Orel、Heinkel Models 南部連合装甲艦 "CSS Virginia" 他。

やっとこ本業の方が一息ついて、8月末か9月始めに夏季休暇が取れるかもしれないと皮算用でホクホクの筆者がお送りするカードモデル最新情報。本日まず紹介するのはウクライナOrel社からの新製品、南部連合装甲艦 "CSS Virginia"だ。

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まぁぶっちゃけ、日本じゃ誰も知らないといっても過言ではない南北戦争の南軍艦隊、コンパで「山手線ゲーム! 古今東西、南北戦争時の南軍艦船!」なんてぶちあげようものなら、「CSSバージニア、ハイハイ!」と言ったっきり、誰も二隻目の名前が出てこずに場が静まり返ること間違いなしのドマイナーさだ。むしろ、そこで「CSSテキサス、ハイハイ!」と即答できるホステスさんのいるお店だったら一度行ってみたい。下戸だけど。あと、コンパなんて行ったことないし山手線ゲームもやったことないんで想像で書いてます。遊び方違ったらごめんなさい。
そんなドマイナー艦隊にあって、ミリタリー界隈ではけっこう名前が知られている唯一の艦と言っていいのが、今回紹介するCSS”バージニア”だろう。

こないだも話題に出たが、南北戦争の開戦時に合衆国最大の造船所であったノーフォーク海軍造船所は、位置するバージニア州が連邦を脱退し南部連合に加わったことで建造中の艦船ごと破壊、破棄された。
その際、破壊が不十分で船体が残ってしまった「USSメリマック」を南部連合軍が接収、浮揚させた上で焼失した上部建造物を撤去し、新たに鉄板で装甲した砲郭を載せたのが「CSSバージニア」である。

今回は紹介するキットが多いので、手早く公式ページのキット写真を引用しておこう。

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なんというか、すごいカタチだ。高さ的になんだか中途半端な位置にある主砲(23センチ/9インチ砲)が棒みたいな構造物に載っているが、たぶん実際にはこの高さに仕切り甲板が入っているのだろう。残念ながら日本では放映されたことがないようだが、1991年のテレビ映画「IRONCLADS」ではバージニア艦内の様子も(もちろん、セットだが)描写されており、ちゃんと仕切り甲板の上に火砲が並んでいる。なお、「IRONCLADS」は2011年のアイルランド映画、「アイアンクラッド」とは、もちろん全然別ものだ。

さて、バージニアは南軍きっての有名艦なので実は過去にも一度キット化されている。いくら南軍で有名だからって、こんなもんをキット化するのはもちろん、スペインのデザイナーなのに南北戦争の装甲艦が大好きなFernando Pérez Yuste氏のブランド「Heinkel Models」だ。

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こちらは2014年の商品。紹介しようと思って忘れてた。ごめんご。
最初、先にリリースされていたHeinkel ModelsのキットがOrelから印刷販売になったのかと思ったが、Orel版はアレクサンドル・クストフ(Александр Кустов)というデザイナーの作品なので、全くの別物だ。

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こちらは完成見本写真が豊富なので、船体形状が良くわかる。艦尾に靴べらみたいな甲板がペロンと付け足されているが、元のUSSメリマックより3メートルも全長が伸びているので、スクリューと舵が後ろに延長されているようだ。船首部分にもヒレが追加されているので、直進性が怪しかったのかもしれない。船首部分の装甲甲板がちょっと突き出してるのは敵艦に体当たりするための衝角だ。

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この救命ボート、デリックとか全くないけどどうやって運用するつもりだったんだろう。傾斜している砲郭側面をウハウハザブーン!と水面に落とすつもりだったんだろうか。絶対転覆するよ、それ。船首の円錐型装甲司令塔もなんだかヤケクソ気味で素晴らしい。
どう考えても通風筒少なすぎない? とか、いろいろと不思議な船だ。

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展開図見本。表紙画像で緑色だった船底は完成見本では赤だが、展開図見本ではやっぱり緑。結局どっちなんだか分からないが、デジタル販売なのをいいことに気に入らなければ塗り替えてプリントアウトすればいいだろう。

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ちょっと順番がごたごたになってしまったが、こちらはOrel版の展開図見本。ややや! 砲郭部分の展開図がHM版にクリソツだぞ! これはさては……なんて邪推してはいけない。あんなもん、どうやったって展開図はこの形にしかならない。

注目すべきはOrel版展開図見本の前甲板、後ろ甲板。両方とも喫水線下(Orel版は赤)の色に塗られているが、よく見ると砲郭の下の方にも船底色が塗られており、前後甲板が水面下に没している、半潜航状態が正常(画像は1898年に描かれた絵画)ということになる。え、まじすか? それに対しHM版は甲板は水面上に出るという解釈で、わずかながら乾舷があるが、これはどちらが正しいのかちょっとわからなかった。歴史家の間でも解釈には差があるのかもしれない。

南北戦争開始と共に「アナコンダ・プラン」と呼ばれる封鎖作戦で南部連合の港湾を封鎖した北軍艦隊に対し、数の上で圧倒的に劣勢な南部連合海軍が封鎖突破の切り札として開発したのが、装甲艦バージニアであった。
1862年3月8日、ハンプトン・ローズ川河口の北軍封鎖艦隊に向かって出撃したバージニアは木造フリゲート「USSカンバーランド」(1750トン)から滅多打ちを食らいながらも突進、船腹にぶち当たって衝角でこれを撃沈。男らしい初戦果だったが、男らしすぎてバージニアも艦首を損傷した。続いて木造フリゲート「USSコングレス」(1850トン)に標的を定めたバージニアは、もう一回体当たりしたら今度は自分もヤバいのでコングレスと激しく撃ちあう。しかし、コングレスの砲弾は全てバージニアの装甲に弾かれ、バージニアの焼夷弾が弾薬庫に引火したコングレスは爆沈した。
さらにバージニアは大型木造フリゲート「USSミネソタ」(3300トン)に攻撃を開始したが沈没を恐れたミネソタは自ら座礁した。
2隻を撃沈、1隻を行動不能にしたバージニアだったが、気前よく体当たりした時に艦首の衝角はもげてしまい、艦長フランクリン・ブキャナン(Franklin Buchanan)はコングレスを守ろうと陸から北軍兵士が小銃を撃ちまくってくるのに対してどういうわけかカービン銃で応戦しようとして船上に出た所を狙撃されて片足を負傷。船体の装甲板は貫通さえされなかったものの緩んでガタついてる箇所もあり、主砲は2門が故障、さらにすでに暗くなり始めており、最もまずいことに潮が引き始めており喫水が深く操作性の悪いバージニアは自身も座礁する恐れがあり戦闘を引き上げざるを得なかった。

翌3月9日、今度こそミネソタを完全に撃破しようと出撃したバージニアが出会ったのは、対装甲艦の切り札として駆けつけた北軍の装甲艦、「USSモニター」であった。
バージニアは北軍の装甲艦が戦場に現れることを想定していなかった。そのため、主砲の装薬をどこまで増やしても安全かわからず、通常の装填量で発射せざるを得ず、モニターの装甲を貫徹することができなかった。しかし、モニターもきつい傾斜のつけられたバージニアの装甲を撃ちぬくことはできず、両者は激しく撃ち合いながらも互いに致命傷を与えることはできない(途中、バージニアの砲弾がモニターの視認用スリットに命中し、モニター艦長ジョン・ウォルデン(John L. Worden)は負傷しているが戦闘は継続した)。結局、再び潮が引いたこともありバージニアは戦闘を打ち切り戦場を去った。
なお、戦いの焦点となったUSSミネソタだが、実はCSSバージニアの前身、USSメリマックと同型艦である。両船は「ウォバッシュ」「コロラド」「ロアノーク(後に旋回砲塔3基を並べた超モニター艦に改造された)」「ミネソタ」そして「メリマック」と、それぞれ川の名前がつけられた一連のフリゲート艦の1隻なので、艦娘「ミネソタ」にしてみれば、敵に囚われた妹「メリマック」がサイボーグ化して襲い掛かってくるという、激燃えシチェーションであったりする。

ハンプトン・ローズで南軍は北軍の包囲を打ち破ることはできなかった。国力に劣る南部連邦は諸外国との連携の道を絶たれ、戦争が長引くに連れて北軍のアナコンダに締め上げられ、最終的には北軍に押し切られ敗退することとなる。
また、北軍(合衆国海軍)もハンプトン・ローズで2隻の艦艇を損失、約400人の水兵を失うという手痛い打撃を被った。アメリカ海軍がこれを上回る損失を被ることとなるのはハンプトン・ローズの約80年後、パール・ハーバーにおいてである。

世界海戦史に「初の装甲艦同士の戦いを行った」として燦然とその名前を刻み込まれた南部連合装甲艦 "CSS Virginia"。Orel版、Heinkel Models版とも海モノ標準スケール200分の1でのリリース。難易度はOrel版が3段階評価の「2」(普通)、HM版が5段階評価の「4」(難しい)。そして定価はOrel版が208ウクライナフリヴニャ(約800円)、HM版が9.95ドル(ダウンロード販売のみ)となっている。南部海軍装甲艦ファンのモデラーなら、両者を作り比べて解釈の違いを楽しむのもいいだろう。

また、ハンプトン・ローズでバージニアと戦った「USSモニター」もHeinkel Modelsからリリースされている。

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なぜか完成見本写真はちょっと画質が悪い。定価8.75ドル。
こちらもスケールは同じ200分の1なので机上でハンプトン・ローズの戦いを再現するのも楽しそうだ。



画像はOrel社サイト公式フォーラム、ecardmodels、Heinkel Modelsからの引用。

*Orel版の定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。


参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Hampton_Roads
https://en.wikipedia.org/wiki/CSS_Virginia
https://en.wikipedia.org/wiki/USS_Monitor
https://en.wikipedia.org/wiki/USS_Minnesota_(1855)

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