Orel ソビエト軍 Ураган級水雷艇 

関東は久々に温かく、おだやかな一日。こんな絶好のカードモデリング日和に紹介したいのはウクライナOrel社からリリースされた新製品、ソビエト軍 Ураган級水雷艇 だ。

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紹介したいけど画像がこれ一枚しかないので模型の話はここでおしまい。すでにУраган級水雷艇には詳しいので筆者の聞きかじり情報なんかとばして商品データだけ確認したい読者はエントリー末尾へGOだ。そうでない、という酔狂な方には今から筆者のつっかえつっかえの説明が襲いかかるので覚悟していただきたい。

1920年代中盤、革命から10年を経たソビエトでは国家産業の重工業化が急がれていた。なにしろ帝政ロシア時代末期(19世紀末のデータ)でも人口の7割~8割が農民だったのだ。そこでスターリンの大号令のもと、「第一次5カ年計画」がぶちあげられる。
くどいようだが、ロシア/ソビエトは陸軍国である。日露戦争で海軍がボコボコリンにボコられちゃった、というのもあるが大陸軍国である。
そうは言っても、艦船が全部ロシア帝国製のままなのはさすがにそろそろヤバくなってきた海軍はこの5カ年計画で水上艦艇の国産化を達成することを目標とした。
いくら大きいものが好きなロシア人でも、いきなり戦艦作るってのは無理なんで、まず「プロイェクト1」として嚮導駆逐艦「レニングラード級」が設計される。これは2千トン級の大型駆逐艦だった。
そして、それと並行して計画されたさらに小型の艦船が後に「Ураган(ウラガン)級」となる「プロイェクト2」である。

最初に運用側から出された要求は、「排水量300トン以内。武装は100ミリ砲2門、45センチ魚雷発射管3本、適当数の機雷」となっていた。地味だ。
機関はまだソビエトで船舶用機関を生産するのが難しかったのでイギリスから6千馬力ディーゼルエンジンを購入することとなった。
ところが1926年、イギリス鉱山労働者のゼネストにソビエト政府が資金援助を行なっていたことが発覚。革命とエンジンのバーター防衛なんてとんでもない、ってんでエンジン売却は差し止めとなってしまった。
さぁ、困った。いくら共産党が前進! 前進! の掛け声をかけたところでエンジンがない船は進まない。
仕方ないんで、ソビエトは国産船舶機関として蒸気タービンエンジンの開発に着手するが、この結果ウラガン級は300トンに収まらなくなり、排水量350トンに計画値が変更された。
ここで海軍は造船所に対し、「せっかく設計するなら2シャフトは蒸気タービン、1シャフトがディーゼルの混合3シャフトエンジンを設計するのじゃよ。斬新じゃろ?」と無茶をいきなりふっかける。どっからそんなアイデアが出てきたんだ。
そんなもんをしばらく設計していたレニングラード造船所が出した結論は「無理です」。まぁそうだろう。普通のものが作れないのに、どうして斬新なものが作れるんだ。お前は勘違いしたベンチャー企業の社長か。
と、いうわけでエンジンは常識的に2シャフト蒸気タービンエンジンとなった。
この結果、エンジンはさらに大きくなって排水量は400トンに。もうぐだぐだ。

そんなこんなの大混乱の中、ウラガン級はついに完成した。長さ71.5メートル、武装は要求通り主砲2門、3連装魚雷発射管、機雷50個。そして排水量は450トン。おい、また増えたぞ。
まぁ排水量はこの際気にしないことにしよう。それよりも、ついに新生赤色艦隊爆誕! 世界的革命是万歳! と喜んだのもつかのま、実際に水に浮かべてみたらウラガン級はマズかった。それも、かなりマズかった。
まず、ウラガン級は表紙画像を見てもらえればわかる通り、船体後半の乾舷が低かった。そのせいでいつも後甲板はびしょ濡れだった。さらに設計変更でどんどん排水量が大きくなったんでトップヘビーで安定性が悪い。主砲を交換したり、いろいろとやってはみたものの設計がマズかったんでトップヘビーは最後まで解消されなかった。
結局、安定した航行ができるのは6ノット程度と結論づけられた。って、おぉい! 6ノット(時速約11キロ)の船で何を雷撃するんだ! 新生赤色海軍は灯台とでも戦うつもりか。
一応、カタログスペックではウラガン級は26ノットが出ることになっていたが、実際には転覆しかねないのでそんな速度を出すわけにはいかなかった。
しかし、そんな船でも「作ってみたらゴミでした、ごめんちゃい」とは言えないので1938年までに18隻も建造してしまった。


今回、Orelはこの新生ソビエト艦隊黎明期を支えたような、支えてないようなウラガン級を3隻セットでキット化。1冊買うだけでШторм(嵐)、Туча(雷雲)、Метель(吹雪)の3隻が組み立てられるお徳用キットで、Штормは黒海艦隊、Тучаはバルト艦隊、Метельは太平洋艦隊の所属なので、自分の集めているソビエト艦隊に合わせたウラガン級を建造することが可能だ。ウラガン級3隻も要らない、なんて言ってはいけない。きっとロシア人だってこんな船18隻も欲しくはなかったに違いない。なお、ウラガン級18隻は全て悪天候に関係する名前がつけられている。日本の駆逐艦みたいでカッコいいぞ。ウラガン級はその命名ゆえに「悪天候艦隊」の愛称で呼ばれたが、本物の悪天候にでくわすと転覆しかねないので要注意だ。
ちなみにポーランド潜水艦オジェウがエストニアを脱出後にソビエトの貨物船を撃沈した! とソビエトが激オコでエストニアを併合したオジェウ事件ってのがあるが、この時、ソビエトの貨物船を撃沈して自作自演したのがТучаだったらしい。悪いやつだ。
18隻のウラガン級は3隻が戦没(それ以外に沈没後再浮揚されて現役復帰した艦が数隻いる)した以外は戦争を生き延び、模型化された3隻も戦後に解体されている。運だけはいいのか。

まぁそんなわけでいろいろと問題はあるものの、ソビエト赤色艦隊再生の礎となったウラガン級。スケールは海モノ共通スケール200分の1で完成全長約36センチというとってもお手頃サイズ。3隻縦に並べれば1メートル越えの大迫力。難易度は3段階評価の「3」(難しい)、定価は165ウクライナフリブニャ(約1900円)となっている。
赤色艦隊ファンのモデラーならその原点とも言えるこのキットを、見逃すべきではないだろう。



画像はOrel社サイト公式フォーラムからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

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またマニアックな

こりゃまた随分ちっこい船ですな。
しかも3隻セットとは恐れ入ります。どうせなら、他の級との抱き合わせのほうがうれしいのですが・・・。
でも、やっぱりШторм(嵐)が気になっちゃいます。
だって私、日本では数少ないと思われる(多分一人)ソ連黒海艦隊ファンですからね。w

Re: またマニアックな

azukenさん、こんばんは!
いや、ホントになんでこんな地味な船を、それも同型3隻セットなんでしょう。掃海艇ミーナの時みたいに他の船と抱き合わせの方が、まだ購買層が広いと思いますれども……
でも逆に考えれば、ソ連バルト艦隊ファンとソ連太平洋艦隊ファンのモデラーを見つけて割り勘で買えば、お手頃価格で黒海艦隊を充実させられますよ!
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