PaperShipwright イギリス設標船 THV Vectis

ゴールデンウィークは成田山にお参りした以外はカードモデル作ってるか家の建具を修理するかで終わった超インドア指向の筆者がお送りする世界のカードモデル最新情報。本日紹介するのはイギリスのブランドPaperShipwrightからのFreeキット、イギリス設標船 THV Vectis だ。

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A4二枚のミニキットで表紙がないのでいきなりの完成見本写真。ちっちゃいねー。横腹の黒い斜め線は岩や他の船舶にぶつかった時のダメージを抑える緩衝材だろうか。
PaperShipwrightはDavid Hathaway氏の個人ブランドで、軍艦なら各国のモニター艦、また民間船ならタグボートやハシケといった、なんだか変なものばかりキット化しているのが特徴だ。当ブログでは以前にオーストラリア海軍モニター艦”Cerberus”の記事でちょっとだけ名前が出てきたことがある(現在、Cerberusはフリーキットのリストから外れている)。
なお、イギリスには「David Hathaway」という有名なキリスト教伝道師がいるが、たぶん、別人だろう。
今回紹介する「THV Vectis」はイギリスの灯台管理及び水先案内人協会である「トリニティ・ハウス」の所有する船舶(なので「Trinity House Vessel」の略、THVが頭につく)だが、PaperShipwrightはトリニティ・ハウスと協力関係にあり、トリニティ・ハウスの所有する船舶、管理する灯台のキットを精力的にリリースしているのも特徴だ。

「トリニティ・ハウス」というのは日本ではあまり知られていない組織だが、制式名称は「ケント州デトフォード=ストロンド教区における聖クレメンスと三位一体の最も輝かしく不可分のギルド、友愛会、及び信徒会のマスター、管理者、及び助手(The Master Wardens and Assistants of the Guild Fraternity or Brotherhood of the most glorious and undivided Trinity and of St. Clement in the Parish of Deptford Strond in the County of Kent)」という、もう翻訳が合ってんだかなんだかわからない感じの長い名前だ。「of~of~of~」と三回も繰り返すからどれがどれにかかってるんだか分かりゃしない。あんまりにも名前が長いので、普通は本部が入ってる建物を指す「トリニティ・ハウス」を使用する。
この仰々しい名前はなんなのかというと、もともとがトリニティ・ハウスはケント州デトフォード地区(現在はロンドン州・デトフォード地区)の水夫達の組合(ギルド)が「最近、テムズ川に水先案内人が増えてきたんですけど、あいつらヘッタクソなんで危ないんですわ。ここは一つ、王様の権威で水先案内人の免状を制定し、わしらでそれを管理させてくれんですかね」と時の王様ヘンリー八世に請願し、「いいよ」と設立された水先案内人の管理組合が始まりだから。王様がからんでちゃぁ、名前も大層なものにならざるをえない。創業、なんと1514年。日本では戦国時代の始まりごろだ。
17世紀には航行船舶数が増加し、各地で座礁する船が増えたためにトリニティ・ハウスは灯台の建設も受け持つようになり、1732年にはテムズ川のノア砂州に世界初の灯台船を浮かべている。
灯台管理業務は年々拡大し、1836年にはイギリス最後の私設灯台から業務を引き継いだ。現在ではもともとの業務である水先案内人の免状発行と灯台の管理に加え、水先案内人の訓練と引退した水先案内人の福祉も受け持っている。
そういった経緯なので、日本では国の海上保安庁が管轄する灯台の管理だが、トリニティ・ハウスは一応、私企業である。とはいえ、運営費は運輸省が制定して船舶から徴収する「灯台税」から調達されていたり、名目上は会社の最高責任者がアン王女(現在の英国女王エリザベス二世の長女で、チャールズ皇太子の妹)だったりして、純粋な私企業というよりは「非政府省庁」とも言うべき位置づけとなっている。
ちなみにトリニティ・ハウスの建物は1940年12月29日、ロンドン大空襲で直撃弾を受けて全壊。1953年に再建された。

さて、このトリニティハウスが海に浮かべる「ブイ」の管理用に調達したのが、今回リリースされたTHV Vectisだ。
「Vectis」という名前の由来は、イギリスワイト島の古名(ラテン語)のことだと思うが、公式にそう書かれているわけではないので確証はない。あと、ラテン語の「V」は「W」発音だが、この船の名前が「ウェクティス」と発音されるのかはわからない。
排水量たったの76トン、全長20メートルの小さな船だが、逆にその小ささを生かして海底の浅い沿岸まで入り込み前甲板の2トンクレーンでブイをぶいぶい設置できる強みがあった。
なお、「設標船」というのは海上保安庁の区分だが、厳密には海上保安庁では500トン以下の設標船は「灯台見回り船」と呼称されるようだ。

1991年に建造されたVectisだが、2006年には早くも引退。ブイ管理の仕事は後継の THV Alert に引き継がれた。
引退したVectisは海洋調査などを仕事とするGardline社に売却され、船名を「George D」に変更するが、この名前はGardline社創業者にちなむらしい。
George Dは2012年、天然ガスプラント開発に伴う海洋調査のためカメルーンへ向かう。とは言っても喫水の浅い76トンの船で沖合に出たら転覆してしまうので、7000トンのタンカーに積み込まれて荷物としてアフリカに到着。世界中の船舶の現在地を確認できるサイトで現在地を確認すると、2016年5月8日現在、モザンビークのベイラ港に停泊中なので、まだアフリカで頑張っているようだ。

こちらは組立説明書と展開図。小さい船なので、これで全部。見た感じはポーランドJSCのキットに構成が似ている印象を受ける。

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PaperShipwright のFreeキット、トリニティ・ハウスの設標船 THV Vectis は、スケールは独特の250分の1。完成全長はたったの8センチだが、難易度は5段階評価で「3/4」(普通よりちょっと難しい)と公式ページで微妙な書かれ方。Freeキットなので価格は0円、そして配布形式はダウンロードでとなっている(PaperShipwrightの他の商品は印刷版のみでのリリース)。

当キットは設標船ファンのモデラーにとって見逃すことができない一品であるのは言うまでもないが、まだ船舶キットに手を出したことがないモデラーにとっても、無料の当キットは「船舶キットの水先案内」として最適と言えるのではないだろうか。



画像はPaperShipwrightサイトからの引用。


参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/Trinity_House
https://www.trinityhouse.co.uk/about-us
トリニティ・ハウスについて。
http://worldmaritimenews.com/archives/59733/gardline-vessel-george-d-starts-its-journey-to-cameroon-onboard-mv-pangini/
Vectisアフリカ出発のニュース。
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