MODELIK ドイツ軍用車両 STEYR 1500 3種

秋のクラフトシーズンを迎えて活気づいた東欧カードモデル界。今回も引き続き、朝晩の冷え込みを吹き飛ばすようなホットな新製品の話題をお伝えしたい。
今回紹介するのはポーランドMODELIK社の新製品、 ドイツ軍用車両 STEYR 1500/A1だ。

Steyr okladka

STEYR 1500/A1 といえば、タミヤ模型から高クオリティのプモデルキットが発売されたことで一気に認知度の高まった車両だが、今回のMODELIKのキットの表紙が、タミヤのキットの箱絵と運転手の首の角度までそっくりなのは、まぁ、ポーランドのカードモデルでは良くある偶然の一致というやつだ。いやー、偶然って恐ろしいネ。
そんな危険な話題からは急いで離れて実車の話へと移ろう。

STEYRは軍用車両の話題の時にはカナ表記で「シュタイヤー」と表記されることが多いが、未来的形状で有名なブルパップライフル「ステアーAUG」の「ステアー」と同じ会社だ(どうやらドイツ語の発音的には「シュタイヤー」の方が近いらしい)。
シュタイヤー社はそもそもは1864年、「Josef und Franz Werndl」という名前で設立された会社で、この会社は19世紀末のオーストリア=ハンガリー帝国の制式小銃を作っていた。
この会社は機械加工の経験を生かして業務内容を拡張していき、1894年に自転車、1915年に自動車の生産を始め、1924年に所在地にちなんで社名を「Steyr - Werke 」に改め、さらにあのフィルデナント・ポルシェをチーフデザイナーに迎えた。ポルシェは前の会社で、デザインしたレースカー事故の全責任をおっ被せられそうになったんで「やってられるか!」と辞表を叩きつけてフリーになっていたのだ。
ポルシェ博士はごく控えめに言って天才だったので、入社して10週間で最初のデザインを完了。これは1935年まで生産される大ヒット商品となった。さらに8気筒空冷大容量エンジンをほいほいと開発。これを積んだ大型車はパリ・モーターショーで絶賛された。

だが、1929年から始まった大恐慌で自動車の販売は思わしくなく、シュタイヤーの経営は悪化していた。
シュタイヤーは1934年、オーストリア・ダイムラー社と合併することになるが、途端にポルシェが辞表を出した。なぜなら、シュタイヤーに来る前に喧嘩して辞表を叩きつけた相手が、何を隠そうオーストリア・ダイムラーだったからだ。天才ってのは扱いにくいもんだ。
この「オーストリア・ダイムラー」という会社、名前からしてダイムラー・ベンツの海外支社かと思ったら、実は直接のグループ企業ではなく、実用的ガソリン自動車の発明者であるゴッドリープ・ダイムラーの息子、パウル・ダイムラーが所有していた会社だった。
ただし1905年にダイムラーは「開発の方がオモロイから」と経営から退いており、後にダイムラーは軍用自動車で有名なホルヒのチーフデザイナーとなっている。
ちなみにホルヒ社を設立したアウグスト・ホルヒは1909年に経営陣と意見の対立がありすでに辞職しており、ついでにパウル・ダイムラーのお父さん、ゴッドリープ・ダイムラーも株主との意見の対立があってダイムラー社を辞職している。ドイツの自動車デザイナーってのは、辞職するのがトレンドなのか。

シュタイヤーの合併前にダイムラーは旧ユーゴスラビア諸国の一国であるスロベニアでヨハン・プフが立ち上げた「Puch」というバイクメーカーを吸収合併していたので、会社名は仲良く「Steyr-Daimler-Puch」となった。でもメンドイから一般的には「シュタイヤー」と呼ばれる。
戦時中、シュタイヤーは武器、エンジン、軍用車などを生産。ついでにポルシェ博士は昔のよしみで「これを作るといいよ」とRSOトラクターの設計図をくれた。
戦後もシュタイヤーはいち早く廃墟の中から立ち上がりフィアットのライセンス生産などを経て復活。頑丈な作りは好評を得たが、1980年代中盤からシュタイヤーグループはエンジン、軍用車両、バス、トラックなどの部門を徐々に切り離し、それぞれが国内、国外の企業の傘下となっていき、現在は本家シュタイヤーにはライフル部門だけが残っている。なんのことはない、創設当時の姿に戻った、というわけだ。

と、いうわけで波乱万丈な歴史を持つシュタヤーの軍用自動車、タイプ1500の姿をMODELIK公式ページの完成見本で見てみよう。

Steyr Foto.1 Steyr Foto.2 Steyr Foto.3

民生用車両っぽい丸みを帯びたボンネットと、その後ろの武骨なボディーのミスマッチがなんとも面白い。
タイプ1500は資料によっては「フェルディナント・ポルシェが設計した」と書かれているが、登場したのが1940年代初頭でポルシェはすでにシュタイヤーを辞めているのでそれはちょっとなさそうだ。しかし、積んでいる空冷8気筒3.5リッターエンジンはポルシェのデザインで間違いないだろう。ただし、キットではエンジンは車体裏から見える下半分しか再現されていないので、ボンネット前と横のメッシュ部分を律儀にメッシュに置き換えてディティールアップすると、中になにもないのがバレちゃうので注意が必要だ。

シュタイヤー1500のシャーシは頑丈で、エンジンが他の車種と競合していないことや大きさが手頃なことからサブタイプがいくつか作られている。今回MODELIKからは高級将官用のセダンタイプも発売となった。

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これまた恐るべき偶然で、迷彩パターンまでそっくりなどっかで見たことのあるような表紙で、アレをアレしちゃった感じなのだが、それを言い出すと東欧圏のキット紹介は話が進まなくなるので気にしないことにしよう。

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一見小柄に見えるセダンタイプだが、シャーシは兵員輸送型そのままの3.5リッターエンジン搭載4輪駆動なので実はかなり大きな車両だ。これならお偉い将官様も足を伸ばしてゆったり気分で移動できてゴキゲンだ。トランクスペースもゆったりなので、HIPHOP好きな将軍なら大出力ウーファーを積むのもいいだろう。

さらにさらに、今回MODELIKからは密閉ボディーを載せた無線車までリリースされている。

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このキットはタミヤに同じ商品がないので、安心して表紙を紹介できる。また、つば付き略帽を被った兵士が鉄兜を被った兵士に怒られてションボリしてるのも見逃せない。やはり、MODELIKの表紙といえばションボリしている兵士は欠かせない

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なぜか作例写真がカラーに。でもシャーシ部分はホワイトモデル。なぜだ。これ、実はシャーシは1つしか作ってなくて、全部ボディだけ載せ替えながら写真撮ってるんだろうか。
これまた、エレガントな曲線で構成されたボンネットの後ろにあからさまに取って付けたような箱型キャビンがくっついてるのが、ポルシェ博士に見られたらただでは済まない感じだ。

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テクスチャーは汚しのないスッキリとしたタイプ。また、組み立て説明書はステップ・バイ・ステップとクローズアップの中間的な方式のようだ。なお、上の画像は無線車のものだが、組み立て説明書からは後部キャビン内の無線機などが再現されていることが読み取れる。
あと、予備タイヤ収納用の車体切欠きが思い切り車内に飛び出してるが、そうまでするんだったら予備タイヤは車体後部なり屋根の上なりに取り付ければよかったんじゃないだろうか。

表紙画像がかなりアウトっぽい感じのMODELIK ドイツ軍用車両 STEYR 1500 は陸戦スケールの25分の1で完成全長約20センチ。難易度は3車種とも5段階評価の「4」(難しい)、定価は兵員輸送型のみ35ポーランドズロチ(約1100円)、高級将官用セダン型、無線車型が40ズロチ(1300円)となっている。
ドイツ軍ソフトスキン車両好きのモデラーなら、ぜひとも3車種を作り比べてみたいところだ。
また、MODELIKからはクルップ・ボクサー、ホルヒ1a、メルセデスL3000、オペルブリッツ(木炭エンジン)などの重車両、キューベルワーゲン、シュビムワーゲン、ケッテンクラートなどの軽車両がキットとしてリリースされており、ソフトスキンファンならこれらも同時に揃えたいところだ。
なお、相互リンクしていただいている「Hiroshi's お遊び Room」様ではMODELIKのキューベルワーゲン制作に着手されるとのこと。MODELIK好き、ソフトスキン好きならこちらの制作記事からも目を離すことはできなさそうだ。



画像はMODELIK社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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