Kartonowa Kolekcja ソビエト軍多用途機 Polikarpow Po-2 WS

春の嵐も通り過ぎ、週明けからは一気に春めくことの予想される日本列島だが、東欧からは春の新製品情報が届きつつある。
本日はそんな春の新製品の中から、ポーランドKARTONOWA KOLEKCJAの新製品、ソビエト軍多用途機 Polikarpow Po-2 WS を紹介しよう。

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一見、第一次大戦の飛行機のように見えるPo-2だが、ソビエトの星が書いてあることでわかる通り立派な戦間期の飛行機だ。
1917年に革命を果たして成立したソビエトでは革命とそれに続く内戦で消耗した軍の再編が急がれていた。もちろん、第一次大戦で存在感を示した航空機の補充、国産化も進められていたが、飛行機本体もさることながらパイロットの養成も急がなければならなかった。
当時ソビエトでは「У-1」(U-1)という練習機でパイロットの訓練が行われていたが、これは戦前の1913年初飛行のイギリス機アブロ504をまんまコピーしたという骨董品だったので、それを1920年代になっても使い続けるというのは、まぁ、いろいろとヤバかった。
帝政ロシアにはイゴール・シコルスキーという天才的設計者がいたのだが、シコルスキーは貴族の家系だったのでソビエトにとどまるとこれまたヤバいと思ってアメリカに亡命してしまった。
「シコルスキーのいないロシア航空界なんて、コーヒーを入れてないクリープ汁みたいなもの」というわけでソビエトからは航空関係者の亡命が相次いでいたが、シコルスキーの下で設計技師として働いていたニコライ・ポリカリポフがソビエトに残っていたので、ポリカリポフがソビエト航空業界の責任者に任命された。
そのポリカリポフが設計したのが、「У-2」(U-2)、のちのPo-2で、当初の名称の「U」は練習機を意味している。
ポリカリポフはU-2の後で戦闘機の設計も行ったが、1929年、戦闘機I-5、I-6を納期までに完成させられないという失敗を犯す。納期に間に合わないと「ごめんちゃい」ではすまないのがソビエトで、「ポリカリポフとその一味は意図的に設計を遅らせ、ソビエト航空界に打撃を与えた」として技師など450人と共に逮捕、投獄された上に「首謀者」ポリカリポフにくだされた判決はなんと「死刑」。ビックリしたポリカリポフは驚きのあまり、急いでI-5の設計を獄中で完成させるが、これがそこそこいい飛行機だったので「やっぱり恩赦」ということになって1931年に釈放された。いいかげんだな、おい。
ポリカリポフはその後、オモシロ平面形のI-15、I-16を設計するが1944年に病没。その栄誉を称える(一回死刑にしそうになったくせに)と共に改訂されていた航空機命名法に沿わせるためにU-2の機体名称は「Po-2」に改められた。

それでは、あんまり話が長くなる前に公式ページの完成見本写真でPo-2の姿を見てみよう。

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なんつぅか、まぁ、普通の飛行機だな。
しかし、練習機をI-15、I-16のような寸づまったオモシロ平面形にして指先の微妙な動きで過敏に機体がひっくり返った日には、生徒も教官も検定中止では済まないので、この普通さが「練習機」という目的にはまさしく必要とされるものだった。
堅実な設計のおかげでPo-2は抜群の安定性を発揮、滅多なことではスピンに入らないし、万が一キリモミ状態となっても回復が平易だったという。

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平面形もこの普通さ。翼端が丸くなっていなければ、第一次大戦の飛行機と見間違えそうだ。
なんとも非力そうなエンジンはたったの100馬力だが、第一次大戦機がやってたクランクケースの周りでシリンダーがブルンブルン回るビックリ機構をやめて単純化したので、まだ練度の低かったソビエト工業界でも安定した品質のものを供給できた。
もとは練習機なのに機銃と爆弾を積んでいるが、Po-2はその取扱の容易さ、離着陸距離の短さのために連絡機や敵戦線後方のパルチザンとの連絡用、さらに軽爆撃機としても使用されたためだ。
ただし、昼間にこんな飛行機が飛んできたらさすがに叩き落されるので夜中にこっそりと飛んで、こっそりと小型の爆弾をドイツ軍の陣地に落としてくる。最初は「こんなヒョロヒョロ爆撃を夜中にやることになんの意味が?」と思ったドイツ軍だったが、最前線の簡易飛行場から短距離で飛来するために捕捉が難しく、さらに目標前でエンジンを切って滑空しながら無音で投弾するPo-2の攻撃により、いつ、どこで爆弾が爆発するかわからないストレスからドイツ軍は毎晩睡眠不足となり、作戦遂行に決して小さくない影響を与えたという。
そんな「いやがらせ爆撃隊」の中でも特に有名なのが、第588夜間爆撃航空隊(後に第46親衛夜間爆撃隊に改称)、通称「Ночные ведьмы(夜の魔女)」である。
この部隊はその通称の通り、なんと女性だけで編成された部隊だった。

Po-2_2.jpg

そして、今回 Kartonowa Kolekcja からリリースされるキットは、その「魔女部隊」所属機。作例写真にも珍しく女性フィギュアが華を添える(キットにフィギュアは含まれないと思う)。
彼女達は時に一晩に18回の出撃という過酷な任務をこなし、中には終戦までに1千回以上の出撃を記録した女性パイロットもいた。
なお、機体に書かれている言葉は「Мстим за боевых подруг Таню Макарову и Веру Белик!」(「女戦友ターニャ・マカロワとベラ・ベリクの仇を討つ!」)だと思う。
(すんません、ロシア語の「対格」について勘違いしてたんで一部削除しました。ロシア語、ムツカシイデス……)
なお、タチアナ(ターニャ)・マカロワ中尉(628回出撃)とベラ・ベリク中尉(813回出撃)2人の乗機は1944年8月25日に撃墜されている。

勢いにのって3万~4万(資料によって違う)機も造ったPo-2は終戦後、新たにできた「衛星国」にばらまかれたが、便利なのでおおむね好評だったようだ。ポーランドなんてPo-2が気に入ってライセンス生産までしている。
朝鮮戦争では北朝鮮軍のPo-2が米軍を始めとする国連軍にソビエト空軍直伝の「いやがらせ爆撃」を敢行。単機でヒョロヒョロ飛んできたPo-2がポロリと落とした爆弾が格納庫で爆発してP-51ムスタング11機が損傷を受けたこともある。カッとなった米軍はこれを捕捉しようと躍起になったが、Po-2を落とすのに夢中になったF-94ジェット戦闘機が超鈍足の相手に速度をあわせ過ぎて、Po-2を撃墜したものの自分も失速して墜落、なんてことまで起こっている。
ちなみにA-1スカイレイダー艦上戦闘機の朝鮮戦争における唯一の空対空戦闘での撃墜機がPo-2だったそうだ。

そんな、練習機なのに実戦でも大忙しという変な飛行機、Kartonowa Kolekcjaの ソビエト軍多用途機 Polikarpow Po-2 WSは空物統一スケール25分の1で完成全長約33センチ。定価は25ポーランドズロチ(約800円)となっている。
実はKartonowa KolekcjaがPo-2を出すのは初めてではなく、2008年春にも1度出している(その時はソビエト軍ポーランド人部隊の塗装)が、そちらはすでに絶版となっている。また、Mały Modelarz、FlyModelからも過去にキットが出ていたらしいが、これらも今ではショップで見かけることはないので、Po-2に興味のあるモデラーは今回のリリースを見逃すべきではないだろう。
(他に、ハンガリーの航空博物館のお土産にペーパークラフトのPo-2を売っていたという情報もある)

また、588爆撃隊の物語は1982年に映画化されているが、「対独爆撃部隊ナイトウィッチ」の名前で日本語版DVDも発売されており、こちらは今でも入手しやすい。
ソビエト軍訓練機ファンのモデラーなら、DVDを鑑賞しながらキットを製作することで、より楽しみが増えることだろう。



画像はKARTONOWA KOLEKCJAサイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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