Orel アメリカ Hudson-Athens灯台

本日、南関東はこの地方には珍しい大雪。久々の雪に大ハッスルして近所のコンビニまでわざわざ吹雪の中を買い物に行ったら四方が真っ白で遭難しかけた筆者がお送りする新製品情報、本日紹介するのはウクライナOrel社からリリースされたアメリカ Hudson-Athens灯台だ。

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当コーナーでは灯台のキットは去年の年末に紹介した世界七不思議のアレクサンドリア大灯台ぐらいしか登場していないが、実はカードモデル界では灯台というのは非常にメジャーなアイテムである。どれぐらいメジャーなのかと言うと、例えばGPM社のショップでは商品が「その他」を含めた16のカテゴリに分けられているが、その中に「建造物」とは別に「灯台」のカテゴリがわざわざあるぐらいだ。そんなに灯台が好きなのか。
とは言え「灯台」といえば、要塞のようなガッチリとした岸壁の上に立ってたり、海からそそり立つ巨大なタワーをイメージしがちだが、この「ハドソン・アテネ灯台」は表紙画像で見ての通り、ちょっと雰囲気が違う。
それもそのはず、この灯台は海に立てられたものではなく、ニューヨークを流れるハドソン川に立てられた灯台なのである。
1870年代、鉄道網は全米へ伸びつつ合ったが、まだ水運も大きな比重を持っており、ハドソン川の船舶交通は年々その量を増やしていた。しかし、ハドソン川はところどころに中洲があり、船舶は常に座礁の危険に晒されていたのである。
そのため1872年、灯台の建設が合衆国議会に請願され73年に認可。灯台はハドソン市とアテネ市の間のハドソン川中洲に1874年に完成した。灯台は中洲の西の端に立てられていたので、この灯台よりも東に入り込むと座礁するよ、というわけだ。
灯台は見ての通り、住宅部が付属しており1940年ごろまでは灯台守が生活していたが、自動化に伴い普段は無人となった。
1982年、灯台は合衆国の貴重な文化遺産であるとして「ハドソン・アテネ灯台保存協会」が設立され、現在は1930年当時の姿へ復元され、保存されている。

威勢よく書いてきたが、完成見本写真がないので代わりに組み立て説明図でその姿を見てみよう。

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キットには内装はないが、土台が含まれていることがわかる。一件、ちょっと変わった家にしか見えないが、よく見るとボートを下ろすためのデリックが立っているのがおもしろい。
この土台、デリックの立っている一角が目に見えて尖っているが、これはボートを下ろす都合ではなく川を流れてくる氷の塊から土台を守るためだそうだ。
「ハドソン川に立ってる灯台なら、海に立ってる灯台みたいに大シケで死にそうな思いをすることもないし、なんだかノンビリした仕事だなー」なんてことを言ってはいけない。自動化する以前は灯台は光源として灯油を燃焼させており、灯台守は夜の間に何度か燃料を供給するために灯油をランプまで運び上げなければいけなかった。じゃあ夜が明けて火を消したらノンビリしてられるかと言えば、今度は夜に備えて灯油のススを反射鏡とレンズから拭き取らなければならず、さらには灯台守の一家の主として子供の通学や夫人の買い物のためにボートで灯台と川岸を何度も往復しなければならない。
また、組み立て説明書の右上部分には教会の鐘のような大きなベルが書かれているが、これは「フォッグ・ベル」と呼ばれ、ライトが役に立たない霧の中で灯台の位置を知らせるものである。一旦、霧が深くなれば灯台守は一定間隔で夜通しこのベルを鳴らし続けなければならず、職場=自宅とは言え欠勤、遅刻は絶対に許されず営業時間は終日、もちろん休暇はなし、という大変キツい職場であった。

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話の流れには関係ないが、展開図のサンプル。
石垣、レンガの質感は再現されているが汚しはされていないようだ。画像左下は予備領域ですな。なお、キットがいつごろの状態を再現しているのかは不明。

ちなみにこの灯台最後の常駐の灯台守となったエミール・J・ブルナーは1930年から1949年まで灯台守として勤務した。一説には1930年代後半に子供が多くなったために家族はハドソン市対岸のアテネ市に引越し、エミールは毎日灯台と自宅を往復したという。天候不良の日には数日籠城、ということもあったに違いない。
(エミール・ブルナーは公務員ではなく、沿岸警備隊と契約した民間人であり、ハドソン・アテネ灯台最後の民間人責任者でもあった)

週刊誌「イブニング・ポスト」誌の1946年の12月28日、クリスマス号の表紙はエミール・ブルナーがクリスマスプレゼントを満載したボートを漕いで妻子の待つハドソン・アテネ灯台へ「帰宅」する、という絵だった(リンク先、中程に画像あり)。
実際にはこの時期、ブルナー家はアテネ市に引っ越しているし、子供の数も実際の家族構成とは異なるそうだが、灯台守の家族が常駐していたころのクリスマスにはきっと、こんな情景もあっただろう。

現在保存されているハドソン・アテネ灯台はブルナー一家が生活していたころを再現しており、復元にあたってはブルナー家から多数の物品の寄贈を受けている。また、エミールの娘、エミリー・ブルーナは現在、ハドソン・アテネ灯台のツアーガイドを勤めているそうだ。


アメリカの物流を支えた小さな、しかし重要な灯台であるHudson-Athens灯台はスケールは150分の1。難易度は3段階評価の「2」、定価は57ウクライナフリブニャ(約650円)となっている。
姿がユニークなだけでなく、難易度もあまり高くないので建造物初心者にもオススメのキットだ。

今回の記事を書くにあたって、ハドソン・アテネ灯台保存教会のホームページを参考とさせていただいたが、同ページでは保存されている室内の写真、ブルナー一家の写真や実際の図面も閲覧できるので制作のさいにイメージを膨らますには絶好の素材となりそうだ。
キットを組み立てながら、どんなにひどい天気の日も物流を守るために働き続けている多くの勤労者に思いを馳せるのもいいだろう。



画像はOrel社サイト公式フォーラムからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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