Wagner Models 日本軍水上偵察機 愛知 E16A1 ”瑞雲”

ついこの間、雪が溶けて川となって流れていくかと思ったら、いつのまにやら夏夏夏夏ココナツ、愛愛愛愛アイランド艦橋という、ボンクラを通り越して自分でも何書いてるんだか良くわからない筆者のお送りするカードモデル最新情報。本日紹介するのは嬉し恥ずかし相互リンクしていただいているポーランドのデザイナー Krzysztof Wagner氏のブランド、Wagner Modelsの最新キット 日本軍水上偵察機 愛知 E16A1 ”瑞雲”だ。

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Krzysztof Wagner氏はこれまではブランドらしいブランドは名乗らず(表紙には「Paper Models Design」と書かれていた)にキットをリリースしていたが、先日、「Wagner Models」という自身の名前を冠したブランドを立ち上げた。当キットは新ブランドの2作目になる。ちなみに新ブランド1作目はいきなりコンテナ運搬船「M.V. Andes」なんていう紹介しようにも何を書いていいんだかわからないアイテムだったので当コーナーでは気づかないフリをさせていただいた。

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今回は素晴らしい完成見本写真が豊富にあるので画像を混ぜながら話を進めよう。

1940年、日本海軍の偉い人がひらめいた。
「水上機で戦闘機、爆撃機を揃えれば、飛行場がなくても離島で作戦可能ではないだろうか」
水上機は抵抗が大きいフロートを抱えなければならないので性能はどうしても陸上機よりは劣るが、離島なら敵だって水上機か飛行艇ぐらいしか飛んでこないから「すごい水上機」を作れば敵水上機を圧倒できる。ついでに偵察能力も持たせて、大型艦艇に積む水上偵察機が戦闘や爆撃もできるようにすれば、艦隊の能力がドンドン高まっちゃう! ビバ、水上機!
ひらめくのは勝手だが、そんな思いつきに付き合わされる飛行機メーカーはたまらない。
九九艦爆を作っていた愛知航空機には「最大時速460キロ以上、爆装250キロ以上、格闘性能に優れ、急降下爆撃が可能である水上偵察機を試作せよ」という無理難題が押し付けられた。これは言い換えると、「水上機で九六式艦戦よりも速くて、九九艦爆と同じ爆装ができて、もちろん空中戦も強くて、ついでに急降下爆撃もできる飛行機つくって」ということだ。もちろん、「偵察機」なので観測員載せて無線通信もできなきゃいけない。できるか、んなもん。
なお、同時期に水上戦闘機の試作を命じられた川西航空機に示された仕様は「水上機で零戦よりも速い(最高時速570キロ以上)戦闘機作って」というトンデモないものだったので、それよりは幾分マシかもしれない。

そんな、どう考えても無理なものを気合と根性でなんとかしてしまうのが帝国日本航空界の長所であり、欠点でもあるわけで、愛知航空機では2年もかけて、ああでもない、こうでもないと試行錯誤を繰り返し、1942年3月にやっと試作1号機が完成した。
試験飛行の結果は、速度がわずかに要求値に満たないものの、大筋において満足いく性能であり、なぜか8ヶ月もかけて11月に採用内定、さらに9ヶ月かけた実用試験を経て1943年8月に「瑞雲」として採用された。

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低いアングルから。高性能を感じさせるスラリとしたスタイリング。主脚に変な穴が開いているのは、あの部分のパネルがパカッと開いてダイブブレーキになるというすごいギミックが隠されているため。すごーい。すごいけど、フロート抱えてる上にダイブブレーキまで必要だったのだろうか。
しかも、ダイブブレーキを開くと途端に猛烈な振動が発生し、最悪空中分解の恐れさえあったという。まぁ、無理な仕様を満たすためにかなり無理してたんだな。
試作機完成から制式採用までに異様に時間がかかっていることについて、なにをしていたのかはっきりと書かれている資料は見つからなかったが、おそらく実戦配備に向けて細かい手直しがいろいろと必要だったのだろう。

そんなこんなで部隊運用できる機数が揃ったころにはもはや1944年の春になっていた。このころにはもう、「艦隊戦で水上偵察機が爆撃して~」とか、「離島防衛のために来寇する敵艦を水上偵察機が爆撃して~」みたいな話は完全に現実味を失っていた。だって、米軍は空母にF6Fヘルキャットを満載して押し寄せてくるんだもん。

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側面から。このままだとエンジンの重さがない分、お尻が下がっちゃうのでフロートの先にオモリを入れるか、展示台を作ったほうがいいかもしれない。もちろん、「これは離水するところだ」という気持ちで眺める、という解決法もありだ。

1944年5月、せっかく作ったのでほそぼそと夜間爆撃を行っていた瑞雲に集合がかかった。
彗星艦上爆撃機と瑞雲で第634航空隊を編制し、決戦に参加するというのだ。搭載艦は、後部砲塔を外して航空戦艦となった伊勢、日向。
あれ? 航空戦艦だったら飛行甲板あるんだから、フロート付きの瑞雲は運用できないんじゃ? と思ったら、航空戦艦のあの後部甲板は離発着できるような長さはもちろんなく、あくまでも航空機が発艦する準備をするための場所で、実際の発艦はカタパルトで行うそうだ(彗星艦爆は着水・回収ができないので適当な空母か陸上基地に帰還することになっていた)。そりゃそうだ、あのレイアウトで艦首に向かって発艦したら自分の艦橋にぶち当たるわ。
第634航空隊は伊勢・日向で発艦訓練を繰り返したが、フィリピン方面で航空機が不足したためにそちらへ移動。結局、航空戦艦が航空機を搭載して出撃することはなかった。
瑞雲はその後も、フィリピン、沖縄で敵の目をかいくぐり終戦までほそぼそと出撃を繰り返した。総生産数は約220機。現存する機はない。

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細部のディティールにクローズアップ。
そうそう、説明するのを忘れていたが、このキット、このディティールでなんと驚きの50分の1スケールだ。
機内は少しあっさり目に見えるが、このスケールなら十分だろう。
カウル下面の塗り分けがちゃんと輪切りパーツの間でつながっているのにも注目。

戦闘、爆撃、偵察をこなし、しかも水上機という夢のスーパー万能機になる予定が、案の定、大して活躍できなかったWagner Modelsの 日本軍水上偵察機 愛知 E16A1 ”瑞雲”はスケールは50分の1。難易度は5段階評価の「4」(難しい)。そして定価はecardmodels.com4ドルと、超お値打ち価格となっている。
技術に自信がないようなら、デジタル販売の利点を生かし、33分の1にリスケールして組み立ててもいいだろう。なにを隠そう、実は筆者は日本語資料を集めるのを手伝わせてもらったお礼に、作者直々にこのキットの展開図をいただいた(Dziękuję Krzysztof!)のだが、自分のスキルじゃおぼつかないので拡大して作らせてもらおうかと企んでいたりする。
なお、Krzysztof Wagner氏にはこの間、「川西の水上偵察機”紫雲”の資料ってある?」って聞かれたので、まだまだ氏のマイナー日本機への挑戦は続きそうだ。



*画像は全て ecardmodels.com からの引用。
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