MODELIK アメリカ製蒸気機関車 JUPITER

いよいよ関東は梅雨明け、猛暑が続く毎日がやってきた。こんな暑い時は汗で紙はヘニャるし、扇風機でパーツは飛んでくしで、工作なんかしてしてられないというモデラーは情報収集に時間をついやしてみてはどうだろう。なんかこの手の書き出しって毎年書いてる気もするが、暑いのでよく考えられないからそれは置いておいて、今回紹介するのはポーランドMODELIK社の新製品、アメリカ製蒸気機関車 ”JUPITER”だ。

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以前とは雰囲気がガラリと変わったMODELIKの「黒表紙」シリーズだが、まだ鉄道車両しかリリースされていない。
MODELIKがこのまま鉄道をメインとしていくのか、それともまた戦車や軍用機も出していくのかはまだわからない。
今回リリースされた蒸気機関車「ジュピター」は、巨大な「ダイヤモンドスタック」がのっかった煙突、車体前部の大げさな「カウキャッチャー」でわかるとおり、19世紀中盤のアメリカ西部で走っていた機関車である。
「ジュピター」という名前とこのスタイルでピンと来た読者もいるだろう、そう、映画「ローンレンジャー」に出てきたジュピター号のモデルとなったのが、このジュピターだ。キモサベ。
「ローンレンジャー」の一つのクライマックスは東西からの鉄道がつながる「大陸横断鉄道」の開通式典だが、史実でもジュピターは西海岸から延伸したセントラルパシフィック鉄道の代表として、大陸横断鉄道開通式典に参加している(写真左側がジュピター、右側は東から延伸してきたユニオン・パシフィック鉄道の「119号」)。

時は19世紀中頃、「セオドア・ジュッダ(Theodore Judah)」という鉄道技師がいた。
複雑な西部の地形を次々に難工事で克服し、実績を重ねていたジュッダは大きな夢を抱いていた。
「アメリカの西海岸と東海岸を鉄道でつなぎたい」
ジュッダはこのアイデアをほうぼうに売り込んでいたがあまりにスケールの大きい話に誰も取り合わず、ついには「クレイジー・ジュッダ」と呼ばれるほどだった。
しかし、南部諸州が1861年、「私達、アメリカを卒業します!」とぶちあげて南北戦争が始まると事情が代わる。
このまま行き来するだけでも大変な西部諸州を放っておいたら、やつら新ユニットを結成して連邦を離脱してしまいかねない。USA48(アメリカフォーティーエイト)存続のピンチ!
そこで、ジュッダの大陸横断鉄道計画がにわかに現実味を帯びてきた。
1862年7月1日、リンカーン大統領は「太平洋鉄道法」に調印、これにより各州政府の権限を超えた超長大鉄道の建設が可能となった。
大陸横断鉄道建設のために東にユニオン・パシフィック鉄道、西にセントラル・パシフィック鉄道が設立され、それぞれが工事にとりかかる。

ついにドリームがカムトゥルーしたジュッダはセントラル・パシフィックで大陸横断鉄道建設にとりかかったが、すぐに物事がおかしな方向に進んでいることに気がついた。
実はセントラル・パシフィック鉄道は、ジュッダの熱心な働きかけにより太平洋鉄道法成立前にすでに設立されていたのだが、商機を感じたのかセントラル・パシフィックはリーランド・スタンフォード(Leland Stanford)、コリス・ハンチントン(Collis Huntington)、チャールズ・クロッカー(Charles Crocker)、マーク・ホプキンズ(Mark Hopkins)という4人の大実業家からの出資でなりたっていた。出資者なので、当然4人は会社の経営陣にもなっている。
この4人(後にその功罪の大きさから「Big・4」というアメコミ風の通称で呼ばれることになる)の目的は、金儲けであった。
もちろん、企業活動なのだから利潤を追求するのは当然である。だが、彼らのやり方は度を越していた。
ユニオンとセントラル、両者が結合した場所までが当然、それぞれの会社が大陸横断鉄道に占める持ち分となる。それなら、セントラルとしてはできるだけ東までレールを伸ばし、莫大な利益の望まれる大陸横断鉄道の分け前を多く取りたい。
線路は常軌を逸した速度で東へ伸びていったが、そのスピードは人件費を安くおさえるために大勢雇われた中国人労働者の犠牲の上に成り立っていた。
さらに肝心の線路も、きちんと築堤を固めない、その辺の木を切り倒して乾燥させないまま枕木にする、という杜撰なもので実際、開通後10年もしないうちにほとんどの箇所で線路の引き直しが必要であったという。
その上、Big・4は政府からの補助金を余分に受け取るために存在しない山を書類上で切り崩し、平地よりも高額な建設補助金をくすねていた。
ジュッダはこれに我慢ならなかったようだが、一鉄道技師が経営陣を動かせるはずもなく、ついにはジュッダはセントラル・パシフィック鉄道から追い出されてしまった。大陸横断鉄道は、今や夢ではなく、ビジネスになっていたのだ。

競争相手のユニオンも事情は似たようなものだった。両者はすさまじい勢いでレールを伸ばし、その切っ先が近づいてくると今度はならず者を雇い互いに相手の工事を邪魔することまで始めた。
見かねた連邦議会により大陸横断鉄道の連結地点はユタの(当時は準州)プロモントリーと決められる。
1869年5月10日、東から来た119号機関車と西から来たジュピター号の間で月桂樹の枕木に黄金の犬釘でレールが固定され、大陸横断鉄道は開通した。
前掲の写真のように式典には多くの人々が参列したが、そこにジュッダの姿はなかった。
大陸横断鉄道の完成を夢見たセオドア・ジュッダは1863年、黄熱病ですでにこの世を去っていた。

大陸横断鉄道の完成によりアメリカ東海岸から西海岸へのムーブメントが作られ、西海岸の都市は次々に近代化された。
30年後の1898年、米西戦争が勃発。
この戦争に勝利したことでアメリカはフィリピンを領有し、その勢力範囲はついに太平洋西岸へと達することとなる。

それでは、アメリカの重要な歴史の瞬間を目撃したジュピター号の姿を公式ページの完成見本で見てみよう。

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おっと、「完成見本」と書いたが、厳密にはこのキットの完成見本写真ではない。
当キットは2009年に25分の1で一回リリースされており、今回は45分の1にスケールダウンしてのリリース。写真は25分の1での完成見本となる。
MODELIKは最近、このスタイルで機関車の旧キットをスケールダウンした45機関車シリーズを展開している。

車両番号は「60号」、同型の機関車は61号「ストーム」、62号「ホワールウィンド」、63号「リバイアサン」。ニューヨークで製造され、西海岸まで船で輸送されたそうだ。
1870年台にはセントラルパシフィックは機関車から固有の名前を廃止し、ジュピターはただの「60号」になった。
その後、数社の手を経て度重なる回収を受けたジュピターは重要な機関車であることに気付かれずに1909年、ひっそりとスクラップになった。

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なんだかオモチャみたいなカラーリングだが、実車もこのカラーリングだったようだ。
ちなみにジュピター号は実は式典に出る予定ではなく、「アンテロープ号」が式典に参加する予定だったのだが、ジュピターが先、アンテロープが後でシュッポシュッポと式典会場に向かって走っていたら、ジュピターが通過したのを安全になったと勘違いした建設作業員が線路上に丸太を置いてしまいアンテロープが損傷、やむを得ずジュピターが歴史に残ることとなったそうだ。

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煙突の巨大なジョウゴみたいなものは火の粉を集めるダイヤモンドスタック。ジュピターなど西部の機関車は石炭ではなく、薪を燃やして走るために火の粉が飛び散りやすく、周辺を火事にしないためにはこれが必要だった。

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展開図はこの通り、鮮やかな色合いで見ているだけでも楽しい。

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こちらは組み立て説明書のサンプル。ところで25分の1から45分の1にスケールダウンした当キット、スケールに応じた修正はされているのだろうか。そのままだとしたら、細かいパーツの組み立てはそうとう注意が必要となりそうだ。

MODELIKのアメリカ製蒸気機関車 JUPITER はMODELIKの新鉄道スケール45分の1でのリリース。このスケールだと完成全長は約35センチとお手軽だ。難易度は5段階評価の「5」(とても難しい)、そして定価は45ポーランドズロチ(約1500円)となっている。
当キットはウェスタンスタイルの機関車が好きなモデラーには見逃せない一品と言えるだろう。

なお、本物のジュピターはスクラップになってしまったが、東西レール連結の場にある「ゴールデン・スパイク国立史跡」には非常に精巧なレプリカが119号のレプリカと共に展示されているので興味あるモデラーはユタに行く際にはぜひ立ち寄りたい。

「ローンレンジャー」の例を再び出すまでもなく、大陸横断鉄道の連結はアメリカ史の大きな節目として様々なメディアで繰り返し取り上げられた。
その中の一つ、1881年にトーマス・ヒル(Thomas Hill)によって描かれた「The Last Spike」では式典時にすでに死去していたセオドア・ジュッダが群集の中に描かれている(画像右下、インディオ風の赤い服の人物の左後ろ、式典と関係なくじっとこちらを見ている人物)。
一説には、ジュッダはBig・4の一人、リーランド・スタンフォードの指示で描き込まれたという。


画像はMODELIK社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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