MODELIK ドイツ蒸気機関車 BR 52

ながらく使ってたガラケーが床に落とした弾みで全く振動しなくなり、マナーモードにすると着信時にLEDがペカペカするだけという非常に控え目な電話になってしまい、けっこう本気で困ってる筆者のお送りするカードモデル最新情報。
本日紹介するのはポーランドMODELIK社の新製品、ドイツ蒸気機関車 BR 52 "Kriegslok"だ。

BR52 okladka n

ミリタリー界隈でドイツの蒸気機関車といえば、この「クリーグスロコ」。陸戦ファンのモデラーにも嬉しいドイツ蒸気機関車の定番の登場に、表紙絵右側にいるレゴの人形(ミニフィグ)みたいな兵隊さんたちも思わず背筋が伸びる勢いだ。
なお、このキットは純粋な新製品ではなく2003年発売のキットの再販版となるが、そのころはまだこのブログやってなかったんで当コーナーでは新製品扱いとなるいい加減さだ。

1919年、それまでバイエルンだのザクセンだのがプロイセンだののいわゆる「ドイツ諸侯」が勝手に持ってた鉄道が国の一括管理となり「ドイツ国営鉄道」が発足。これに伴い、運用される機関車にも「統一型」が制定され、1926年に「ドイツ国鉄01形蒸気機関車」、すなわち"DR-Baureihe 01"が就役する。ドイツ機関車の形式名として使われる"BR"は「Baureihe」(英語の"type"に相当)の略なので「BR01形機関車」だと01形形機関車になってしまうので気をつけたい。
1939年に就役した"BR50"は目前に迫った戦争に対処できるよう粗悪な石炭でも走ることができ、また脆弱な路盤の線路でもう運用できるように車軸当たり重量が抑えられていた。これらの特徴は1941年に独ソ戦が始まると、インフラが特に脆弱な東部戦線で威力を発揮し、最前線へ部隊、食料、弾薬をせっせせっせと運んだ。
しかし、41年の12月にドイツ軍がモスクワ前面で敗退し、短期決戦の目論見が外れるとドイツ軍の鉄道輸送は大きな問題を抱えることとなった。あまりにも占領地域が広大なために、蒸気機関車が足りないのだ。
ただでさえ機関車が足りない上に、ぶんどった機関車を活用しようにもソビエトは独自の広軌(1,524 mm)を採用しているので、一旦レールをヨーロッパ標準軌(1,435 mm)になおしてしまうと鹵獲機関車を使用することはできない。だからと言って、鹵獲機関車目当てにレールの幅を直さない、なんてことはもちろんできない。
ドイツ国鉄はこの問題を解決するために"BR50 ÜK"(Übergangs-Kriegslok、仮戦時機関車)というBR50の簡略化型を1942年の3月から生産し始めたが、それと平行してさらに徹底的な簡略化、省力化を目指して開発されたのが今回キット化されたBR52"Kriegslok"(戦時機関車)だ。

それでは、ここで公式ページの完成見本写真でBR52"Kriegslok"の姿を見てみよう。

BR52 A3 foto1

機関車の完成見本としては珍しく塗られていない。パイプ、手すり類はしっかり取り付けられているが、リベットの打ち直しは行っていないようだ。機関車には珍しい迷彩模様が目を引くが、機関車にこんなザックリした迷彩をしたところでどの程度の効果があるのかは、ぶっちゃけ疑問だ。
煙室扉の迷彩パターンが豪快に途切れてるせいで、機関車正面に「V」サインが描いてあるみたいになっているのも味がある。

BR52 A3 foto2

細部ディティールの様子。
BR52はドイツ国内だけでなく、オーストリアやチェコ、さらには占領下のポーランドやフランスでまで製造されたので生産時期や工場によって差異が多い。今回キット化されたのは炭水車の車輪が台枠に取り付けられている(台車を介さない)リジッド式の車両。生産工場はちょっとわからなかった。
「戦時型」ということでボイラー上の砂箱など、どうでもいいところからはとことん曲線が廃されているのが目を引くが、東部戦線の冬でも使えるようにキャビンだけは逆に完全密閉型に強化されている。
ところで表紙と完成見本、アングルはほぼ一緒だがよく見ると排障器や煙室扉の形、テンダーの車軸配置などコマゴマと異なるのだが、これって別の車両を見本に絵を描いてない?

BR52は非熟練工でも短時間に作れることを目指したが、やるとなればとことんやるドイツ人だけあって、徹底的に簡略化してあった。前述のように必要がない場所は全て簡単な箱型で構成するようにし、さらに2つの砂箱を1つにするなど廃止できる部品は全部廃止(よく見ると前照灯さえない)。さらには普通は1本まるまる鍛造で作らなければならないロッドを3本の短いパーツを溶接で連結していたり、台枠はトーチで切り欠き部を切り抜いたらそのまま縁の処理をせずに組み立ててしまうなど、ちょっと平時では考えられない省力化が行われた(さすがに計画のみで終わったが、先輪を省略して0-5-0配置にする、なんて案まで検討された)。
これらの努力と工夫により、BR50を1輌製造するのに必要だった労力が2万人x時間だったのに対し、BR52は6千人x時間で製造できた(BR50を3輌つくる手間でBR52が10輌作れる)というから、ちょっと信じられない。
さらに、BR52では戦略物資を節約するために銅や真鍮などで作られていた部品をできるだけ鉄に置き換えており、例えばBR50で2.4トンが使われていた銅はBR52ではたったの127キロしか使われていないという。
もちろん、2万人x時間とか銅2.4トンがただの無駄だったわけではないので、BR52は振動が大きいとか、安全装置が省略されているんで爆発しそうで怖いとかいう問題もあったが、なによりも犠牲になったのは「耐久性」で、「まぁ、5年ももてばいいだろう。それまでには戦争終わってるじゃろ?」という目論見から「耐用年数:5年」というとんでもない短命の機関車が続々と生産されたのである。

1942年9月に最初のBR52が完成すると、いい気になったドイツは「2年で1万5千輌のBR52を作ろう!」とぶちあげた(ちなみに日本で最も多数生産された機関車、D51が生産数約1100輌)が、さすがにこれは無理ということで計画は1万輌に減らされた。
BR52の実際の生産数については混乱があり、正確な数ははっきりしない。これは前述のようにヨーロッパ中の工場で生産された上に、連合軍の爆撃で納入前に失われた車両があったり、戦後にベルギーやポーランドで再生産されたものと交じり合ってしまったりしたからだが、大筋において戦時中だけで6400輌から6700輌の間だろうと見積もられている。これは「2年で1万輌」の計画値には満たないが、それにしても物資の逼迫する戦争後半のドイツにおいては驚くべき数字であり、これまでに最も多数生産された蒸気機関車としてBR52の名前が挙げられることもある(ソビエトのЭ型機関車を最多としている資料も多いが、Э型は何度かフルモデルチェンジしており、同一の機関車とは数えられないとする意見もある)。

驚くほどの多数が生産されたBR52は東部戦線で多用されたために、終戦直後までに2000輌以上という、これまた信じがたい数がソビエト軍に鹵獲されている。あんまりにもたくさん獲得したもんでソ連はBR52に「TЭ」の型番を与えて整備し、バルト三国や戦争によって新たに獲得した地域、カリーニングラードやベラルーシ西部(まだヨーロッパ標準軌のままだった)で使用したが、中にはロシア広軌に改造された車両もあった。また、衛星国にも気前よくほいほいと分けている。
ドイツが生産を分散したことにより、BR52は戦争により荒廃した各国ですぐ調達できる、すぐ修理できる機関車として重宝された。例えばベルギーは国内の4つの工場で約100輌のBR52を再生産している。
戦後に世情が安定してくると、手抜きだったり省略されたりしていた部分は次第に正規の規格のものに置き換えられていき、BR52は各国で近年まで走り回っていた。現在も相当数が現存し、Youtubeなどで検索をかければイベント等でBR52が実際に走行している動画を多数見つけることができるだろう。

変わった所では、BR52の1輌が1978年から日本に存在していた。これは滋賀県大津市にあった、びわ湖温泉ホテル(ホテル紅葉)の敷地内で「ホテル・オリエント・エクスプレス」として使われていたもので、1943年ヘンシェル製BR52「52.2436」が8輌の個室寝台車を牽引する形で設置されていたが、残念ながらホテル紅葉の営業縮小に伴い1990年代後半に閉鎖、撤去解体されてしまったようだ。機関車って、保存が大変だからね……
なお、一部の日本語資料には「1980年代までBR52が河口湖近辺の公園に展示されていた」と書かれているが、この車両については写真などが一切見つからなかった。あるいはびわ湖温泉ホテルのBR52についてが誤って伝わっているのかも知れない。

BR52 rys1 BR52 rys2 BR52 ark

組立説明図と展開図のサンプル。MODELIKらしい、スッキリとした内容だ。展開図そのものは2003年のもののままなので、合いに関しては楽観しないほうがいいだろう。ベテランモデラーなら全リベットを打ち直すフルディティールアップにも挑戦してみたい。

MODELIKから再販版がリリースされたドイツ蒸気機関車 BR 52 "Kriegslok"は陸モノ標準スケール25分の1で完成全長91センチの迫力のサイズ。難易度は5段階評価の「5」(非常に難しい)。定価は120ポーランドズロチ(約4千円)となっている。また、レーザーカット済みの芯材、車輪、レーザー彫刻によるすべり止めモールド付きランボードなどのセットが80ズロチ(約2600円)となっている。
ヨーロッパ鉄道史の1ページを築いたBR52は、ヨーロッパ鉄道ファンのモデラーなら見逃すことのできないアイテムと言えるだろう。
また、関西圏のモデラーなら、このキットを組み立てることでホテル紅葉のCM(はだか天国)を見た甘酸っぱい記憶に思いを馳せるのも楽しそうだ。



キット画像はMODELIK社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/DRB_Class_52

http://locomotives.com.pl/
ポーランドの機関車のページだが、ポーランド国鉄はBR52戦中型をTy2の名前で、また自国で再生産したものをTy42として使用していたので詳細な解説がある。
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