Kartonowa Kolekcja ドイツ帝国軍戦闘機 Fokker E.V

当サイトでは、一式中戦車4TPと、2キットの製作記を延々と連載してきたが、この両キットは共にデザイナーが Paweł Mistewicz氏であるという共通点がある。Mistewicz氏のデザインはパーツ数は適度で、合いもなかなかいいというカードモデル初心者にはオススメのキットが多い。
Mistewicz氏は、MAŁY MODELARZにも多くのキットを提供しているが、自身のブランドも持っている。今回は、氏の個人ブランドであるポーランドKARTONOWA KOLEKCJAから、新製品ドイツ帝国軍戦闘機 Fokker E.Vを紹介しよう。

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KARTONOWA KOLEKCJA(直訳すると「厚紙コレクション」)は、2007年に立ち上げられたブランドで、ラインナップには零戦あり、ポーランド軍河川砲艦あり、7TP双砲塔型あり、とバラエティに富んだものだ。さらにこのラインナップ以外に、Mistewicz氏は戦艦「比叡」、巡洋戦艦「フッド」などをMAŁY MODELARZに提供しているのだから、氏のデザインの速さ、そのクオリティ、守備範囲の広さには本当に恐れ入る。
本作が第14作目となるKARTONOWA KOLEKCJAだが、第1作は今回の Fokker E.V の前身に当たる Fokker D.VIIだった。なにかFokker機に特別な思い入れがあるのかもしれない。

1918年、オランダ系ドイツ人、アントニー・フォッカーはロータリーエンジン搭載の戦闘機数種を試作した。ここでいう「ロータリーエンジン」とは、マツダが開発したオムスビが回るロータリーエンジンではなく、固定されたクランクシャフトを中心に空冷星型エンジン全体がぐるぐる回る方のロータリーエンジンだ。
フォッカーは試作機、V26、V28の2機種を軍に試作機を提出したが、両者の差は搭載エンジンであった。V26は旧式化していたOberursel UR.IIエンジン(110馬力)を搭載、V28は145馬力のOberursel UR.IIIエンジン、もしくは160馬力の Goebel Goe.III エンジン搭載 を計画していた。
とはいえ、V28搭載予定のエンジンは両方とも量産化の目処が立っておらず、いくら名デザイナーフォッカーでもエンジンのない飛行機を飛ばすことはできないのでV26がFokker E.Vとして採用となる。
ところが、非力なエンジンを搭載したFokker E.Vは、空力的に洗練されたスタイルと軽量化により当時のドイツ帝国軍の保有する戦闘機の中でトップクラスの速度を出すことができた。これに匹敵するパフォーマンスを発揮できるのは、ジーメンス・シュッケルトD.IIIぐらいだったが、こいつが搭載してる160馬力 Siemens-Halske Sh.III エンジンはクランクシャフトやコネクティングロッドがエンジンの中で(前から見て)右回りに回って、プロペラとクランクケースは逆に左回りに回るという摩訶不思議アドベンチャーな構造だったので、戦況悪化からくる工作精度の低下もあってエンジン寿命が7~10時間というすごいシロモノだった。どうすんだ、それ。

非力なエンジンでトップクラスの高速を叩き出す「夢の戦闘機」となるはずの Fokker E.V だったが、運用開始するとすぐに翼が空中で破壊するという事故が続出して、全機が飛行禁止となってしまう。フォッカーは「軍が設計を勝手に書き換えた」と主張。本来、柔らかくしなるはずだった主翼に余計なお世話でやたら固い補強材を通したせいで、返って無理な力のかかった主翼が破壊されたということらしい。また、この時期には工員の練度不足と材料の材質悪化はもはや致命的なものとなりつつあった。
フォッカーは設計をもとに戻し、さらに主翼の生産のためになんとピアノメーカーである Gebr. Perzina と契約。品質の向上を図った。

この対策により安全性が確保されたとして、軍は Fokker E.V の飛行禁止を解除。なお、この時期にドイツ軍の航空機命名規則が変わり、 Fokker E.V は Fokker D.VIII となっている。
Fokker D.VIIIは1918年10月24日から再び活動を開始するが、もはや11月11日の休戦までに残された時間はあまりにも短かった。
その活動期間が短かった割りには、Fokker D.VIIIの高性能は連合軍に強い印象を残し「空飛ぶ剃刀」と呼ばれた。また、54機を撃墜したドイツ帝国第3位のエース(1位は「レッド・バロン」フォン・リヒトホーフェン、2位はエルンスト・ウーデット)Erich Löwenhardt もFokker E.Vで数機の撃墜を記録している(Löwenhardtは8月10日に戦死しているので、主翼改修前のFokker E.Vに乗っていたはず)。

休戦までに Fokker E.V/Fokker D.VIII は381機が生産されたが、軍に引き渡されたのは85機にとどまった。休戦により機体の一部は戦勝国のオランダ、イタリア、日本、アメリカ、イギリスに引き渡され、ベルギー、ポーランドは領内にあった機体を接収しているが、大部分はスクラップとなった。

それでは、そんな第一次大戦の「間に合わなかった名機」Fokker E.Vの姿を公式ページの完成見本で見てみよう。

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第一次大戦の飛行機というと、張り線と支柱の迷宮になっているイメージが大きいが、なるほどこれはスッキリとしたスタイルだ。丸っこい尾翼は三葉機「Dr.I」などでも採用されているが、フォッカーの好みなのだろうか。

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斜め後ろから。操縦者の上方視界を得るための主翼の切欠きが、斜めに削ぎ落したような形になっているのがおもしろい。フラップが一般化される以前の厚翼ならではの気遣いと言えるだろう。

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上から見ると、第一次大戦機とは思えないずんぐりした平面形であることがわかる。この時代の機体としては主翼にテーパーがつけてあるのも珍しい。

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先ほどまでの試作写真は54機撃墜の Erich Löwenhardt の塗装だが、キットは4種類のスキンから塗装を選べるようになっている。
4機種のうち2機種はドイツ帝国軍、2機種はポーランド軍となっており、上画像で上から3番目の塗装はポーランド空軍黎明期の英雄Stefan Stec の塗装だ。Stecは戦時中オーストリア=ハンガリー軍で3機を撃墜(他に不確実4機)、新生ポーランド空軍ではソビエト・ポーランド戦争において1919年4月29日、ウクライナ軍のニューポール戦闘機を撃墜し、ポーランド空軍初の戦果を記録している。1921年5月11日にStecは航空機事故で帰らぬ人となったが、彼のパーソナルマークであった「チェッカーマーク」はポーランド軍の識別マークとして現代まで受け継がれている。

4種類のスキンから選べてとってもお得なKartonowa Kolekcja ドイツ帝国軍戦闘機 Fokker E.V は、航空機標準スケールである33分の1で翼幅約25センチというお手軽サイズ。難易度はWACのショップによると5段階評価の「2」(易しい)、定価もたったの21ポーランドズロチ(約700円)とこれまた手の出しやすい設定となっている。
本作はフォッカーファンのモデラーならもちろん、第一次大戦の飛行機は張り線とか支柱とか大変そうで……と敬遠していたモデラーにもオススメの一品と言えるだろう。


画像はKARTONOWA KOLEKCJAサイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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