MODELIK ポーランド製蒸気機関車 HCP 1-6-2 "Bulgar"

通勤中に少しづつ読んでいた本が忽然と消え失せ、どうやらどこかで落としたらしいと分かってションボリしている筆者がお送りする東欧最新カードモデル事情。常磐線界隈でロビン ハサウェイ著「フェニモア先生、宝に出くわす」を拾った方いたら教えてください。映画「カポーティ」のしおりが挟まってます。
そんな前フリと全く関係なく今回紹介するのはポーランドMODELIK社の新製品、HCP 1-6-2 "Bulgar"だ。

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蒸気ドームが5個も並んでいたり、動輪がぞろぞろと6個もあったり、なかなか不思議な感じのスタイリングの機関車だ。
ポーランドの機関車の命名規則といえば、貨物牽引が「T」、旅客牽引が「O」、急行牽引が「P」と決まっているのに、なんか変な名前だな、と思ったら、「HCP」はこの機関車を製作した「H. Cegielski – Poznań」社の略称、「1-6-2」はもちろん車輪配置、そして「Bulgar」というのはブルガリアのこと。なぜ「ブルガリア」なのかと言うと、この機関車はブルガリア国鉄(Български държавни железници、略称「БДЖ」)の発注で建造された機関車でポーランド国鉄には1輌も納入されていないからだ。
ブルガリア最初の鉄道は1865年、ルセ~ヴァルナ間223キロに敷かれたもので、敷設したのはイギリスの会社だった。なんでイギリスの会社がブルガリアに鉄道を敷くのかと言えば、どうやら黒海まで続く鉄道を敷くためにブルガリアを通過しただけだったようだ。そのため、地図で見るとルセ~ヴァルナ間というのはブルガリアの東の方をニョロニョロっと東へ進んで黒海に至る線で、ブルガリア西部にある首都ソフィアとは全然関係ない場所である。イギリスとしては、トルコが支配するボスポラス海峡を通らずに黒海に至る経路が欲しかったんだろうか。

ブルガリアの鉄道網は19世紀末から20世紀初頭にかけて政府によって買い上げられ、ブルガリア国鉄が設立される。ブルガリア国鉄設立年は「位置(1)、ややこ(885)しいブルガリア国鉄、1885年設立」と暗記しておくといいだろう。
国鉄を設立したのはいいのだが、ぶっちゃけブルガリアはあんまり工業力が高い国ではなく、機関車は国産化できずに他国からの輸入に頼っていた(現在でもルーマニア、ロシア、チェコなどの旧共産圏の機関車を使用しているようだ)。
ブルガリア国鉄の機関車購入先は、ドイツのシュワルツコフ、マッフェイ、ハノマーグ、ヘンシェルやチェコのスコダなどが多く、ポーランドからはあまり多くを購入していないが、ポーランドのHCP 1-6-2は建造された12輌全てがブルガリア国鉄に引き渡され、「46.01」から「46.12」の番号で運用された。

それでは、MODELIK主幹、Janusz Oleś氏曰く「史上最も美しい機関車」HCP 1-6-2 の姿を完成見本写真で見てみよう。

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ドーンと大迫力のアングル。動輪が6組もあるので巨大な貨物用機関車に見えるが、実は日本の機関車D51が炭水車も含めて約20メートルあるのに対し、全長18メートル程度のやや小柄な機関車だ。用途も、いかつい見た目とは裏腹に貨物用ではなく旅客用で、もともと起伏の激しい山岳地帯用旅客機関車であった。小柄でパワフルな1-6-2は、ブルガリア国鉄職員の間では「баба Меца」(熊おばちゃん)の愛称で呼ばれていたらしい。
前照灯がオデコよりも低い位置にあるのもなかなか斬新だ。
なお、キットの番号プレートは「4.507」となっており、先ほどの説明の「46.01~46.12」という車両番号と異なるが、これは1936年より前の車両番号で、HCP 1-6-2は「4.501」から「4.512」だった。HCP 1-6-2が納入されたのが1931年なので、この番号プレートは約5年しかつけていなかったことになる。

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運転席周りをクローズアップ。タンク部と一体化した運転席がおもしろいが、壁が屈曲してちょっとだけ天井部分を絞っていたり、小技も光る(山岳路線用機関車だから、径の細いトンネルに対応するためか)。あと、天井にはどうみても吊り下げフックらしいものがついているが、これはどういう時に使うんだろう。
タンクの後ろのなんだか妙なところにもヘッドライトがついているが、これはタンクを前に、逆進する時用のヘッドライト。1-6-2が走るようなローカルな路線では終点にターンテーブルが設置されていないことも多く、その場合は帰りは逆に走ることになる。その際にタンク部が前方視界を妨げないよう、後方窓の部分がすぼめてあるのもおもしろい。
そもそも1-6-2がタンク式なのも、逆進する時に炭水車を前に置いて走るのが嫌だったのでタンク式が選ばれたらしい。
ブルガリアはまだインターネットの普及率がいまいちなようで、ブルガリア関係の資料はネット上にあまりないのだが、1-6-2はどうやら1975年ごろまでは現役だったようだ。

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テクスチャと組立説明書のサンプル。テクスチャは汚しのないスッキリタイプ。東欧独特の緑と赤の塗り分けが美しい。組み立て説明書は、平行投影のせいでなんだか長く見てると奥行き感が狂ってクラクラしてくるので気をつけよう。

MODELIKの新製品、ポーランド製蒸気機関車 HCP 1-6-2 "Bulgar"は陸モノ標準スケール25分の1で完成全長約72センチ。難易度は5段階評価の「4」(難しい)。そして定価は150ポーランドズロチ(約5千円)となっている。やや高めの印象もあるが、ブルガリア国鉄ファンのモデラーなら、是非押さえておきたいアイテムだ。
オプションとしては100ズロチ(約3300円)でレーザーカット済みの芯材用厚紙が同時発売となる。これには番号プレート、滑り止めなどがレーザー彫刻されたパーツも含まれるので、「塗り派」のモデラーなら購入を検討したい。
塗り、で組み立てる際に表面ディティールをぐっと引き立てるリベット・ボルトの頭だが、今回はMODELIK公式サイトに必要数が記載されている。
それによると、当キットを組み立てるのに必要なリベット・ボルトの頭の数は
リベット
・1.5ミリ 56個
・1ミリ 272個
・0.8ミリ 3589個
・0.5ミリ 186個
ボルト
・2ミリ 36個
・1.5ミリ 991個
・1ミリ 87個
・0.8ミリ 20個
とのことである。なんだか書いてるだけで目が回りそうになってきた。




キット画像はMODELIK社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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