Orel ロシア帝国駆逐艦 "Капитан Сакен"

花粉の執拗な攻撃に加えて寒暖の差が激しく体調を崩しがちなこの季節、昨日の夕方からどうにも腹具合が落ち着かない筆者のお送りするカードモデル最新情報。本日紹介するのはウクライナOrel社からの新製品、ロシア帝国駆逐艦 "Капитан Сакен"だ。

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ロシア帝国の駆逐艦、それも日露戦争よりも後の船。さらにマイナー艦隊の黒海艦隊所属である。当然、資料は絶望的に少なくて、当たりをつけるだけでも大変苦労したのだが拾ってきた情報でなんとか解説してみよう。

まず、名前の「Капитан Сакен(カピタン・サッケン)」だが、この名前で検索をかけると1889年就航の同名の装甲艦が出てくるが、そっちは衝角がニョローンと前に突き出しているいかにも19世紀の艦形で、今回の船とは明らかに異なる。
今回キット化されたのは、初代装甲艦カピタン・サッケンが1909年に退役してから交代で就役した、「ルテナント・シェスタコフ(Лейтенант Шестаков)」級駆逐艦(ロシア軍の分類では「艦隊水雷艇(эскадренный миноносец)」)2番艦の方。
この艦名の「カピタン・サッケン」というのは露土戦争でトルコ艦隊と戦ったロシア海軍の軍人、ハリスティアン・イワノビッチ・オステン=サッケン(Христиан Иванович Остен-Сакен)から取った名前で、オステン=サッケンが戦死した1788年から100年目に初代装甲艦にその名がつけられた。
ところで「オステン=サッケン」って、ロシア人っぽくない名前だな、と思ったら、この人はもう一つ名前があって、そちらは「ヨハン・ラインホルト・フォン・デア・オステン=サッケン(Johann Reinhold von der Osten-Sacken)」という。どう見てもドイツ人の名前だと思ったら、どうやらバルト諸国に定住したドイツ騎士団の末裔らしい。
ところで、K・サッケンは建造中は「ルテナント・プシチン(Лейтенант Пущин)」という名前だったそうだ。先述の通り初代装甲艦が退役して黒海の英雄オステン=サッケンの名前が空いたのでルテナント・シェスタコフ級駆逐艦2番艦に回ってきた、というわけ。
ところが、そうなると「ルテナント・プシチン」の名前が余ってしまうんで、そっちの名前はまた別に建造してる別の駆逐艦に流用されて、そっちは「ルテナント・プシチン級駆逐艦」のフラグシップになった。あー、めんどくさい。

さて、1909年に就航したK・サッケン。第一次大戦勃発時にはまだ艦齢の新しい船だから当然現役で出撃したと思うのだが、全然戦闘の記録が出てこないので他のロシア艦の例に漏れず、なにもしなかったらしい。まぁ、ロシアは陸軍国だからね。
1917年、ロシア革命によりソビエト政権が打ち立てられるとK・サッケンは赤軍黒海艦隊の一員となる。が、やっぱり何もすることがないんでセヴァストポリに係留されていたら1918年5月1日、帝政ドイツ軍がやってきて鹵獲された。
ドイツ軍はK・サッケンの名前を「R04」に変更して夢の「ドイツ黒海艦隊」に配属したが、ベルサイユ条約で「そんなもん認めるわけがないだろう」と、フランス・イギリスの共同管理下に置かれた(英仏軍によって「R2」に再改名されたらしい)。
英仏はただでさえ勝手に単独講和したソビエトにいい印象を持っていないこともあり、共産革命なんてぶっ潰しちゃうゾ! とR2(元K・サッケン)を赤軍と戦う白衛軍に気前よくプレゼント。
白衛軍はR2(元K・サッケン)を「K・サッケン」に改名して、どんどん複雑になっていく。

白衛軍将軍ピョートル・ヴラーンゲリ(Пётр Николаевич Врангель)率いる、いわゆるウランゲリ軍は英仏から黒海艦隊ももらって意気揚々を赤軍にぶつかったものの、上り調子の赤軍とまともにぶつかったらボコボコに敗退。クリミア半島に追い詰められたウランゲリ軍は艦隊に分乗してトルコに逃げたら「面倒を持ち込まないでくれ」と追い出され、仕方なくフランス領チュニジアに脱出したら当然全艦が抑留された。
その後、K・サッケンはソビエト政府により「いらない」とフランスの所有であることが確定したが、フランスも別にいらなかったので1924年にスクラップとして売却された。

まぁ、なんというか、ドイツ名のロシア人の名前に相応しい複雑な生涯を辿ったK・サッケン改めR04改めR2改めK・サッケンの姿をOrel公式フォーラムの完成見本写真で見てみよう。

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完成写真はこれ一枚。波が描いてある飾り台が楽しい。
でも、なんで名札がヘブライ語なんだ、これ。っていうか、これ本当に完成品の見本写真なんだろうか。なんか不安になってきた。
仕方ないのでスペックの説明でもしてお茶を濁そう。
K・サッケンは排水量800トン、全長74メートルの小柄な艦。主砲は12センチ砲2門、副砲として47ミリ砲2門。ただし、砲の口径、門数は時期によって変動があるようだ。雷装として45センチ魚雷発射管3本。

Orelからリリースされたロシア帝国駆逐艦 "Капитан Сакен"は海モノ標準スケール200分の1で完成全長約37セントとお手頃なサイズ。難易度も3段階評価に「2」(普通)。そして価格はポーランドGPMのショップで45ポーランドズロチ(約1500円)となっている。

日露戦争ならまだしも、第一次大戦のロシア艦ともなると、もはやロシア人でさえも完全無視状態の昨今。帝政ロシア艦ファンのモデラーなら今回のキットを見逃すべきではないだろう。また、なんにもしてないのに流浪したK・サッケン改め(中略)K・サッケンの運命に涙したロマン派モデラーなら、安息の地を自分の机の上としてやるのもよさそうだ。



画像はOrel社サイト公式フォーラムからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

参考ページ:
ハリスティアン・イワノビッチ・オステン=サッケン
https://ru.wikipedia.org/wiki/%D0%9E%D1%81%D1%82%D0%B5%D0%BD-%D0%A1%D0%B0%D0%BA%D0%B5%D0%BD,_%D0%A5%D1%80%D0%B8%D1%81%D1%82%D0%B8%D0%B0%D0%BD_%D0%98%D0%B2%D0%B0%D0%BD%D0%BE%D0%B2%D0%B8%D1%87

ルテナント・シェスタコフ級駆逐艦
https://ru.wikipedia.org/wiki/%D0%9B%D0%B5%D0%B9%D1%82%D0%B5%D0%BD%D0%B0%D0%BD%D1%82_%D0%A8%D0%B5%D1%81%D1%82%D0%B0%D0%BA%D0%BE%D0%B2_%28%D1%8D%D1%81%D0%BC%D0%B8%D0%BD%D0%B5%D1%86%29

K・サッケン
http://navsource.narod.ru/photos/03/213/
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