ポーランドの人間魚雷

今回の記事はタイトルで大方想像できる通り、オモシロおかしい事は何一つ書いてないです。
おまけにカードモデルも全く関係ないです。

1939年5月5日、ヒトラーは第一次大戦でドイツが失ったダンチヒ自由都市とポーランド回廊地帯はドイツの領土であると宣言、これによりもはやポーランド・ドイツ間での戦争は避けがたくなった。
この演説の翌日5月6日、クラクフの日刊紙「Ilustrowany Kurier Codzienny」にある公開状が掲載される。
公開状はWładysław Bożyczkoによって書かれ、その親類(義理の兄弟か?)、Edward と Leon の Lutostański兄弟との連名で発表されていた。
彼らはその中で「潜水艦から発射される”人間魚雷”(Żywe torpedy、直訳すれば「生きている魚雷」)、あるいは飛行機から投下される”人間爆弾”、戦車に対抗する”人間対戦車地雷”としてただちに命を祖国に捧げたい」と提案している。
(記事のタイトルは「人間魚雷の志願者(Kandydaci na „Żywe torpedy”)」となっており、なぜか人間爆弾と人間地雷は大きく取り上げられていない)。
3人は手紙の最後に「どうか、私達が捨て鉢になっているとは思わないでください。私は公務員、(Lutostański)兄弟は市の職員で収入には困っておらず、健康体です」と書いている。
Edward Lutostańskiegoは戦争を生き延びたようで、戦後になってこの人間魚雷について「(破壊筒を持って敵陣もろとも自爆した)日本軍の”肉弾三勇士”に影響を受けた」と語ったという。

この公開状のことは直ちに他の新聞、ラジオで報じられ、全ポーランドに大きな反応を引き起こした。
5月27日には早くも Ilustrowany Kurier Codzienny は「志願者からの手紙が絶え間なく届き、全ての名前を紙面に掲載することは不可能である」と書いている。
また、同時に志願者の多くは「名誉を欲しているわけではないので、匿名にして欲しい」と書いていたという。
1939年9月までに150人の女性を含む4700人が彼らに続いて「人間魚雷」に志願した。そのうち3000名にはポーランド海軍から公式にIDが発行されたらしい。
ポーランド軍がどの程度、真剣にこの志願を受け止めていたのかはわからないが、1939年夏には一応海軍に「人間魚雷局」が作られ、志願者の中から選抜された83名が人間魚雷についての映画を見せられ2ヶ月の訓練を受けた後に1939年10月から実戦配置につくことになっていたという。魚雷は16基が準備され、それぞれ長さ8メートル、重さは420キロと説明されたが、誰も実物は見なかったそうだ(選抜された83人のうちの1人、ポズナン出身のMarian Kamińskiの証言)。
また、志願者の一部はグライダー操縦と落下傘降下の訓練を受けていたらしいが、これがなんらかの自殺攻撃を目的としたものなのか、それとも敵の後方撹乱を目的としたものなのかは資料からでは分からない。

志願者達の手紙の一部は Ilustrowany Kurier Codzienny紙に掲載され、その声を今に伝えている。
A.B嬢、ザコパネ在住
「私は1919年から1921年にかけて(ソビエト・ポーランド戦争で)、5ヶ月間を最前線で戦いました。私は最年少の在郷軍人の一人として、命を捧げるつもりです」
引退者、リヴィウ在住
「60歳になる私はカービン銃を担いで長距離を行軍することはできない。しかし、魚雷の運転を覚えることはまだできる。そして、それによって若い命を一つ、救うことができる」
Z.B婦人、ブジェスコ在住
「私の長男はすでに海軍に志願しており、次男もじき陸軍へ行く予定であることを強調させていただきます。私は直ちに私の名前を志願者のリストに加えていただくことを求めるものです」
Maksymilian K、ルヴォフ在住
「私はユダヤ人である。私は祖国を愛している。だから、私は志願する」

果たしてポーランド軍は実際に人間魚雷部隊を創設するつもりがあったのか、それとも国民の士気を高めるため、あるいはドイツ軍を威嚇するための「はったり」に過ぎなかったのか、ポーランドの歴史家の間でも意見は分かれているらしい。
仮に、本気であったとしても、日本軍の人間魚雷「回天」の試作が命じられたのが44年2月、試作機が完成したのが7月、そして実戦配備が11月であったのを考えるととてもドイツ軍の侵攻に間に合うとは思えない。おそらく、実行するにしてもイタリア軍やイギリス軍が使用したような、破壊工作のための水中スクーターレベルにとどまったのではないだろうか。

1939年9月1日のドイツ軍侵攻によってポーランド軍人間魚雷部隊は幻に終わった。
ネット上では「Żywe torpedy」で画像検索をかけることでポーランド軍人間魚雷の想像図と思われる画像がいくつか表示される(画像の出所はよくわからない)。
そのアイデアを、「バカバカしい」「滑稽」「無駄としか思えない」と言ってしまうことはたやすいし、それを否定するつもりはない。
しかし、そのバカバカしく、滑稽で、無駄としか思えないアイデアにすがってまでも祖国ポーランドを守ろうとした人々がいた、という事実は決して安易に論評されるべき事ではないだろう。










スポンサーサイト

テーマ : 模型・プラモデル・フィギュア製作日記
ジャンル : 趣味・実用

コメントの投稿

非公開コメント

展開図公開中
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
プロフィール

のとっちょ

Author:のとっちょ
カードモデル初心者が苦闘するさまをご覧あれ。

検索フォーム
リンク(順不同、敬称略)
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード