Agny Papir アメリカ製乗用車 Mercury Coupe 1949

不二家のミルキーを久々に食べたら一発で奥歯の詰め物が取れて歯医者通いになった筆者がお送りする世界の最新カードモデル情報。ちなみにミルキーは今年で発売65週年だそうだ。メデタイ。
今回紹介するのはecardmodels.comからの新商品、Agny Papirブランドのアメリカ製乗用車 Mercury Coupe 1949 だ。

agpr_mercury_coupe_cherry_1949-cover.jpg

Agny Papirのキットを当ブログで紹介するのは2度め。ちなみに前回紹介したキットは☆6級ウルトラレア高級車、ブガッティ・ヴェイロンだ。
「マーキュリー」というのはメーカー名ではなくて、「トヨタ」に対する「レクサス」のようにブランド名であり、実際にはフォードの一部門だ。ブランド名の「マーキュリー」は水星のことでも亜美ちゃんのことでもなく、その名前の元になったローマ神話での商人や旅人の守護神、メルクリウスの英語名。メルクリウスはローマ神話ではギリシャ神話の韋駄天ヘルメスと同化しているので「快速」をイメージさせるネーミングと言えるだろう。そのマーキュリーが戦前、戦中を通して唯一供給していたモデル、「エイト」が今回のキットである。

アメリカ自動車業界を支えたBIG・3の一角であったフォードはフォード・T型の成功で売りだした大衆車ブランドであった。創業者ヘンリー・フォードはその原点に忠実で、「高級車? そんなものは大したビジネスにはならんよ」との姿勢を生涯崩さなかったが、ライバルのゼネラル・モータースは高級車の代名詞、「キャディラック」の販売でブイブイ言わせており、「フォードさんは高級車やらないんですか?」の声は無視できないものがあった。
結局、フォードはキャディラックブランドの生みの親であるヘンリー・マーティン・リーランド(Henry Martyn Leland)が独立して新たな高級車メーカーとして立ち上げたものの、肝心の車のデザインに高級感がなくって泣かず飛ばすになっていたブランド、「リンカーン」を買収して傘下に加え、自分は興味ないので息子のエドセル・フォードに「まぁ、やってみろや」とまかせることとなった。
エドセルは技術者からのし上がったお父さんとは違い、大企業の御曹司だったので社交界に顔が効き、「高級とはなにか」ということを良く理解していた。
結果、フォードの高級車部門「リンカーン」は第一次大戦後の好景気に乗って売れに売れ、キャディラックと共にゴージャスなアメリカを代表する高級車ブランドに成長する。まぁ、金持ちのことは金持ちにやらせておけ、というわけだ。

しかし、1929年の大恐慌でアメリカの景気は後退。ニューディール政策などを経て経済は10年をかけて徐々に回復していったものの大恐慌前の水準には至らず、「リンカーン」ブランドの高級車の売上はなかなか回復しなかった。
しかし、「高級車」として売ってるものをホイホイ値下げして、番組終了後30分以内にご注文いただいたらもう一台リンカーンがついてきます、ええええぇぇぇ!(会場) しかも送料はフォード持ち! わぁぁぁぁぁ!(会場)なんてことをやったら、高級車が「高級ではなくなってしまう(一応、リンカーンも「ゼファー」というちょっと安めの高級車は出した)。
かと言って、立ち直ってきたプチ富豪たちが「大衆車」のフォードに乗ってくれるわけがない。アメリカ人にとって、「車」というのはステータスであり、身分に相応なものが求められるのだ。

そんなわけで1938年、フォードは新たに大衆車「フォード」と高級車「リンカーン」の間を埋めるミドルクラスのブランドとして「マーキュリー」ブランドを立ち上げ、フラグシップとして「マーキュリー・エイト」を発表する。「エイト」の名前は、高級車に使われているV12みたいな無駄にバカデカいエンジンではなく、かといって大衆車に使われている直列6気筒みたいなショボいエンジンでもない、ちょうどいいV8エンジン搭載してますよ! ということを前面に打ち出したネーミングなのだろう(実際にはフォードブランドで販売されていたフォード・スタンダード1937年型もV8エンジンを搭載しており、エイトだけがV8だったわけではない)。
さすがにフォードが作るだけあってエイトは品質が良く、フォード・スタンダードよりも高く、リンカーン・ゼファーよりも安いという価格設定もちょっと背伸びしたいエグゼクティブ達に受け入れられ、1940年末にはカタログに「15万人のカーオーナーに車を買い換えさせた車です!」とのキャッチコピーが踊った。

それでは、アメリカのミドルクラスが愛した名車、マーキュリー・エイトの姿をecardmodels.comショップページの完成見本写真で見てみよう。

agpr_mercury_coupe_1949_11.jpg agpr_mercury_coupe_1949_10.jpg

相変わらず、ちょっと、なんというか、元気のない作例で紹介する方も困ってしまう。
個人的にはもっと腰のある光沢紙を使えばピリっとした仕上がりになるのではないかと思うのだが、どうだろう。ベテランモデラーなら、テクスチャで済まされているウィンカー等の別パーツ化やクロームメッキパーツのメタルシート化などでぐっとクオリティを上げることができるだろう。
あと、バンパーのパーツ、影の表現が一部上下を間違えてるよ。

エイトの生産は1950年台初頭まで続いたが、ユーザーの嗜好の変化に伴い2度のフルモデルチェンジを行っている。1938年から1940年まで生産された初期型は「高級な大衆車」としての性格が強かったが、1941年から1948年まで生産された中期型ではスタイリングなどが「リーズナブルな高級車」というイメージとなり、1949年以降の後期型では「高級車の一車種」という扱いになっていた(1945年にリンカーンとマーキュリーはブランドの統合を行い、「リンカーン・マーキュリー」となっていた)。

今回キット化されたのはこの後期型。それぞれ3世代のエイトはフロント周りが大きく違うので区別は容易だ。

agpr_mercury_coupe_1949_3.jpg agpr_mercury_coupe_1949_2.jpg

正面と側面。なんか気合の入った正面に較べて後ろ半分が途中で面倒になったようなラインだが、当時はこういうのがカッコ良かったのだろうが。全体の雰囲気としては、40年台終盤の車としてはかなり保守的な雰囲気だと言えるだろう。
しかし、マーキュリーのスタイルはいささか保守的に過ぎた。
1950年台となり、車文化の担い手は成功した経営者から、若者の手へと移りつつあった。若者たちはエイトのようなオッサンくさい(パトカーに使われるような)車ではなく、リンカーン・コスモポリタンキャディラック・60スペシャルのような、もっとナウでイケてる……つまり、クロームギラギラでバカでかくて無駄にテールライトの上にヒレが突き立ってるような、いわゆる「アメ車」を乗り回すことを好んだ。

1952年、エイトは大幅なモデルチェンジを機に「モンテレイ」と名前を変えた。
1950年台終盤にはマーキュリーもヤング達のゴテゴテ嗜好に沿うようにイカした車をリリースしたが、その結果、マーキュリーブランドはリンカーンブランドとの区別がなくなり、存在感がいっそう希薄になってしまう。
マーキュリーは1960年台に一時、「クーガー」のような突き抜けて飛び出してそのままどっか行ったような独自デザインで存在感を発揮したが、その後はオイルショックに伴うマッスルカー離れと日本車の流入に挟まれ次第に規模を縮小。2011年1月4日午前7時46分、「マーキュリー・グランドマーキー」最後の1輌の生産が終了し、マーキュリーブランドは消滅した。

agpr_mercury_coupe_1949_14.jpg

展開図と組立説明書。シャーシ部分はディティールがないイージーキットであることがわかる。なお、キットは18分の1と24分の1、2種類の展開図がセットとなっているそうだ。

agpr_mercury_coupe_1949_15.jpg

カラーリングは見本写真のチェリーの他にバイオレット、クリーム、そしてバイオレット/クリーム、チェリー/クリームのツートンも準備されているが、これらはそれぞれ別キットなので、特定のボディ色が欲しい場合にはキットを間違えないよう注意が必要だ。

Agny Papirの新キット、アメリカ製乗用車 Mercury Coupe 1949は18分の1と24分の1の2スケールがセット。難易度は5段階表示の「3」(普通)、販売はダウンロード販売のみで定価は8ドルとなっている。
ミドルクラスを狙ったが故に、その中途半端さでアメリカを代表する車になれなかった名車を机上に飾ることができるこの機会を、アメ車好きのモデラーなら見逃すべきではないだろう。
また、1950年台当時からエイトは「改造しても惜しくない高級車」としてカスタムを趣味とする人々には人気の車種で、多数が生産されたためにタマの多いエイトは現在でも各地のホットロッドイベントで爆音を響かせているそうだ。
腕に覚えのあるモデラーなら、ダウンロードでのデータ販売という形式を利用してド派手なファイヤーパターンを描き入れたホットロッド仕様で仕上げるのも楽しそうだ。



*画像は全て ecardmodels.com からの引用。
スポンサーサイト

テーマ : 模型・プラモデル・フィギュア製作日記
ジャンル : 趣味・実用

コメントの投稿

非公開コメント

展開図公開中
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
プロフィール

のとっちょ

Author:のとっちょ
カードモデル初心者が苦闘するさまをご覧あれ。

検索フォーム
リンク(順不同、敬称略)
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード