WEKTOR アメリカ軍ヘリコプター H-13C ' Sioux '

今週は夏季休暇の関係で月曜更新。休暇が取れたのをいいことに微妙な姿勢で長時間ネコを構っていたら、夜になってぎっくり腰で動けなくなった筆者のお送りする東欧最新カードモデル情報、本日紹介するのはポーランドのブランド、WEKTORからリリースされたアメリカ軍ヘリコプター H-13C ' Sioux 'だ。

Sioux 01

野戦病院から飛び立つH-13Cヘリコプター。よく見ると左下の道標に「Seoul」とあるので朝鮮戦争の情景だ。
H-13Cはベルエアクラフトが開発したヘリコプター、ベル・モデル47の陸軍型。愛称は' Sioux '。シオックス? シーオゥフ? いやいや、そうじゃなくて Sioux のカナ表記は「スー」、インディアン(ネイティブ・アメリカン)のスー族のことだ。米軍は「アパッチ」「イロコイス」「シャイアン」とヘリコプターにはインディアンの部族名をつけるのが習わしだ。一応、つけたしておくと、AH-1の「コブラ」は部族ではない。

「ベル」といえば電話の発明者として有名なアルクサンダー・グラハム・ベルが思い浮かぶが、実際、グラハム・ベルは飛行機にも興味を示しており、P-40戦闘機を開発したカーチス社創始者のグレン・カーチスも所属していた「航空実験協会(Aerial Experiment Association)」を設立して飛行機の実験を繰り返していたが、あまり実績を出せないままに1909年に協会は解散しており、ベルエアクラフトとは全く関係ない。
ベルエアクラフトを設立したのはローレンス・デイル・ベル(Lawrence Dale Bell)、通称「ラリー・ベル」。どうやらグラハム・ベルと血縁関係はないようだ。

ベル社は1935年に設立されたが、「従来の飛行機の枠を超えるぞ!」という強い意志があったようで、最初に設計したYFM-1「エアラクーダ」は双発推進式で、両翼のエンジンナセルには前方に37ミリ機関砲が装備されそれぞれに砲手が乗り込むという、素晴らしくカッコいいトンチキ飛行機で、本来B-17重爆撃機の護衛用に開発されたのに最高速度がB-17より遅いまさかの時速430キロとか、推進式に装備されたエンジンがきちんと冷えないので地上を移動できないとか、カッコいい以外にほめるところがないので不採用となった。

お次に設計した「エアラコブラ」はエアラクーダが鈍重で全く機動できなかったのを反省したのか、機体の真ん中にエンジンを置いて、延長軸で機種のプロペラを回す、ついでに延長軸の中に37ミリ機関砲も入れてみました! という、もうエンジン変なところにおいたり、飛行機に37ミリ砲積んだりするアイデアからは離れようよ、という感じの飛行機だったが、装備した排気タービンのお陰で高高度性能がそれなりに良かったのでP-39として採用になった。しかし、実戦では枢軸軍が排気タービンを持ってないんで高高度で戦う機会はなく、せっかくエンジンを中央に載せたのに機動性はやっぱりサッパリで、特に太平洋では機動性に優れる日本軍相手に大苦戦した(なぜかレンドリースで受け取ったソ連軍では大活躍し、生産数のほぼ半数がソビエトに渡った)。
さらにジェットエンジン実用化のめどがたつと、今度はP-59「エアラコメート」を開発するも、これまた最高速度がレシプロ戦闘機よりも遅い時速660キロしか出なくて生産は66機で終わった。6がたくさん並んだな。

世界初の音速突破機「ベルX-1」なんていう歴史に名を残す素晴らしい開発もあるにはあったものの、なんか妙な設計で凡打が続くベルエアクラフトは、1940年ごろからは「まだ他の会社が手を出していないジャンルに打って出れば、まだまだチャンスはある!」とヘリコプターに主軸を移していく。
たいてい、こういう大逆転狙いの大博打は失敗に終わってサヨウナラ、となるもんだが、ベルはこの方針転換が大当たり。
初めて設計したモデル30を改良したモデル47はその扱いやすさから世界中に輸出され、イタリア、イギリス、日本などでライセンス生産もされ、「ヘリコプターのベル」の名前を不動のものとしたのである。

それではベルの大逆転の一発となったモデル47の陸軍型、H-13「スー」の姿を公式ページの完成見本で見てみよう。

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なんというか、できが良いとか悪いとか、そういうこと以前に「カードモデルとはなんなのか」という、哲学的な問題を投げかけてくるような完成品だ。どっからどこまでが紙なんだ、これ。
機体両サイドの赤十字が描かれた風防の後ろの縁側みたいなものは担架というか、搬送用ベッド。なにしろ機体が小さいので患者を載せるスペースがキャビン内に取れないので、患者はここに縛り付けられて運ばれる。
それにしても、ほとんど赤十字で隠されているこの風防、わざわざ透明である必要性はあったのか。

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上からと側面から。
操縦席の後ろ、ローターの真下にあるのはライカミングO-435水平対向6気筒エンジン。排気量7リットル260馬力だ。そして、ローターの後ろにある湯たんぽは燃料タンク。なにもかもむき出しだが、頑張っても最高時速160キロ程度なのでこれを覆ったところで性能には大差ない。
テイルブームなんて、テイルローターを支えるためのただのヤグラだ。この辺の思い切りの良さが、H-13を地味な傑作機としているのだろう。

H-13といえば、忘れられないのが映画、そしてテレビシリーズで大人気を博した「M*A*S*H」での大活躍だ。
M*A*S*Hは、人気アイドルグループが、地図に「マッシュ村」を載せようと、慣れない農業生活に大苦戦する番組だ。
と、いうのはもちろん大嘘だ。
本当は、朝鮮戦争下での陸軍移動外科病院(Mobile Army Surgical Hospital)を舞台にしたコメディタッチの戦争ヒューマンドラマで、最前線から患者を輸送する「空飛ぶ救急車」として毎度毎度H-13が大奮戦する。
映画、テレビシリーズとも1970年台の製作だが、撮影のために朝鮮戦争当時のH-13Dが使用されていたそうだ(ただし、テレビシーズ後半では一部、朝鮮戦争後に採用されたH-13Gも登場している)。

WEKTORからの新製品、アメリカ軍ヘリコプター H-13C ' Sioux 'は空モノ標準スケール33分の1でのリリース。難易度表示はないが、各種マルチマテリアルを扱わなければならないためになかなか手応えがありそうだ。定価は25ポーランドズロチ(約800円)。
特徴的なバブルキャノピーは自分でヒートプレスするにしても、フチがすぼまっているのでうまく絞らなければならない上に、うまく出来たところでヘタしたら型が取り出せなくなりそうだ。ここはGPMから15ズロチ(約500円)で発売となるオプションパーツのキャノピー(メインキャノピーと担架用風防2個がセット)を利用した方がいいだろう。
また、WEKTORからはテイルブームのトラスなどがレーザーカットされた厚紙セットが同じく15ズロチで同時発売となる。

世界最強米軍ヘリ部隊の始祖にして、ベルエアクラフト社の救世主であるH-13は、初期ヘリコプターファンのモデラーにとっては間違いなく見逃せないキットの一つと言えるだろう。
もちろん、M*A*S*Hを映画館で見たベテランモデラーなら、このキットを組み立てながらドナルド・サザーランド(「24」のジャック・バウアー、キーファー・サザーランドのお父さん)の下品なギャグの数々を思い出してニマニマするのもいいだろう。



画像はWEKTOR公式サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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