WAK イギリス軍中戦車 Vickers Mark I

モデラーの1年は静岡ホビーショーモデラーズクラブ合同作品展に始まり、同作品展に終わる。そんな、筆者が勝手に決めたルールも当サイトではだいぶ浸透してきたようだ。
その区切りで言えば、2013年度もいよいよ大詰め。作品展に向け急ピッチで制作を進めているモデラーも多いことだろう。かく言う筆者も頑張って進めている。本当だよ。
とは言え、あまり完成を急ぐのもいけない。ここは一つ新製品情報で息抜きしてみてはどうだろう。なんとかここに着地させたぞ。
そんな前置きで本日紹介するのはポーランドWAK社からリリースされたイギリス軍中戦車 Vickers Mark I だ。

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第一次大戦が終わってから開発され第二次大戦が始まる前に退役していたという、地味にもほどがある戦車がカードモデルになって堂々登場だ。

第一次世界大戦で戦車を世界で初めて実戦投入したイギリス軍だったが、初期のいわゆる「菱型戦車」はあまりにも巨大、そして鈍重であり、より手頃なサイズの戦車が必要なことはすぐに明らかとなった。
この新規カテゴリ「中戦車」として最初に開発された「Mark A Whippet」は一説には「第一次大戦のイギリス戦車で最も敵に犠牲を強いた」と評価されるなど一定の成功をおさめる。続く「Mark B」、そして「Mark C」はよりオモシロい形になったが、まとまった数が揃う前に戦争が終わった。

戦争が終わると、戦車にはやることないんでイギリスはMark 5重戦車とMark C中戦車を装備する5個大隊を残して戦車部隊を解散させた。
この結果、戦車に割り当てられた予算は(全体としては軍縮で減額となっても「密度」が上がったので)潤沢なものとなり、新型戦車開発にもウハウハな大きな額が割り当てられたのである。
さぁ、これで超絶傑作スーパー戦車を開発し、世界の戦車界を堂々リードするぞ! と意気込んだイギリス陸軍は戦争末期に開発が開始されていた「Mark D」戦車にワイヤーロープサスペンションとかフレキシブル履帯とか、最高のアイデアを贅沢に盛り込んだ結果、完成したのは信頼度最低の失敗作だった。

この失敗で余剰予算を使い切ったイギリス陸軍はすっかりヘコんで戦車開発を打ち切るが、大英帝国きっての兵器メーカー、ヴィッカース社はまだ諦めていなかった。
ヴィッカースは従来の「中戦車」よりもさらに軽量、小型の歩兵随伴戦車を開発。英軍初の全周囲旋回砲塔に3基の機銃を備えた「雌型」と、同型の砲塔に3ポンド速射砲を備えた「雄型」を陸軍に提出。陸軍ではこれ幸いと「雄型」を改修としたものを「Mark I」戦車として採用する。なんで「Mark D」の続きじゃないんだ、とか細かいことは理由がわからないのでこの際無視だ。

Vickers Mark Iは(Mark Dほどではないが)様々な新機軸が取り入れられていた。
それまでのイギリス軍戦車は転輪にサスペンションがなく、長時間の運転は乗員の尻がヤバかったのに対し、垂直コイルバネ式サスペンションを搭載していた。また、機関室と戦闘室の間には防火壁が設けられ、乗員をエンジン火災から守っていた。
さらに特筆されるべきは3席砲塔で、車長が砲手、装填手などを兼任していないので指揮に集中することができた。これはドイツ軍の3号戦車を10年以上先取りしている優れたアイデアであった。が、その後イギリスでも忘れ去られた。

もちろん、Vickers Mark Iの全てが先進的できれいにまとまっていた、というわけではない。
朝鮮戦争時に王立戦車隊司令官も務めたN.W. Duncan将軍は1974年、「AFV in Profile」誌に初期のヴィッカース戦車についての回想を寄稿しているが、それによると小転輪の列は車軸が破損しやすく、「絶えることのない頭痛の元」であったという。将軍によると、ヴィッカース戦車隊が通過した後の道には点々と小転輪が落ちていたそうだ。道に迷わなくてイイネ。
トランスミッションにはシンクロ機構がないためにスムーズなギヤチェンジは困難であり、失敗すれば凄まじい轟音を発するか、あるいはぶっ壊れた。
軽量化のために装甲は全周で6ミリしかなく、これは初期の対戦車ライフルでも簡単に貫通した上に、車内後部に置いてある燃料タンクに命中した場合には悲惨なことになるのは目に見えていた。そもそも、エンジンオイルが絶えずどっかから漏れていた。

これらの欠点を補うためにVickers Mark Iはサスペンションの交換、8ミリ増加装甲の追加、エンジンオイルタンクを4ガロンから13.5ガロンに拡大(漏れを止めるのは諦めたのか)などの改良が行われた。
さらに、路上では履帯の摩滅を防ぎ高速に移動するために車体前後に装備した車輪をガッコン、と下ろすとあら不思議! 車輪走行できちゃう! というシステムも試作されたが、これは大方の予想通り早々に破棄された(前述のDuncan将軍の記事によると「まるで家がローラースケートをしているように不安定」だったそうだ)。
また、一部の車両は15ポンド迫撃砲を装備した「CS」(近接支援型)に改造されている。

総計としてVickers Mark Iは初期型が30輌、改良型が50輌生産された(これは平時の戦車としてはけっこうな数だ)。
第二次大戦が始まる以前にすでに旧式化していたVickers Mark Iだが、1936年のSF映画「来るべき世界」で動いている姿を見ることができる(カット割りを駆使して侵略軍と思われる流線型の未来戦車と戦っている)。この映画では1940年のクリスマスに勃発した世界大戦は30年続き、毒ガス攻撃で都市は廃墟となり文明が崩壊すると予言されていた。

「来るべき」次世代戦車の姿を具現化して見せたVickers Mark I。このエポックメイキング的な戦車をカードモデル化したのはマイナー日本軍車両に傾ける情熱でおなじみのM. Rafalski氏だ。
それではfacebookのRafalski氏のアルバムから完成写真を引用させていただこう。

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まー、毎度毎度のストレート組みの状態が全然わからない超絶ディティールアップだこと。
車体右側のスプラッシュガードが段々についている傾斜の上にある半円形が操縦士キューポラで移動時は全体を上に跳ね上げることができる。反対側はエンジンで大胆に装甲を傾斜させたのはいいものの、たぶんこれだと上面で滑った砲弾が戦闘室を直撃して垂直面をぶち抜く。
なんというか、前半分は頑張ってデザインしたけど後ろ半分は面倒だから箱でいいや、という感じのスタイルだ。車体フェンダーが前に張り出してヒサシになっているのも珍しいが、なんの意味があるんだ、これ。

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テクスチャは汚しのないすっきりしたタイプ。組み立て説明書はライン表現となっている。
足回りが日本軍の八九式戦車と良く似ているが、日本軍の初期の戦車が輸入したヴィッカース戦車を参考にしてるので、こっちがオリジナル。発展型のVickers Mark IIではサスペンションを覆う装甲カバーが追加されている。

WAKの新製品、イギリス軍中戦車 Vickers Mark Iは陸モノスケール25分の1で完成全長22センチと、かなり小柄な車両。難易度は5段階評価の「3」(普通)、定価は30ポーランドズロチ(約千円)で、レーザーカット済芯材用厚紙が12ズロチ(約400円)、同じくレーザーカット済の履帯パーツが115ズロチ(約3800円)で同時発売となる。
戦間期戦車ファンのモデラーにとって、これは見逃すことのできない一品と言えるだろう。



完成写真はfacebookのRafalski氏のアルバムから、それ以外の画像はWAK社ショップサイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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