust(パンツァーファウスト)」を開発する。これは貫通力約200ミリ、飛距離60メートルに伸びており、大抵は「パンツァーファウスト」と言えばこれを指すが、30メートルのやつと区別するために「Panzerfaust 60」ということもある。

長くなったんで、このへんで画像。
Panzerfaust_2.jpg

Wikipediaからの引用で、Faustpatrone(Panzerfaust 30 Klein)の弾頭(上)とPanzerfaust 60の弾頭(下)。

しかし、射距離が伸びても秒速100メートルという遅い飛翔距離のために60メートル先の目標に当てようと思ったら山なりの弾道特性をしっかり把握しておかなければならなかった。また、装薬が増えたということは、発射時に後方へ吹き出すバックブラストもそれだけ大きくなり、発射時には後方に十分注意する必要があった(わざわざ筒に「Achtung! Feuerstrahl!」(噴流に注意!)と赤文字で書いてあったり、弾頭に注意文のステッカーが貼ってあった)。

Panzerfaust_helsinki.jpg

運搬用の木箱に詰められたFaustpatrone 2(Panzerfaust 30)。Wikipediaからの引用。ステンシルで書かれた赤い注意文に注目。
このパンツァーファウストはフィンランド軍に供与されたもので、現在はヘルシンキ軍事博物館の収蔵品。フィンランド軍はドイツから2万5千門のパンツァーファウスト(形式不明)を供与されたが、実戦では4千門程度しか使わなかったらしい。

パンツァーファウストのバックブラストと言えば忘れられないのが1959年西ドイツ映画「橋」のワンシーンだ。情報の行き違いから守らないでもいい橋を命がけで守ることになってしまったドイツ軍少年兵達。なんかやたらと扁平なシャーマン戦車を倒そうと一人がパンツァーファウストを発射するが後方確認が疎かであったために、背後にいた民間人に大やけどを負わせてしまう。直後に飛び込んできたアメリカ兵に少年兵は「違う(そんなつもりじゃなかった)」と涙ながらに取り繕おうとするが、米兵に叱られる(比喩表現でなく、本当に叱られる)という一連のシーケンスは、やるせないシーンの連続であったあの映画の中でも特にやるせないシーンと言えるだろう。
ドイツ軍は安価なのをいいことに各形式合計でおよそ600万門のパンツァーファウストを製造し、最後には小銃さえ行き渡らない国民突撃隊(老人と子供)にパンツァーファウストだけ持たせて戦場へと送り込んだ。これに関してドイツ軍のある将軍が「打ち終わったら棍棒にもなるからちょうどいいんじゃない?」と言ったとか言わないとかいう話も伝わっているが、原典が不明なので噂話として聞き流しておこう。

パンツァーファウストは待ち伏せで使用すればかなり有効な武器で、ドイツ軍には個人で敵戦車21輌を撃破したギュンター・フィーツェン(Günther Viezenz)やベルリン戦において一回の戦闘でソビエト戦車13輌を個人で撃破したハインツ・ホイヤー(Heinz Heuer)のような、戦車なんだか人間なんだか良くわからないツワモノが何人も生まれた(戦果には収束手榴弾など、パンツァーファウスト以外の武器によるものも含む)。
イギリス軍の統計によるとノルマンディー戦及び北フランスの戦いで損失した戦車のうち、パンツァーファウストによるものは6%。この割合はドイツ軍が装甲戦力を失うにつれて上昇し、最終的には34%に達したという。ちなみにソビエト軍の統計では東部ドイツで失った戦車のうち実に70%がパンツァーファウストもしくはパンツァーシュレック(ドイツ版バズーカ)によるものだという。

Bundesarchiv_Bild_101I-734-0013-11,_Russland-Nord,_Soldaten_mit_Raketen-Panzer-Büchse

記事には直接関係ないが、パンツァーシュレックを構えるドイツ兵。Wikipediaからの引用。射手、装填手とも肩に個別戦車撃破章が並んでいる。
ちなみにパンツァーシュレックから発射されるロケット弾は気温によって燃料の燃焼速度が変わり弾道特性に差が出るので「冬用弾」と「夏用弾」が別に準備してあったという(パンツァーファウストはロケットを燃焼させるわけではないので夏冬の区別はない)。
夏用弾と冬用弾についてはコメント欄で教えていただいたのだが、書く場所がなかったのでここに書いておこう。
情報提供ありがとうございました。

ドイツ軍ではさらに射程を伸ばし、発射チューブを限定的に再利用可能とした「パンツァーファウスト150」、発射後に別の弾頭を再装填して発射できるようにした「パンツァーファウスト250」(数字はそれぞれ射程)も開発していたが戦争には間に合わなかった(150はごく少数が実戦で使用されたらしいが、250の開発は完了しなかったとされる)。
パンツァーファウストにより大損害を被ったソビエトは戦後、パンツァーファウスト250の設計を拝借し、「RPG」を完成させる。

と、いうわけパンツァーファウストの話をしただけでけっこうな分量を書いてしまったことに気づいて今週はここまでで失礼。
来週こそはRPG-7のキットの話をする予定なんで、気が向いたらまた見に来てやってくだされ。
しかし、よく考えた今回カードモデルの話を全くしてないっすね……



表紙画像はpaper-replika.comからダウンロードできるキットからの引用。

参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/パンツァーファウスト
https://en.wikipedia.org/wiki/Panzerfaust
スポンサーサイト

テーマ : 模型・プラモデル・フィギュア製作日記
ジャンル : 趣味・実用

コメントの投稿

非公開コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
展開図公開中
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
プロフィール

のとっちょ

Author:のとっちょ
カードモデル初心者が苦闘するさまをご覧あれ。

検索フォーム
リンク(順不同、敬称略)
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード