フレンチ・モンスターズ

*お断り。
 この記事、全然カードモデルに関係ないです。でも、あまりにオモシロかったから書いちゃう。いい加減だね、どうも。

今から100年前の夏、第一次大戦が勃発した。
機関銃で固められた前線と、その後ろまで伸びる鉄道により戦いは前例のない大規模な消耗戦となった。
そんな中、開戦から一か月もたたないうちにこの大戦の結末を明確に予言した人物がいた。
後に「フランス戦車の父」と呼ばれることとなるフランス軍砲兵大佐J・B・E・エティエンヌ(Jean Baptiste Eugène Estienne)である。

「この戦争は、いかなる地形をも走行可能な車両の上に火砲を装備することに成功した国家が勝利することとなるであろう」
-J・B・E・エティエンヌ 1914年8月24日

この素晴らしい卓見のもと、フランス軍は新兵器「戦車」の開発へと突き進む。
が、どういうわけか、びっくりするほど方向性を間違えた。

フランスにも戦前に輸入された履帯式のホルトトラクターがあり、開戦と同時に徴用され不整地での火砲牽引に存在感を示していたが、フランス軍どういうわけか「いかなる地形をも走行可能な車両」に履帯を使用する、という普通のアイデアを思いつかなかったらしい。あるいはホルト社の特許に配慮したのか。

まず手始めに、1915年に開発された「フォルタン・オーブリオ・ガベー」( Fortin Aubriot - Gabet )を見てみよう。
この車両は3輪式で、現代の農業トラクターのような凹凸の大きな大直径の車輪で不整地を乗り越えることを狙っていた。おもしろいのは動力を車内に持たないことで、電源から供給されるケーブルで電動モーターにより駆動する。エヴァンゲリオンを先取りだ。武装は海軍式の37ミリ砲であった。
そして、これがオーブリオ・ガベーの勇姿だ。

640px-Fortin_Aubriot_Gabet.jpg

ぶっひゃっひゃっひゃっひゃ
コメントしようがないわ、こんなもん。落書きかと思ったわ。
写真だと大きさがわからんが、主砲が37ミリ砲だから相当小柄な車両と思われる。って言うか、これ、どっから乗員が乗り降りするの? それとも完全自動化された無人砲台なの? 後ろに伸びてる電源コードも収納ボタン押したらシュルシュルしまわれそうだ。
この車両についての資料は多くないが、「実用的ではない」として計画は破棄されている。「実用的」とか言う以前に、なにがしたいのかわからない。

お次は運河建設技師だったポ-ル・フロト(Paul Frot)が閃いたアイデア。彼は運河で地盤を固めるのに使われていた、ラフリー社のロードローラーが「戦車」として使えないかと考えた。

「この転がり進む要塞はただ火砲によってのみ阻止可能である。しかるに敵には戦法の転換を強い、我々は大きな優位を獲得するであろう」
-ポ-ル・フロト 1914年12月1日、フランス戦争省に宛てた請願書で。

この提案を受け入れて作成された試作車両は7ミリの鋼板で覆われ、4門の機銃で武装していた。操縦席は前後にあり、前進、後退を容易としている。乗員は9名(うち1人は士官、2人はメカニック)。
では、知られざるフランス軍試作戦車フロト・ラフリーの姿を見てみよう。

640px-Frot_Laffly_28_March_1915.jpg

……ごめんなさい。こんなものを見せられた時、どんな顔をすればいいかわからないの。
誰がどう見てもバレバレだが一応断わっておくと、写真中央あたりにあるチクワのような武装と、その下に並んでる銃眼らしきものは写真の上に書き込まれた、ただの絵だ。
あと、どう見ても機関銃の数が資料と会わないので他にも数門、機関銃を書き足してあるようだが画像の粒子が荒くてちょっとわからない。
一見、無敵の陸上戦艦のように見えるフロト・ラフリーだが、足元をよく見るとわかる通り、基本的にロードローラーの上に装甲ボディを被せただけだ。おかげで重量は10トンにもなり、しかもそれをたった20馬力のエンジンで動かすもんだから最高速度はわずかに時速3~5キロ程度だった。
そして、なによりも見ての通り、この機構では小さな凹凸ならともかく、大きな起伏や塹壕を超えることはできなかった。

「試験の結果、この機械が満足な結果を示すことは全く不可能であることが明らかとなった」
-技術課責任者ムラール大佐。1915年4月10日、ポ-ル・フロト宛ての手紙で。

なお、試作車両はその後英国に売却されたらしいが、そのまま行方不明となった。

なんか切なくなってきたが、頑張って進めよう。
次はルイ・ボワリョー(Louis Boirault)が提案した「戦車」だ。
これも戦争省に提案されたのは1914年12月。フロト・ラフリーとどっちかは「ものになるだろう」と思ったのかもしれない。ダメだったが。
これは、鉄条網を踏みつぶし、塹壕を跨いで押し進むことのできる究極の車両だ、と、思われた。
この車両に関しては四の五の説明するより、画像を見てもらった方が早いだろう。

640px-Appareil_Boirault_1914.jpg

ごめん、実際の画像を見ても、なにがなんだかわからない。
というか、これ「車両」なの? 遊園地のアトラクションじゃなくて? 前進するように見えないけど?
と、思ったらWikipediaにわかりやすい図解が載っていたの引用させてもらおう。

292px-Boirault_machine_mouvements.jpg

ェェ(´Д`lll)ェェェェェェェ
これ、どうして長い車体と履帯の組み合わせじゃダメだったの???
だいたい、これ、どこに武装してどこに人乗るんだよ。
お前はバンダイのレボルトシリーズの「ベアモービル」か。
一応、作っちゃったんで試験をしたところ、この機械は8メートル幅の鉄条網を踏みつぶし直径5メートルの砲弾孔、幅2メートルの塹壕を踏み越えて進むことができた、というから確かに不整地能力だけは高かったらしい。
しかし問題の方が多く、前が見えない、壊れやすい、速度が遅い(最高時速約2キロ)、そして致命的なことに方向転換が困難、というか事実上不可能だった(どうやら、ジャッキアップして全体を回すしかなかったらしい。戦場でそれをやらせるつもりだったのか)。

Boirault_machine_underway.jpg

運転中の写真を見ると、まぁ、スケルトン戦車の亜種に見えないこともないけどね。

なお、ボワリョーはさらにデザインを洗練し、「Warhammer 40,000」風に進化した2号機を制作している。

Second_Boirault_machine.jpg Second_Boirault_machine_II.jpg

この2号機はデザインはそれっぽくなったものの、最高速度は時速1キロに低下、そして「方向転換ができない」という欠点が克服されていなかったために計画は破棄された。

「この車両はあらゆるものを踏みつぶすことができるかもしれない。しかし、敵に出会えるとは思えない」
—アンリ・グーロー将軍 1916年8月20日。

見た目にオモロイこの大騒動を横目に、フランスを代表する武器メーカー、シュナイダー社はすでに主任設計師をイギリスに送りホルト・トラクターの履帯を使用した戦車開発の現場に立ち会わせていた。
シュナイダーの戦車開発はエティエンヌ大佐の進めていたサン・シャモン戦車計画と整理され、フランス初の実用戦車、サンシャモン及びシュナイダー戦車へと発展していく。

もし、第一次大戦の戦車キットを制作する機会があったら、オーブリオ・ガベー、フロト・ラフリー、ボワリョーといった忘れらたパイオニア達のことを思い出していただきたい。笑いすぎて手が滑って怪我しない程度に。
あと、この記事に触発されてこいつらの展開図書いた人がいたら、ぼくにも分けてください。

*記事中の写真は全てWikipediaからの引用。
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黎明期の戦車の取り組みを調べてたらここを見つけました。
ボワリョーの「戦車」はマーク1戦車みたいに後部の操舵輪を増設すれば曲がったかと思います。

Re: タイトルなし

ヴィケルスさん、コメントありがとうございます!
返信遅くなり申し訳ございません。

なるほど! その手がありましたね。リトル・ウィリーもゆるやかな旋回ならそうしてたんだから、それで問題なかったはず。
英軍の初期の戦車みたいに左右の別エンジンを別々の機関士が面倒見るのに比べれば、むしろ英軍戦車よりも実用的だったかも……いや、それはちょっと褒め過ぎか(笑)
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