GPM イギリス軍汎用輸送車 UNIVERSAL CARRIER Mk.I

いよいよ季節は秋から冬へ。東欧の長く寒い冬の夜をHOTな工作時間へと変えてきたカードモデル、その最新事情を紹介することになってるらしい当ブログが本日紹介するのはポーランドGPM社の新製品、イギリス軍汎用輸送車 UNIVERSAL CARRIER Mk.I だ。

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先日の37ミリ対戦車砲に続き、これまたピリッと辛い小粒な良作の登場だ。

ユニバーサルキャリアは良く「ブレンガンキャリア」と混同されるが、厳密は別のものである。
第一次大戦後、凄惨な大戦を繰り返さないために各国は大規模な軍縮に着手する。そうなると、もともと高いカネがかかる装甲部隊は車輌を調達することができず、「戦車なしの戦車部隊」みたいなションボリした状態に追い込まれようとしていた。
そこで、Giffard Le Quesne Martelという、どう聞いてもフランス人にしか聞こえない名前のイギリス軍人が「予算内で調達できるような、小さい戦車を作ればいいんだ」とひらめき、自分ちのガレージで自作豆戦車を組み上げた。これは、履帯以外は全てトラックなどの部品を利用して組み立てたという、クラフト好きなら誰もが一度は夢見る楽しいシロモノだったが、意外にもきちんと動いた。
このニュースを聞いて、「よし、うちでもやってみよう」と思い立ったのがヴィヴィアン・ロイドというキムタク風な変わった名前の人とジョン・カーデン第6代准爵という名前はそれほど変わってないけど肩書きが物々しい二人の経営するカーデン・ロイドトラクター社だった。
マーテル豆戦車の影響を受けてカーデン・ロイドが開発したカーデン・ロイド戦車は予算不足にあえぐ各国の機械化推進派にバカ受けし、ポーランドのTKS、ソビエトのT-27、イタリアのCV33などのライセンス車輌が世界中で大量に生産された。個人的にはドイツの1号戦車もカーデン・ロイドの影響下にあると思うのだが、どうでしょう。

このカーデン・ロイドの大当たりに目をつけたのがイギリス最大の兵器メーカーであるヴィッカース・アームストロング社だ。ヴィッカースはカーデン・ロイド社を吸収合併。カーデンさんとロイドさんもヴィッカースで製図板に向かうこととなった。
諸外国ではカーデン・ロイドを「小さな戦車」として扱ったが、イギリスでは銃塔を載せたヴィッカース軽戦車を一応作ったものの、それに主役を任せるような愚は犯さなかった。それをやっちまったイタリアは大戦突入と同時に大変なことになった。
イギリスでは当時、砲兵用履帯式トラクターとして「ドラゴン」と呼ばれるこれまたヴィッカースの中戦車のシャーシを転用した車輌を使っていたが、見るからに牽引する砲に比べて大きすぎる上に、砲員の乗車位置がなんか変じゃないか? という感じの車輌(これ、砲員の座席の下には何が入ってるの??)で交代が急がれていた。ちなみにただの牽引車に「ドラゴン」なんて大層な名前がついてるのは、「Drag gun」が訛ったものだそうだ。ホンマかいな。
そんなわけで、牽引トラクターとしてオープントップの車輌が開発されたが、ちょっと小さすぎたんでメチャクチャ重い水冷機関銃の運搬に目的が変更され、「中機関銃キャリアー」として完成した。そうなると、歩兵部隊の分隊支援火器のブレン軽機関銃も運ばせようよ、とマイナーチェンジの「ブレンガン・キャリア」が開発され、ついでに無線機も重いからって運搬用の「スカウト・キャリア」も作られ、それならいっそ兵員そのもの運搬しちまえばいいじゃない、ってんで「キャバルリー・キャリア」なんてのも作られた。
これだけいろいろと作ってみたものの、それぞれの差異は銃架の形がちょっと違う、って程度なので、「同じじゃねーか!」とブチ切れた軍は差異をオプションパーツとして、キャリアそのものは統合した。
これが汎用運搬車、すなわち「ユニバーサル・キャリア」である。

そんなわけで、登場するまででやたら文章量を使ってしまったのでここからは公式ページの完成見本を見ながら紹介を続けよう。

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うーん、可愛らしい。やっぱりこういう華奢な感じの車輌は紙と相性がいいようだ。
一見、前に張り出した手前の席が操縦席に見えるが、機関銃が刺さっているのを見れば分かる通り、手前が銃手席、奥が操縦席だ(イギリスは右ハンドル)。でもこれ、操縦士は左側視界ゼロだけどいいのだろうか。
銃手席装甲板の上部が三角形に折りたためるようになっているが、これはMk.1の特徴。Mk.2ではここが一枚板となっている。

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別角度からもう一枚。
操縦席から前を見るバイザーのようなものが見当たらないが、操縦士は運転時には背筋を伸ばして装甲板の上から前を見る。あくまでもこの車輌は「装甲された運搬車」であり、マシンガンを撃ちっぱなししながら敵陣に突入していくような勇ましい車輌ではないのだ。
中にエンジンが入っている、車体後部中央を仕切る大きな箱型の構造物の上に物干し台の上部みたいな変なものがついているが、これは乗員の小銃を並べておくライフル架。

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オープントップなので車内もバッチリ作りこまれている。操縦席にはハンドルが見えるが、これを小さく切ると2個の転輪を支える前のボギーのシャフトが水平にずれ、片方側にボギーが飛び出すことで履帯全体が弧を描いて大きく曲がっていくという独特の操向システムを備えていた。もちろん、大きくハンドルを切ると片方の履帯が止まる。
ユニバーサルキャリアは戦時中、イギリス国内で5万7千両作られた他、カナダでも2万8千両が生産されている(数字は資料によって大きく異なる)が、カナダ製の車輌ではこの複雑なステアリングシステムは廃止されており、単純なレバー操向となっているそうだ。
じゃあ、キットの車輌はイギリス製なのかというと、イギリス製車輌ならライトが砲弾形をしているはずで、キットのような円筒形ナイトはカナダ製車輌の装備。
また、車体後部にある横長の雑具入れはMk.2の装備で、Mk.1はもっと幅の狭い、立方体に近い箱を載せている。
これらがリサーチミスなのか、こういう車輌が存在したのかはちょっとわからない。
ちなみにユニバーサルキャリアの生産数を6万~7万としている資料もあるが、これは大戦中の生産数。ちょっと意外だが生産は1960年まで続いており、オーストラリア、ニュージーランドなどの英連邦諸国で生産された分も合計すると生産数は11万3千両となり、これは装甲車両としては最多であると考えられている。

補助的な役割ゆえにユニバーサルキャリアは重宝され、派手ではないものの大きな役割を果たした。
一応、火炎放射器を積んだ「ワスプ」や2ポンド対戦車砲を積んだ対戦車自走砲なんかも作られたが、車輌が小さすぎるんで試作に終わっている。
変わり種としては、乗員が寝そべって乗り込む平たい車体を載せ、されにそれが後端をピボットにグイーンと持ち上がっちゃって視界及び射界を確保する、という「プレイング・マンティス」という車輌も試作されたが、誰がどう見てもこりゃネタ車輌なのでやっぱり試作で終わっている。

余談ではあるが、英軍ではユニバーサルキャリアを拡大した「ロイド・キャリア」も開発している。これはロイドさんを運ぶためのものではなく、もともとの用途であった火砲牽引のために開発されたもので、「カーデン・ロイド」コンビのロイドさんが設計を手がけている。
なお、ジョン・カーデンは1935年12月10日、ヨーロッパ出張のからの帰りにヴィッカース社重役と共に乗ったブリュッセル発クロイドン行きサボイア・マルケッティS.73旅客機が悪天候の中で機位を見失い、方向を修正しようと無理なターンをしたために墜落。この乗員で乗客全員が死亡した。

GPMのイギリス軍汎用輸送車、UNIVERSAL CARRIER Mk.I は陸モノ標準スケール25分の1で全長わずか16センチ。難易度は3段階評価の「2」(普通)、定価は50ポーランドズロチ(約1700円)となっている。
イギリス軍の行くところ、常にその姿有りと言っても過言ではない重要な脇役、ユニバーサルキャリア。キャリアファンのモデラーならこの一品を見逃すべきではないだろう。
また、GPMのポーランドTKS、MODELIKのソビエトT-27、OrlikのイタリアCv.35など各国のカーデン・ロイドファミリーと並べてみるのも楽しそうだ。



画像はGPM社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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