Orel 日露海軍水雷艇 "漣" "Боевой"

東欧カードモデルの最新情報をうっかり見落とし、いつの間にか出ていた新製品を後になってホットなつもりで紹介する当ブログ、今回はウクライナOrel社からリリースされてた新製品を2点、紹介しよう。

まず紹介するのはこちら、大日本帝国海軍「雷(いかずち)」型水雷艇、「漣(さざなみ)」だ。

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日本軍には太平洋戦争に参加した同名の駆逐艦、「雷」「漣」があるが、こちらが初代。ここではカテゴリを「水雷艇」としたが、このクラスは1902年に「駆逐艦」に再区分されている。
雷型は日本海軍が配備した最初の水雷艇/駆逐艦であった。1896年に調達が決定されたが、まだ当時の日本には艦船建造能力がなく、雷型6隻は全てがイギリス、ヤーロウ社で建造された。艦形は英海軍の「B型」駆逐艦、別名「30ノット級」とほぼ同型である。
排水量わずか300トン。主砲は8センチ砲2門、6センチ砲4門と、なんとも慎ましい豆鉄砲だが、日露戦争では必殺の45センチ魚雷発射管二基を武器に果敢に大型艦へと向かっていった。

連合艦隊は艦船が不足していたため雷級は主要な海戦全てに参加しているが、特に日露の大決戦となった日本海大海戦では、バルチック艦隊の主力戦艦隊が日本海軍の集中砲火を浴びて行動不能となったために、艦隊司令長官ロジェストウェンスキー提督は駆逐艦「ブイヌイ」に退避。このブイヌイを洋上で鹵獲し、敵艦隊司令長官を海戦中に捕虜にする、という前代未聞の大戦果を上げたのが今回キット化された「漣」である。

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こちらは公式ページの完成見本写真。高速性のために細くスラリと絞った船体が特徴的だ。
漣は1913年に任を解かれ雑役船となり、1930年に千葉県館山沖で海没処分となっている。欲を言えば、「三笠」と並べて記念艦にして欲しかったものだ。

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テクスチャは汚しのないスッキリしたタイプ。東欧カードモデルの日本軍兵器は日本語の文字がなんだかなーというものも多いが、今回の「ミナザサ」はいい雰囲気に仕上がっているようだ。


さて、続いて紹介するのは「漣」のライバル、日露戦争時のロシア帝国太平洋艦隊水雷艇「Боевой」だ。

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ライバルの2隻をキット番号154、155の連番でリリースするとは、Orelの商品展開もなかなかあなどれない。
「Боевой」は漣とほ同時期、1900年に就航した。艦名「Боевой(ボエヴォイ)」は英語の「Battle」、つまり「戦い」という意味である。なんとも勇ましい。
Боевойは漣よりも一回り大きい排水量400トンだが、武装は75ミリ砲1門、47ミリ砲5門、38センチ魚雷発射管2基、と少し弱め。
Боевойはロシア帝国で建造された艦ではなく、イギリスのLaird Son & Co.で建造された艦であった。
ってあんた、イギリスは日露両国に水雷艇売ってたのか。Боевой売ったのは日英同盟成立前だが、なんか納得いかないぞ。
なお、Laird Son & Co.の製品は鉄鋼の品質が良くないとか、納期に間に合わなかったとか、いろいろと問題があったようで、このクラスは1隻しか建造されていない。集団行動が基本の水雷艇を1隻だけ建造してどうするんだ。

遠路はるばる太平洋までやってきたБоевойは1901年、旅順艦隊に組み込まれた。
そして1904年、日露はついに断交! 2月8日、日本軍水雷艇は旅順港に突入、奇襲攻撃を仕掛ける!
が、そこにБоевойの姿はなかった。
実は1月29日、友軍水雷艇”Стерегущий”と衝突して右舷に大穴が開き、ドック入りしていたのだ。とほほ……
3月に修理完了したБоевойは6月、パトロールに出たら日本軍哨戒艦隊と遭遇、2発の砲弾を食らって小破。一時的に操艦不能となったが、なんとか帰ってきた。
7月には日本軍水雷艇の魚雷を受け大破(詳細不明。触雷だったのかも)。今度は完全に機関が止まってしまい、曳航されて旅順に帰ってきた。いいとこなしじゃないか。
もはや損傷は包囲された旅順で修理できるレベルではなく、12月20日、旅順要塞陥落に先立ち鹵獲を避けるためにБоевойは自沈した。旅順を占領した日本軍も、損傷のひどいБоевой引き上げは断念。廃艦となった。
なんでこんな地味な艦歴の船をキット化するんだ……
なお、「Боевой」は厳密には1902年に艦名が「Сом」(ナマズ)に変更されている。また随分と大人しい名前になったもんで。えらく艦歴が地味なのは、その改名がいけなかったんじゃないのか?

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こちらも艦首の「タートルバック」が特徴的。なんかダラダラと4本の煙突が間隔を開けて建っているが、内部配置はどうなっているんだろうか。この下が全部機関室だったら、人が乗る場所がないぞ、この船。
なんだかLaird Son & Co.の建艦はいろいろとアヤシイ。日本はヤーロウに発注して良かった。

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テクスチャは汚しのないスッキリしたタイプ。なお、今回のキットは平時の白塗装と戦時の黒塗装、2種類のテクスチャから選ぶコンパチキットとなっているようだ。

日本帝国海軍の大殊勲艦「漣」、そして、まぁ、そんな船もあったんですよ、という感じのロシア帝国海軍の「Боевой」。
ライバルと言えば、まぁライバルと言えないこともない両艦が海モノ標準スケール200分の1で登場。難易度は両方3段階評価の「2」(普通)となっている。
定価は漣が60ウクライナフリブニャ(約700円)、Боевойが69フリブニャ(約800円)だ。
日露戦争の日本連合艦隊ファン、そしてロシア帝国太平洋艦隊ファンのモデラーにとってはそれぞれ見逃せないキットと言えるだろう。

なお、Orelからは同時期の英海軍水雷艇「BOXER」のキットもリリースされている
3隻を作り比べ、その違いを知るとともに「結局全ては大英帝国の手のひらの上ってわけか」と苦笑するのも面白そうだ。



画像はOrel社サイト公式フォーラムからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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お久し振りです。

2012年12月の浅草橋での「ペパコン2012」以来です。お久し振りです。元気ですか?2012年12月の時は、戦車のペーパーモデルでしたが、日本の艦船もあるのですね(@_@) 見るとペーパーモデルは、東欧製が多い見たいですね。

日本製ペーパーモデルが増えて、科学(理科)や数学(算数)や美術(図工)などの学校教育の場や子供向け科学雑誌(大人もOK)のオマケ付録で活用して欲しいです。子供の科学の付録の紙飛行機は傑作ですね。

Re: お久し振りです。

さいたまさん、お久しぶりです!
最近は西側の作家さんの作品も出てきましたが、もともとカードモデルがプラスチックが高価だった東側でプラモデルの代わりに発展したものなので、東欧のカードモデル作家の層の厚さ、歴史の長さにはかないません。
ポーランドはロシア帝国を破った縁からか日本に親近感を抱く方が多いようで、ポーランドでの日本兵器の人気はちょっと想像以上のものがあるようですね。
日本では流通の仕組みが代わって書籍にマルチ素材の付録がつくようになって、打ち抜き厚紙で組み立てる付録が廃れてしまったのが残念です ><

航空機モデルありますか?

立体型の航空機ペーパーモデルがあるのですか?あるのでしたら、2014年の2月か3月に行われる「東京とびもの学会」でサークル参加されて、カードモデル(ペーパーモデル)の紹介展示や販売されたら良いと思いますが、2013年の「東京とびもの学会」では、ペーパーモデルを紹介展示や販売していたペーパーモデルのサークルさんや模型店(模型問屋さんか模型販売会社)も参加されておりました。

日本では、あまり見かけない珍しい東欧製カードモデルを多くの人達に知って貰いたいですね。

私、渋谷東急ハンズの模型店やジョイフル本田で御紹介されているカードモデル(立体型ペーパーモデル)を見た事ありますよ。

Re: 航空機モデルありますか?

さいたまさん、こんばんは。
自分が戦車専門だったので、飛行機のカードモデルは売るほどは持ってないんです。また、組み立て見本となる完成品も作っていないのでイベントへの参加は見送らせていただいております。御了承ください。
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