WAK アメリカ軍駆逐艦 USS England

先日、フランス戦車シャールB1 bisリリースでがっちりと陸モノモデラーのハートを掴んだポーランドWAK社から、今度は海モノモデラーのための新製品が発表された。本日はこの見逃せないアイテム、アメリカ軍駆逐艦 USS England を紹介しよう。

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アメリカ海軍駆逐艦、DE-635 USS England は米海軍が第二次大戦中に大量生産したバックレイ級護衛駆逐艦の1隻である。排水量2000トン弱、全長93メートルという小柄な艦だが、米軍はまるで今川焼きでも作るかのようにパッコンパッコンとなんと154隻も同型艦を建造した。しかもあんまりたくさん作っちゃったもんで、そのうち45隻はイギリス海軍に貸与してやった。なんという太っ腹。

今回も完成写真が多目だったので、さっそく公式ページの実物完成写真を見ながら紹介を進めよう。

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うーん、なんとも素敵なクオリティ。アメリカ並の国力を持ってないモデラーでは、このキットを154個作るだけで21世紀が終わりそうだ。
1943年から就航したバックレイ級は、戦争序盤の教訓をガッチリと組み込んだ新装備の数々が特徴だ。
なんと言っても目を引くのが、背の高いマストの上のレーダー。大量生産の護衛駆逐艦に電子装備をホイホイ載せちゃうんだから、米軍の物量恐るべしといった感じだ。

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右下、艦橋の前の方に見えるのが主砲の76ミリ単装砲。バックレイ級はこれを3基装備している。艦船の主砲としてはなんとも心細い感じだが、使うのは浮上してきた潜水艦を撃つ時ぐらいなんで、こんなもんでもOKだ。
ところで今更だが、米軍の艦船なのになんで名前が「イングランド」なのか、同盟軍だからか、それなら日本軍の駆逐艦に「独逸」とか「伊太利屋」とか名前をつけてもいいのか。なんだかパスタ屋みたいだ。と、思われる読者も多いかもしれないが、この「イングランド」は地名ではなく、実は人名だ。

1941年12月7日(現地時間)、John C. England海軍少尉は真珠湾が空襲を受けた時に戦艦オクラホマの無線室にいた。イングランド少尉はこの日は当直ではなかったのだが、新婚の妻とまだ顔を見ていない生後3週間の娘が数日後にハワイを訪れる予定になっていたため、当番を交代してもらっていたのだった。
オクラホマには日本軍の魚雷が次々に命中、無事な水兵たちは大きく傾いた甲板に逃れる。イングランド少尉もその中に含まれていたが、少尉は無線室へ戻ると負傷者を抱えて甲板へ戻ってきた。
3度、少尉は甲板へ負傷者を運んだが、4度目に無線室へ戻ったまま少尉は戻らず、戦艦オクラホマは横転沈没した。

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こちらは艦尾の様子。左右にある四角い枠組みの中には爆雷がコロコロ入ってる。バックレイ級はこの他に対潜装備として、広範囲に小型爆雷を散布する「ヘッジホッグ」対潜迫撃砲を装備しており、そっちはさきほどの艦首の写真で右下にちょっとだけ写っている。広い範囲を一気に制圧するヘッジホッグは、レーダーと並んで対潜水艦戦の効率を一気に高めた装備だ。

1943年9月26日、イングランド少尉の母親が艦首にシャンパンボトルを叩きつけ、真珠湾で戦友を救うために命を投げ出した勇敢な水兵の名前を取って「イングランド」と名付けられた駆逐艦DE-635が進水した。
サンフランシスコ、真珠湾、ガダルカナルを経てマーシャル諸島に到着したイングランドは1944年3月からマーシャル、ニューギニア方面の輸送船団護衛に着任。
5月、日本軍がマリアナ沖海戦のために潜水艦を作戦海域に展開させたことを暗号解読により察知した米海軍は駆逐艦に出動を命じた。
この戦いでイングランドは対潜水艦戦史に残る戦果を上げることになる。
なんと、5月18日からの13日間にイングランドは寮艦と協力しつつ、伊16、呂106、呂104、呂116、呂108、呂105の6隻を次々に撃沈したのだ。
これほどの短期間にこれだけの潜水艦を撃沈した艦は、後にも先にも存在しない。

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電子装備が多いんで、空中線が大変なことになっているが、ここは仕上がりを左右するので頑張って仕上げたい。魚雷発射管がやたらと高い位置に押し込められていて、なんかあまり本気で魚雷を撃つ気を感じさせないレイアウトだ。

真珠湾の仇をとったイングランドだが、今度はイングランドが日本軍潜水艦の仇となる。
1945年5月9日、沖縄沖の慶良間(けらま)諸島でイングランドは日本軍急降下爆撃機3機の特攻攻撃を受ける。うち1機が艦橋下部に突入。艦橋は大破しイングランドは艦の能力を喪失した。
停泊地まで曳航され応急処置を受けたイングランドは7月、フィラデルフィアの造船所まで帰還。
翌月、日本軍が降伏。戦争の終結と共に大量建造してあった駆逐艦は余剰となり、大修理が必要なイングランドは破棄されることが決定。
1946年11月26日、イングランドは屑鉄として売却された。

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展開図は汚しのないスッキリしたタイプ。組み立て説明書はセクションごとのクローズアップ方式となっているようだ。
名実共に日米の大激戦の証人とも言うべきアメリカ軍駆逐艦 USS Englandは海モノ標準スケール200分の1で完成全長約47センチという艦船としては小柄なキット。難易度は5段階評価の「4」(難しい)、定価は36ポーランドズロチ(約1200円)、またレーザーカット済み芯材用厚紙が25ズロチ(約800円)、真鍮製砲身セット(76ミリx3門、28ミリx4門、20ミリx10門)が16ズロチ(約500円)で同時発売となる。

余談ではあるが、なんだか眠たそうな駆逐艦艦長がUボートと果し合いをする戦争映画の傑作、「眼下の敵」の一方の主役、駆逐艦DE-181「ヘインズ」がこのバックレイ級だった。映画は米海軍全面協力のもと、実際にバックレイ級駆逐艦DE-634 USS Whitehurstを使用して撮影され、スクリーンに映る艦の乗組員の大部分はWhitehurstの本当の乗組員だそうだ。
(映画は実話に基づいているが、実際の駆逐艦DE-181はバックレイ級の次級であるキャノン級、また艦名は「USS Straub」である)
従って、当キットはアメリカ駆逐艦ファンのモデラーならもちろん、「史上最大の作戦」「アンツィオ大作戦」「ミッドウェイ」「ザ・ヤクザ」などの映画が好きなロバート・ミッチャムファンのモデラーにも見逃せない一品であると言えるだろう。



写真はWAK社ショップサイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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