Model-KOM アメリカM4高速牽引車+155ミリ砲 "Long Tom"

なにかのはずみで足の親指の爪をバッキリと奥まで割ってしまい、歩くだけでも痛くて難儀していたのだが、ふと思いついて適当な大きさに切った紙を瞬間接着剤に浸して割れた爪に貼って補強したところ、全く痛みがなくなり改めて瞬間接着剤の便利さを思い知った、一文がやたらと長い筆者がお送りするカードモデル最新情報。本日紹介するのはポーランドModel-KOMの新製品、アメリカM4高速牽引車+155ミリ砲 "Long Tom"だ。

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これは重砲ファンにはたまらないビッグキットの登場だ。この迫力の前では、表紙の兵士のモデリングがなんだか20年ぐらい前のゲームのイベントシーンみたいなクオリティだというのも大した問題ではないだろう。向かって左側の兵士はなんで蓋を外した水筒持ったまま歩いてるんだ。

「高速牽引車(High-Speed Tractor)」というのは他の国では聞かないカテゴリーだが、それ以前に米軍が使用していたM1重牽引車の最高時速が20キロに満たなかったのと比較しての名称で、M4は時速56キロまで出るようになったのだから、確かに「高速」だ。
ハセガワのプラモデルで育った世代としては、155ミリ砲を引っ張るのはM5高速牽引車のイメージがあるが、M4の牽引能力18トンに対してM5は牽引能力13トンしかなく、ロング・トムの牽引姿勢時の重量が13.8トンなので、M5ではちと牽引力が足りない。

今回は写真が豊富なので、公式ページのしっかり塗られちゃった美しい完成見本写真を見ながら紹介を続けよう。

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パッと見では小柄に見えるM4牽引車だが、2列のシートでわかるように全長5メートル以上あるけっこう大柄な車両だ。足回りは一見、M3スチュアート軽戦車のものを転用しているように見えるが厳密には試作車両がM2軽戦車から転用した足回りで、量産型では遊動輪を大型化して接地させるなどM3軽戦車によく似た改良が施されている。

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細部もこの通りのクオリティ。後部のラックには砲弾が収めてあるが、ロング・トムは分離薬筒式なので真ん中が砲弾で両脇が装薬。乗員の乗るキャビンと後方のカーゴスペースとの間にエンジンがあるミッドシップレイアウトだ。

M4を製作したのはアリス・チャーマーズ(Allis-Chalmers)社という会社で、日本では知名度はないがアメリカでは農業用トラクター製造の大手として良く知られている。
もともとは1860年、Edward P. Allisという人物が破産して競売にかかっていた「Decker & Seville」という会社を買い取ったのが始まり。D&S社は小麦を挽く機会を製作していたが、E.P.アリスが当時出回り始めていた蒸気機関をこれにつなげることを思いついたことで会社は息を吹き返した。一方、Thomas Chalmersが1872年に鉱山用ボイラーとポンプの製作所として立ち上げたのが「Fraser & Chalmers」社。こちらも蒸気機関が出回り始めた時代の波に乗って会社を大きくしていた。
両者は1901年に合併、アリス・チャーマーズ社となる。
アリス・チャーマーズ社は1920年台に農業の機械化に目をつけ農業トラクターの市場に参入する。1929年にアリス・チャーマーズ社はカリフォルニアのポピー畑からインスピレーションを得て、自社の製作する全トラクターをポピーの花の色によく似たペルシアン・オレンジに塗ることを決定。このイメージ戦略は成功し、トラクター大手のインターナショナル・ハーベスター(赤)、ミネアポリス・モーリーン(黄色)なども後追いで自社のトラクターの色を統一する。
しかし、1970年台以降は日本製の小型トラクターなどに市場を奪われ、1988年にアリス・チャーマーズはアメリカン・エアフィルター社に2億2500万ドルで買収されている。
あと、本題とは関係ないが、アリス・チャーマーズのトウモロコシ収穫機が無性にかっこよかったのでリンクを貼っておこう

さて、続いて155ミリロング・トムの解説に移ろう。
こちらは半完成状態でのホワイトモデルでの紹介だ。

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こちらは塗っていないのでキット素組の状態がわかるが、この段階で既にすごいクオリティだ。前車のサスペンション周りとか、どうなってんだこれ。
日本語の資料では「155ミリ加農砲」書かれることが多いロング・トムだが、英語ではただの「gun」なので正確な訳語は「155ミリ砲」となる。もちろん、実際には加農砲なのだが、米陸軍には「加濃砲」というカテゴリーそのものがない。

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砲尾、砲架のクオリティもこの通り見事なもの。ロング・トムは厳密にはM1、M1A1、M2の3つのサブタイプが存在するが、それぞれ閉塞器の形状が多少違うだけで大きな差はない。また、砲架は203ミリ重榴弾砲と共通である。

第一次大戦に参戦した時、アメリカ軍は戦争準備が全くできておらず、適当な野戦重砲も持っていなかった。見るに見かねてフランス軍が新型のGPF 155mmカノン砲(Canon de 155 mm Grande Puissance Filloux (GPF) mle 1917)を分けてくれたが、これがパンチ力があって砲弾が遠くまで飛んで、しかも狙った所に着弾するという大変にご機嫌な大砲だったもんだから米軍は大いに気に入ってM1917として制式採用、さらにM1918の名前で自国生産までした。
とはいえ、いつまでも第一次大戦の火砲を使ってるわけにもいかず、1930年台に交代する新型火砲が計画されたが、GPF 155ミリ砲があまりに便利だったんで口径はそのまま155ミリとした。だからインチサイズで兵器を開発する米軍にはしては珍しく口径がメートル法できりがいい155ミリとなっている(6インチ砲なら152ミリになる)。

ロング・トムは1942年11月の「トーチ作戦」で華々しくヨーロッパデビューを飾る予定だったが、ロング・トムを配備した第36砲兵連隊A中隊がイギリスに到着して砲弾ケースを開けてみたら間違えてGPFの砲弾(ロング・トムの砲弾と共通性はない)を持ってきていた。ぎゃふん。
砲弾がなくては戦えないので、急いで送ってもらった砲弾が届いたロング・トムがやっとこ北アフリカに上陸したのは12月になってからだったが、一旦上陸するとロング・トムの火力は凄まじかった。ロング・トムは英軍装甲車部隊とチームを組み、ロング・トムの前方20キロほどで行動する英軍装甲車が接敵するとロング・トムがGPFに輪をかけて正確な砲撃でドイツ軍を叩きまくったという。

ところで、この「ロング・トム」という名前、いつ、どの時点で命名されたのかがはっきりしない。制式採用時に名付けられたとする資料もあるが、別の説では英軍が名付けたとしている。
実は英軍は以前にも別の155ミリ砲にも「ロング・トム」と名づけている。
そちらの旧ロング・トムはフランスのシュナイダー社製で、トランスヴァール(南アフリカ共和国)が8800発の砲弾と共に購入した4門がトランスヴァールの首都、プレトリアを要塞化するために配置されていた。
第二次ボーア戦争で英軍はこの4門に一方的に打たれ続け、なんとかして砲座を攻略しようとしたが結局は旧ロング・トムが全ての砲弾を撃ち尽くして自爆するまで進むことができなかったというから、英軍が米軍の155ミリ砲の威力に敬意を評して「ロング・トム」の名前を進呈した、と考える方が自然ではないだろうか。

一つづつでも十分に魅力的なM4高速牽引車と155ミリ砲 "Long Tom"のセットはもちろん陸戦スケール25分の1でのリリース。M4トラクターだけでも完成全長約20センチのビッグなキャラバンが楽しめる。難易度は4段階表示の「4」(とても難しい)、そして定価は149ポーランドズロチ(約5千円)となっている。
当キットは重砲ファン、トラクターファンにとってはもちろん見逃すことのできない一品だ。また、日本の陸上自衛隊でもM4を「18tけん引車 M4」(「牽」の字が常用漢字ではないためひらがな表記が制式名となる)、ロング・トムを「155mm加農砲M2」の名前で採用しているので、自衛隊ファンにとってもオススメのキットと言えるだろう。


おまけ。ディティールアップして全塗装するとこんな風になる。ひ~

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画像はModel-KOM社サイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。


参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/M4_Tractor
M4トラクター

https://en.wikipedia.org/wiki/Allis-Chalmers
アリス・チャーマーズ

https://en.wikipedia.org/wiki/155_mm_Long_Tom
http://www.globalsecurity.org/military/systems/ground/m2-155.htm
ロング・トム

https://en.wikipedia.org/wiki/155_mm_Creusot_Long_Tom
http://www.sabie.co.za/gallery/cannon.html
ボーア戦争の旧ロング・トム
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