MODELIK イタリア軍防護巡洋艦 QUARTO

光あるところに影がある。
大和、ビスマルクといったキラ星のようなメジャー艦の影には数知れぬマイナー艦がある。
そういったマイナー艦をみつめ続け、影に目が慣れてくるとさらに暗いところに佇むドマイナー艦が見えてくるものである。
命をかけたりかけなかったりした影のドマイナー艦たち。今回はポーランドMODELIK社からリリースされた、うたかたの夢のようなドマイナー艦、イタリア軍防護巡洋艦QUARTOを紹介しよう。

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「紹介しよう」とは言ったものの、検索をかけてもこの艦の情報が全然みつからない。なんかおかしいぞ、と思ったら、キット名が思い切り間違っていた。
キット名は「QUATRO」になってるが、正しくは「QUARTO」だ。表紙だけじゃなくて公式サイトでの表記も「QUATRO」になってるぞ。
ちなみに当キットのデザイナーはドマイナー艦ならオマカセ、よく分からない艦船の伝道師”Michał Glock”氏だが、公式サイトの英語ページでは氏の名前が”Michal Clock”になっている。「ł」(エウ)が「l」(エル)になるのはいいとして、「G」が「C」になったらもう別の人じゃないか。いいのか、これ。本人から怒られないのか。

QUARTOは1911年に就航した艦で、細長い船体と背の高い艦首を持ち、機関にタービン式を採用することで高速性能を狙った艦であった。この時代の艦種、特に巡洋艦の区分には国ごとの差異が大きく混乱が見られ、QUARTOも英語の資料では「偵察巡洋艦」となっていることが多いが、イタリア語では「Esploratore」(探査艦。英語の「エクスプローラー」にあたる)となっている。また、日本語での区分は「防護巡洋艦」とされていることが多い。
問題の「QUARTO」(「第四」)という艦名だが、どうやら当時のイタリア海軍の艦艇の分類で「四等戦闘艦」だかららしい。でも、それじゃあこの艦の後の同クラスの艦はどうするのかと思ったら、次の艦はイタリア統一の志士から名前をとって「ニーノ・ビクシオ」だった。駆逐艦ならともかく、このクラスの艦で正式名称「4号艦」というのはちょっと珍しい。

第一次大戦でイタリアは中央帝国側との事前の約束をあっさり無視して英仏側で参戦、海軍はアドリア海を挟んで対峙するオーストリア=ハンガリー帝国との戦いに赴く。
1915年、イタリア陸軍が占領したオーストリア=ハンガリーの港町ドゥラス(現アルバニア領)を取り返すためにオーストリア=ハンガリー軍巡洋艦「SMSヘルゴラント」が駆逐艦を伴って出撃。敵艦隊が見当たらないのをいいことに通りがかったフランス軍の潜水艦「Monge」を駆逐艦の射撃と体当たりで撃沈しながらドゥラス沿岸に到達し艦砲射撃を開始した。
これに対し、イギリス軍は軽巡洋艦ダートマスと駆逐艦を派遣、ついでにイタリアはQUARTOを派遣、どさくさにまぎれてフランスも駆逐艦戦隊を派遣し、英仏伊連合艦隊がドゥラスへと向かった。命令系統はどうなってたんだ、こいつら。
オーストリア=ハンガリー海軍は迎撃艦隊の出撃を察知し、襲撃艦隊に離脱を命じると同時にカッタロ軍港(現モンテネグロ領)から軽巡洋艦「Novara」「Kaiser Karl VI」を派遣するが、この増援と合流する前に襲撃艦隊は迎撃艦隊に補足されてしまい、1915年12月29日午後、「ドゥラス沖海戦」の火蓋が切って落とされた。
切って落とされたけど、双方とも有効な命中弾を与えられないまま襲撃艦隊が離脱したのでなんとなく海戦は終わった。そもそも、肝心のQUARTOが海戦でなにをしていたのか、どこにも書かれていない。
ちなみに1918年10月2日にはオーストリア=ハンガリー艦隊と英米豪伊連合艦隊が激突した「第二次ドゥラス沖海戦」が発生している。狭い海に船入れすぎなんだよ、きみらは。

なんともパッとしない第一次ドゥラス沖海戦だが、オーストリア=ハンガリー艦隊がオトラント堰で封鎖されて引き篭もりになってしまいQUARTOはこれ以外に目立った戦いに参加していないので仕方がない。そもそも、第一次大戦の地中海での海戦そのものがパッとしないのでもはや如何ともし難い。

第一次大戦後、QUARTOは快速を生かして外国への親善などに派遣されている。1934年6月5日には東郷平八郎元帥の国葬に際し、横浜港へ入港した。
1938年、ボイラーが爆発事故を起こし深刻な損傷を被ったQUARTOはそのまま廃艦となり船体は実験や訓練などに使用された。
そして1944年7月、残っていた船体はリボルノ港を守るための防波堤として沈められた。

そんなわけで全く地味にもほどがあるイタリア軍防護巡洋艦 QUARTOは地味すぎて完成見本写真もない。

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仕方がないので、組み立て説明書の図面でも載せておこう。キットは1914年、第一次大戦勃発時を再現していることがわかる。
ここでも名前間違ってるけど、まさか他に「QUATRO」っていう艦もあるんじゃないだろうな。なんだか心配になってきたぞ。

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組み立て説明書は面をグレーで塗ったライン表現のクローズアップ方式。テクスチャは汚しのないスッキリしたタイプだ。

名前まで間違えられちゃうほど地味なMODELIKのイタリア軍防護巡洋艦、QUARTOは海モノ統一スケール200分の1で完成全長66センチという小柄な艦。これまた小さいので難易度は5段階評価の「3」(普通)、定価は35ポーランドズロチ(約1100円)、またレーザーカット済みの厚紙パーツが25ズロチ(約800円)で同時発売される。

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まぁ、派手に戦没すりゃ目立っていい、ってもんでもないので、地味は地味なりに頑張った艦だし、そもそも第一次大戦の艦船、それもイタリア艦なんて他にキットがないんで第一次大戦のイタリア艦隊ファンのモデラーとしては見逃すことのできないキットだろう。似たような一次大戦時の小型巡洋艦で同じように最後は防波堤になったポーランド海軍軽巡洋艦「DRAGON」と作り比べてみるのもいいだろう。
また、ドゥラス沖海戦での「敵艦」、SMSヘルゴラントはMODELIKからキットがリリースされており、相互リンクしていただいている紙模型静岡工場様にレビュー記事がアップされている
ラジコン艦ファンのモデラーなら、急いでQUARTOをラジコン化し、ヘルゴラントと一緒にドゥラス沖海戦ごっこをするのも楽しそうだ。



画像はMODELIK社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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No title

こういったドマイナー艦は、思わずノリで作り始めると、はっと正気に返った時がきついんですよね。完成まで「何で俺はこんな船つくってんだよ・・・」っていう思いに囚われながら、延々ちまちまと上部構造物を作っている時なんか、最高の自虐タイムってやつです。それでも、ノドもと過ぎれば何とやらで、再びわけ分からん船に手を出していく私は、ドマイナー艦の悪魔にとりつかれたのかもしれません。

Re: No title

azu kenさん、こんばんは!
あー、ありますね、正気に戻る瞬間。やっとネットで見つけてきた、滅茶苦茶不鮮明な記録写真を相手に目を皿にしてなんとかディティールを読み取ろうとしてる最中に来たりすると、そのまま遠くへ旅に出たくなります。
とかなんとか言いながらドマイナーなアイテムをなんとかして完成させると、次はもっと隅っこへ向けて突き進んでしまうのだから、ほんと、ドマイナーの魔物は危険です……
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