Murph's Models アメリカ軍試作重爆撃機 Witteman-Lewis XNBL-1 "Barling Bomber"

まだ5月末だというのにまるで真夏のような陽気となった日本列島。そんな前置きと関係なしに紹介したいものを紹介する当コーナー、本日紹介するのは、なんだか狙ったように筆者の琴線に触れる怪飛行機を積極的にリリースし続けているアメリカはアリゾナ州のブランド、Murph's Modelsからの新製品、アメリカ軍試作重爆撃機 Witteman-Lewis XNBL-1 "Barling Bomber"だ。

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問題:「エンジン6発、尾翼4枚、主翼3枚、これなーんだ?」
答え:「XNBL-1」

さぁさぁさぁ、またもや怪しい飛行機の登場だ。
なんか、世界征服を企む悪の組織が作ったようなフォルムの飛行機だが、これこそがアメリカ軍初の戦略爆撃になりたいな、なれるかな、なりたいけれど足りないな、パワーも航続距離も足りないな、という、まぁ簡単に言えばアメリカ軍初の戦略級駄作機なのである。

1918年に第一次大戦が休戦となり、ヨーロッパ各国の航空隊が大量に作りすぎちゃった航空機をどうしようかと途方に暮れているころ、アメリカ陸軍航空隊はフランス機を借りて戦っていたおかげで不良在庫を抱えることもなく、気軽に次世代の航空戦に思いを馳せることができた。
当時、アメリカ陸軍航空隊を統括していたのは第一次大戦の航空隊指揮でリーダーシップを発揮し、その手腕を認められていたウィリアム(ビリー)・ミッチェルだったが、ミッチェルは超過激な超航空万能主義者であった。
彼は1920年台、すでに「戦艦なんて無用! 全部飛行機で沈める」とぶちあげていたが、当時はまだ艦船を撃沈するに十分な能力をもつ航空機がなく、保守的な海軍関係者には「飛行機が戦艦を撃沈するだって? はっはっは、冗談はよしこちゃん」と相手にされていなかった。
そこでミッチェルは実際に艦船を撃沈可能な大型爆弾を搭載可能な巨人爆撃機の試作を計画する。
この設計を依頼されたのが、ウォルター・バーリング(Walter・H・Barling)という人物。バーリングは1919年に、すでにイギリスで2トンの爆弾を積んで2000キロを飛行可能な超重爆(予定)を設計していたが、「タラント・テイバー(Tarrant Tabor)」と名付けられた機体は6基のエンジンを2基+4基の2階建てに装備していたので、試作機は上段2基のエンジンの回転を上げた途端に2階が1階よりも先に前に出ようとして前転して大破した。
(タラント・テイバーについて、詳しくは”蛇乃目伍長の「エアフォースの英国面に来い!」 Mk.2”内のこちらの記事をどうぞ。英国兵器の黒歴史が赤裸々に暴露されているオススメブログです)

当時アメリカにはすでにロシア帝国で巨人機「イリヤ・ムロメッツ」を設計していたイゴール・シコルスキーもいたのに、なんでそんな人に設計を頼むのか、そもそもバーリングはどうしてアメリカにいるのか、やっぱりタラント・テイバーがコケた後でトンズラしたのか、色々と気になるところだが、とにかくバーリングは「こういう飛行機を作るといいですよ」とサラサラっと設計をしてくれた。
陸軍技術部門ではこの設計を検討の結果、この飛行機は5千ポンド(約2トン強)の爆弾を積んで高度1万フィート(約3千メートル)を時速100マイル(約160キロ)で飛行可能な性能を有すると判断、37万5千ドルの予算で2機試作の競争入札を行った。
この入札で発注を勝ち取った(何社が参加したのかは資料に書いてない)のが、ウィッテマン兄弟が1906年に設立したWittemann-Lewis社。WL社はそれまでライトやカーチスの複葉機をコツコツと作っていた会社だったが、何を思ったのかこのビッグプロジェクトに立候補し、37万5千ドルで試作を発注した。予算と落札額が全く同じって、どういう入札システムなんだろう。

試作機は「XNLB-1(Experimental Night Bomber Long Range、試作夜間長距離爆撃機)」の試作番号が与えられたが、どうして夜間専用なのかはわからない。夜間じゃ爆弾ぶつけるはずの敵艦が見えないじゃないか。それとも、第一次大戦でドイツ帝国軍の戦略爆撃機がロンドンを夜間空襲したのに習って、夜間に都市爆撃を行うつもりだったのか。しかし、そうだとしたら同時にマーチン社に発注されたXNBS、夜間短距離爆撃機は何と戦うつもりだったんだ。
XNLB-1はタラント・テイバーとよく似たデザインだったが、エンジンを2階建てにするのをやめ、1階の4基のエンジンのうち内側2基のナセルに背中合わせにエンジンを追加し、牽引4発+推進2発の変形6発機としていた。さらに顎をぶつけないように機首に車輪を追加。ついでに主車輪も前方に車輪を追加することで前転を防いでいた。タラント・テイバーがひっくり返ったのがよっぽど悔しかったんだな。
しかし、ただでさえアメリカではこれまで建造されたことのない巨大な機体をWL社なんて零細企業がホイホイと完成させることができるはずもなく制作は難航に難航を重ねる。2機の試作は1機に減らされたがそれでも予算は全然足りず、最終的に超過した15万ドルはWL社からの持ち出しとなった。
1922年10月、ついにXNBL-1は完成したが、数ヶ月後にWL社は倒産した。

試作機は完成したが、全備重量19トンもある機体を飛ばせるような飛行場は多くはなく、XNBL-1は一旦分解してからウィルバー・ライト飛行場(現在のライト・パターソン基地)に鉄道で運ばれた。飛行機なのに。
機体は93日かけて再度組み立てられ、1923年8月22日に初飛行に挑戦する。
口さがない批評家は「滑走したまま目的地に到着するだろう」と踏んでいたが、今度はちゃんと飛んだ。
これは、当時最も最も大きく(後のB-17よりも全幅は大きい)、最も重い航空機の飛行であった。
しかし、巨大で複雑な主翼の構造はあまりにも抵抗が大きく、またエンジンそのものも機体に対してアンダーパワーであった。その結果、XNBL-1は2トンの爆弾を積むと、最高速度時速160キロでは航続距離が270キロしかなかった。なにしろ「短距離爆撃機」のNBSが900キロの爆弾を積んで後続距離が725キロあったので、これはもうわけがわからない。「局地戦略爆撃機」か、こいつは。試作発注前の陸軍の見積もりってなんだったんだ。
さらに雨に弱い羽布貼りの主翼を悪天候から守るために巨人機専用の格納庫を建設しなければならず、これに70万ドルもかかった。誰がどう考えても、XNBL-1は建造にも運営にもコストが掛かり過ぎる上に、性能はションボリし過ぎであった。
XNBL-1の飛行に先立つ1921年7月、ドイツから接収したド級戦艦オストフリースランドを、NBSを制式化したMB-2が900キロ爆弾で実際に撃沈してみせるというド派手なパフォーマンスでビリー・ミッチェルは「戦艦を航空機で撃沈可能」ということを証明してみせていたが、よく考えたら同時に「XNBL-1はガラクタ」ということも証明していた。
結局、XNBL-1は1年ほど飛行試験をしたのち、不採用となった。

1929年、分解されたXNBL-1の保管されているフェアフィールド保管所の指揮官にヘンリー・”ハップ”・アーノルドが着任する。
アーノルドは「倉庫に入ってるバーリング爆撃機、もういらないですよね? 捨てますよ」と申請書を出したが、議会は「バーリング爆撃機ってあの巨人機だろ。まだなにか使い道があるかもしれないし……」と実家のオカンばりの理論で引き続き保管するよう要請してきた。
そこでアーノルドは、「バーリング爆撃機」の部分を全て「XNBL-1」に書き換えただけの申請書をもう一度提出したら、今度はそのまま通ったので1930年にXNBL-1"バーリング爆撃機"は焼却処分された。「数字とアルファベットの組み合わせじゃ覚えてもらえない」って田宮俊作社長も言ってたもんな。

XNBL-1は明らかに失敗作であった。
計画を推進したビリー・ミッチェルも軍の保守派と激しく対立、上層部批判が引き金となり1926年に軍を除隊している。1936年死去。
彼の主張が正しかったことは1941年12月8日、日本軍の真珠湾攻撃によって明らかとなる。
戦時中、ビリー・ミッチェルの功績は急速に再評価され、B-25爆撃機は彼の名前をとって「ミッチェル」と呼ばれた。個人名が愛称として制式に与えられた航空機は米軍史上、この1機種しかない。

XNBL-1を焼き捨てたハップ・アーノルドは第二次大戦中、陸軍航空隊総司令官として枢軸国に対する戦略爆撃を指揮した。
彼は戦後、XNBL-1についてこう評価している。
「もし、偏見なく言うとすれば……それはB-17やB-29の開発に影響を与えていると言えるだろう」

Murph's Modelsの新製品、アメリカ軍試作重爆撃機 Witteman-Lewis XNBL-1 "Barling Bomber"は60分の1でのリリース。定価は8ドル。ダウンロードのみでの販売。
当キットは極初期戦略爆撃機ファンのモデラーにとっては、絶対に見逃すことのできない一品と言えるだろう。
航空万能主義モデラーなら、本作を完成させることでビリー・ミッチェル、ウォルター・バーリング、ウィッテマン兄弟の夢を机上で叶えるのもいいだろう。


画像はMurph's Models公式ページからの引用。
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