GPM ソビエト軍重榴弾砲 MŁ-20 WZ.1937

日本列島は連日の猛暑。どうやら今年は掛け値なしに「記録的」な猛暑となる恐れもあるという。モデラー諸氏にはくれぐれも体調管理にお気をつけいただきたい。
さて、本日はそんな猛暑も吹き飛ばすような大火力の新製品を紹介しよう。
今回紹介するのはポーランドGPM社の新製品、ソビエト軍重榴弾砲 MŁ-20 WZ.1937だ。

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わーお! 2011年の203ミリ榴弾砲に続いて、今度はまさかの15センチ榴弾砲もキット化だ! なんだ、ポーランドでは今、空前の重砲ブームでも来てるのか? まさか「ガールズ&重砲」が大当たりしてるのか? なんだか超絶に展開の遅そうなアニメだな。

1930年代、ソビエト軍が帝政ロシアから引き継いで装備していたシュナイダー152ミリ榴弾砲1910がなにしろ第一次大戦前の設計なんで左右の射界がほとんどない上に、移動のためには砲身を砲架からどっこいしょ、と引きぬいて専用運搬車でよっこらせ、と運ばないといけないという機動性完全無視な設計だった。
このままでは15センチ砲は機動戦が始まったら前線の後ろの方に取り残されて砲身を装着したり引き抜いたりを繰り返してるだけで戦争が終わってしまうことは目に見えており、当時トハチェフスキー元帥の大号令の元に機械化を進めていたソビエト軍としてはこのクラスの重砲の更新は必須であった。
そこでソビエト軍はML-20(キット名の「MŁ-20」ポーランド語表記)とML-15の2種類の152ミリ砲を試作。ML-15の方がやや軽量で機動性に優れていたが、生産性の問題などからML-20が採用となった。
「ML-15に劣る」と言っても、ML-20も脚を閉じて輸送用リンバーを先に取り付ければそのまま牽引可能というお手軽さで、輸送状態からは8~10分で初弾発射が可能であった。
また、気象などの諸元を設定すれば砲の仰角、左右の偏移が計算できる計算機が標準装備されており、これは当時の火砲としてはかなり珍しかった(赤軍でこの装置が標準化されるのは戦後である)。

なにしろものが地味な重砲なので、あまり説明が長くなる前に公式ページの完成見本写真を見ていただこう。

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うーん、素晴らしいクオリティで、紙でできているとは信じられない。
っていうか、これだけガッチリ塗ってリベットまで追加したら、そりゃ紙には見えないさ。
ちなみに車輪はソリッドの低速牽引用。戦時中には高速牽引用にダブルのゴムタイヤに置き換えられていった。
砲身の左右に縦に立っているのは、斬新な機構の駐退機ではなく、俯仰用のバランサー。これと、少々大げさな印象を受ける多孔式マズルブレーキのお陰でML-20は砲尾がかなり短い。

ML-20の初陣はハルヒン・ゴルの戦闘、すなわちノモンハン事件であった。この時はハルハ川西岸(東岸よりも標高が高い)という良好な射点を得たこともあり日本軍砲兵を火力と射程で圧倒。続くソ・フィン国境戦争、いわゆる「冬戦争」でもフィンランド軍の拠点潰しに重宝された。
独ソ戦では初期の大敗とそれに続く撤退戦の最中に多数が失われたが、一旦反撃に移るとドイツ軍の装備する15センチ榴弾砲sFH 18(射程13キロ)をこれまた17キロの射程で圧倒。届かない位置から砲弾を放り込んでくるML-20に手を焼いたドイツ軍はロケット推進砲弾でsFH 18の射程を18キロまで延長しようとしたが、どうも後方噴流で火砲が焼かれちゃって寿命が縮むらしく、せっかく作ったロケット砲弾もあまり使われなかったようだ。

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こちらは輸送用リンバーを取り付けた移動状態。長距離の移動の場合は砲身を後座位置で固定させるが、短距離の移動なら後座させずにそのまま牽引することも可能だった。ただしこの場合、下手すると長い砲身が揺れて機構がぶっ壊れるので牽引速度は時速4~5キロに制限される。
さて、ソビエト軍は火砲を「対戦車砲」「榴弾砲」などの用途別にはあまり区分せず、「連隊砲」「師団砲」などに区分し、基本的に中口径(76ミリ程度)以上の火砲は全ての役割を果たすものとされていた(らしい)。
そんなわけでML-20は軍団直轄の軍団砲兵に装備され、堅固な要塞や敵砲兵の制圧に駆り出される以外に直接照準器が標準装備されており、対戦車戦も可能なように徹甲弾も準備されていた。
砲弾と炸薬(薬莢式)が別々になってる分離式で発射速度が遅い上に、そもそもこの重さの火砲でどうやって動きまわる戦車に照準つけるのか謎だが、それでもうっかり命中すると15センチ砲の重さ45キロの徹甲弾の破壊力は凄まじく、装甲を貫徹しなくても砲塔に命中すれば砲塔が外れてしまうこともあったという。
この破壊力を見込んだソビエト軍はKVやJS重戦車の車台を利用した重駆逐戦車、SU-152、JSu-152を開発、「重戦車キラー」として活躍している。
また、ML-20と共通の砲架を持った122ミリ砲A-19というのも開発されており、こちらはさらに射程20キロという長い射程と早い初速を持っていた。こちらは、重戦車Js-2などの主砲として使用されている。

ML-20は戦前から通じて約7千門弱が整備されたが、これには車載用のML-20S(約4千門)は含まれない。また、戦争後期になるとML-20SとA-19の生産にラインを割かれ、生産数は減っている。
1950年代にML-20はさらに近代的なD-20と交代したが、衛星国に供与されたML-20は最近まで多くの国が現役として使用していた。例えば、ポーランドでは近代改装を行いながら、2004年まで正式装備にML-20が含まれていたが、これがキット化されるとトレッドパターンの組み立てで悟りを開くモデラーが続出しそうだ。また、近年ではタリバンが装備しているML-20を使用している映像がドキュメンタリーで放映されたこともあるという。

ソビエト軍重砲の「決定版」とも言うべきMŁ-20 WZ.1937はもちろん陸モノ標準スケール25分の1でのリリース。難易度は3段階評価の「2」(普通)ってのは無茶だと思うが、公式ページがそう言うんだからしょうがない。そして定価は50ポーランドズロチ(約1600円)となっている。

なお、GPMからはうっかり紹介するのを忘れていたが、過去に重砲牽引車「ヴォロシロベッツ」もリリースされている(こちらも定価は50ズロチ)。

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2つのキットを組み合わせることで、大迫力の重砲キャラバンを完成させるのも楽しそうだ。また、重砲ファンのモデラーなら、MODELIKの203ミリ榴弾砲「Б-4」や同じくMODELIKの重駆逐戦車「ISu-152」と並べるのもいいだろう。



画像はGPM社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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