GPM ドイツ軍ヘリコプター Flettner Fl 282 ”KOLIBRI”

暑い! とにかく暑い! 地獄の釜の蓋が開いたのをいいことに、閻魔大王が地獄のエアコンの室外機を地上に設置していったのではないかと思うこの暑さ。「バートン・フィンク」だったら接着剤が溶けて壁紙が剥がれ落ち始めるころだ。あの映画、難しかったなぁ。
そんな芸術を解さない野暮な筆者がお送りする東欧最新カードモデル事情、なんだか今年はポーランドの夏休みが短いのか、真夏になっても情報が更新されているので知らない城とか知らない路面電車とか紹介しないで済みそうなので気楽なもんだ。
そして今回紹介するのはポーランドGPM社の新製品、ドイツ軍ヘリコプター Flettner Fl 282 ”KOLIBRI”だ。

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初期のヘリコプターと言えば、当コーナーでは以前にオーストリア=ハンガリー帝国のヘリコプター、「PKZ-2」を紹介したことがあるが、アレに比べればわずか20年でずい分まともなカタチになったもんだ。
ドイツでのヘリコプター研究は戦前から行われており、1936年にはフォッケ・ウルフFw61試作ヘリコプターが飛行に成功し、実用ヘリコプターの祖となった。Fw61は1938年には女性パイロット、ハンナ・ライチェの操縦で体育館ぐらいの広さの屋内でデモンストレーション飛行を行うという離れ業をやってのけ、この時のフィルムはYoutubeなどで今でも見ることができる。ただし、この飛行は天才操縦士たるハンナでもかなり難しく、神経をすり減らしたと何かで読んだ覚えがあるのだが、なにで読んだか思い出せない。
なお、Fw61は機首にもプロペラがある(故に、時としてオートジャイロと混同される)が、これはエンジン冷却用のもので推進用ではない。

さて、Fw61よりさらに実用的なヘリコプターとして開発され、制式化され実際に運用されたヘリコプターとしては第二次大戦唯一のものとなるのが今回リリースされたFlettner Fl 282 ”KOLIBRI”だ。
開発した「Flettner」という会社は大戦中にヘリコプター開発のためだけに創設された会社で、航空力学、特に流体力学の専門家アントン・フレットナー博士が責任者であった。Fl 282の写真として良く見る、機体がズラリと並んだ写真で機体の前で得意げにしているのがフレットナー博士である。
プロペラの代わりに「し」のカタチの間仕切りがついた円盤を回す「フレットナー換気扇」で財をなした(フレットナー換気扇を扱うFlettner Ventilator社はイギリスで現在も営業中)フレットナー博士はとにかく回るものが大好きだったようで、長い煙突のような円柱を船の上に立て、これを回転させることで(野球のカーブやスライダーが回転することで空気の中で進路を変えていくように)横風の中で前進力を発生させる「ローター船」を発案。試作した「バーデン・バーデン」号で大西洋を横断してみせた。なんか素人の印象では非効率的な気もするが、自然の風力を前進する力に変換することでエコな上に、普通の帆船よりも突風、嵐に強いという利点があるそうで、現在も海運界では研究が続いている。
さらには、主翼の代わりに肩こりマッサージ機みたいなコロコロローラーとりつけて、それをぐるぐる回せば飛ぶんじゃない? という「ローター機」も思いついたが、こちらの試作機はどうやら飛ばなかったらしい。
フレットナー博士は戦後、ドイツの科学者を確保する「ペーパークリップ作戦」でアメリカに確保され、米軍のヘリコプター開発にも協力している。

それでは、そんな「回転オタク」の開発したFl282の姿を公式ページの完成見本で見てみよう。

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Fl282は「ヘリコプター」と言っても、小隊を積んで敵の後方にヘリボーン作戦を仕掛けたり、対戦車ミサイルをシュパシュパ撃って敵戦車隊を撃滅するような派手なものではなく、偵察・観察をするためのものである。
コクピットのサイズでわかるようにかなり小柄な機体で、「コリブリ」(ハチドリ。ハチドリは空中で停止、後退ができる)という名前も、機体の性格をよく表している。
直前まで「コリブリとは朝鮮半島から日本に伝来した小さめのブリ、『高麗鰤』がドイツに伝わったものだ」という嘘を書くつもりだったが、うまい具合に文章がつながらなかったんでやめておこう。

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今回のキットはA型、B型のコンパチキットとなっている。緑色が単座のA型、こちらのライトグレーのバージョンが復座のB型となる。
なお、一見すると十文字の四翅に見えるコリブリのローターだが、よく見るとわかるようにニ翅ローター二基(試作機では三翅)が交差する形で配置されている。双方は同期して反対方向に回転し、トルクを打ち消している(だから、テイルローターがない)。
この形式のローターは今でも「フレットナー・システム」と呼ばれることがある。

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さらに、今回GPMからはレーザーカットによる艦載時のプラットホームキットが同時発売となる。
表紙には「軽巡ケーニッヒスベルク」と書かれているが、1940年に沈んだケーニッヒスベルグに1941年初飛行のコリブリが乗るわけなくて、コリブリのプラットホームが設置されたのは同型艦の「ケルン」の砲塔である。

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軽巡のものとはいえ、空モノスケールで艦船の砲塔というのはキットとして珍しく、小柄なコリブリを目立たせるためにも最適の展示台となることは間違いないだろう。

GPMのドイツ軍ヘリコプター Flettner Fl 282 ”KOLIBRI”は空モノ統一スケール33分の1で全長約20センチという、空モノとしてはかなり小柄な機体だ。難易度は3段階評価での「2」(普通)、定価は40ポーランドズロチ(約1300円)となっている。そして、レーザーカットの軽巡砲塔と艦載プラットホームのセットは60ズロチ(約2000円)での発売だ。

細く華奢な構造であるためにインジェクションのプラでは表現しにくく、エッチング等のオプションパーツ込み込みではどうしても小柄な割に高価となってしまいがちなこういう機体こそ、カードモデルで組み立てるに相応しい。第二次大戦中のヘリコプターファンのモデルにとって、当キットは見逃すことのできない一品と言っても過言ではないだろう。
さらにコリブリの展示台として、33分の1で軽巡ケルンを丸々完成させれば(全長5メートル強)、展示会での目玉となることは間違いない。死ぬほど暇な人は挑戦してみてはいかがだろうか。


画像はGPM社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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御久しぶりです。

2012年12月の浅草橋の「ペパコン」で話をした「さいたま」と申します。
それと「残暑御見舞い申し上げます。」ホームページはチェックしておりました。

このヘリコプターは、漫画「ケルベロス(題名はこれで良かったと思いますが間違えていたら御免なさい)」の首都警の航空部隊所属で出て来ましたね。首都警の装備品にドイツ軍兵器が良く出てくるので私は好きです。この「首都警」は架空のものですが、現実の例で言えば、イタリア軍警察(憲兵隊)の「カラビリエリ」になると思いますね。

Re: 御久しぶりです。

さいたまさん、お久しぶりです!

おー、「ケルベロス」のヘリはコリブリでしたか!
そういえば、Sdkfz.222なんかも出てましたね。
ケルベロスのプロテクトギアは、形がカッチリしてるんで大スケールでペーパークラフト化すると
おもしろそうですね。フリッツヘルメットさえなんとかなれば(笑)
今後共、よろしくお願いいたします!
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