MODELIK ドイツ無火機関車 "Linke-Hofmann Bt"

最近、休みの日のおやつは焼き海苔を食べている筆者がお送りするカードモデル最新情報。本日紹介するのはポーランドMODELIK社の新製品、ドイツ無火機関車 "Linke-Hofmann Bt"だ。

Linke H okladka

……いや、たしかに、以前路面機関車の記事を書いた時に「無火機関車も模型化してもらいたい」って書いたけど、まさか本当にキット化されるとは思わなんだよ。

「無火機関車」というのは呼んで字のごとく火を使わない機関車のことだが、この場合は電気機関車ではなく、圧搾空気や蒸気で走る機関車のことを言う。「火を使わない蒸気機関車」ってのはなんだかひどく矛盾しているようだが、据え置きの蒸気発生器から高圧の蒸気や数百度のお湯(圧力をかけているので蒸発しない)を充填し、その圧力を使いきるまで走る機関車のことだ。
ちなみに峻険な国土ゆえに戦前から水力発電が盛んだったスイスでは、第2次大戦中に石炭価格が高騰し、石炭より電力の方が安いという状態となったために「電力で水を沸かして走る蒸気機関車」という摩訶不思議なものが走っていた時期があるが、あんまり関係ないので先へ進もう。
無火機関車は充填された蒸気を使いきってしまえば動けなくなるので当然航続距離は短く、またパワーもそれほどではないが、その名の通り「火を使わない」というのは大きな利点だったため、炭鉱や爆薬工場などの火気厳禁の環境で重宝された。
ただし、世界で最初に作られた無火機関車は産業用ではなく、19世紀末にフランス生まれのアメリカ人で歯医者でもあった発明家エミール・ラム(Emile Lamm)が開発した無火機関車は路面電車用だった。これは火を炊かないために煤が出ない、また比較的静かに走るという点が市街地では高く評価されたためであり、産業界が無火機関車の価値に気づいたのはその後のことである。

今回リリースされたドイツ、リンケ=ホフマン社の無火機関車はナローゲージの機関車だが、あいにくといつごろ、どこで使用された機関車なのかは判然としなかった。
それではとりあえずここで無火機関車"Linke-Hofmann Bt"の姿を公式ページの完成見本写真で見てみよう。

Linke H foto1 Linke H foto3

なんかもう、冗談みたいなフォルムで笑ってしまう。
機関車でいうボイラーの部分は加圧蒸気を貯めるためのタンクなので、前面に扉がないのが特徴。なので、なんだか「のっぺらぼうの機関車」みたいな面構えになっているのが特徴。あと、当たり前のことだが煙突がない。

Linke H foto2 Linke H foto4

よく見ると、普通の機関車とは逆に車体後方にシリンダーがあるレイアウトがおもしろい。運転台は火を炊かない分、計器やバルブが少なく、あっさりとした感じのようだ。
なお、作例はリベットの追加でディティールアップされた上に塗装されている。

この機関車を作ったリンケ=ホフマン社は1834年にゴットフリート・リンケ(Gottfried Linke)が当時ドイツ領だったブレスラウに設立した会社で、貨車の製造が専門だった。1900年ごろから機関車の製造も始め、1912年にライバル企業のホフマン社と合併。現在はフランスに本拠を置く多国籍企業グループ、アルストムの一部になっている。

第一次大戦でドイツは、電力会社のAEGが双発爆撃機を作るなどの「なんでもいいからとにかく飛行機大増産」製作を押し進めたお陰で様々な爆笑飛行機が誕生したが、リンケ=ホフマンもこの魔の手からは逃れられなかった。
第一次大戦開戦当初はローランドやアルバトロスの小型機の修理を行っていたLH社だったが、唐突に4発エンジンの巨人機「R級」を製作することになる。
そんなおもしろおかしい事をしたら、腹筋が危険です! と思ったら、やっぱりとんでもない飛行機が完成した。

Linke-Hofmann_R1.png

写真はWikipediaから。
うーん、素晴らしい。この、”Linke-Hofmann R.I”は双発機のように見えるがよく見るとプロペラの後ろにエンジンがない。実はこれ、三階建ての胴体の二階(三階は操縦席、一回は爆弾倉)に4発のエンジンが入っていて、そこから左右のプロペラにシャフトでパワーを伝えている(エンジン2発で1基づつプロペラを回しているのか、4発直結して2基のプロペラを回しているのかはわからなかった)。
このトンデモレイアウトは、エンジンを機内に収納することで空気抵抗を減らすことを狙っていたが、その分胴体がでかくなるんであんまり意味なかったし、よく考えたらエンジンが全然冷却できなかった。
また、上の写真はローゼンジ迷彩を施した2機目で、1機目は胴体後半が透明の酢酸セルロース張りでスケスケになっており、「これが本当のステルス機!」と息巻いたが、紫外線で酢酸セルロースはあっという間に黄ばんでしまうわ、熱収縮で機体は歪むわ、そもそも酢酸セルロースはテカテカなんで空中でも光を反射するんで最初っから見え見えという本気を疑うアイデアも盛り込まれていた。
R.I は4機が作られたが、プロトタイプ2機はほどなくして墜落。のこる2機の運命は定かではないが見た目がオモロイ以外には特に取り柄もないので実戦ではほとんど使われなかったようだ。

さらに、この失敗で力をつけたリンケ=ホフマン社は続いて R.II を開発する。

Linke-Hofmann_RII.png

今度も写真はWikipediaから。
あれ? なんか、急に普通の飛行機になった? と思ったら、左側にボヤーっと写ってる人が異常に小さい。
なんとこいつ、このスタイルで翼幅が42メートルもある巨人機だ。わかりやすい比較対象を引っ張ってくると、ボーイングB29「スーパーフォートレス」の翼幅が43メートル。
この大きさの機体を飛ばすため、メルセデスD.IVaエンジン(260馬力)を4つつなげて直径7メートルのプロペラ(B29のプロペラ直径が5メートル)をぶん回す。どうしてもエンジンを機内に入れたかったのね。
R.IIは2機は製作されたが、戦争終結と共に破棄されたようだ。まぁ、そうだろう。
なお、リンケ=ホフマンR.IIは現在に至るまで、「単一プロペラで飛んだ最大の飛行機」というどうでもいい記録の保持者である。

えーと、なんだっけ。
ああ、そうだ、MODELIKの無火機関車だ。

Linke H ark1 Linke H ark3 Linke H rys2 Linke H rys1

無火機関車は煤が出ないので鮮やかな色に塗られていることもあるが、今回は無難な黒塗装のテクスチャ。複雑なロッドの組み方が色分けされたわかりやすい図解で解説されているのが好印象だ。

MODELIKからリリースされたドイツ無火機関車"Linke-Hofmann Bt"は陸モノ標準スケール25分の1で完成全長約15センチという可愛らしサイズ。難易度も5段階評価の「4」(難しい)と、機関車模型としては控えめ。定価35ポーランドズロチ(約1200円)。レーザー彫刻済みのデティールアップ/芯材用厚紙は20ズロチ(約700円)で同時発売となる。
なんといっても、鉄道模型でも非常にレアな無火機関車。無火機関車ファンのモデラーならこのキットをみのがすべきではないだろう。ついでに、MODELIKにはリンケ=ホフマンR.I、R.IIのキット化についても検討していただきたいものである。



キット画像はMODELIK社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/Linke-Hofmann-Busch
https://en.wikipedia.org/wiki/Linke-Hofmann_R.I
https://en.wikipedia.org/wiki/Linke-Hofmann_R.II
https://en.wikipedia.org/wiki/Fireless_locomotive
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