WAK ポーランド軍試作汎用機 PZL-38 "Wilk"

なんか風邪っぽいから更新サボって早く寝ちまおう、と思ったものの、忘れないように調べたとこまでメモしておいた方がいいかとキーボードに向かったらそのまま記事を書き終わってしまったといういい加減な筆者のお送りする東欧最新カードモデル事情。今回紹介するのはポーランドWAK社の新製品、ポーランド軍試作汎用機 PZL-38 "Wilk"だ。

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数年前のポーランドキットからは想像もできない美しい表紙。でもキットの完成見本写真はどこにもないので、ここからは実機の話がダラダラと続くだけだ。

PZL-38"Wilk(狼)"は見ての通り、1930年代に世界の航空界に大流行し、大惨事を残していった「万能機」の一種である。
強力なエンジンを双発にして重武装を施すことで敵戦闘機を振り切って侵攻してくる重爆撃機を撫で斬りにし、さらに自身で爆撃もこなし、ついでに偵察もしちゃうという、もうこの飛行機があれば他の飛行機はいりませんよ的な超戦闘機という一粒で何度もおいしいアイデアに各国は飛びつき、ドイツのBf-110、フランスのポテ63系、日本の二式複座戦闘機 「屠龍」などが続々と開発されていった。
建国以来、年中空軍増強中だったポーランド軍もこのアイデアに興味を示し、1934年、国営兵器工廠PZL内でのコンペの結果PZL-23「カラシ」軽爆撃機の設計者として知られるFranciszek Misztalのアイデアが採用された。
機体はPZL-37「ウォシ」中爆撃機を縮小したようなスタイルで20ミリ機関砲1門、7.92ミリ機関銃2門が機首に集中配置された。また、後部座席には自衛用に7.92ミリ連装機銃が装備されなかなかの重火力を誇っていた。

さて、ポーランド空軍機に共通の問題として、適当なエンジンがないという問題がある。おかげで新型機ができるたんびにフランスのノーム・ローンとかイギリスのブリストル・ペガサスとかの輸入、もしくはライセンス生産品をつけたり外したりの大騒動を毎回繰り返しているわけだが、せっかくなんでPZL-38ではエンジンも国産エンジン「PZL "Foka"(アザラシ)」を積むこととなった。やったぜ、念願のオールポリッシュ戦闘機の誕生だ。
ところが、と言うか、やっぱり、このエンジン開発が大難航でPZL-38開発は大迷走となった。
PZLではすでに空冷星形の300馬力級エンジン「GR-760」の開発実績があり、次のステップとしてFokaでは最終的に600馬力を目指していた。ライバルのドイツ空軍Bf-110試作型(1936年初飛行)がユンカース・ユモ210、出力約700馬力双発だから、そんなに悪い数字ではない。
GR-760の開発も手がけたStanisław Nowkuńskiはアメリカ製のレンジャー・V-770倒立V型空冷エンジンを参考に設計にとりかかりよく似たスタイルの倒立V型8気筒空冷エンジンのアイデアをまとめていった。
ところが、1936年7月、Nowkuńskiはタトラ山脈をハイキング中に事故死してしまう。
主任設計士を失ったチームはなんとか設計を続けたが、残念ながら残されたメンバーはNowkuńskiほどの才能に恵まれていなかったようだ。

1936年9月、Fokaエンジンの最初の試作品が完成した。が、始動してみて驚いた。
なんと、どう頑張っても出力が200馬力を越えなかったのだ。ちょっと待て、第一次大戦末期のアルバトロスD.Vが積んでたメルセデスD.IIIaüが出力180馬力だぞ。
調査の結果、どうやら空気取り入れ口からの吸気の流れがおかしい、ということがわかりあっちこっちいじりまわして翌年前半には350馬力まで出力が上がったが、この修正の結果エンジンは重くなり、激しい振動、常にオーバーヒート気味の排熱処理、ひどい燃費、と問題はまだ山積していた。

1937年、どうやらFokaエンジンがものにならなさそうだと判断した空軍はすでに完成していたPZL-38の試作機2機のうち2番機にFokaエンジンの原型、レンジャー・V-770を装備して飛ばしてみたものの、V-770は出力が450馬力しかないので性能は計画値に全く届かなかった。
1938年にはPZL-38はなぜか新鋭軍用機なのにパリ航空ショーに展示されたが、装備されていたFokaエンジン試作機は性能があまりもションボリだったために展示されただけで飛ばなかった。
空軍はすでに大戦にFokaエンジンが間に合わないと判断し、ノーム・ローン、ヒスパノ・スイザといった外国製エンジンのライセンス生産に重点を移すようPZLに要求しており、国産エンジンの開発はさらに遅れた。

1939年春、ついにFokaエンジン装備のPZL-38試作1号機が初飛行を行ったが、最高時速は計画値の465キロに対し、たったの400キロしか出なかった。これじゃあ友軍のウォシ中爆撃機にも置いていかれる。Fokaエンジンの出力が期待値に満たなかったばかりか、機体そのものも計画よりも400キロも重かったのだから、もうどうしようもない。機体重量が重すぎることなんてFokaエンジンを積む前にわかっていそうなもんだが、もうどうでも良くなってたんだろうな。
ほどなくしてFokaエンジンとPZL-38は仲良く開発中止となった。
もっとも、他の国の双発戦闘機も結局は速度で単発単座戦闘機と大して変わらず、軽快な単発機にバタバタとはたき落とされてしまったのだからWilkが無事に完成していても、戦況には大した影響はなかっただろう。

PZLではPZL-38のエンジンをノーム・ローン空冷星形エンジンに換装したPZL-48”Lampart(豹)”とか、Fokaエンジンを12気筒に延長した上で再設計したFoka-Bエンジンとかいろいろと計画していたが、全て開戦で中止となった。
なお、試作された2機のPZL-38はドイツ軍に鹵獲されたようだが、その後の運命は不明である。

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今回、WAKからリリースされたキットではパリ航空ショーに展示された際のマーキングなしのパターンとポーランド第111航空隊「コシューシコ中隊」装備機の2種類からテクスチャが選べるコンパチキットとなっている。もちろんPZL-38 "Wilk"は前述の通り2機試作されただけなので、この「実戦配備機」は架空のもので、時期も「1940年 ポーランド」となっている。
ところでテクスチャをよく見ると、コシューシコ中隊機として組む場合は主翼のスキンを国籍マーク部分でぶった切ってつなげろ、という豪快な構成になっている。

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こちらは組み立て説明書のサンプル。操縦席内部、エンジンもなかなか細かく再現されているようだ。
これで見ると、コックピット、エンジンナセルはギリギリまで絞っていることがわかる。
なお、キットは説明書に一部ミスがあるが、正しい図版はWAKのショップページからダウンロードできる。

WAK社の新製品、ポーランド軍試作汎用機 PZL-38 "Wilk"は空もの標準スケールの33分の1で完成全幅約34センチ。これは双発戦闘機としては格段に小さい(Bf-110なら約49センチになる)。難易度は5段階評価の「3」(普通)、定価は35ポーランドズロチ(約1100円)、またレーザーカット済みの芯材用厚紙が9.5ズロチ(約300円)で同時発売となる。

PZL-38のキットは2000年にMAŁY MODELARZからキットが出ているが、そちらは今回のWAKのキットに比べてアッサリした仕上がり。ポーランド空軍ファンなら双方を作り比べてみるのもいいだろう。
もちろん、万能機ファンのモデラーにとっては、ガッカリ飛行機のコレクションを増やすためにはこのキットを見逃すことはできない。また、Bf-110、屠龍が夜間戦闘機となって大活躍したように「PZL-38夜戦型」というのを妄想してみるのもおもしろそうだ。


写真はWAK社サイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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