Orel ソビエト軍潜水艦 Щ-402

いよいよ2013年も大詰め。本年最後に紹介する新製品は、今年もウクライナから前弩級艦時代の艦艇や歴史的建造物、そしてロシア/ソビエト他の聞いたこともないドマイナー兵器をリリースし続けたウクライナOrel社の新製品、ソビエト軍潜水艦 Щ-402だ。

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うーん、なんとも年末に相応しい寒そうな表紙。それもそのはず、Щ-402は北方艦隊所属の潜水艦である。
「Щ」級潜水艦の番号は所属によって100の位が決まっており、100番台が太平洋艦隊、200番台が黒海艦隊、300番台がバルチック艦隊、そして400番台が北方艦隊となっている。つまり、Щ-402は北方艦隊のЩ級2番艦という意味で(Щ-400は存在しない)、決してЩ級が400隻以上建造されたわけではない。
ちなみに、「Щ」の読みはカナ表記すると「シチャー」と「シシャー」の間ぐらいの音。最近は「シャー」寄りの発音が優性となっているようだ。日本人にも馴染みの深い所では、「フルシチョフ(Хрущёв)」や「ボルシチ (борщ)」に含まれる文字。
しかし、一文字では味気ないので、「Щ級」には「Щука級」の別名もある。「Щука」とは魚の「カワカマス」のことで、Щ級の1隻、Щ-301の別名でもある。読みは「シチューカ」だが、先頭の「Щ」を「С(エス)」に変えると雌犬、すなわち「ビッチ」を表すとっても下品な言葉になるので絶対に間違えてはならない。
なお、Щ級は86隻も建造したので、前半は「Щука」のように艦名がついているが、後半は面倒になったので名前はついていない(名前のついている艦も、全ての艦名の頭文字が「Щ」ではない)。

前回、いい気になって他所で読んだ話を得意げになって書き続けたあげくに最後に完成品見本がチョロっと出る、という構成が我ながらひどい構成だと思ったので、今回は完成見本写真をこの辺に挟んでおこう。

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Щ級は近海防御用で全長60メートル弱の小型潜水艦だが、今回は小艦艇スケール100分の1でのリリースなのでなかなかの迫力だ。
Щ級は時期により艦型が変化しており、Щ-402の含まれる「第10シリーズ」は艦橋が流線型となっているのが特徴。おかげでムウ帝国の石棺型潜航艇にちょっと似ている(あんなに幅広ではない)。どうせなら艦首にレーニン像を立てて光線砲も発射できれば良かったのに。
しかし、よく考えたら近海防御用の小型潜水艦の水中速力がちょっとぐらい上がっても仕方ないので、「第10シリーズ改」では流線型をやめた。

Щ-402はレニングラード造船所で1935年、6月28日に完成した。先述の通り、艦の番号は所属艦隊で決まるので建造中は「Тигр」(虎)の名前がつけられていた、とする資料もある。
最初はバルチック艦隊に配属され、番号Щ-314となるが、別になんにもしないうちに北方艦隊に移籍となり番号もЩ-402に変更となった。
1941年にドイツがソビエトに侵攻、独ソ戦が始まると小さいЩ級もドイツ軍艦艇攻撃や哨戒のために出撃を繰り返したが、Щ-402はあまり武運に恵まれず、戦果らしい戦果は1942年2月27日にドイツ軍補助哨戒艇の NM-01"Vandale"(400トン)を沈めただけ(43年2月にもう一隻、哨戒艇V-5909"Coronel"(540トン)を沈めたとしている資料もある)。それ以外には、41年10月17日にノルウェーの小型商船"Vesteraalen"(700トン)を沈めているが、これってノルウェーを占領しているドイツ軍に徴用されていたんだろうか。そうじゃなかったらかわいそうだ。
これしか戦果がないが、なぜかЩ-402は42年4月3日に赤旗勲章を授与された。たぶん、乗組員の返事がすごく元気がいいとか、なんか理由があったのだろう。

ついてない艦はとことんついてないもので、42年8月14日、Щ-402艦内でバッテリーから漏れた水素に引火、爆発事故が発生し、艦長、政治委員を含めた基幹要員19名が犠牲となった。
なんとか基地に戻ったЩ-402は43年7月25日に「親衛」の称号を授かる。
これで厄落としができたかと思ったが、死神ってやつは執念深いもんで1944年9月21日、ソビエト軍にレンドリースで渡されていたアメリカ機A-20ハボック(ロシア語の資料ではイギリス軍呼称の「ボストン」となっていることが多い)に誤爆を受け戦没してしまった。
なお、この最後については記録を付きあわせた結果、「そうなんだろう」という結論に至っただけでA-20側が写真撮影などで撃沈を確認したわけではない。そのため、A-20の撃沈報告は誤認でありЩ-402は触雷により失われたのではないか、とする研究者もいる。

そんなわけで、小型潜水艦なんでもともと派手さとは関係ない「Щ級」の中でも不運さで群を抜いた感じのЩ-402がOrelから登場だ。小艦艇スケールの100分の1で完成全長は約60センチ。難易度は3段階評価の「2」(普通)、定価は87ウクライナフリブニャ(約1000円)となっている。
何も今年の最後にこんな運の悪い船の紹介しなくても、と思ったが、気がついた時にはもう遅かった。
なにはともあれ潜水艦と言えば日独と相場が決まっている模型業界で久々のソビエト潜水艦の登場だ。ソビエト潜水艦ファンのモデラーなら、是非とも過去のOrelの潜水艦キット、「K-21」「C-7」と一緒に並べて展示したい。



画像はOrel社サイト公式フォーラムからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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キター。シチャー型!!

シチャー型潜水艦がキットになっているのですね~。
たしかこのタイプは、Щ-212と駆逐艦タシュケントとツーショットの写真が残っていて、
赤色海軍・流線型コンビの威容を窺い知る事ができます。

でも、このサイズを1/200でRC化するのはしんどそうです・・・。

Re: キター。シチャー型!!

azukenさん、こんばんは!
シチャー型は200分の1にすると30センチですもんね……いっそツリムだけ取って、水面下でタシュケントが牽引するというのはどうでしょう! もしくは、水面下は思い切りシモブクれにしてしまうとか。
ツーショットの写真を探してみたら、下のページで粒子は粗いものの大きめの写真が見られました。
http://www.town.ural.ru/ship/ship/h212.php3
このページ、海底で横倒しになってるЩ-212の写真まで載ってます。

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