GPM ソビエト製旅客機 IŁ-18W "LOT"

いよいよ季節は冬から春へ。長い冬の終わった東欧からは春の新製品予告が届き始めている。その中には驚きのアイテムもあるが、今回は既にリリースされているキットの中からポーランドGPM社の新製品、ソビエト製旅客機 IŁ-18W "LOT"を紹介しよう。

8611_1.jpg

プラモデルでもそうだが、カードモデルでも旅客機というのはなかなかキットになりにくい。軍用に徴発されたDC-3やJu-52/3mなら軍用型のついでにリリースされることもあるのだが、そうでもなければよっぽど形がオモロイ、あるいはクレージーでもなければ滅多にキットが出ない。
そんな、不遇な旅客機キット界に颯爽と登場したのが、このIŁ(イリューシン)18だ。

実はイリューシン18という機種は二種類あるが、古い方のIl-18は試作に終わったので普通はIl-18といえばこちらを指す。
戦時中、「パンと同じぐらい必要とされている!」とスターリン閣下に言わしめた襲撃機、IL-2を生産していたイリューシン設計局だったが、戦争が終わったらパンの生産は継続されてもIl-2の生産が終了するのは目に見えていたので、旅客機の設計を開始した。
戦争終結直後のソビエトではレンドリースで貸してもらったまんま返さなかったDC-3と、DC-3のライセンス生産型、Li-2がわっしょいわっしょいと旅客を運んでいたが、これを置き換える新型機としてイリューシンが開発したのが、古い方のIl-18だった。
1947年に試作機の完成した旧Il-18はなかなかの性能を示したが、共産主義的偶然でビックリするほどB-29にソックリになったTu-4戦略爆撃機と装備するエンジンが一緒だったために量産されずに終わった。

時は流れ1950年代中盤、今度は「ターボプロップエンジンで旅客機いってみようか」という話が持ち上がり、アントノフとイリューシンというソビエトを代表する二大多発機ブランドで設計が開始された。
イリューシンの提出したプランは与圧された真円の胴体と低翼を組み合わせた極めて堅実な設計で、特筆すべきは機首に装備された天候レーダーと、ソビエト旅客機としては初めてとなる自動操縦装置を装備していることだった。
1957年、堅実な設計が幸いしIl-18はほとんど問題なく採用が決定。「モスクワ」という愛称が付けられたが、なぜか誰もこの名前では呼ばなかった。
機体は問題なかったがエンジンはやや不調ぎみで、初期の20機が完成したところでエンジンが換装となり、バランスが変わったので機首がほんの少し伸びた。

ではここで、この堅実すぎて地味なIl-18の姿を公式ページの完成見本写真で見てみよう。

8611_2.jpg

まぁ、なんと言うか、普通の飛行機だわね。
ちなみに西側での同時期同クラスの機体はヴィッカース「バイカウント」、ロッキード「エレクトラ」あたりだが、どれもパッと見は似たような感じなので旅客機好きでないとシルエットから機種を見分けるのはなかなか難しい。
Il-18は極めて耐久性の高い機体であることが評価され、564機というこのクラスとしては極めて多数が生産された。この数は西側の「バイカウント」の445機、「エレクトラ」の167機よりも多い。また、同期のアントノフAn-10は構造上の問題があるようで、機体が空中でバラバラに分解するようなひどい事故を時々起こしたために104機で生産は打ち切られている。

8611_3.jpg

大事なレーダーの入った鼻先はこんな感じ。
特徴的な「LOT」の塗装はポーランドの「LOTポーランド航空」のロゴ。「LOT」はポーランド語で「航空」を意味する”Lotnicze”を短縮したものだ。

1929年にユンカースF.13とフォッカーF.VIIで営業を開始したLOTは第二次大戦で全機を失ったものの、1946年にはソビエトからもらったLi-2とC-47(DC-3の軍用型)で営業を再開。
50年代終盤にはロンドン、チューリッヒなど西側の空港にも乗り入れを開始している。
Il-18は1961年から10機を導入。1990年代まで運用された。なお、導入したタイプはキット名では「Il-18w」だが英語資料では「Il-18E」となっている。E型はエンジンをさらに強力なものに換装、ついでに圧力隔壁を1.5メートル後方へずらすことで客席数を増やしている。

LOTのIl-18はWikimedia内のここで実機の写真を見ることができるが、コードレターはキットと同じ「LP-LSF」だ。背後に写っているルフトハンザ機とのカラーリングの対比もおもしろい。
この青ラインのデザインは1980年ごろに導入された塗装だが、つい最近、この青ラインがなくなり尾翼のポーランド国旗(赤白の塗り分け)もマークから後ろへ伸びる位置から尾翼下部へと移動した新塗装に切り替わった。
新塗装の写真は、同じくWikimediaのここを参照。この写真は塗装が終わったばかりの新型機、ボーイング787「ドリームライナー」を撮影したものだ。

787を8機発注、全機を無事に受領したLOTはこれを超長距離ルートに就航させる予定であったが、1番機が最初の飛行を終えてシカゴ・オヘア空港に到着したのが2013年1月16日。この日、アメリカ連邦航空局は全日空の787、692便で発生したバッテリー発火事故を重大視し787全機の運行停止を通達した。ぎゃふん。
だから、LOTの787最初の大西洋横断便は今でもオヘア空港のハンガーにしまい込まれたままだ。
もともと通貨危機の煽りを受けて経営の行き詰っていたLOTは飛ぶことができない最新鋭機を8機も抱えたことで財政がさらに悪化。現在は資本提携先を探して奔走しているそうだ。


GPMの新キット、プロペラ旅客機の末期を飾る知られざる名機ソビエト製旅客機 IŁ-18W "LOT"はいつものスケールだと1メートル越えの巨人キットになってしまうので、50分の1でのリリース。それでも完成全幅約75センチの堂々たる「大物」だ。難易度は3段階評価の「3」(難しい)、定価は100ポーランドズロチ(約3300円)、レーザーカット済みの芯材用厚紙が50ズロチ(約1600円)で同時発売となる。

東側旅客機ファンなら、以前にこのコーナーで紹介したソビエトのジェット旅客機、Ту-154Б-2と作り比べてみるのも面白そうだ。また、LOTのファンなら、創設時の装備機であるFokker F.VIIb/3mのキットが嬉しいことにOrlikからLOT塗装でリリースされている。スケールなんて細かい事は無視して、フォッカーとイリューシンを並べてLOTの栄光の日々に思いを馳せるのもいいだろう。



画像はGPM社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
スポンサーサイト

テーマ : 模型・プラモデル・フィギュア製作日記
ジャンル : 趣味・実用

コメントの投稿

非公開コメント

展開図公開中
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
プロフィール

のとっちょ

Author:のとっちょ
カードモデル初心者が苦闘するさまをご覧あれ。

検索フォーム
リンク(順不同、敬称略)
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード