Orel ロシア・ウクライナの教会2種

いきなりの冬の気配に、先週一週間ほどポンポン痛かった筆者がお届けする東欧最新カードモデル情報、今回はウクライナOrel社からリリースされたロシア・ウクライナの教会2種を紹介しよう。

まず最初に紹介するのはウクライナの「Святого Юра」だ。

134_403.jpg

キット名は「Святого Юра с колокольней」となっているが、「колокольней」というのは鐘を吊り下げるタワー、すなわち「鐘楼」のことである。
当コーナーでは筆者が良く知らないのであまり取り上げて来なかったが、東欧では大聖堂を木材で建築する伝統があり、その独特の姿はキット化されやすい題材と言えるだろう。現存する実物はポーランド、チェコ、ロシア西部などでその姿を見ることができる(もちろん大部分が文化財指定されており、世界遺産に登録されているものもある)。
Святого Юра、すなわち「聖ユーラ教会」は15世紀終わりから16世紀初めにかけて建造された。これは、日本でいえば銀閣寺と同じぐらいの歴史ということになるってんだから、一休どの、一大事でござる。って書こうかと思ったが、そりゃ100年も前の金閣寺を建てた人がらみのネタだった。日本史に疎い奴の知識なんてこの程度のもんよ。なお、付属する鐘楼は1678年に付け足されたものである。

「聖ユーラ」というのは日本ではあまり聞かない名前で、時間と空間を超越して「仮名手本忠臣蔵」に登場する「大星由良助」に由来するのかと勘違いされやすいが、実は竜退治で有名な「セント(聖)・ジョージ」のことだ。
「ジョージ」と「ユーラ」ではずいぶんと違う気もするが、もともとは両方とも古代ギリシャ語の「ゲオルギオス」から変化した名前である。フランス名の「ジョルジュ」、スペイン名の「ホルヘ」なども同じ由来だというから難しい。
聖ジョージは竜に苦しめられるカッパドキアの異教徒達の前に颯爽と現れたキリスト教の騎士で、悪い竜の口に槍を刺して倒し、その勢いで異教徒たちをキリスト教へと改宗させた聖人だ。ルネサンス期の偉大な芸術家、ラファエロの描いた絵では、なんかこの竜、わざわざ聖ジョージの助けを借りなくても思い切り蹴っ飛ばしたらやっつけられそうだが、聖ジョージがラオウ並にデカい人なのかも知れないのでつっこまないでおこう。
その昔、冷戦下の西側陣営では「共産主義国家になったら、伝統や宗教は全て破壊される」と言われたもんだが、このようにロシア時代の古い教会や芸術品というのはソビエト時代を生き抜いて現在に伝わっている。この辺りは、冷戦下で刷り込まれた「悪の帝国ソビエト」像に対する認識を改める必要がありそうだ。最も、鐘楼の鐘に書記長の名前を分けて「国スタ安リン」とか刻み込んだら、討ち滅ぼされていたことは疑いようがない。

なお、今回キット化された木造の「聖ユーラ教会」はドロホブィチという場所にある教会だが、ドロホブィチのあるリヴィウ州にはもう一つ、18世紀に建造された「聖ユーラ大聖堂」というのもある。こちらも荘厳な建築物であり、リヴィウに出かける機会があれば「聖ユーラ教会」と共に見学しておきたい場所の一つと言えるだろう。

それでは、ウクライナ伝統の木造教会、「聖ユーラ教会」の姿を公式ページの完成見本で見てみよう。

134_192.jpg

完成見本写真がこれ一枚なのでキットの話はこれでおしまいだが、テクスチャは質感たっぷりの時代の重みを感じさせるタッチのようだ。

さて、せっかくなので、今回は調べたけど良くわかんなかったネタをもう一件紹介しよう。
ついでに紹介するのはロシア帝国時代の水上教会、Святитель Николай Чудотворецだ。

133_977.jpg

良くわかんないなら、無理に紹介しないでもよさそうなもんだが、ちょっと無視するには惜しいネタだったのでユーラ教会と抱き合わせでなんとか記事にしてみよう。
表紙の写真では、別に取り立てて変わったところない、妙に扁平なカタチの船が教会の前に停泊しているだけのように見えるので、ここは一つ完成見本写真を見ていただきたい。

133_717.jpg

なんだこりゃー!

これだけオモロイ形状なら、すぐに見当がつくかと思ったのに、これがなんなのか全然わからない。わずかに判明したのは、1910年に建造され、カスピ海で運用されたということ。実物の写真が2枚ほど見つかったので、たぶん実在はしていたのだろう。

133_522.jpg

煙突と錨があるのだから、ただの浮いてる教会ではなく、航行能力があると思われるのだが、教会が自力航行する必然性というのがよく分からない。教会名になっている「聖ニコライ」は海運の守護聖人(神田の「ニコライ堂」の聖ニコライとは別の人)なので、その辺の関係かも知れない。
なお、左右の張り出し部分が外輪船のように見えるが、表紙画像をよく見るとその下にはなにもなく、単に船内の容積を増すためのものらしい。また、この張り出し部分の後ろに梯子があるのを見ると、ここを桟橋の上に張り出せることで、ロシア聖教の司教が船に乗り込もうとして海にドボンするのを防ぐ意図もあったのかも知れない。

ちなみに、現在はボルガ河に類似の「聖ウラジミール公教会」という水上教会があるらしい。
その姿はこちらのサイトなどで見ることができるが、このサイトに聖ウラジミール公教会のことは「世界で初めての自力航行可能な教会」と書かれている。聖ニコライ教会のことはみんな忘れてしまったのか、あるいは見掛け倒しで自力航行は不可能だったのか……今後の研究が待たれるところである。

Orelからリリースされたウクライナの木造教会、Святого Юраは100分の1スケール、難易度は3段階評価の「1」(やさしい)、そして定価は84ウクライナフリブニャ(約950円)となっている。
また、世にも珍しい水上教会「Святитель Николай Чудотворец」は海モノ統一スケールである200分の1、難易度は3段階評価の「2」、定価は72フリブニャ(約800円)となっている。
ロシア聖教ファンのモデラーなら絶対に見逃すことのできない両キット。木造教会はキヤノンクリエイティブパークでもロシアのプレオブラジェンスカヤ教会が公開されているので作り比べてみるのもいいだろう。
また水上教会は、これまでは建造物には手を出していなかった艦船モデラーにとっても、建造物キットに対象を広げるいい機会となるのではないだろうか。ベテランモデラーなら、ぜひとも世界初の「ラジコン航行する教会」に挑戦していただきたい。



キット画像はOrel社サイト公式フォーラムからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

スポンサーサイト

テーマ : 模型・プラモデル・フィギュア製作日記
ジャンル : 趣味・実用

trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

まとめ【Orel ロシア・ウ】

いきなりの冬の気配に、先週一週間ほどポンポン痛かった筆者がお届けする東欧最新カードモデル情報、今回

コメントの投稿

非公開コメント

展開図公開中
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
プロフィール

のとっちょ

Author:のとっちょ
カードモデル初心者が苦闘するさまをご覧あれ。

検索フォーム
リンク(順不同、敬称略)
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード