Hobby Model アメリカ軍ジェット戦闘機 F-105D Thunderchief "Polish Glider"

本日はやたらと寒いが、先週ぐっすりと休んだので今回は元気全開オーバーヒートで飛ばしていこう。
日本で最もHOTな新製品情報を届けてることだって、時にはあるかもしれない当ブログがお送りする東欧最新カードモデル事情、本日紹介するのはポーランドHobby Model社の新製品、アメリカ軍ジェット戦闘機 F-105D Thunderchief "Polish Glider" だ。

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一般的には大戦機と最新鋭機の間に挟まれて、いまいち知名度の低いこの時期の軍用機達だが、新谷かおる「エリア88」を読んで育った世代にはなかなか思い入れのある機体が多い。そしてこのF-105もグェン元南ベトナム空軍少尉の乗機としてエリア88に登場する機体だ。

F-105は1951年、リパブリック社内で開発が始まった。当時同社は軍にF-84「サンダージェット」をせっせと納品していたが、これは1944年開発の機体でジェット機ながら主翼はテーパーのついた直線翼だったりしていまいちパッとしなかったので、このままだとカッチョいい後退翼のF-86「セイバー」と交代させられてしまう可能性があったためだ。
せっかくなんで、新型機にはセイバーにできない仕事をさせてやろうということになり、いろいろと考えた末に、腹の中の巨大な爆弾倉に大型の核爆弾を抱えてマッハで敵地に侵入、物騒なものをおっことしてくる、というなんとも穏便じゃない特殊技能を新型機は持つこととなった。おかげで戦時中のB-17、B-24などの重爆撃機を越える爆弾搭載量(6.4トン)を持ち、単発単座としては航空史上最も重い機体というわけわからん「戦闘機」の仕様ができあがった。

朝鮮戦争で北側のミグジェット戦闘機にレシプロ爆撃機B-29がボカスカ落とされていた米空軍は、この野蛮な思いつきに「それ、イイネ!」と飛びついた。いったい、君等はどこを核攻撃するつもりだったんだ。
XF-105のコードをもらい、予算と初期ロットの発注まで受けたリパブリック社は喜び勇んで試作機を完成させたが、完成した1955年には朝鮮戦争が終わってたんで、「やっぱりいいや」と発注数はガクンと減らされる。
なんだかなーと思いつつもリパブリック社は新しい空力などを取り入れて試作機を洗練していたが、1957年、「他に新型機ないから、とりあえず正式採用ね」ということで新型機は試作の「X」がとれて晴れて「F-105」となる。ついでにP-47「サンダーボルト」で大成功したリパブリック社の意向で愛称がサンダーつながりの「サンダーチーフ」と決まった。この時期の飛行機は「革命的な飛行機が完成しなかったんで、とりあえずあるものを採用」ってのばっかりだな。

1964年、トンキン湾でなんだか米軍の駆逐艦が魚雷攻撃を受けたような気がしたのを契機に米軍はベトナムに介入、アメリカ空軍もタイ、ベトナムに進出し、北ベトナム攻撃を開始する。
新型機サンダーチーフも任務につき、得意のダッシュ力と爆弾搭載量で敵空軍も敵陸軍も、一挙に倒しちゃうぞ! と出撃したが、結果は惨憺たるものであった。
まず、核爆弾用の爆弾倉は通常爆弾を搭載するようにはできていなかった(たぶん、自機が核爆発に巻き込まれないよう、爆弾を”放り投げる”「トス爆撃」向けに設計されていたのだろう)ので、通常爆弾は機外に吊るさなければならなかった。そして、細長いベトナムを縦断して北ベトナムを襲うために本来の爆弾倉には燃料タンクが追加される。これで腹の重くなったサンダーチーフに対し、北ベトナム空軍のMiGジェット戦闘機が襲いかかると、F-105の格闘戦性能が低いという重大な欠点があらわとなった。
小回りのきくソビエト製ジェット戦闘機はF-105を次々に撃破。幸い、P-47サンダーボルト譲りの頑丈な機体はなかなか墜落しなかったが、帰還しても修理不能で全損となる機体も多かった。
要するに、もともと単発単座で敵機を振りきって核爆弾を運ぶという「戦術核攻撃機」というコンセプトそのものが間違っていたのだ。

ベトナム戦争で、F-105は各タイプを合わせ382機が失われた(うち62機は作戦中の被撃墜)。これは、総生産数833機の半分近く、そしてベトナム戦争で米軍が失った全航空機の3分の1近くを占める。
そしてF-105は米軍史上、唯一の「損耗率の高さが原因で戦闘から引き揚げられた機体」となった。


それでは、そんな米軍迷走期を象徴するようなF-105の姿を公式ページの写真(キット裏表紙写真の解像度がやたら高かった)を勝手に切り貼りして作った完成見本写真で見てみよう。

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「コーラビン」と呼ばれた、主翼部分で細くなる独特の機体形状がきれいに再現されていることがわかる。これは、「エリアルール」と呼ばれる音速前後を巡航速度とする機体独特の胴体形状だ。
妙に長い首や、尾翼にまで過激な後退角のついた平面形は現代の新鋭機に慣れた目でみると、なんとも不思議な形状に見えるが、リパブリックにはXF-91「サンダーセプター」という、丁稚が寒くて角袖の中に手を突っ込んでるみたいな飛行機もあるのでまだいいほうだ。

F105_4.jpg

F-105にはAからGまでのサブタイプがあるが、キットになったのは全天候能力を強化したD型。D型は610機が生産されたF-105の「標準型」である。
肩口のわざとらしい感じのエアインテイクもおもしろい。

F105_5.jpg

塗装は第355航空団第44戦闘飛行隊ドナルド・J・クティナ乗機。ポーランド移民の間に生まれたクティナはベトナム戦争で120回の出撃を果たした。後にアメリカ宇宙軍総司令官を努め、スペースシャトル・チャレンジャー事故の調査委員も勤めている。
キットでは彼のルーツに由来した機体愛称「ポーランド人のグライダー」("Polish Glider")がエアインテイク部分に書かれていいることがわかる。
なお、クティナの乗ったF-105D機体番号#59-1882は、退役後にポーランドに引き取られ、現在はクラコウの航空博物館でレストア待ちとなっているそうだ。

F105_2.jpg

このキットも、前回の「アロー」と同じくリプリント版。最新のコンピュータ製図のような細密さはないが、完成見本を見るかぎりでは決して雰囲気は悪くなさそうだ。


Hobby Model アメリカ軍ジェット戦闘機 F-105D Thunderchief "Polish Glider" は空モノ統一スケールである33分の1で全長59センチという意外なほど大柄な機体。難易度は3段階評価の「2」(普通)、定価は38ポーランドズロチ(約1200円)となっている。

この時期の航空機はプラモデルでもなかなかキット化されないことを思うと、ベトナム戦争期の米空軍ファンのモデラーはこのキットを見逃すべきではないだろう。
もちろん、F-105の魅力を再現した当キットはエリア88登場機体のコンプリートを狙っているモデラーにとっても、待ちに待ったキットと言えるのではないだろうか。
それにしても、グェン元少尉はなんでよりにもよって、こんな空戦向きじゃない機体でエリア88に向かったんだろう……


画像はHobby Model社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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