MODELIK ドイツ製路面機関車 ”HOHENZOLLERN”

東欧カードモデルといえば、戦車、戦艦、戦闘機の三種の「戦」が定番であることは言うまでもないが、もう一つ、「戦」はつかないが重要なジャンルがある。蒸気機関車モデルだ。
しかし、ポーランドのメーカーはどういうわけか陸もの標準スケール25分の1で機関車キットをリリースするせいで、どうにもこうにも完成品が巨大になりがちなために敬遠していたモデラーも多いことだろう。
今回はそんな完成品保管場所に頭を悩ませるモデラーにオススメの機関車キット、ポーランドMODELIK社の新製品、ドイツ製路面機関車 ”HOHENZOLLERN”を紹介しよう。

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いや、待て、みんな、慌てるな。
筆者が一番動揺しているが、慌てるな。
まず、深呼吸。
それでは改めて。
なんだこれ。

最初、鉱山鉄道かなんかで使われる産業用機関車かと思ったが、乏しい情報をかき集めたところ、どうやら「路面機関車」らしい。
19世紀序盤、イギリスで世界初の公共交通機関として「乗り合い馬車」のシステムが開発された。それまで裕福な一部の層だけの特権であった馬車での移動が庶民の手の届くものとなり、乗り合い馬車システムは19世紀中にヨーロッパ各地へと広まっていく。
しかし、乗り合い馬車には欠点もあった。当時の貧弱な道路網と、弱いサスペンションしか持たない走行装置は悪路に弱く、雨が振るだけで馬車は簡単に運行中止となった。
そこで、馬車が走るルートにレールを引き、そこに乗せた箱型客車を馬が引く「馬車鉄道」が考案され、これまた乗り合い馬車を追いかけるようにして世界中に広まっていく。
19世紀中盤、安全性の高い小型蒸気機関が開発されると、当然馬の代わりに機関車が鉄道を引くというアイデアが出た。実際には初期の機関車は車重が重く錬鉄製のレールはすぐにぶっ壊れたが、時代と共に機関車は軽く、レールは丈夫となり鉄道の時代が始まる。
そんなわけで、19世紀末には世界中で機関車がシュッポシュッポと貨客を引っ張って頑張っていたわけだが、早くから馬車鉄道の発達していた欧州では問題も発生していた。線路が街なかを走る場所では路面が鉄道と歩行者で共有(モータリゼーションの時代はもうちょっと後)されているために、剥き出しの機関車の回転部分にうっかり歩行者が触れて巻き込まれるという事故が多発したのだ。しかも時は麗しき19世紀末、女性のスカートがそぞろに長かった時代、これは由々しき問題であった。
この問題を解決し、歩行者の安全を守るために機関車の方もスカートを履いて足元を隠すこととなった。また、小さな路面鉄道を引っ張る小さな機関車のキャビンは狭くて狭くてしょうがなかったんで、ついでに屋根と側面も張り巡らせ、あたかも客車の中に蒸気機関が入っているような形となったのが、今回のキットの形態、「路面機関車」である(箱型車体を持つが、「スカート」は履いていない車両や、逆にスカートは履いているが箱型車体のない路面機関車もある)。

ここで公式ページの完成見本写真をちょっと拝借しよう。

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表紙写真だけではわかりにくかったが、このようにアングルを変えて見ると蒸気機関車を箱型車体で覆っただけであることがよく分かる。屋根の上にちょこんと出た煙突が可愛らしい。
ボイラーの後ろに運転台らしきものが全く見当たらないが、運転台は車体中央、楕円形と四角形のプレートが貼ってある辺りに進行方向横向きに置いてある。これは、転車台がない場所で進行方向が変わった場合に機関士が後ろ向きに運転することになるのを防ぐためで、この配置ができるのも機関車に箱型車体を被せた利点である。
日本では馬車鉄道の次に路面電車へと進み、路面機関車のステップを飛ばしたのでこのカタチは異様に見えるが、ヨーロッパではそれなりに知られている形態らしい。有名なところでは「きかんしゃトーマス」(元はイギリスの絵本)に登場する「機関車トビー」が箱型路面機関車だ。

今回、MODELIKがキット化したのはドイツのシュレジェン地方(現:ポーランド・シレジア地方)に1894年に開通した路線のために作られた路面機関車(軌道幅785ミリ)。総延長34.5キロの路線を1時間に2本の列車が走ったが、サービス開始と同時に周辺住民から「うるさい」「煙い」と総スカン。仕方ないので街なか部分は馬が引く馬車鉄道にしたりもしたが、結局は20世紀初頭に電車の登場と共に路面電車に置き換えられ、路面機関車は10年ほどしか運行されなかった。その後の車両の行き先は不明だが、ジャワやインドネシアで路面機関車は第二次大戦後まで使われていたので、外側を変えてその辺りに売却されたのかもしれない。

短命に終わったシュレジェン路面機関車を制作したのはドイツ、ドュッセルドルフ近くにあったホーエンツォレルン社。ドイツ皇帝一家と同じ名前だが、なんか関係あるのかはわからなかった。
ホーエンツォレルンはナローゲージの小型機関車が得意なメーカーで、日本では現在の南海電鉄の前身、阪堺鉄道が数輌の機関車をホーエンツォレルンから購入している(箱型車体はないが、スカートは履いていた)。
また、ホーエンツォレルンは「無火機関車」のメーカーとしても知られている。「無火機関車」というのはなんか変な名前だが、炭鉱などの火気厳禁な場所で使うための機関車で、据え置きの蒸気機関からタンクに蒸気を充填してもらい、その圧力でしばらく走るという機関車だ(圧縮空気で走るものもある)。形は蒸気機関車に似ているがボイラー部分が圧力タンクとなっており、なんだかノッペラボウの蒸気機関車といった感じのオモシロ外見[1][2]なので、こいつらもぜひ模型化してもらいたいところだ。

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キットのテクスチャは汚しのないすっきりしたタイプ。組み立て説明書は面をグレーで塗ったライン方式で、ステップバイステップとクローズアップの併用。機関車キットの難所であるパイピングは少なめなようだ。
あと、もしかすると展示ベースとなるレールはキットに含まれていないかも。
そもそもよく考えたらこれ、機関車だけで客車がないじゃないかという問題は、まぁ、そういうもんなんだ、と強い意思の力で克服しよう。

19世紀末から20世紀初頭、都市部の公共交通機関を担うつもりが総スカンで早々に姿を消したドイツ製路面機関車 ”HOHENZOLLERN”。MODELIKのキットは陸モノ標準スケール25分の1で完成全長約24センチという卓上に飾れる大きさ。難易度は5段階評価の「4」(難しい)、定価は45ポーランドズロチ(約1500円)、またレーザーカット済芯材用厚紙が20ズロチ(約700円)で同時発売となる。
路面機関車ファンのモデラーは、ぶっちゃけまぁ、もう二度とキット化されそうにないんで、この機会を逃すべきではないだろう。



キット画像はMODELIK社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

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