Hobby Model カナダ試作戦闘機 Avro Canada CF-105 ”Arrow”

実はあんまり戦車以外には詳しくない筆者が慌ててネットでかき集めた情報を、さも知っていたかのような顔して吹聴しまくる当コーナー、今回紹介するのはポーランドHobby Model社の新製品、カナダ試作戦闘機 Avro Canada CF-105 ”Arrow”だ。

arrk1dのコピー

「Hobby Model」は当コーナーでは初登場となるが、1990年ごろから活動しているベテランメーカーで、今回のアローがキット番号「106」(ただし、この数字には再販による重複が含まれる)となっている。
でも、「one of the oldest in Poland」はちょっとフキすぎだと思うぞ。それとも、この文章はその直前のデザイナー氏の名前、「Michael Grabowski」にかかっているのか。
Hobby ModelはたぶんGrabowski氏一人のメーカーで、デザインは全て氏によるもの。ラインナップはほぼ全てが戦後から現代までのジェット機で占められているが、最新鋭機は少なめで50~60年代の機体が多いようだ。また、他には少数の宇宙ロケットのキットがある。
これほどの重要メーカーがなぜ、これまで当コーナーに登場しなかったのかと言うと、筆者がこの時期の航空機に疎いからだ。すんませんねー、テケトーで。
でも、よく考えたらドイツ騎士団長とか世界七不思議とかも全然詳しくないのに頑張ったので、今回も頑張ってみよう。アローなら以前に渡辺洋二氏の著作「大空のエピソード」(朝日ソノラマ 新戦史シリーズ)でだいたいのところは聞いてるし、カナダ=アメリカ合作のテレビ映画、「アロー」も見た。

ちなみに「Hobby Model」とよく似た名前にチハ戦車をリリースしているポーランドModdel-hobby社があるが、たぶん関係ない。
あと、筆者はたしか以前に、このメーカーのボストークロケットを買ったはずなのだが引越しでどっかいってしまったので忘れよう。今回は説明することが多いんだ。


まずアブロ・カナダ社だが、この会社はもともと「ビクトリー・エアクラフト」というディストピアもののフィクション作品に登場しそうな名前の会社だった。ビクトリー・エアクラフトは戦時中、ドイツの爆撃機に攻撃されないイギリスの航空機工場としてイギリスの全面バックアップで造られた会社で、ランカスター爆撃機などをライセンス生産している。
連合軍はドイツにとって攻撃不可能な「聖域」を、ウラル山脈、カナダ、アメリカと複数持っている時点で総力戦での勝利はほぼ決まっていたのだ。
戦後、ビクトリー・エアクラフト社はイギリスのアブロ社の子会社となり、「アブロ・カナダ」となる。

1946年、アブロ・カナダでは戦後カナダ空軍のために独自の航空機をデザインすることになった。要求されるのは、カナダの広大な国土をカバーする長い航続距離と、厳しい風土をものともしない全天候性だ。
デ・ハビラント社でも働いていたデザイナー、ジム・フロスト(資料によっては「ジョン・フロスト」)がこの要求に応じてデザインしたCF-100「カナック」はなんだか見た目はそれほどパッとしないが性能はすばらしく、ダイブさせることで音速突破さえ可能であった。

CF-100の大成功に気を良くしたカナダ空軍は、1953年、後継機の設計に着手する。
折しもソビエトの驚異が大きく台頭してきており、もはやカナダは敵の攻撃が到達不可能な「聖域」ではなくなりつつあった。
自然、要求仕様もCF-100の時よりもさらに厳しいものとなったが、アブロ・カナダ社では全面的な電子機器の導入によりこの仕様を満たせると考えていた。
カナダ空軍では時期主力戦闘機の候補としてアメリカ軍の見学も行ったが、出てきたF-101「ブードゥー」は国産新型戦闘機の想定スペックよりショボいし、名前もなんだかローマ字入力で打ち込みにくいし、ということで「アメリカさんも大変ですなぁ、ププッ」っと鼻で笑って見送り。次期戦闘機を開発中の新型戦闘機CF-105「アロー」一本に絞った。

だが、さすがのアブロ・カナダでもアローの開発は難航した。電子機器はなかなか信頼性のあるものが手に入らずに選定しなおしが繰り返され、それにともない設計も何度も修正しなければならなかった。ついでにエンジンも予定のものが手に入らずに設計変更、搭載ミサイルも所定の性能がなかったんで設計変更、という悪夢のような開発が続き納期はズルズル、予算はブクブクというドツボまっしぐらなデス・プロジェクトになってしまった。

それでも1958年、ついに試作機が完成。完成した「アロー」は過大な仕様を満たすために全長はB-17爆撃機よりも2メートルも長い24.6メートル、最大離陸重量34トンという空前の巨人戦闘機となった。アローはこの機体に対空ミサイル「ファルコン」8発を抱え、最高速度マッハ2.3、上昇限度約2万メートル、戦闘半径1200キロという夢の高性能機となった。
ところが、開発が長引いたために、5機の試作を終えた時点で1機あたりのお値段、実に日本円で20~30億円となってしまった。今の20億ではなく、大学出の初任給が1万数千円だったころの20億だ。いくら性能が高くてもこれじゃ値段も高すぎる。府中刑務所前で3億円奪っても車輪しか買えない。
さらに、世論はまずい方向へと推移していた。「ミサイル万能論」の台頭である。

50年代終盤から60年代、ミサイルが高性能化したことにより、「もはや有人戦闘機は必要ないのではないか」という議論が巻き起こった。それなら、高性能の無人ミサイルの方が速度が早くて安価だ、というわけだ。アメリカ空軍もこの線にそってF-99「ボマーク」を開発。ボマークはどういうわけか「無人戦闘機」として「F」にカテゴライズされていたが実質はマッハ2.8で飛ぶ2段式地対空ミサイルで、核弾頭を積むこともでき、その場合は侵入してくるソビエト爆撃機の大編成のど真ん中で核自爆をする(もちろん、自国の領空でだ)という大変クレージーなシロモノだった。

そして1959年の春。アロー計画は破棄された。理由としては、まずあまりに高価であること。それにソビエトは人工衛星の撃ち上げに成功しており、大陸間弾道弾に対して迎撃戦闘機は無力なこと、そして、侵入してくる爆撃機に対してはミサイルで対処すれば十分と考えられたためである。一説には、(眉唾ではあるが)あまりに高性能な戦闘機をカナダが保有することを恐れたアメリカによる圧力があったとも言う。
計画の破棄に伴い試作5機のアローは全てスクラップとなった。アメリカのジェネラル・エレクトリック社は「破棄するなんてもったいない! うちで引き継ぐよ。なんだったら、これまでの開発費を出してもいい」とまで言ったものの、カナダ政府はこれを拒否(この辺りに「アメリカ陰謀説」の根源がありそうだ)。また、オタワの博物館からの展示の申し出も断っている。なにか、無念の思いがにじみ出るような決定だ。

アロー計画は破棄された。しかし、戦闘機が全廃されカナダ中に配備されたミサイルが空を睨むようなことにはならなかった。なぜなら、無人のボマークミサイルが領空侵犯機に警告を与えたり、敵の攻撃が逼迫した時に上空待機したり哨戒飛行を行ったりはできないからだ。あたりまえだ。
しかも、当のアメリカ空軍までが「ごめんちゃい、ボマークミサイルはあんまりオススメできないわ」と言い出した。
結局、ミサイル万能論は技術革新の最中に生まれた、一つの極論に過ぎなかった。
アロー計画を破棄したカナダには次期戦闘機は存在せず、カナダ空軍はCF-100の後継機として、かつて「ショボいからイラネ」と言ったF-101「ブードゥー」を配備することとなる。

アブロ・カナダ社はその後、1トンの荷物を積んで時速500キロで高度3千メートルまで上昇できる円盤型垂直離着陸機、「VZ-9 アブロカー」を作ったはずが、完成してみたら不安定で上昇できず、工場の敷地を仕切るフェンスを超えられなかったというまさかの「空を飛ばない円盤」とかやらかしてるうちに1962年、本社のアブロ社がホーカー・シドレー社に吸収され消滅した。

それではそんな悲運の巨人戦闘機、CF-105「アロー」の姿を公式サイトの完成見本写真で見てみよう。

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カラーリングと相まって、ちょっと東宝特撮のスーパーメカみたいな感じだ。
アローは複座だが、後席には窓がないために風防が小さく、余計に機体を大きく見せている。
登場時期、性能的にはF-4ファントムに近いので、GPMのファントムと作り比べてみるのも面白そうだ。きっと、アローの大きさにびっくりすることになるだろう。

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特徴的なカラーリングは、雪原に不時着した時の視認性を高めるため。
枠の多い風防がちょっと古風だ。前述の通り、アローの試作機は全てがスクラップとなったが、機首部分と翼の一部がオタワの「カナダ航空宇宙博物館」に残っている。
トロントにあるよく似た名前の「カナディアン航空宇宙博物館」では1機丸々のアローを見ることができるが、こちらは良くできたレプリカだということだ。

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今回のキットは新作ではなく、2000年ごろにリリースされたキットの再販版。「デジタルリマスター」はされておらず、手書きのままの展開図らしい。
しかし、完成品とこの展開図見本を見るとスッキリとした線はなかなか作りやすそうだ。

Hobby Modelのカナダ試作戦闘機 Avro Canada CF-105 ”Arrow”は空モノ統一スケール33分の1で完成全長約72センチというビッグなキット。難易度は3段階評価の「2」(普通)、定価は43ポーランドズロチ(約1400円)となっている。

高性能ながら(あるいは、高性能であるがゆえに)、試作に終わったCF-105「アロー」。カナダ空軍ファンなら、このキットは見逃せない一品と言えるだろう。
ちなみに「ボマーク」のキットというのは知る限り存在しない(「ブードゥー」はドイツのメーカーから50分の1が出ている)。さまぁみろ、と言っておこう。
テレビ映画「アロー」は「アローが全てスクラップになったという証拠はない。1機はどこかで眠っているのではないだろうか」というテロップで締めくくられていた。筆者が最初にそれを見たときは「んなアホな」と思ったが、あの「アブロカー」でさえ1960年代に試験後、アメリカ国立航空宇宙博物館の倉庫に放り込んだままみんな忘れていたのが2000年ごろに再発見され、現在はアメリカ空軍博物館に展示してあるというので、ひょっとすると、ひょっとするのかもしれない。


画像はHobby Model社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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