KARTONOWA KOLEKCJA ポーランド爆撃機 PZL.37B "Łoś"

先日勤め先でトイレに行こうと廊下(土足の共用通路)に出た際、扉の段差に爪先を軽く引っ掛け靴底がペロンとほとんど外れてしまい、仕方なくガムテープの応急処置で家まで帰った筆者のお送りするカードモデル最新情報。常磐線の中で片足だけガムテープを巻いた安全靴を履いていたのは私です。
本日紹介するのはポーランドKARTONOWA KOLEKCJAからリリースされた、ポーランド爆撃機 PZL.37B "Łoś"だ。

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PZL P.11戦闘機、PZL.23 "Karaś"攻撃機と併せて「ポーランド三羽烏」の一角を担うPZL.37B "Łoś"。ポーランド機の中ではメジャーな機体なので以前に紹介したことがあったかと思って自分のブログを小一時間読み返してからやっと当コーナー初登場であることに気がついた。意外だ。

1934年、PZLワルシャワ工場は当時ポーランド軍が装備していた爆撃機、旅客機から発展したフォッカーF.VIIb/3mに代わる、より近代的な高速爆撃機のデザインを開始した。
目標としたのは最高時速360キロ(当時ポーランド軍に配備が始まっていたPZL P.7戦闘機を超える速度)、航続距離三千キロ(ほぼ空荷状態で)、そして最大爆弾搭載量2.5トンというものだった。これはほぼ同時期に開発が進んでいたドイツのHe111双発爆撃機(段付き機種の初期型)と比べても遜色ないものであり、特に爆弾2.5トン搭載というのはなかなか野心的な数値と言えるだろう。
新型爆撃機、PZL.37の最初の試作機は1935年秋に完成したが、これは地上での静止テスト用だった。この時点で、機体の操作系、サスペンションに不具合が見つかり修正が行われている。
2番目の試作機は1936年4月に完成。再び地上でのテストを2ヶ月かけて行った。日本語版Wikipediaでは、「1936年6月30日に初飛行した」と日付まではっきり出して2番機が6月に初飛行したと書いてあるのだが、ポーランド語版Wikipediaによると2番機は航空研究所からダメ出しを食らい、この時は飛べなかったらしい。
試作連絡機、PWS-5 t2の時も航空研究所の評価はボロクソだったが、やつらは仕事熱心なのか、それとも何か恨みでもあるのか。

半年かけて修正を行ってから12月13日に初飛行にこぎつけたPZL.37だったが、やっと飛んでみれば飛行中は計器盤がガタガタ揺れる、エンジンが危険なぐらい熱くなる、排気管が割れた、など問題続出で、やっぱり航空研究所は正しかった。しかし、大筋において性能は満足いくレベルであり、今後2年の間に10機から30機の先行量産を行うことが決定された。なんだかのんびりしてるな。
先行量産の準備を行う傍ら、技術陣はPZL37の改良に取り組み試作3号機を完成させる。3号機は尾部を修正し、それまで1枚だった垂直尾翼が左右2枚の双尾翼形式に改められていた。これにより背面後方銃座の射界が大きく改善されている。
また、車輪はそれまでの通常形式から、世界初の独立サスペンション式のダブル形式となり、荒れた飛行場での運用を可能とすると同時に車輪の径を小さくすることでエンジンナセル後方に完全に引き込み空力的ロスを減らしている。
さらにエンジンは870馬力のブリストル・ペガサスXII Bから920馬力のブリストル・ペガサスXXへパワーアップし、最高時速も396キロから412キロへと向上した。
軍はこの結果に満足し、PZL37に"Łoś"(「ウォシ」、ヘラジカ)の名前を与え制式採用と量産を決定した。

それでは、ここで公式ページの完成見本写真を見てみよう。

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キットは双尾翼、ダブル車輪、ペガサスXXエンジンのPZL37B型。10機作られたA型は先行量産型で単尾翼+ペガサスXIIエンジン。尾翼形状だけ量産型と同じ双尾翼としているがエンジンはペガサスXIIのままのA型bisも20機生産された。
出来はいつものKartonowa Kolekcjaらしい、堅実で安心感のあるクオリティ。

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千馬力に満たないブリストル・ペガサスエンジンがなんだかやたら大きく見えるのは、機体が非常に小柄なため。「アドバンスド大戦略」でカテゴリーが「爆撃機」だったために(個人的に)大柄なイメージのあるPZL37だが、実際には全長13メートル、全幅18メートルしかなく、これはドイツ軍のHe111と比べると全長で3メートル、全幅で4メートルも小さい。ドイツ軍の双発爆撃機としてはかなり小柄なドルニエDo17でも全長16メートル、全幅18メートルだから爆撃機としてはかなり小柄な機体だ。

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胴体細っ!
側面形はちょっとずんぐりしていて、それほど高速を狙ったデザインには見えないPZL37だが、上から見ると印象は一変する。左右から押しつぶされたような極端に縦長の胴体は空力的には優れていたが、機内が狭いために4人の乗員は位置を交代することが難しく、また被撃墜時には配置によっては脱出がかなり困難になるという欠点もあった。

ポーランド軍は当初、A型30機、B型180機を発注していたが途中で「やっぱり戦闘機増やさないとヤバいわ」と気がついてB型の発注は108機に減らされた(実際に何機が納入されたのかは不明)。
これ以外にPZLは外国への売り込みも進めていて(ライセンス生産のブリストル・ペガサスを販売する権利がポーランドにはないために)、エンジンをノーム・ローンに換装したPZL37C型、PZL37D型を1機づつ生産している。
営業のかいあって、PZL37はユーゴスラビア20機、ブルガリア15機、ルーマニア30機、トルコ25機という多数の発注を受け、さらにデンマーク、エストニア、フィンランドも購入に興味を示していたが、すでに生産する余裕も時間もポーランドには残されていなかった(他にベルギーではなぜかPZL37をライセンス生産して、スペイン内戦を戦ってる共和国軍に送るという計画があったが、これはスペイン内戦の終結に伴って立ち消えとなっている)。

1939年9月、PZL37は侵攻したドイツ軍に対して出撃した。チェンストホヴァ近郊ではドイツ軍第16装甲軍団を猛爆し侵攻を送れさせるなどの活躍もあったが、速度性能を優先したために防弾装備のないPZL37は損害も大きかった。
ポーランド降伏に伴い残存機はルーマニアに脱出し、ルーマニア軍は26機から27機のPZL37を接収している。ちなみにルーマニアは戦前にPZL37の購入代金として5機分を先払いしていたそうだ。
ルーマニア軍に接収したPZL37を対ソ戦に投入したが、スペアパーツがないために数ヶ月で戦線からは引っ込められた。
1944年4月、赤軍に追い詰められたルーマニア軍は残存機を継ぎ接ぎして作ったPZL37、9機を戦闘に投入。1944年5月3日の出撃がPZL37最後の出撃だと考えられている。

PZL37は全機が失われており現存機は存在しない。
墜落機の発掘により小片が集められている他、クラクフの航空博物館にPZL37用のペガサスXXエンジンが展示されているが、これは1939年のニューヨーク万国博覧会に出品されたものが2006年になって返還されたものだそうだ。
クラクフ東方のPZL Mielec工場(戦前、PZL37が生産されていた)にはピカピカのPZL37が展示されているが、これは2012年に作られたレプリカで、工場に残されていた図面や写真を参考に再生産されたもの(機内は機首部分しか再現されていない)だが、スタイルはオリジナルに非常に忠実だとのことなので、クラクフへ行く機会があれば是非とも足を伸ばして見学しておきたい。

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展開図と組み立て説明書のサンプル。テクスチャは汚しのないスッキリしたタイプだが、細かいリベットの描き込みが好印象。内装も複雑過ぎない程度に抑えられているようだ。

KARTONOWA KOLEKCJAの新製品、ポーランド爆撃機 PZL.37B "Łoś"は空モノ標準スケール33分の1で完成全幅54センチと、双発機としてはかなり小さなサイズ。難易度は5段階評価で「4」(難しい)ぐらいだろうか。定価は45ポーランドズロチ(約1500円)。
ポーランド空軍機の「定番」、PZL37は過去にも何度かキット化されている。 GOMIX-FLY MODELからは単尾翼のA型、双尾翼のB型ともリリースされているがやや古いキットなので入手は困難か。他にはMały ModelarzはPZL37がお気に入りなのか、1964年、1995年、2004年の3回キット化している(全てB型。64年版は69年、74年、78年にも再販されている)。とはいえ64年版、95年版は入手も完成させるのも困難だろう。残るのは2004年版だが、このキットをデザインしたのはKARTONOWA KOLEKCJA主筆デザイナーのPaweł Mistewicz氏。ただし、内容は今回のキットとマリモデ版では差があるようだ。これは、前述の2012年に完成したレプリカを取材した結果が組み込まれているのだろうか。
PZL37ファンのモデラーなら2004年版と今回のキットを作り比べることで、新たに考証が加えられた部分を探してみるのもおもしろそうだ。



画像はKARTONOWA KOLEKCJAサイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/PZL.37_Łoś
詳細な部隊配備、戦歴などはポーランド語版Wikipediaに詳しい。
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