FANTOM MODEL イギリス軍装甲巡洋艦 HMS Good Hope

いよいよ関東は梅雨本番。カードモデラーには鬱陶しい季節となったが、そんな天気に負けることなく、今日もカラ元気満点で新製品を紹介していきたい。
本日紹介するのは久々の登場、ポーランドのFANTOM MODELからの新製品、イギリス軍装甲巡洋艦 HMS Good Hope だ。

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なにやら先行きの不安を暗示するようなドンヨリとした空模様の表紙。左端に見切れている先行艦は僚艦「モンマス」か。
FANTOM MODELのキットって、ずいぶん久々に紹介するな、と思って確認したら、前回紹介したのは2010年10月の重巡「鈴谷」以来だった。1~2作リリースして、そのまま消えていってしまう小ブランドも少なくはない中、数年の間を明けて新製品がリリースされるのも驚きだが、当コーナーみたいないい加減なブログがそんなに続いていることも驚きだ。
なお、本キットは去年の夏には完成がアナウンスされていたようで、実際のリリースは紹介記事ほどの間はあいていないのかもしれない。紹介が遅れたのは、あまりに新作が出ないから撤退したのかと思ってチェックをやめてしまっていたからだ。ごめん。

HMS Good Hope はドレイク級装甲巡洋艦の2番艦で、竣工は1902年。日本海大海戦に参加した日本海軍の装甲巡洋艦とほぼ同時期の建造である。艦名の「Good Hope」というのは単なる「いいことあるかも」という意味ではなく、アフリカ南端の「喜望峰」にちなんだ名前だ。建造中、当艦は「アフリカ」の名前が与えられていたのだが、さすがに単艦に大陸の名前をつけてしまうと収拾つかなくなると思ったのか途中で「グッドホープ」に変更されている。
なお、ドレイク級の同型艦は全4隻で、それぞれ
・HMS ドレイク キャプテン・ドレイクにちなむ。
・HMS グッドホープ 喜望峰にちなむ。
・HMS キングアルフレッド 9世紀のイギリス王、アフフレッド大王にちなむ。
・HMS リヴァイアサン 伝説の海獣リヴァイアサンにちなむ。
とまぁ、てんでバラバラの名前が与えられている。共通点は「海に関係ある」という程度だ(アルフレッド大王は英国海軍を創設し、「海軍の父」ともいわれる)。連想ゲームか。
グッドホープは1913年に一旦予備役に回されていたが、1914年、第一次大戦勃発で現役に復帰。開戦時、東洋に点々と植民地を領有していたドイツ帝国が太平洋に散らばっていた艦艇を南米経由でドイツ本国へ帰還させることを計画していることが判明したため、グッドホープ率いる艦隊にこれを阻止する任務が与えられた。

とはいえ、与えられた戦力は貧弱だった。旗艦グッドホープは先述の通り、一旦退役したような旧式艦。僚艦となる装甲巡洋艦「モンマス」もグッドホープより1年ほど新しいにすぎない。もう一隻、南アフリカにいた軽巡洋艦「グラスゴー」が呼び寄せられており、この艦は1909年就航の新型艦だったが、所詮は軽巡洋艦なので排水量も1万4千トンのグッドホープ、1万トンのモンマスに比べてわずか5千トンに過ぎない。
あと、前ド級戦艦「カノープス」が派遣されていたが、こいつは1899年就航の旧式戦艦で、ぶっちゃけ間に合うとは思えなかった。
対するドイツ東洋艦隊の主力は装甲巡洋艦「シャルンホルスト」「グナイゼナウ」の2隻。この2隻はグッドホープより数年新しい設計で、さらにドイツ艦隊には小型の防護巡洋艦「ライプチヒ」「ドレスデン」「ニュルンベルグ」が随伴する。
ドイツ艦隊は第一次大戦直前に急いで艦隊を整備したのが幸いし、艦齢の若い艦が揃っていた。

1914年10月29日、南米チリ沖でイギリス艦隊は軽巡ライプチヒが発信した無電をキャッチ。イギリス艦隊は着々と距離を詰め、11月1日にドイツ艦隊を補足する。この時点で両者の戦力は
イギリス:装甲巡洋艦x2、軽巡x1
ドイツ:装甲巡洋艦x2、軽巡x3
で、旧式戦艦カノープスは、やっぱり間に合わなかった。
なお、イギリスの装甲巡洋艦のうち1隻は他の3隻にくらべてかなり小さい。また、イギリス側には仮装巡洋艦「オトラント」が随伴しているが、こいつはまじめに殴りあうような艦種ではない。

16時にドイツ艦隊もイギリス艦隊を発見、「コロネル沖海戦」が始まった。
イギリス艦隊を率いるクリストファー・クラドック(Christopher Cradock)提督は艦隊を西に置き、傾いていく太陽を背にすることでドイツ艦隊の射手の目をくらまそうとしたが、ドイツ艦隊を率いるマクシミリアン・フォン・シュペー(Maximilian von Spee)提督はこの企みを察知し、優速を活かしてイギリス艦隊との交戦距離ギリギリを保つ。
18時50分に日が沈むと、今度はドイツ艦隊のシルエットが背後のチリの海岸線に溶け込んでしまい、イギリス軍の砲撃精度が落ちた。
シュペーはこの機を逃さず艦隊に右舷回頭を命じる。イギリス艦隊がやや後ろから追跡する形の同航戦は反航戦となり、急速に両者の距離は詰まった。
火力に劣るイギリス艦隊はこのチキンレースを受けて立ったが、ドイツ艦隊の2隻の装甲巡洋艦からの滅多打ちを浴びたグッドホープは19時50分、前部主砲塔弾薬庫に直撃弾を受け爆沈。クラドック提督を含む919名の船員全員が戦死した。この中にはカナダ海軍の士官候補生4名が含まれ、彼らはカナダ海軍史最初の戦死者となった。
さらにモンマスもグナイゼナウからの斉射を浴び炎上。戦場外へ退避したが、遅れていたドイツ軍巡洋艦ニュルンベルグに補足され撃沈された。
この戦いで英軍は一方的に装甲巡洋艦2隻を失うと手痛い打撃を受けた。イギリス艦隊の敗北は実に1812年戦争における「シャンプレーン湖の戦い」以来、100年ぶりのことであった。

この戦いについて、「数、火力に劣るイギリス艦隊はドイツ艦隊との接触を保ったまま追跡するだけで良かったのではないか」という批判がある。しかし、「見敵必戦」をモットーとする英海軍にそれを求めるのは無意味だろう。
そして、この交戦は英軍にとって無駄な蛮勇ではなかった。
コロネル沖で戦闘速度を強要されたドイツ艦隊は燃料が不足、さらに砲弾も半分を消費してしまい、それらを補給することは全く不可能だった。
結局、ドイツ東洋艦隊は12月8日、フォークランド沖で巡洋戦艦2隻を含む優勢なイギリス艦隊に包囲され壊滅する。

コロネル沖海戦に先立ち、フォークランドから出撃する際にクラドック提督は遺書を残している。
そこには、「(ドイツ艦隊の逃走を許した)ゲーベン追撃戦の二の舞いを演じるつもりはない」と記されていたという。

それでは、英海軍の闘志を身を持って証明したグッドホープの勇姿を公式ページの完成見本写真で見てみよう。

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高速を感じさせるスラリとしたフォルムだが、艦体中央部が膨らんでいることで力強さも感じさせるスタイルだ。主砲は23.4センチ砲で、ドイツ軍のシャルンホルスト級主砲の21センチ砲よりは強力だったが、シャルンホルスト級が1隻あたり8門(連装砲塔2基+ケースメート式4門で片舷に指向できるのは6門)だったのに対してグッドホープは単装砲塔2基で、イギリス艦隊は火力で大きく劣っていた(モンマスの主砲15.2センチしかなかった)。

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クローズアップ三連写。旧式艦なので対空装備はないが、その分艦載艇が山積みだ。
このキットは、装甲巡洋艦キットの決定版といっても過言ではないだろう。空中線、手すりなどの細かいディティールにもじっくりと取り組みたい。

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テクスチャは汚しのないスッキリしたタイプだが、窓などの一部ディティールは立体表現となっている。また、甲板はノッペリした感じにならないよう、全体的に調子がつけられているようだ。GPMの艦船キットのように板一枚づつで調子を変えたモザイク表現とは異なるが、これは好みの問題もあるだろう。

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組み立て説明書はシャープな線で描かれたライン方式。これは、単なるキットとしてではなく、資料としても楽しめそうだ。

FANTOM MODELの新製品、イギリス軍装甲巡洋艦 HMS Good Hope は艦船標準スケール200分の1で完成全長約80センチ。なお、前回の「鈴谷」同様に300分の1モデルも同時発売となる。難易度の表記はないが、これは5段階評価の「5」(とても難しい)をつけておいて間違いないだろう。定価はGPMのショップで200分の1が70ポーランドズロチ(約2300円)、300分の1が40ズロチ(約1300円)となっている。

「宿敵」シャルンホルスト級装甲巡洋艦は、以前にJSCからキットが出ていたのだが、かなり古いキットなので現在入手は困難か。スケールも残念ながら250分の1で200分の1でも300分の1でもそのままでは並べられない。
いっそ、第二次大戦時のドイツ軍ポケット戦艦「アドミラル・グラーフ・シュペー」ならGPMのショップで200分の1が入手可能(これもかなり古いキットのリペイント版)なので、こちらと並べることで「時代は繰り返す」、という事を実感してみるのもおもしろいだろう。

ちなみにFANTOM MODELの次回キットはクイーン・エリザベス級戦艦「マレーヤ」がアナウンスされている。
また、5年後ぐらいに素晴らしいキットがリリースされることに期待したい。



写真はFANTOM MODELサイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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