WEKTOR オーストリア製装甲車 Steyr ADGZ

ようやく訪れた秋の新作シーズン。どうにかネタ切れでサイトが餓死するのをまぬがれた筆者がお送りする東欧最新カードモデル情報、本日は先週よく知らない戦闘機Bristol M1Cを紹介したポーランドのブランド、WEKTORからの新製品を引き続き紹介しよう。
今回紹介するのはオーストリア製装甲車 Steyr ADGZ だ。

ADGZ 01

表紙のモチーフは第二次大戦開戦初日の1939年9月1日、抵抗を続けるダンチヒ郵便局に対して機関銃を撃ち込むADGZ装甲車とそれを盾に体制を整えるSS突撃部隊。
ダンチヒ郵便局の戦いは1人の軍人と、女性子供を含む56人の民間人がSS部隊の攻撃に対して果敢に抵抗、14時間もの間戦い続けた戦い。この戦いをドイツ側が撮影した動画にはまさしく表紙絵そのままのシーンも残されている(動画ではもっとぞろぞろと大量の兵士が装甲車の影に隠れていて、なんだか素人っぽい。初陣で緊張してるのか)。
ところで、よく見ると表紙のADGZは車体にマウントされた機関銃を前に向かってぶっ放しているが、何と戦っているんだろうか。あと、一番右側で不用意に立ち上がっている兵士がなんか子供みたいに見えるぞ。

ADGZは1934年にオーストリア陸軍が警察任務のために発注した装甲車で、正式名称は「M35中型装甲車」である。俗称であるADGZの「AD」は「オーストリア・ダイムラー」の頭文字だが、じゃあ「GZ」がなんなのかは、どこにも書いてないからわからない。
オーストリア・ダイムラーは1899年から自動車を作っているという年季の入った自動車メーカーだが、ドイツの本家ダイムラー社との関係は、「オーストリア・ダイムラーがドイツ・ダイムラーの子会社だよ」と書いてある資料と、「ドイツ・ダイムラーを経営してたゴドリーブ・ダイムラーの息子のパウル・ダイムラーがデザイナーやってたのがオーストリア・ダイムラーで、両者は直接の提携関係にはないよ」と書いてある資料があって、何がなんだかわからんちん。
パウル・ダイムラーは自動車黎明期の1904年(1905年説もある)にトースターの上にお餅が乗ったような斬新なスタイルの装甲車を開発しているが、1904年といえば日本で言えばまだ日露戦争中なのだからその先進性には驚きだ。日本陸軍がこれを買い付けて旅順要塞に投入していれば、ロシア軍が爆笑しているうちに要塞が占領できたかも知れない。

パウル・ダイムラーは1905年にダイムラーを去っており、代わりにやってきたのが先進的なもの大好きおじさんのフィルデナント・ポルシェだった。ポルシェは次々に高性能な新型エンジンを開発する傍ら、突然電気自動車を作ったり、ツェッペリン飛行船用のエンジンを作ったり、ここでも暴れ放題に暴れていったが、1923年にダイムラーを去っている。
ポルシェがダイムラーを去った理由は、Wikipediaのポルシェのページには「ダイムラーがレースカーで起きた事故の責任をデザイナーのポルシェにおっ被せようとしたから」と書いてあり、ダイムラーのページには「思いつきの連続で会社の経営を危機に陥れたポルシェが逃げた」と書いてある。どちらが正しいのか判断できる材料がないので、ヘタな推測はやめておこう。
1934年にオーストリア・ダイムラーはシュタイヤーと合併するが、装甲車の名前に「AD」が残っているのは、オーストリア・ダイムラー時代に受注してシュタイヤーで生産したからだろうか。

オーストリア・ダイムラーとシュタイヤーが合併して4年、今度はオーストリアがドイツと合併する。俗にいう「アンシュルス」、大ドイツの誕生だ。オーストリア陸軍の快速師団に12輌、憲兵隊に14輌が配属されていたADGZも全車がドイツ軍に接収され武装SS部隊と憲兵隊に配属されたが、正確な配属先はわかっていない。少なくとも3輌がダンチヒ郵便局の戦いに投入され、うち1輌がポーランド側の抵抗により全損となった。
また、1941年にはなぜかSSがADGZを25輌シュタイヤーに追加発注しており、SSプリンツ・オイゲン師団などで後方のパルチザン狩りに使われたようだ。
なお、出所不明の情報として、「ソビエトのT-26戦車の砲塔を載せたADGZがあった」という情報もあったが、なにぶんソースが全く不明なので眉唾話としておこう。

それでは警察用なんだか軍用なんだか微妙な感じの シュタイヤーADGZ装甲車の姿を公式ページの完成見本写真で見てみよう。

ADGZ 03

今回はホワイトモデルの完成見本。日本語版WikipediaのADGZのページには「中央2軸が駆動軸で、前後端の2軸はステアリングのみ」と書いてあるが、この写真では最も手前の車軸にもギヤハウジングの膨らみが有り、全車輪駆動に見えるが、どうなんだろう。初期ロットと追加ロットで機構に差があるんだろうか。なんか今日の記事ははっきりしないことばっかりだ。
前照灯には装甲カバーがついているが、頭の上のエナジーボンボンみたいなサーチライトは別に装甲されていない、といういい加減さもなんとも言えない。

ADGZ 05

上から見るとこんなスタイリング。言うなれば「郵便局視点」だ。車体側面に書かれているパーソナルネームは「ズデーデンラント」で、まさしく郵便局の戦いで動画に写っている車両だ。
装甲厚は最大で11ミリしかなく、小銃弾がやっと防げる程度だがもとより重火器と撃ちあうことは想定されていない。でもそれにしては主武装として20ミリ機関砲を積んでいるのは、いったいなにと戦うつもりなのか。

ADGZ 06

2輌のトラックを背中合わせでくっつけたような特徴的な側面形。ADGZは車体の前後に運転席があり、どちら向きにも運転することができた。これは、細い路地を進んでいった後で引き上げる時に、するすると後退できて便利という配慮だ。
下面がすぼまったテーパー付きの車体や、フェンダー上部が雑具入れになっているなど、後のドイツ軍重装甲車を彷彿とさせるスタイリングも興味深い。

ADGZ 07

フロント部分にクローズアップ。ホーンが3つも付いているのが目を引くが、これは警察車両らしく車外放送用の設備なのだろうか。テケトーに置いた感満点のジャッキも見逃せない。なんで2個もジャッキ積んでるんだ。

なんともわからないことだらけの微妙な警察装甲車、Steyr ADGZは陸モノ標準スケールの25分の1で完成全長約25センチと、意外と小柄な車両。難易度表示はないが、完成見本を見る限りではなかなか手応えがありそうだ。定価は35ポーランドズロチ(約1200円)。

妙な車両の多いドイツ軍の中でも、オーストリア生まれという変わった出自のADGZはドイツ戦車の入門書、「ジャーマン・タンクス」にも載っているのでそれなりに有名だが、治安維持用なんていうキナ臭い役割のせいでなかなかキット化されない車両だ。オーストリア軍ファンのモデラーは、この車両を手に入れる数少ない機会である今回のリリースを見逃すべきではないだろう。



画像はWEKTOR公式サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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