WAK イギリス軍巡航戦車 Covenanter IV

不二家のミルキー噛んで取れた詰め物治すついでに初期の虫歯2箇所も削ってもらった筆者がお送りするカードモデル最新情報。
今回紹介するのはポーランドWAK社からの新製品、イギリス軍巡航戦車 Covenanter IV だ。 

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いかにもイギリス軍巡航戦車らしい巡航戦車、クルセイ…………ええぇ? カ、カビナンター!?
なぜ北アフリカでドイツ軍と死闘を繰り広げたクルセイダーではなくて、その先代にして紛うことなき失敗戦車カビナンターを模型化するんだ……しかも、WAKは以前にクルセイダーベースの対空戦車、クルセイダーAAをリリースしたことがあるというのに。
見るからにサイズの合ってないヘルメットを被らされた表紙絵の車長もなんだか当惑顔だ。後ろの方にいる3人の士官も、モンティ・パイソンのコントのような雰囲気を醸し出していてたまらない。


快速・軽装甲の「巡航戦車」、鈍足重装甲の「歩兵戦車」の2本柱で戦車開発を行っていたイギリス軍が5番目に開発した巡航戦車が巡航戦車Mk.V、A13 Mk.III"Covenanter"(17世紀の清教徒革命で議会派(ピューリタン)と結託した長老派を指す言葉)である。
それ以前に制式化されていた巡航戦車Mk.III (A13 Mk.I)、Mk.IV (A13 Mk.II) は(クルセイダー以前の巡航戦車には愛称がない)はMk.IIIがなんとビックリ、最大装甲厚がわずか15ミリ、あわてて増加装甲を付け足したMk.IVでも最大装甲厚30ミリしかないペラペラペラリン装甲で、いくら巡航戦車が軽装甲と言っても限度ってもんがあるだろう、という防御力だった。
そこで陸軍では1939年、「主砲2ポンド砲、機関銃1丁以上、Mk.IIIより低い車高、最低装甲厚30ミリ(装甲板が垂直の場合)」を条件に新たな巡航戦車の設計を各社に依頼した。
これに応えたナッフィールド社では十分な装甲を備えた新型戦車A14の案を提出したが、同時に提出されたロンドン・ミッドランド・アンド・スコティッシュ鉄道の「A13改良案(A13 Mk.III)」の方が安上がりですみそうだから、ということで陸軍は後者を採用。後から思えばこれが間違いの始まりだった。
A13 Mk.IIIはA13を名乗ってはいるが、実際にはA13との共通点はクリスティーサスペンションぐらいしかなかったし、それを言ったらA14だってサスペンションはクリスティー式なのに、なんでLM&S案がA13のバリエーション、ナッフィールド案のA14は新規開発扱いになるのかは良くわからない。というか、イギリス軍の命名規則がよくわからない。
LM&Sは当然鉄道会社なので戦車の開発も生産もしたことがないが、どうやら政府の大企業を片っ端から戦争協力させようという目論見にのったようだ。

LM&S案をホイホイと採用したイギリス軍は1939年4月、どうやら戦争も始まりそうなことだし、と設計が終わらないうちからA13 Mk.IIIを100輌ドーンと発注。その後も発注はどんどん増加し、レイランド・モータース社やイングリッシュ・エレクトリック社にも生産を分担させ開戦前後までに1771輌という大量のカビナンターが納品されることとなる。
そんなわけでカビナンターは試作車両が完成した時にはもう量産が始まっている、という状態だったもんだから、完成した試作車をテストしてみた時にはみんなが驚いた。設計が間違っていたのだ。絶望的に。
LM&Sでは「車高を低くする」という条件を満たそうと、メドウス社が開発した340馬力水平対向12気筒水冷エンジンを採用したが、エンジン全体の体積を画期的に小さくできるわけはないので高さを低くすれば、その分前後左右にエンジンは大きくなる。その結果、カビナンターの車体後部に設けられた扁平なエンジンルームにはエンジンしか収まらず、冷却液を冷ますラジエターはよせばいいのに車体前面デッキ上に配置された。
一番被弾しやすい場所にラジエター置いちゃって、被弾したら冷却液が吹き出して走行できなくなるんですが、とか、そもそも変なレイアウトのせいで冷却効率が悪くてエンジンが常にオーバーヒート気味なんですが、という問題もさることながら、より致命的な問題は車体前のラジエターから車体後ろのエンジンまで、冷却液を導くパイプが車内を通っていることだった。そのため、カビナンターはエンジンが温まってくると、車内が熱くなった。そりゃもう、我慢できないほど猛烈に熱くなった。
第一次大戦でもイギリス軍は菱型戦車における熱の問題で戦車兵に多大な苦労を強いた経験があったのに、またやらかした事に気づいた時には、熱くて乗ってられない戦車が各社の工場から続々とロールアウトしていた。
戦うのがフランスだったら、まだ熱くてもなんとかなったかもしれない。しかし、1940年5月にイギリス軍はフランスから撤退。次の主戦場が北アフリカとなった時点で熱問題を抱えたカビナンターの運命は決した。
結局、北アフリカにはナッフィールド社のボツ案を検討しなおした巡航戦車Mk.VI「クルセイダー」が送られた。

1700輌も作ったカビナンターは、英国本土で訓練に使われた。数輌が北アフリカへ試験のために送られたが、戦闘に参加したかははっきりしない。しかし、残る大多数のカビナンターがそのままイギリス本土に留まったということは、試験の結果は要するにダメだったのだろう。
1943年、イギリス軍は「旧式化した」としてカビナンター戦車の解体を決定。「実際の戦闘」により失われたことが確実なカビナンターは全期間を通じ、1942年5月31日のカンタベリー空襲の際にドイツ軍機の攻撃で撃破された1輌のみである。
現在、カビナンターはボービントン博物館に1輌が現存しているが、この車両はなぜか農場に埋められていたのが1980年台に発見、発掘されたものだそうだ(それ以外には残骸状態の車体がイギリス軍の射爆場に数輌、架橋戦車に改造された2輌がオーストラリアに現存する)。

それでは、なんとも破格なダメダメっぷりで歴史に名を残した巡航戦車カビナンターの姿を公式ショップの完成見本写真で見てみよう。

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一見、クルセイダーによく似ているが、マチルダ歩兵戦車の背中にあるような細長いラジエターカバーが車体正面についているのが識別ポイント。また、カビナンターの方が装甲が薄く車重が軽いために転輪が1組少ない。
作例は全体を塗ってはいないが、少し汚しを足しているようだ。履帯は別売りのレーザー彫刻履帯だろう。

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クルセイダーと同型の砲塔はナッフィールド社が設計したものを載せている。水平対向12気筒なんてものを積んだせいでエンジンルームのレイアウトが凄いことになり、排気管やエアクリーナーがわけわかんないところに装備されているのも見逃せない。
なお、キットのマーキングはポーランド第1装甲師団第10騎乗連隊のもの。形式(サブタイプ)は最終型のカビナンターMk.IVとなるが、カビナンターはどのサブタイプも基本的に冷却系をなんとかしようと内部をゴチャゴチャいじりまわしただけなので外見からの判断は困難だ。

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組立説明書はシャープな線が美しい立体表現。テクスチャーは単色ベタではなく、メリハリのついたタイプ。リベットの立体感はなかなかのもの。

WAKからなぜか発売になった、イギリス軍訓練専用巡航戦車 Covenanter IV は陸モノ標準スケール25分の1でのリリース。難易度は5段階評価の「4」(難しい)、そして定価は50ポーランドズロチ(約1600円)となっている。また、レーザーカット済みの芯材用厚紙が38ズロチ(約1200円)、レーザー彫刻済み履帯(クルセイダーAAと共通)が44ズロチ(約1400円)での同時発売となる。
クルセイダーはキットに恵まれておらず、現在でも簡単に手に入るのはMODELIKが2005年にリリースしたクルセイダーMk.IIぐらいだろう。少し古いキットだが、現在もショップで見かけるので両者を作り比べてみるのも面白そうだ。もちろん、イギリス軍巡航戦車ファンのモデラーなら、もう二度とキット化されそうにないカビナンターを入手できるこの機会を見逃すべきではないだろう。



写真はWAK社ショップサイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/Covenanter_tank
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ジャンル : 趣味・実用

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No title

極寒の地のソ連に送ったら喜ばれたかもしれないw

Re: No title

コメントありがとうございます!
なるほど、カビナンターまとめてソビエトに送ってしまえばソ連人は「暖房付きの戦車を送ってくれたぞ!」と喜ぶ、イギリスからはいらない戦車がなくなる、と双方Win-Winに。
重装甲好きのロシア人に紙装甲の巡航戦車が受け入れられるかが懸念点ですが、あの人達はP-39エアラコブラが大のお気に入りだったり妙なところにツボがあるからなー(笑)

ガルパンのシーズン2がもしあればこいつを出してほしい。

Re: タイトルなし

火炎瓶さん、コメントありがとうございます!
いやいや、いくらなんでもこんなやつは出てこないだろう……と思いつつも、けっこう変なもんがしれっと出てくるからあのアニメは油断ならんです(笑)
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