JSC フランス海軍軽巡洋艦”LA GLOIRE”、巡洋潜水艦”SURCOUF”

夏と言えば夏休み。夏休みと言えばネタ切れ。と、いうわけで一ヶ月以上新製品情報が止まる真夏の東欧カードモデル事情を、ちょっと前のネタまで持ちだしてなんとか乗り切ろうと四苦八苦する当ブログ。今回紹介するキットはポーランドJSC社からリリースされていたフランス海軍巡洋艦”LA GLOIRE”と巡洋潜水艦”SURCOUF”のセットだ。

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なんだかちっちゃい上に圧縮もきちょない画像だがもうちょっとするとまともな画像が出てくるので我慢していただきたい。
……あれ、よく見たら表紙の表記が「2004年」になってる。これ再販キットじゃないか。
まぁいいや、調べちゃったし。

第一次大戦に突入した時、フランス海軍はまともな軽巡洋艦を全く持っていなかった。あるのは19世紀末から20世紀初頭に建造された防護巡洋艦ばかりで、ドイツ帝国海軍の仮装巡洋艦と射ち合ってもヤバそうな連中だった。
しかし、大英帝国海軍、大日本帝国海軍の二大帝国海軍が同盟国だったうえに、戦う相手のドイツ帝国はタマゴ頭のティルピッツ提督が英国艦隊との艦隊決戦に夢中で主力艦ばっかり作っていたし、オーストリア=ハンガリー帝国海軍なんて港に引きこもって出てこない始末なんで世界中に散らばるフランスの植民地との交通が遮断される、なんてことはなかった。そもそも、同盟海軍はイギリス海軍が一手に引き受けてたんでフランス海軍はぶっちゃけ相手にされていなかった。
第一次大戦が終わり、フランスは戦後賠償としてオーストリア=ハンガリーから1隻、ドイツから4隻の軽巡洋艦を接収したが、敵国製を使うのはフランス人の誇りが許さなかったのか、あるいは単にポンコツだったのかこれらは20年代後半から30年代前半にかけて全て退役している。

やせ我慢して接収軽巡洋艦は捨ててしまったものの、その結果次の世界大戦でフランスの海外植民地を守る艦艇がなくなってしまった。
宿敵ドイツは、「ポケット戦艦」なんていう、「次の大戦でも通商破壊戦をやりますよ!」と宣伝するような艦を作ってるし、東洋では新たに存在感を増してきた日本と敵対してフランス領インドシナが攻撃にさらされる可能性もある。
そこで、フランス海軍は新鋭戦艦「ダンケルク級」と新型軽巡洋艦、それと渡航性に優れる大型駆逐艦6隻を1セットとした「高速機動部隊」を編成し、敵の通商破壊戦に備えることとし、そのために建造された新型軽巡洋艦が今回紹介する”GLOIRE”(グロワール、「栄光」。キット名は冠詞「LA」がついているが、一般的にはつけないようだ)を含めた6隻の「ラ・ガリソニール級」軽巡洋艦だった。

ラ・ガリソニール級は速度、武装、装甲のバランスが良く、艦としての性能は悪くはなかったが、活躍する機会は訪れなかった。
1940年5月、陸戦であっさりフランスが降伏。新しく作られた親独政権のヴィシー政府にフランス海軍は引き継がれたが、これを見たイギリスは「このままではフランス海軍はいつドイツ海軍に接収されるかわからない。敵が増えると困るんで、全フランス艦艇に四択問題です。 1・イギリス軍に合流する。 2・戦争と関係ないぐらい遠くに行って、戦争が終わるまでじっとしている。 3・自沈する 4・戦う から回答を選んでください。さぁ、早く!」
と無茶苦茶な最後通告を突きつけた。
アフリカ、メルセルケビール軍港にいたフランス艦隊はライフラインを使ってヴィシー政府に助けを求めたが、イギリス艦隊はみのもんた氏ほどの忍耐力がなかったので返事が来る前に「4番でFA? はい、時間ぎれ」と攻撃を仕掛けてきて戦艦1隻撃沈、2隻中破の大損害を蒙りフランス主力艦隊は昨日の友の手で壊滅した。ひどい。

ラ・ガリソニール級6隻は「ラ・ガリソニエール」、「ジャン・ド・ヴィエンヌ」、「マルセイエーズ」が自沈を選択。「グロワール」、「モンカルム」、「ジョルジュ・レイグ」が英国海軍に降伏した。
降伏した3隻は水上機装備を撤去し、対空火力を強化するなどの整備を受けた上で亡命フランス人からなる「自由フランス海軍」に組み込まれる。
グロワールは1944年2月、連合軍の一員として地中海に出動。アンツィオ上陸作戦を支援するために600発の艦砲射撃を行う。8月には南フランス上陸作戦を支援するためさらに2週間で2000発という濃密な艦砲射撃を行っている。
戦後、グロワールはインドシナに派遣されたが、もはやフランスの水上交通を阻害する敵国艦隊なんてものは存在しなかった。
結局、通商破壊戦に対抗する「猟犬」として作られたはずのグロワールは水上艦艇との戦闘を経験しないまま、1958年にスクラップとして処分された。

それでは、毎度のことながらパッとしないフランス海軍の軽巡洋艦”LA GLOIRE”の姿を公式ページの完成見本写真で見てみよう。

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はっきりとした記載はなかったが、キットはおそらく改装後の自由フランス海軍在籍時代の状態と思われる。
なんかの間違いみたいな変な模様は「ダズル迷彩」と呼ばれるパターンで、変な陰影がついているので遠くから見ると艦がどっちを向いてるんだか、どんな形してるんだかわからない、という効果を狙ったものだ。
これを塗装で再現しようとするとモデラーの目もチカチカしてくるが、カードモデルならホイホイとテクスチャで表現できてしまうのが嬉しい。

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艦体中央部にクローズアップ。JSCの主力はカードモデルとしては小さい400分の1スケールのキットだが、それでもディティールは十分なことがわかる。無線の空中線はモデラーの腕の見せ所だろう。

さて、今回のキットはもう一隻、巡洋潜水艦”SURCOUF”(シェルクーフ)がセットとなる。

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某潜水艦映画や某戦車アニメに登場するので、けっこうメジャーになったフランス海軍の巨砲潜水艦。見た目はカッチョいいが、トップヘビーなためにローリングがひどく、肝心の主砲(203ミリ連装、砲弾60発)は仰角が限られているので射程が10キロ強しかなかった。そもそも、低い艦橋からは着弾観測が難しかったので、設計段階では艦橋の一部がスルスルと15メートル伸び上がって視界を確保することになっていたが、これ以上重心が上に寄るとひっくり返りそうだったんでこのアイデアは放棄され、代わりに水上飛行機(Besson MB.411)が積み込まれた。
また、シェルクーフは主砲以外に55センチ6門、40センチ4門という強力な雷撃装備ももっていた(55センチ魚雷発射管を8門とする資料もある)。
それでなにをするのかと言えば、通商破壊戦を行う予定だった。つまり、魚雷でこっそり護衛艦を沈め、商船だけになったら浮上して主砲で止めを刺そうってわけだ。すごいね。
そのために巨大な燃料タンクを持ち、実に水上航続距離は地球半周分の2万キロ、ついでに沈めた船から掬い上げた捕虜を最大40人収容するためのスペースまで準備してあった。

そんなオモシロ潜水艦のシェルクーフだったが、御多分にもれずやっぱり本来の任務で能力を活かす機会はなかった。
イギリス軍の突きつけた死のミリオネアでシェルクーフは降伏を選んだが、接収時にゴタゴタがあり英軍2名、仏軍2名が死傷している。
接収後に自由フランス海軍に加わったシェルクーフはカナダ沖合にあるヴィシー・フランス領の飛び地、サンピエール島およびミクロン島を3隻のコルベットと共に占領。とは言っても、誰も島を守っていなかったので占領は15分で終わった。
その後、日本軍の攻撃に備えオーストラリアへ移動することになったシェルクーフはそのまま消息を絶った。
一般的にはパナマ沖合で貨物船”Thompson Lykes”と接触して沈没したと云われているが、残骸は発見されていない。
当時アメリカ海軍基地では「シェルクーフは実は敵と通じており、大西洋でドイツのU-ボートに補給を行っているところを発見されアメリカ海軍に撃沈されたが、対仏関係に配慮してそれは伏せられているのだ」という噂があったそうだ。

JSCの再販キット、フランス海軍軽巡洋艦”LA GLOIRE”、巡洋潜水艦”SURCOUF”のセットはJSC独自の400分の1ウォーターラインキット。完成全長はグロワールが約45センチ、シェルクーフが約28センチ。定価は18ポーランドズロチ(約600円)というお手軽設定となっている。
史実ではさっぱりだったこの2隻だが、フランス海軍ファンなら当キットを購入し、大海に放たれた2隻が本来の役割で大活躍を果たすデコボコ珍道中的仮想戦記に思いを馳せるのもいいだろう。



写真はJSCショップサイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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