GPM ドイツ軍自走砲 8.8cm Flak 18 auf Zugkraftwagen 12t

いよいよ盛夏! スマホ手に持ってゲームやってると、なんかメチャクチャ熱くなって火傷しそうなんですが、あれ大丈夫なんですかね? そんな筆者の心配はさておき、本日も東欧の最新カードモデル情報を紹介しよう。
今回紹介するのはポーランドの老舗、GPM社からの新製品、ドイツ軍自走砲 8.8cm Flak 18 auf Zugkraftwagen 12t だ。

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キットの名前は 「SELBSTFAHRLAFETTE Sd.Kfz 8 z Flak 18」となっているが、あまり他では見ない表記法だ。ドイツ軍内での呼称はどうやら「8.8cm FlaK18(Sfl) auf Zugkraftwagen 12t」だったらしい。
たいていのモデラーには、あぁ、そういえばこんな車両あったなぁ……と言った感じだが、一部、具体的にはメガドライブ版のアドバンスド大戦略にハマった層にとっては中盤までの貴重な自走対空砲としてお馴染みの車両だ。
しかし、実はこの車両、見た目に反して自走対空砲ではない。

1933年、NSDAP(ナチス)は政権を取ると、来たるべき大戦に備えて各自動車メーカーに火砲牽引車の基本デザインを通達した。
この通達にしたがい、
SdKfz 4(オペル 牽引重量4.5トン)、
SdKfz 6(ビューシング 牽引重量5トン)、
SdKfz 7(クラウス・マッファイ 牽引重量8トン)、
SdKfz 8(ダイムラー・ベンツ 牽引重量12トン)、
SdKfz 9(ファモ 牽引重量18トン)、
SdKfz 10(デマーク 牽引重量1トン)、
SdKfz 11(ハンザ・ロイド&ゴリアテ牽引重量 3トン)
の各ハーフトラックが開発、生産された。
って、多いよ! 特に3トン、4.5トン、5トンなんて細かい区分で生産する必要あったのか? それより、軽(3トン)・中(12トン)・重(18トン)ぐらいに車種を絞って、他の会社にはライセンス生産させた方が整備も楽で良かったんじゃないだろうか。
実際、戦争中盤からは何種類か生産停止してるんだし。
しかもこいつら、基本設計が同じで大きさだけ違うから写真でパッと見ても車種が区別つかん。

SdKfz 8を製作したダイムラー・ベンツでは設計内示前の1930年代初頭から、すでにハーフトラックの研究を進めており1931年にはZD.5ハーフトラックという試作車両も製作していたが、これは第一次大戦中のハーフトラック「Marienwagen II」の発展形で、SdKfz 8とはほとんど関係ない。
なので、最初っから設計をやりなおして1938年に社内名称DB.8がやっと完成(社内での試作通し番号なので、SdKfz 「8」との一致は偶然)、これはマイバッハ水冷12気筒8.5リットルエンジン185馬力エンジンを搭載し、牽引重量は12トンだった。ただし、この「12トン」という数字は「牽引時重量12トン前後の21センチ臼砲、15センチカノン砲、10.5センチ高射砲あたりを牽引できますよ」ぐらいの意味で、それより1~2トン程度なら余分に牽引することができたようだ。
1939年10月にはさらに各部を洗練したDB.10が完成し、それ以降SdKfz 8の生産はDB.10をベースとしたものに切り替わるが、改善点は機構的な箇所なので外見からDB8ベースとDB10ベースを見分けるのは難しい。
なお、ダイムラー・ベンツではSdKfz 8のガソリンエンジンをディーゼルエンジンに換装したDB.9「14トン牽引車」を陸軍に逆提案しているが、これは陸軍局から「ディーゼルはダメ」と断られたそうだ。
SdKfz 8は戦争の全期間を通じて約4000輌が生産され、全ての戦域で使用されている。

ベース車両の説明がざっと終わったところで、ここからは公式ページの完成見本写真をはさみながら紹介を続けよう。

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うーん、大迫力。
なんだが砲身が微妙に垂れ下がってるとか、千鳥転輪が一列にならずにヒヨヒヨしてるとか、向かって左側の前輪になんかホコリがついてるとか、そういう細かいことがどうでも良くなるような迫力だ。

SdKfz 8、12トン牽引車に88ミリ対空砲を搭載し、キャビン周りを装甲化したのが当車両、 8.8cm Flak 18 auf Zugkraftwagen 12t である。
普通なら「SdKfz 8/1」みたいなサブタイプ番号が割り振られそうなもんだが、あくまで試作車両なのでそういうのはないらしい。
この車両のそもそもの開発目的は資料により異なり、「フランス軍の重戦車撃破のための対戦車車両」とも、「チェコ国境地帯の要塞を潰すバンカーバスター」とも云われているが、どちらにしても対空用としての運用は考えられていない。
まぁ、考えてみれば、88ミリ砲では突っ込んでくる攻撃機を撃墜するには射撃速度が遅すぎて、どちらかといえば拠点を水平爆撃から守るための火砲なわけで、それを自走化して装甲部隊と一緒にワッショイワッショイとくっついて回ってもしょうがない(もちろん、最前線の飛行場は敵の爆撃から守らなきゃいけないが、それは空軍対空砲部隊の管轄だ)。

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床面のすべり止めパターンは、たぶんレーザー彫刻のオプションパーツを使用している。
車体の尻に牽引ポストが残されているのは弾薬カーゴを引っ張るためか。
一見、88ミリ砲をそのままSdKfz 8に搭載しただけに見えるが、よく見ると防盾は運転席の装甲板と干渉しないように新しく設計されたものが取り付けられている。
なお、英語版Wikipediaでは「防盾が干渉するので側面にはそれぞれ151度づつしか旋回させられない」と書いてあるが、出典が記されていない。このキットを見る限りでは全周旋回可能に見えるがどうだろう。ただ、サイドに砲員作業用のプラットフォームがないので、側面向けて砲を撃ったら再装填のために正面向け直さないと、そそっかしい砲員が落っこちそうだ。
ちなみに英語版Wikipediaでは同様に仰角も15度までしか取れないと書いてあるが、これも出典不明。だが、それが正しいとすれば確かに対空砲としては使えない。

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細部にクローズアップ。砲尾の、細かすぎず、それでいながら雰囲気十分なディティールに注目。
砲の左側に謎の箱が追加されているが、これは即応弾を入れておく砲弾ケース。わざわざ、こんな所に砲弾が置いてあるということは、動かないトーチカではなくて動き回る戦車との戦闘を念頭に開発されているのだろうか。
運転席の突出部が最小に抑えられているのは、敵との直接戦闘で被弾を避けるためと、前方向への射界をできるだけ広く取るためだろう。
この車両とよく似た車両にSdKfz 9、18トン牽引車に88ミリ砲を積んだ車両があるが、そちらは運転席の突出部がキャビン全幅に渡る大きなものとなっているので見分けるのは容易だ。
ちなみにSdKfz 9自走砲はその運転席のせいで、直接戦闘用にキャビンは装甲されているのに前方は運転席に邪魔されて射撃ができないので、何がしたいんだか良く分からない(SdKfz 9の方は大仰角をかけている写真があるので、もともと自走対空砲として開発された、とする資料もあるが、それならなんでキャビンを装甲化したんだ)。

SdKfz 8自走砲は10輌が製作され、第8対戦車大隊第1中隊としてポーランド戦、フランス戦に参加。フランス戦ではフランス軍のシャールB1戦車を仕留めたとも云われている。しかし、あまり有効な車両ではなかったようで量産化はされていない。
1941年に中隊はバルバロッサ作戦に参加、モスクワ戦後の1942年1月に第601対戦車中隊に名称変更され、4月に第559対戦車大隊第3中隊となった(この辺の情報は資料によって異なる)。
1943年3月の報告に「残存3輌は損失済み」という記述があるので、スターリングラード戦後の後退戦中に全車が失われたようだ。

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こちらは驚きのオプションパーツ。芯材用厚紙、滑り止めなどのディティール彫刻に加え、切り出しの難しい小パーツもサポートされているようだ。さすが「老舗」GPMの面目躍如といったところか。このオプションパーツはちょっと他のカードモデルメーカーには真似できそうにない。

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オプションの履帯パーツをクローズアップ。
華奢な感じのドイツ軍ハーフトラックの履帯が完全に再現されており、これはかなり好印象と言っていいだろう。

GPMの新製品、強そうだけど役に立たなそうな ドイツ軍自走砲 8.8cm Flak 18 auf Zugkraftwagen 12t は25分の1の陸戦スケールで全長約29センチというなかなか迫力のあるサイズ。難易度は3段階評価の「3」(難しい)、定価は基本キットのみが100ポーランドズロチ(約3300円)、オプションのレーザー彫刻履帯が50ズロチ(約1600円)、履帯以外の素晴らしいクオリティのレーザー処理パーツセットは単独での別売りはなくて、基本キットと履帯を含めた「コンプリートキット」230ズロチ(約7600円)同梱のみでの発売となるので、フトコロ具合と相談して購入内容を検討したい。

ドイツ軍の牽引ハーフトラックというのは実はあまりカードモデルキットに恵まれていなくて、今でも簡単に手に入るのはHalinskiのSdKfz 7とその自走対空機関砲バリエーション、Answer/AngrafのSdKfz 9ぐらいしかない。GPMからも以前にSdKfz 7が出ていたが、これは黄色表紙時代の手書き設計なので今風に仕上げるのにはかなりの技術が必要だろう。
そういった意味からも、当キットはドイツ軍牽引ハーフトラックファンのモデラーにとっては見逃せない一品と言えるだろう。
手に入るようなら、HalinskiのSdKfz 7、GPMのSdKfz 8、Answer/AngrafのSdKfz 9と作り比べてみるのもおもしろそうだ。



画像はGPM社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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