WAK イギリス戦闘機 Hunter F.5

友人から「新しいの買ったから」と無償供与されたスマホのスペックが低すぎてポケモンGOがプレイできなくてひとしきり落ち込んでからよく考えてみたら、そもそもスマホにSIMカード挿してないからプレイできたところでポケモン捕まえられない事に気づいた筆者がお送りするカードモデル最新情報。今回紹介するのはポーランドWAK社からの新製品、イギリス戦闘機 Hunter F.5 だ。

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うむ。ホーカーさんちのハンター君である。他に特になにも書くことがないぐらい、ハンター君である。後ろにもう一機飛んでるから、これがホントの「HUNTER×HUNTER」!というネタも思いついたが、どうやってもそれ以上話が広がらない上に何が「これがホントの」なんだかわからないのでこの話はこれでおしまいだ。

第2次大戦後半、レシプロエンジン機はすでに限界ともいえる性能に達しており、戦後は新たにジェット推進機が航空機の主力となっていくことは明らかであった。
イギリス、ホーカー社の主任設計技師シドニー・カム(Sydney Camm)もそのことは良く理解しており、ジェット艦上戦闘機「シー・ホーク」を完成させるが、シー・ホークは直線テーパー翼だったので、パッと見はレシプロ機をジェット化しただけみたいで、ぶっちゃけ地味だった(でも、どういうわけか最高時速が960キロも出た。これは、同時期に初飛行を果たした似たようなスタイルのグラマンF9Fパンサー艦上戦闘機より100キロも速い)。
もちろん、シドニー・カムはこれで満足せず、さらに後退翼を取り入れた次世代戦闘機を開発する。新たに開発された「ハンター」はエンジンをシーホークのロースロイス・ニーンからより径が細く、それでいながらよりパワーが倍近い(圧縮形式が違う)ロースロイス・エイヴォンに交換したこともありさらに性能は向上。1953年9月7日には時速1170キロを記録し、当時のジェット推進器の速度レコードを更新した。
イギリス空軍ではこの高性能機をさっそく採用し量産を開始する。ホーカー・ハンターは約2000機が生産されイギリス空軍では30年に渡って使用された他に、世界20カ国の空軍でも使用されるという一大ベストセラーとなった。

それでは、完成見本写真がないので組み立て説明書見本で地味な傑作機ホーカー・ハンターの姿を見てみよう。

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地味だな……
イングリッシュ・エレクトリックがほぼ同時期に作ってた「ライトニング」戦闘機なんて、エンジン双発を縦置きにしてみたら燃料タンクが胴体内に収まりきらなくなって腹からボッテリはみ出して、さらに車輪格納する場所もなくなって主翼下面に主脚を引き込むようにしたら増槽吊るす場所がなくって、仕方ないから主翼の上に増槽を載せるなんていうとってもアヴァンギャルドなスタイリングだったのに比べると、ハンターはなんとも地味だ。
しかし、裏返せばこの「地味」なところが設計者、シドニー・カムの「持ち味」だとも言えるだろう。

1893年、家具職人フレデリック・カムの家に生まれたシドニー・カムは12人兄弟の長男だった。当初、家業を次ぐために大工としての修行・勉強を続けていたシドニーは次第に航空機に興味を抱いていき、1908年ごろには兄弟と協力して模型飛行機の製作を開始している。このシドニーの模型飛行機は評判が良かったようでシドニーは雑貨屋を通じて多数を販売した。なお、途中で「あれ、これって自分で直接売ればもっと儲かるんじゃね?」と気づき直販も開始したが、雑貨屋に悪いんで直販の場合商品は秘密裏にお届けだったそうだ。きっと品名に「パソコン部品」とか書いてあったんだろうな。
1912年にシドニーは仲間たちと共に「ウィンザー模型飛行機クラブ」を発足。同クラブは同年中に有人グライダーの飛行にまで成功していたというから、相当なものだ。
いよいよ生涯の生業として飛行機設計を選んだシドニーは第一次大戦直前に「マーチンサイド」という飛行機メーカーに就職。マーチンサイドはもともとオートバイのメーカーで、戦時中は何種類か戦闘機を生産しているが、あんまりパッとしないうちに大戦は終結。そのまま廃業となってしまった。
そんなわけでフリーになったシドニーは1923年にいよいよホーカー社に入社。1925年に設計した軽飛行機「シグネット」(Cygnet)で手腕を認められたシドニーは主任設計技師に就任。それ以降、ホーカー・ニムロッド、ホーカー・ハート、ホーカー・フューリーなどを次々に設計する。彼の堅実な設計は軍のお気に入りとなり、1930年代には英国空軍の保有する機体のうち実に84%がシドニー・カムの設計した機体であったそうだ。
そして、第二次大戦中、ホーカーはシドニー・カム設計のハリケーン、タイフーン、テンペストの「嵐三兄弟」を次々に戦場へと送り込んでいく。

ドイツ空軍との死闘を制したイギリス航空界だったが、戦後は急速に存在感を失っていく。空軍の規模縮小に伴い航空機メーカーは再編が進み、さらに政治的な駆け引きが予算の高騰する新機種開発に悪影響を及ぼしていた。一節には二大政党の労働党と保守党が政権交代するたびに、互いに相手側の政権が進めていた新機種開発の予算を打ち切ってしまったのだという。
そんな中、英国空軍のホーカー・ハンター1機が前代未聞の「ホーカー・ハンター=タワー・ブリッジ事件」を起こす。
1968年4月、英国空軍は発足50周年を迎えていたが、大々的な式典はなかった。折しも時代は「ミサイル万能論」のまっただ中で、「迎撃ミサイルを数揃えれば、空軍なんて必要ないんじゃね?」という意見が政府内で真面目に討議されていた。
英国空軍第1戦闘機隊指揮官、アラン・ポロック(Alan Pollock)大尉はこれが我慢ならなかったのだろう、大尉は4月5日、愛機ホーカー・ハンターFGA.9(熱帯向け戦闘爆撃型)に飛び乗ると無許可で離陸しロンドン上空を低空で飛行、中でも議事堂の上は念を入れて3周し、最後に仕上げとしてテムズ川にかかるロンドンの名所、タワーブリッジの二段の橋の間を突っ切った(これだけでも違法行為)。過去にもタワーブリッジをくぐり抜けた飛行機はあったが、ジェット機がそれをやったのは初めてだそうだ。
当然、ポロックは着陸後即座に逮捕されたが、民衆の反発を恐れ空軍は彼を軍法会議にかけず、病気を理由に除隊とした。
いろいろと検索を行ったのだが、アラン・ポロックがその後どうなったのかはわからなかった(同姓同名の元パイロットが英国空軍関連の式典に招かれている記事はあったのだが、タワーブリッジ事件への言及がなかったので当人との確証が得られなかった)。

タワーブリッジ事件に先立つこと1年半、シドニー・カムは1966年に死去する直前にブリティッシュ・エアクラフト(BAC)が開発していた美しいラインの高速爆撃機TSR-2の開発が中止になったと聞き、「現代の航空機は4つの寸法(dimensions)を持つ。幅、長さ、高さ、そして政治力だ。TSR-2は前者3つにおいては順当だったのだが……」とコメントしたという。

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展開図のサンプル。細かいリベットの表現が美しい。塗装は1956年のいわゆる「スエズ動乱」に派遣された機体。エジプトの独立とスエズ運河国有化宣言に怒ったイギリスは運河を取り返そうとフランス、イスラエルと共謀して軍を派遣したが、いくらなんでも19世紀じゃないんだから、と嫌悪感を露わにしたアメリカ、ソビエトの圧力で撤兵を余儀なくされた。この戦いで戦費を費やした割に得るもののなかったイギリスはポンドの下落を招き、一時経済は危機的状況にまで追い込まれた。

地味ながら英国航空界没落前の最後の煌めきとなったホーカー・ハンターだが、ハンター自体は非常に頑丈な機体であるため、現在でもレバノン空軍が保有している他、民間に払い下げられて飛行可能な機体が多数あるという。中でも変わり種はATAC(エアボーン・タクティカル・アドバンテージ・カンパニー)所属の機体だろう。この会社は米海軍との契約で「仮想敵」を演じるのが専門で、在日米軍の訓練のために日本にもちょくちょく来ているそうなので、機会があれば日本でも本物のホーカー・ハンターを見ることができそうだ。

WAKからリリースされたHunter F.5は空モノ標準スケール25分の1でのリリース。難易度は5段階評価の「4」(難しい)。定価は45ポーランドズロチ(約1500円)となっている。
イギリス軍ジェット機ファンのモデラーなら、なかなかキット化されにくいこの時期の英軍機キットを見逃すべきではないだろう。また、アラン・ポロック大尉の心意気に感じ入ったモデラーなら、キャノンクリエイティブパークからダウンロードしたタワーブリッジのペーパークラフトの間をくぐらせて遊ぶのもいいだろう。



写真はWAK社ショップサイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/Hawker_Hunter
https://en.wikipedia.org/wiki/Hawker_Hunter_Tower_Bridge_incident
https://en.wikipedia.org/wiki/Sydney_Camm
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