Kartonowa Kolekcja ポーランド製グライダー PW-5 "Smyk"

さて、先週はいい気になって書きたいこと書いてたら新製品まで話が及ぶ前に力尽きたので、今回は反省して最初っから新製品の話をしよう。
今回紹介するのはポーランドKARTONOWA KOLEKCJAからリリースされたポーランド製グライダー、PW-5 "Smyk"だ。

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前回は「グライダー実験工廠」(略称SZD)製グライダーのキットを紹介したが、今回は「PW」グライダー。ポーランドには戦前、「PWS」という国営航空機工場があったが、このPWは全然関係ない。ポーランドの人はなんでもかんでもアルファベットに略さないでください。
こちらのPWは"Politechnika Warszawska"、すなわちワルシャワ工科大学の頭文字である。

1980年代、軽飛行機の話になるといつも顔を出す「国際航空連盟」通称FAIはグライダー人口を増やすための方策を模索していた。
とりあえずもうすぐ冷戦も終わることだし、東側のグライダーユーザーもとりこんで、これまでは鉄のカーテンに阻まれて実行不可能だった本当の意味での「国際グライダー大会」を大々的に開催、グライダー熱を高めていってはどうか(一説には将来、グライダーのオリンピック競技化も視野に入れていたらしい)、と考えたもののこれには大きな問題がひとつあった。
グライダーはパイロットの腕もさることながら、機体でだいたいの記録が決まってしまうのだ。
つまり、ポーランドの山奥で片眉剃り落としてひたすら滑空訓練を積んできた「滑空バカ一代」が操る旧式グライダーよりも、週末にグライダーを楽しむ西ドイツのエグゼグティブが操るハイテクコンピューター制御高級グライダーの方がいい成績が出てしまうのだ(スポーツと金の問題は、現代スポーツ全てに共通する問題である)。
こんな、「最初に1万円突っ込んでガチャを回してゲットしたレアカードでユーザー対戦トップになってしまえば、後はイベント報酬で強化してトップに立ち続けられる」みたいなシステムではグライダー人口が増えるわけがない。「運営側だって商売なんだよ、許してくれ」と言ってもダメだ。絶対にダメダメだ。
そこで、FAIが思いついたのが「統一機体での技能対決」だ。
全員が量産された同じ機体に乗り、純粋に技能だけで記録を競おう、というわけだ。

1989年11月、FAI競技会に新設される「ワールドクラス」で使用される統一機体の仕様が発表された。細かい数字はさておき、条件は「組み立て、操縦が容易」で「性能は中ぐらい」そして「初心者でも取り扱いが容易であること」となっていた。競技会を目指す若き飛行家達にも乗ってもらおう、という狙いなのだろう。
3ヶ月後までに、世界25カ国から84の設計案が提出された。夏までにこの数は書類選考で半分に減らされ、提出されたデザインをさらに厳正に審査した結果、9カ国11機の試作が行われることとなった。
そして2年後の1992年10月、ヨーロッパグライダースポーツの中心地であるドイツ、エルリング市(市の紋章にグライダーが描かれている)に5つの国で制作された6機の「ワールドクラス」試作機が並んだ。残り5機は間に合わなかったのか、あるいは途中で飽きちゃったのか。
実機比較に進出したのは
アメリカから「Roberts Cygnet」
チェコから「Let L-33 Solo」
ロシアから「Aviastroitel AC-4」
そして、ポーランドからは2機、
SZDの「SZD-51 Junior」、ワルシャワ工科大の「PW-5」である。
何度数えても5機しかないが、Wikipediaにこう書いてあるんでしょうがない。
5機(あるいは6機)はそれぞれ飛行性能を披露し、FAIは生産性などを考慮した結果、栄光の初代「ワールドクラス」として、PW-5を選んだ。
これこそ、ポーランドグライダー界が決して西側にも劣っていないことを証明した記念すべき瞬間なのである。

それでは、「ワールドクラス」標準機、PW-5の姿を公式ページの完成見本写真で見てみよう。

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グライダーの特徴であるスラリと伸びた長い翼と細い胴体がよくわかる写真だ。開口部の広いキャビンで飛ぶ爽快感は絶品であるに違いない。ちなみに実機の構造はガラスエポキシ樹脂によるモノコック構造だ。
なお、PW-5はグライダーとしてはかなり小型で、先週紹介したSZD-22「Mucha」の翼幅が15メートルあるのに対し、PW-5の翼幅は13.5メートルしかない。

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下から見たところ。タンデムの2輪式だが、ショックアブソーバー、ドラムブレーキのついている主車輪は後ろ側。前側はあくまでも着陸時に顎を擦らないようにする補助輪だ。

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もちろん、引き起こし過ぎて尻餅をついても大丈夫なようにお尻にも小さな車輪がついている。キテレツ大百科のコロ助が背負ってる太刀みたいで可愛いぞ。垂直尾翼に入っているロゴは国営工場PZLのもの。ワルシャワ工科大では量産は不可能なので、量産機の製造はPZLビェルスコ工場で行われた。左右を貫く大きな昇降舵も良好な操縦性を暗示している。

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グライダーらしく、あっさりしつつも細かいディティールの光るコクピット内部。
戦闘機の操縦席のつもりで見ると操縦桿が異常に短く、前に寄っているように見えるがフットペダルの位置を見ればわかる通り、計器盤を股の間に挟んでほとんど仰向けになって乗るスタイルなのでこれでいい。細く、狭いグライダーの操縦席特有の配置だ。着陸時は下方視界がゼロだが、どうするんだろう。

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キットは2機が1セットとなっており、2種類のテクスチャが準備されている。上はワルシャワ工科大が作成した原型機のPW-5 "Smyk"。機体に書かれた愛称の「Smyk」は「ちびっ子」ぐらいの意味らしいが、同名の総合子供向けデパート(今は無き「ハローマック」みたいな)がポーランドにはあるので、「おもちゃみたい」という意味かも知れない。
そして下は、PZL製の量産型、「B1 PW-5」。「SP-3661」はジェシュフという都市にあるグライダー訓練センターの所有機。ちなみに原型機と量産機の差は、牽引フックの開放、収納が自動化されていたり、パイロットの体重によって重心の釣り合いをとるためのバラストホルダーが尾部に追加されたり、といった細かい点である。
コンパチキットだったらごめんなさい。

Kartonowa Kolekcjaからリリースされたポーランド製「ワールドクラス」グライダー、PW-5 "Smyk"は空モノ標準スケール33分の1で完成全幅約41センチ。難易度の表記はないが、完成見本写真を見た感じでは三段階評価の「3」(普通)といったところか。定価は21ポーランドズロチ(約700円)。特徴的な大きなキャノピーは10ズロチ(約300円)で一体成型のクリアパーツがオプションとして同時発売となる(たぶん、1個の値段)。

FAIがグライダー人口拡大を期待した統一機体競技会だったが、1997年に第一回ワールドクラス・チャンピオンシップが行われ、その後も2~3年に一度のペースで開催されたものの、ぶっちゃけ、まぁ、あんまり盛り上がらなくって、2013年大会が最後の大会となってしまった。しょぼん。
しかし、「ワールドクラス」に代わりFAI国際グライダー大会2015年大会からは「13.5メートルクラス」が新設される。現在、大量生産されているこのクラスの機体はPW-5しかないので、まだしばらくはPW-5が「統一機体」として使われることとなりそうだ。
グライダー好きなら、このキットを購入することで世界のグライダー熱を高めるのもいいだろう。うまく行けば、2020年東京オリンピックでグライダーが正式種目に認められ、東京の空を無数のPW-5が乱舞するかもしれない。



画像はKARTONOWA KOLEKCJAサイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

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