MODELIK イギリス製蒸気機関車 SALAMANCA

相変わらず咳が止まらず、町内で結核の死者が出たと聞いて慌てて医者に言ったら「アレルギー性の咳喘息ですね」と診断された筆者が、前振りと全然関係なしに東欧カードモデル新製品を紹介する当コーナー。本日紹介するのはポーランドMODELIK社の新製品、イギリス製蒸気機関車 SALAMANCA だ。

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おや。いつものMODELIKの黄色線+黒線表紙とは雰囲気が違う表紙。ロゴも以前は大文字だったのになぜか小文字に。
この新表紙は例えば「19世紀鉄道シリーズ」みたいな新シリーズの表紙なのか、これ以降のMODELIKスタンダードとなるのかは今のところ不明だ。

SALAMANCAは見ての通り、黎明期の蒸気機関車だ。当コーナーでは以前に1804年に制作された世界初の蒸気機関車、「ペナダレン号」を紹介したことがあるが、SALAMANCAが制作されたのは1812年。ロシアに攻め込んだナポレオンがロシア軍の後退戦略と冬将軍にボコられて鼻血出して半泣きになっていたころだ。
一方、ヨーロッパの西方に目を転じると同じ年にスペインではイギリスの誇る名将ウェリントン公爵がポルトガルから出撃、ナポレオンのお兄さん(スペイン王だった)、ジョゼフ・ボナパルト率いる軍をサラマンカで破ってマドリードへと雪崩れ込んでいた。
この、サラマンカでの勝利を記念して「SALAMANCA」と名付けられたのが、今回紹介する蒸気機関車だ。

先述の通り、イギリスでは1804年にすでに最初の蒸気機関車が制作されていたが、これは鉄の品質がまだ低かったために破損を繰り返し、すぐに放棄されてしまった。しかし、ナポレオンとの戦いが長引くにつれイギリスでは馬が軍馬として徴用され、飼料も高騰したために各地の炭鉱で再び蒸気機関車というアイデアが見直されていた。
そんなわけでイングランドの大都市、リーズ近郊の炭鉱経営者代理人を務めていたジョン・ブレンキンソップ(John Blenkinsop)は、自身の所有する炭鉱からの積み出しに使われている馬車鉄道に蒸気機関車を走らせることとし、リーズで蒸気機関制作を行っていたマシュー・マレー(Matthew Murray)に制作を依頼。資料によって設計をブレンキンソップが行ったことになっていたり、マレーが行ったことになっていたりしてはっきりしないが、とにもかくにも1812年に蒸気機関車「サラマンカ号」は完成した。

サラマンカ号がどんなもんか、とても言葉では説明できないので公式ページの完成見本写真で見てみよう。

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うーん、なんというか、自走式ビールサーバーにしか見えないが、これでも機関車である。
全体がどう見ても板張りだが、まさかボイラーが木造ってことはないから、これはうっかりボイラーに触ってアチチとならないように板を貼ってあるのだろう。
そもそも機関士の乗るキャビンがないようだが、1814年に実際に運転されているサラマンカを書いた絵画では操縦者はボイラー横の台枠の上に立っている。体のすぐ横ではピストンロッドが上下してて、足の下では車輪がゴロゴロ回っているという、かなり度胸のいる職場環境だ。
なお、テンダーがないようだが、炭鉱で働く機関車だから石炭は後ろに引いてるトロッコにいくらでも積んでいる。

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足元をクローズアップ。なんか戦車の起動輪を細身にしたようなものが見えるが、実際、これが動輪だ。この歯車がレール脇の棒を掴んで前進する仕組みとなっており、前後の車輪は脱線を防ぐためのものでしかない。言うなれば、軸配置2-1-2というわけだ。これは、車重による粘着力だけでは普通の車輪は空転してしまうような極端に重い貨車を強引に引っ張るためらしい。しかし、見るからにレールの寿命は短そうだ。
どこにもブレーキがないように見えるが、たぶん、実際にない。サラマンカ号より15年も後に建造された「ロケット号」にもブレーキはついていないので、まぁ、そんなもんなんだろう。
あと、さっきの絵の手前側に乗ってる機関士、脚が歯車に巻き込まれそうで怖いぞ。

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反対側から。
マシュー・マレーは蒸気シリンダーを世界ではじめて水平置きにした人物だが、ここでは古典的な垂直置きとなっている。
ペナダレン号以降も試作蒸気機関車は細々と制作されていたようだが、シリンダーを2基備えたのはこのサラマンカ号が初めてだった。2基のシリンダーの位相をずらすことで、ロッドが、伸びきった、あるいは縮みきった点で車輪に与える回転力が0になってしまう問題を解決しているのは注目に値するだろう(ペナダレン号ではバカでかいはずみ車が必要だった)。
よく見ると動輪の歯車とロッドは直接つながっておらず、小さい歯車を介しているが、これはおそらく2基のシリンダーの同期をとるためにいろいろと苦労した結果だと思われる。
ちなみにサラマンカ号とペナダレン号はどう見ても似ていないが、マレーは律儀にペナダレン号を設計したリチャード・トレビシックに設計使用料を払ったらしい。これは、以前に実用蒸気機関の開発者であるジェームズ・ワットが設立したボールトン・アンド・ワット社との特許権争いに敗れたマレーが面倒な争い事にうんざりして予防線を張ったのかもしれない。

サラマンカ号は複雑な構造の割には好調で、ほぼ同型の機関車がもう3輌制作された。後に世界初の旅客鉄道を開業し、大蒸気時代を切り開くことになるジョージ・スチーブンソンもこれらの機関車を見学して炭鉱用蒸気機関車「ブリュッヘル号」を制作しているが、歯車を引っ掛けて進むラック式の特許をブレンキンソップが持っていたこともありスチーブンソンの機関車は粘着力のみで前進する、現在の機関車により近い形となっている。
製造から6年後、サラマンカはボイラーの爆発事故によって失われたが、後にこの事故を調査したスチーブンソンによるとボイラーの安全弁の交換が不適切であったのが原因ということである。

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テクスチャは汚しのないスッキリタイプ。木造部分のパターンが少々雑なような気もするが、これがサンプル画像だからなのか実際にそうなのかは分からない。
組み立て説明書は面をグレーで塗ったライン表現。複雑怪奇なロッドの組み立てが大変そうでもあり、楽しそうでもある。

「世界で初めて運用に成功した蒸気機関車」とも評される イギリス製蒸気機関車 SALAMANCA は陸モノ標準スケール25分の1で完成全長約18センチ。難易度は5段階評価の「4」(難しい)。そして定価は30ポーランドズロチ(約1000円)。また、レーザーカットされた厚紙パーツが20ズロチ(約700円)で同時発売となる。
当キットは黎明期蒸気機関車ファンノモデラーにとっては見逃せない一品と言えるだろう。

ペナダレン号、サラマンカ号と来た黎明期蒸気機関車カードモデルキット。果たしてスチーブンソンのブリュッヘル号、そしてロケット号は発売されるのか、しばらくはポーランドカードモデル界からは目を離すことができなさそうだ。
あと、読者諸氏も体調にはお気をつけ下さい。割りと真剣に。


画像はMODELIK社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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最近このサイトをよくみるようになっています。
お身体に気を配るようにして下さい。

Re: タイトルなし

火炎瓶さん、コメントありがとうございます!
いやはや、体調管理ができていなくてお恥ずかしい限りです。
不調というほど不調でもないんですが、とにかく咳が止まらないために工作ができず難儀しております。
早いとこすっきりさせて、バリバリ工作したいと企んでいます。
引き続き、よろしくお願いいたします!
展開図公開中
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