Bestpapermodels 情景 ”Czechoslovak legions in Russia 1919”

長らく使っていたパソコンがいよいよヘタってきた上に、ついにウィンドウズXPがサポート終了ということで大奮発してドスパラで新しいマシンを買っちゃったら、付属のゲームモニターの輝度が高すぎて目が痛い筆者がお送りする東欧カードモデル最新事情。本日は新しいパソコンからの最初の更新ということで心機一転、これまで紹介していなかったブランド、新しいジャンルの新製品を紹介しよう。
今回紹介するのはチェコのブランド Bestpapermodels の新製品、情景 ”Czechoslovak legions in Russia 1919”だ。

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いきなり完成見本写真が出てきたが、このブランドの商品は展開図データのオンライン販売のみで印刷済の現物流通は行っておらず、特に表紙のようなものがないらしいのでこうなった。
BestpapermodelsはPaul Bestr氏とRobert Navratil氏が2008年に旗揚げしたブランドで、戦車、戦闘機からスピードボート、レースカーなど幅広いラインナップをそろえている。
チェコのカードモデルは厚紙での裏打ちがなく、基本的に単一の紙で組み立てられるのでポーランドのカードモデルよりは日本の「ペーパークラフト」に近いかもしれない。
今回のキット、”Czechoslovak legions in Russia 1919”(チェコ軍団・ロシア1919年)はチェコ軍団の装甲列車という、非常にチェコらしい、というか絶対に他の国ではキット化されないアイテムと言えるだろう。

第一次大戦時勃発、チェコはオーストリア=ハンガリー帝国の一部だった。
自分たちを支配しているオーストリアが「さあ、戦いましょう!」と言ったところでチェコの人達がハイハイと従うわけがない。戦闘が始まると同時に東部戦線に配置されたチェコ人兵士は戦線を放棄して部隊単位でどんどこロシア軍に降伏。その数はあっという間に数万に達した。
せっかくなんで、ロシア軍はこのチェコ人捕虜達を再編成して「チェコ軍団」を結成、今度は逆にオーストリア=ハンガリー軍にぶつけた。よっぽど恨みが溜まっていたのか、チェコ軍団はオーストリア=ハンガリー軍団を相手に大奮戦、びっくりして駆けつけた帝政ドイツ軍までも打ち破ってしまう。怒らせると怖いタイプだったんだな。
よし、このままオーストリア=ハンガリーを打倒してチェコを独立させるぞ! と意気込んだのもつかの間、親分のロシア帝国が革命で先に打倒されてしまった。
さぁ、ここでロシア領内のチェコ軍は微妙な存在になってしまった。ロシアを倒したソビエト政府はドイツ帝国及びオーストリア=ハンガリー帝国を中心とした「同盟軍」と単独講和してしまったので、ソビエト軍の支援を受けてチェコ独立のために戦うわけにはいかない。かと言って、盛り上がっているチェコ独立の気運をあっさりあきらめて武器を捨てることもできない。

一方、ロシア/ソビエトが戦争から脱落したことでドイツ軍は東部戦線から引き揚げ西部戦線で大攻勢を開始しようとしていた(オーストリア=ハンガリー軍はとっくに息切れした)。
ここで、連合軍は「あの勇猛なチェコ軍団を西部戦線に呼んで、ドイツ軍と戦ってもらおう!」と閃いた。もともとチェコの独立のためにオーストリア=ハンガリー軍と戦ってたチェコ軍団が、どうして西部戦線でドイツ軍と戦わなきゃいけないんだかわからないが、そういうことになったんだからしょうがない。
ところが、それを実行するのには一つ、大問題があった。ソビエト領内にいるチェコ軍団をどうやって、西部戦線に移動させりゃいいんだ? いい加減なゲームだと、一旦チェコ軍団を予備に指定して「戦略再配置」コマンドを使うと物理的根拠なく西部戦線にチェコ軍団を配置できたりするんだが、現実はそんなにいい加減じゃない。
幸い、ソビエト政府は気前よくチェコ軍団が武装したまま領内を通過することを認めてくれたので、チェコ軍団はなんと「シベリア鉄道で極東まで移動して、太平洋を渡ってアメリカに上陸、アメリカを横断して、大西洋を横断して、西部戦線に移動する」という計画を立てる。随分壮大だな。お前は「トンチ番長」に出てくる彦一か。

そんなわけで、チェコ軍団の世界一周再配置の旅、始まり始まりー! と出発したものの、当時革命軍と反革命軍で内戦続くロシアで、内戦と関係ないチェコ軍団が「西部戦線に移動しますー。世界一周しますよ、ミャハ☆」と言ったところでホイホイと鉄道を走らせられるわけがない。当然、チェコ軍団はシベリア鉄道沿線で点々と足止めを食らってしまった。
「早く世界一周して、西部戦線でドイツ倒して、その勢いでチェコを独立させなきゃ」と壮大な使命に燃えるチェコ軍団はイライラが溜まっていた。そして、ウラル山脈で足止めされていたチェコ軍団の部隊が偶然通りかかったオーストリア=ハンガリー軍捕虜の集団と衝突、大きな騒ぎを起こしてしまう。
ソビエト軍は反革命軍との戦いに武器が必要だった上に、よく考えたらソビエトと関係ない西部戦線なんかどうでも良くなっていたんで「チェコ軍団は危ないから、武器全部没収ね」と武器の引き渡しを要求。これで完全にブチ切れたチェコ軍団はソビエト軍に対し蜂起、あっという間にシベリア鉄道を占領してしまう。やっぱり怒らせちゃいけなかったんだ。

「共産主義」なんていう怪しげな思想を快く思っていなかった列強各国は、「ソビエト領内で戦うチェコ軍団テラ可哀想! がんばれチェコ軍団! 応援するぞ! 実力行使もするぞ!」と続々と革命干渉軍を派遣、日本も「はいからさんが通る」でおなじみの「シベリア出兵」を行ってもうぐちゃぐちゃ。
あげく、1918年に第一次世界大戦は終結。オーストリア=ハンガリー帝国は崩壊し、チェコ軍団と関係なく「チェコスロバキア」が成立してしまった。
チェコ軍団はしばらくは西側の「もうちょっと頑張ってみようよ!」の声に押されて渋々戦っていたものの、もはや戦ってる意味もないので順次各地で抵抗をやめ、ソビエトを通過してチェコへと帰っていった。

と、いうわけで今回のキットはそんなチェコ軍団がソビエト軍から分捕った装甲列車でカザフとの国境に近いオレンブルク州アブドゥリノ駅で一休みしている情景となる。
ここまで来るだけでチェコ軍団の世界一周予定に負けないぐらい長大な文面になってしまったので、一息ついて公式ページの完成見本写真を見てみよう。

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メインとなる装甲列車「Orlik」は、元帝政ロシア軍装甲列車としてウクライナ首都、キエフで建造された装甲列車「Заамурец」(ザームレッツ)であった。第一次大戦終結直後のゴタゴタしていたタイミングでこの列車はドイツ軍に鹵獲されたが、ドイツ軍は軌道幅が違う装甲列車を持っていても仕方ないので、ウクライナ反革命軍に列車を譲渡する。しかし、あっという間に今度はソビエト軍がオデッサでウクライナ軍を蹴散らし列車を鹵獲。そうかと思ったら、お次はチェコ軍団がシベリア鉄道を占領した時に列車はチェコ軍団に鹵獲されてしまう。

今回のキットは「Заамурец/Orlik」のフル編成ではなく、地雷除けの平台車と砲車しかない。フル編成ではこの後ろに装甲機関車、そして編成の中心車両でありドーム型砲塔2基を持つ「鉄道巡洋艦」を挟んで、砲車、平台車、とつながる(中心車両自身がガソリンエンジン二基を積み自走できるので、ロシア時代は装甲機関車を繋いでいないこともある)。
一番オモシロ形状をしている中心車両がないのは残念だが、装甲列車のキットをいくつか手がけているBestpapermodelsだ、今後さらに編成が増えてよりビッグなジオラマとなるのかもしれない。

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一見、強そうなプリン型砲塔だが、実はお尻が開いている。
平台車に乗っているのはアメリカ製のジェフリートラックを装甲した装甲車。これももちろんソビエト軍からの分捕り品。

さまよえる軍隊、チェコ軍団の装甲列車「Orlik」をメインとしたBestpapermodelsの情景キット、”Czechoslovak legions in Russia 1919”はスケールは鉄道スケールのHOスケール(87分の1)。難易度表示はないが、作例写真から判断する限り、あまり複雑な構造ではないだろう。そして、お値段は4ユーロ(550円)と、チェコのブランドだがユーロベースとなっている。既述の通り、 Bestpapermodelsのキットはデータ販売なので輸送費等を考慮せずに購入できるのもうれしい。
装甲列車には興味があるんだが、さすがに陸モノスケールでは置き場所が……というモデラーなら、BestpapermodelsのHOスケール装甲列車シリーズを見逃すべきではないだろう。もちろん、チェコ軍団マニアのモデラーにもお勧めの一品だ。

なおチェコ軍団の装甲列車「Orlik」はウラジオストックから西へ進んできた日本軍と合流、東へ抜けてチェコ軍団が脱出するしんがりを務めた。輸送手段がないためにOrlikはウラジオストックに残されたが、革命軍、反革命軍、ついでにどさくさに紛れて中国東北部から進出してきた張作霖率いる奉天軍閥までもが入り乱れてゴタゴタしているうちにOrlikは奉天軍がかっぱらって持って行ってしまった。
奉天軍で「第壱○五號」に名前の変わったOrlikは軍閥戦争で存在感を発揮したが、1931年、日本帝国陸軍のいわゆる「関東軍」によって鹵獲されたとされる。
その後の消息は、わかっていない。


画像は Bestpapermodelsサイト公式ページからの引用。
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No title

詳細な説明が素晴らしいです!!

Re: No title

Rolling-Ketu-Kara-Warosu さん、コメントありがとうございます!
なんだか変なものばっかり紹介しているブログですが、今後も引き続きよろしくお願いいたします。
展開図公開中
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