Orel フランス Boyard要塞

先日熱々おでんを急いで食べようとして唇を火傷、半泣きになった筆者がお送りする東欧最新カードモデル情報、本日もまたまたウクライナOrel社からの新製品を紹介したい。
本日紹介するキットはフランス、Boyard要塞だ。

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ああ、ボワヤール要塞ですか。ははぁ、なるほど。有名ですもんね。おや? ご存知ない? 世界的に有名なんですがね。
……すんません、自分もこのキットで知りました。

この要塞があるのはフランス西岸、ビスケー湾に面した港町ロシュフォールの沖合。
ロシュフォールはもともとは小さな漁村だったが、17世紀、時のフランス国王ルイ14世の「ぶっちゃけ、フランス海軍って弱すぎるからもっと増強すべし」という大号令で開始された海軍大増強計画のために軍港として大々的に整備された。
しかし、いざ軍港が整備されてみると、「ここに宿敵イギリス海軍が攻めてきたらどうしよう!」と心配になって沖合の島いくつかに要塞を築いたが、当時の火砲は射程が短く、砲火が重ならない隙間をすりぬけて敵がやってくる可能性を潰しきれない。
そこで「島がないなら作れば良い」とルイ14世はロシュフォール沖合のボワヤール砂州を埋め立てて要塞を建造することを指示したが、さすがの「太陽王」でもほいほいと地形を変えることはできなかった。
ルイ14世の軍事顧問にして、近代要塞の父であるセバスティアン・ド・ヴォーバンは現地調査を行い、「国王陛下、あそこに要塞を築くのに比べれば、陛下が月に噛みつく方がまだ容易でしょう(ルイ14世は怪しい医術にかかって全ての歯を抜歯していた)」と、やたらと文学的に計画を却下した。
そんなわけでボワヤール要塞建造計画は一度は破棄されたが、その後1世紀半に渡って「要塞を作ろう!」「無理です」のやり取りが繰り返される。

時は流れて19世紀。今度はナポレオン・ボナパルトが「どう考えてもイギリスが攻めてきたらヤバいので、絶対にボワヤール要塞を完成すべし」と大号令をかけた。技術の進歩により要塞建築は月に噛みつくよりは幾分簡単になっていたが、それでも砂州に建造物を建築するというのは難易度が高く、1809年には「やっぱ無理そうです」と一旦建造中止。まぁ、イギリスはもうオワコンだからフランスに攻めてくることもないでしょう、と思っていたらフランス艦隊はネルソン提督にボコられて壊滅。ナポレオンもワーテルローの戦いに負けてフランスを去った。
やっぱり要塞は必要だよ! と、もう何度目かわからない大号令で1837年、要塞建造が再開され、1857年、ついにフランス海軍200年の悲願、建築術の奇跡、ボワヤール要塞は完成した。ビバ!

しかし、完成した時にはすでにライフル砲が登場、火砲の射程及び命中制度は劇的に向上しており、すでに周辺の島の砲台の火砲で十分にロシュフォールの入り口を射界におさめることが可能だった。ぎゃふん。もっとも、日本も台場砲台で同じことをやっちまったので、これを笑うことはできないだろう。誰もこの時期になって唐突に火砲の射程が10倍に伸びるなんて思ってなかったのだからしょうがない。
完成と同時に無用化したボワヤール要塞は1871年から20世紀初頭まで軍刑務所として使用されたがその後、遺棄。
1961年、ボワヤール要塞の廃墟は「もういらないからあげる」と地方議会に売却された。

では、ここで遅すぎた海上要塞、ボワヤール要塞の姿を公式ページの完成見本写真で見てみよう。

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手前側がカットモデルになっており、全方位に臼砲とカノン砲が睨みを利かせている構造が良くわかる。このカット部分の蓋がキットに含まれるのか、それともこれで完成形なのかはキット説明からはちょっと読み取れなかった。分厚い壁は中に石が充填してあるのにも注目だ。

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砲列は縦3段で超強そう。確かに相手が木造帆船ならさぞ強かっただろうが、残念ながら完成してすぐに海戦の主力は甲鉄艦へと移ってしまった。要塞唯一の塔は「監視塔」とも呼ばれているが、実際は灯台だったのかもしれない。表紙の監視塔はディティールが少々異なるが、砲を出す開口部も窓になっているようなので、表紙絵は軍刑務所時代か、あるいは後述の番組のための改装後の姿だと思われる。

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要塞は250人の兵士が常駐できるように設計されていた。フランス国旗はいくらなんでもオーバースケールだと思うが、まぁ強そうだからいいか。

さて、この完成したけど使われなかった要塞がなぜ世界的に有名なのかと言うと、実はフランスで大人気の視聴者参加型ゲームショー番組、その名もズバリ「Fort Boyard」の舞台がこのボワヤール要塞なのだ。
Fort Boyardは5人のチームが「お宝」獲得のため、様々なミニゲームに挑戦するという番組。一つ一つは「容易に回転する不安定な円柱を伝って鍵を取ってくる」とか「雲梯を伝って鍵を取ってくる」とか「なぜかレスラー風覆面を被った女グラディエイターと棒でド突き合ったり泥レスしたりする」という体力が要求されるものが多いが、中には「ゲテモノ料理を平らげる」とか「ネズミが一杯の箱の中に手を突っ込む」みたいなのも混じってるから油断できない。
各ミニゲームは要塞の小部屋に設置されているが、部屋の扉が開いているのは2分程度。この間にゲームをクリアできる、できないにかかわらずに部屋から出ないと閉じ込められてしまう。閉じ込められたメンバーを助けるためには鍵が必要なので、見捨てるか、助けるかの判断も重要だ。
トータルで一定時間が経過したら前半戦は終了。後半戦にいくためには所定の数の鍵が必要だが、足りない場合はメンバーを鍵と交換する(犠牲になったメンバーは後半戦に参加できなくなる)というえげつないルール。
後半戦も基本的には前半戦と同様、ミニゲームへの挑戦を行うが、今度は手に入るのは鍵ではなく、最後の宝の部屋の扉を開けるためのパスワードの一部。
宝の部屋は本物の虎がうろついていて普段は入れないが、所定の時間になると一定時間だけ虎が檻に戻される。この間を狙ってパスワードを入力、これが合っていればついに金貨ザクザクの宝の部屋に入れるのだが、宝の部屋の扉は一定時間しか開いていないので、この間にチームの生き残ったメンバーは金貨をできるだけ部屋の外へ運び出さなければならない。ここで、最終的に生き残った人数がモノを言う、というわけだ。
ちなみに、最終的に獲得した賞金は全額がチャリティーに募金され、チームにはいわば副賞の旅行の権利だけが渡されるそうで、この辺はちょっと日本人の感覚ではピンとこない(過去には賞金もチームに渡されていた時期もあった)。
1990年に始まったこの番組は25年を迎える現在も放映中、さらに世界31カ国に輸出され、そのほとんどの国がわざわざ司会者と挑戦者が現地ボワヤール要塞を訪れ、各国のローカルバージョンを作成している。
興味を持った方は「Fort Boyard」で検索をかければYouTubeなどで番組を見ることができるが、前述のようにゲテモノ料理や不快害虫が出てくるシーンがあるのであくまで御視聴は自己責任で。
(ゲームのルールは時期、製作国によって差異がある)

なお、ボワヤール要塞は1967年公開のフランス映画「冒険者たち」(主演:アラン・ドロン)でラストの対決シーンの舞台としても使われている。最後は要塞の空撮シーンに被せてエンドクレジットが流れるが、テレビ番組用に修復される前の、廃墟だった時代のボワヤール要塞の姿が見られて興味深い。テレビ番組「Fort Boyard」のプロデューサーも、このラストシーンから番組の着想を得たそうだ。


要塞としてはなんともパッとしなかったが、その後映画とテレビを通じて「世界のお茶の間で最も有名な要塞島」となったBoyard要塞。Orelからリリースされたキットは150分の1で長径約45センチ。難易度は3段階評価の「2」、定価はポーランドGPMのショップで70ズロチ(約2300円)となっている。
城や灯台のキットは多いが、海上要塞のキットというのは珍しいので、海上要塞ファンのモデラーはこの機会を逃さず当キットを手に入れるべきだろう。また、「Fort Boyard」に挑戦しよう、という体力派のモデラーなら、当キットを組み立てることで事前知識を手に入れておくのも良さそうだ。


画像はOrel社サイト公式フォーラムからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。




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