Orlik アメリカ製ヘリコプター Kaman "K-MAX"

先日、なくしたと思った文庫本が洋服掛けの下から見つかったかと思ったら、今度は通勤中に紛失したと思っていたキーホルダーが自宅の本棚に置いてあるのを発見し、何らかの超常的パワーが作用していることを確信したりしなかったりしている筆者がお送りする東欧最新カードモデル情報、本日紹介するのはポーランドOrlik社からの新製品、アメリカ製ヘリコプター Kaman "K-MAX"だ。

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なんだか異様な面構えと大胆な名称が特撮系超兵器みたいだが、もちろん実在する航空機だ。
このカッコいいんだかカッコ悪いんだか良くわからないオモシロヘリを開発したのはアメリカのカマン・エアロスペース社。名前の字面がちょっと似てるためにソビエト/ロシアの「カモフ(Камов)」と混同されがちだが、もちろん全く関係ない。
カマン社を設立したのは1919年生まれのチャールズ・カマン。1940年にアメリカ・カソリック大学工学科を主席に次ぐ成績で卒業したカマンは戦時中、西側ヘリコプター開発史のキーパーソン、イゴール・シコルスキーの元で働き、1945年に自身の特許と資本金2千ドルで「カマン・エアロスペース」を設立した。
その後、成長を続けたカマン社はカマン・コーポレーションというグループを形成するが、カマングループで航空機産業に継いで有名なのが、エレクトリック・アコースティックギターを製作しているオベーション・ギター・カンパニー。これは業績に物を言わせて関係ない企業を買収したわけではなく、ギターもプロミュージシャン級の腕前だったというチャールズ・カマンが設立した会社。航空機製作の技術をギター製作にも活かしているそうだ。
なお、日本では「カマン」のカナ表記が一般的だが、、実際の発音は「ケイマン」に近いらしい。

それでは、今回は公式ページの完成見本写真が豊富だったので、完成見本写真を見ながら機体説明に移ろう。

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表紙の絵では分かりにくかったが、K-MAXのローターは一見4翅1基のように見えて実は2翅x2基での「フレットナー・システム」と呼ばれるもの。フレットナー・システムのヘリコプターは当コーナーでも以前に「Fl 282 ”KOLIBRI” 」のキットを紹介したことがあるが、これは考案者のアントン・フレットナーにちなむ。「ペーパークリップ作戦」でアメリカに迎えられたフレットナー博士は、資料によって一時期カマン社でデザイナーを務めていたとも、カマンが博士のシステムを購入したとも読めるが、どっちが正しいのかわからないのでここでも曖昧に書いておこう。

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もう少し低い視点から。横に飛び出して踏ん張ってる車輪とか、尾部から唐突に飛び出す取ってつけたような安定版が空気抵抗的にどうなのよ、と思うが、どうせ最高時速200キロに満たないヘリなのでここらへんをきれいにまとめたところで大した性能向上にはならない。
キャンディの包み紙のようななんだか不思議な塗装はドイツに本拠を置くHELOG社の塗装だが、機体そのものはスイスにあるヘリスイス社のもの(尾翼にスイス国旗が描かれている)で、HELOGが運用を任されているらしい。

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真上から見ると独特な機体形状が良く分かる。一見、被弾率を下げるために極限まで絞った対戦車ヘリを連想させる形状だが、こちらはパイロットの視界をできるだけ広くする(機体による死角をできるだけ減らす)ためのデザインだ。
「K-MAX」というのは愛称で、社内名称は「K-1200」。貨物吊り上げ輸送用に設計された機体で、吊り上げ能力は約2.7トン。K-MAXは機体のみの重量が2.3トンしかないので、自分の重量よりも重い荷物を吊り上げることが可能ということになる。これはかなり突出した性能で、ほぼ同形式のエンジンを積んでいるUH-1B”イロコイス”の倍の吊り上げ能力である。また、フレットナーシステムは通常形式のヘリコプターに較べてホバリング中の安定性に優れている。この特色ゆえに、K-MAXは「空中トラック」と呼ばれることもあるそうだ。

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操縦席をクローズアップ。機内は抑えた部品点数ながらもなかなか凝った作り。
大きさの掴みにくい機体だが、コクピットを見るとヘリとしてはかなり小柄であることがよくわかる。開いている窓は閉めても下方視界が得られるようにカマボコ型に突出していることに注意。作例はこの独特の形状をバキュームフォームで形作っているようだ。

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ローター基部、排気ノズル、着陸脚などの細部はともすれば細かくなりすぎだが、当キットでは省略の効いた構成となっており、製作意欲を掻き立てる。ちなみにエンジンはライカミング T53ターボシャフトエンジン1基だ。

K-MAXは貨物吊り上げには優れた性能を発揮したが、逆の言い方をすればその用途にしか使えないために生産数は38機(1991年~2003年)と少数に終わった。日本には3機が販売され、現在はアカギヘリコプター社が3機とも保有している。同社のギャラリーページではK-MAXの実機写真を多数見ることができる。なお、アカギヘリコプターのK-MAXの塗装は鳥をイメージしたと思われる派手な機体2機と暗い赤1色に白線が入った地味な機体1機の2種類があるが、鳥の方はアカギヘリコプターの前身、日本ロイヤルヘリコプター時代に購入した機体(ロイヤルヘリコプター時代は安定版に日の丸が入っていた)で、赤い方はカリフォルニアのヘリ会社が所有していた機体の中古のようだ。
変わったところでは、アメリカでは浅間山荘で有名な破壊用鉄球(モンケーン)を吊るして背が高い煙突の解体に使用されたこともある。

一旦は生産の終わったK-MAXだが、アメリカ海兵隊がアフガニスタンで2機のK-MAXをテスト運用したことで再評価される。この時のK-MAXは遠隔操縦される無人機に改造されており、戦闘地域への物資輸送に使用された(1機が予期せぬ突風により失われている)。
米軍では各種任務に使用する無人機の選定を進めており、K-MAXは近日中に生産ラインが再開される目算となっている。その場合には、森林火災等で消火剤を投下する無人消防ヘリや危険地域から負傷者を運び出す無人救急ヘリとしても運用される予定だ。

用途が用途だけに滅多に目にする機会はないが、ユニークな性能で存在感を発揮するアメリカ製ヘリコプター Kaman "K-MAX"。Orlikのキットは空モノ標準スケール33分の1で機体全長約48センチ。難易度表示はないが見た感じでは5段階評価の「3」(普通)~「4」(難しい)といったところだろうか。そして定価は30ポーランドズロチ(約1000円)となっている。
当キットは貨物ヘリコプターファンのモデラーにとって、間違いなく見逃すことの出来ない一品と言えるだろう。また、GPMのFl 282コリブリも併せて購入し、フレットナー・システムの今昔を作り比べるのも面白そうだ。



画像はそれ以外はOrlik公式ページからの引用。


*Orlik印刷版の定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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