GPM ポーランド追跡艇 BATORY

昨年夏のポーランド軍モニター艦「Warszawa」、「Horodyszcze」、「Toruń」の紹介以来、模型界に吹き荒れているような気がするポーランド海軍旋風についてはいまさら述べるまでもないだろう。
このいわゆる「ポ海流」ブームに乗って、今年の夏も新たなポーランド海軍アイテムが模型界にお目見えする。
それが、今回紹介するポーランドGPM社の新製品、ポーランド追跡艇 BATORY だ。

7870_1.jpg

書き出し部分について、いろいろ言いたい事のある読者もいるかも知れないが、こういう、なんかよく分からないアイテムは勢いが大事だ。どんどん進んでみよう。
第一次大戦後の列強による「シェフの気まぐれ領土分割」によってグディニア港を手に入れたポーランドは、急いでこの港を守る海軍の整備に乗り出した。
とりあえず、モニター艦「ワルシャワ級」をダンチヒ自由市の造船所に作ってもらったポーランドだったが、仮想敵ドイツに非常に近い関係であるダンチヒに兵器調達を頼っているのはまずい。と、いうか、ポーランドはソビエト・ポーランド戦争とかやってたせいで周りは全部仮想敵だ。
そこで、毎度おなじみ国営工廠のPZInżが手始めに小型哨戒艇を建造することになった。
資料には「モドリンのPZInż工場で建造された」と書いてあるんだが、モドリンは内陸の街だぞ。面してるナレフ川で海まで運んだのだろうか。なにしろ全長21メートル、排水量たったの28トンだ。下手すりゃ隅田川の屋形船の方が大きい。
しかし、BATORYは宴会用の船ではないのでパワーはすごい。550馬力エンジン2基に175馬力の補助ディーゼルエンジンを積んでいる。この馬力ですっ飛ばしたら酔っ払ったお父さんはたちまち海に転落だ。
1932年4月に完成、2ヶ月後に国境警備隊に編入され「追跡艇」(kuter pościgowy)に分類されたBATORYは警備隊の中で最も早く、最も大型な船であり(他の船はもっと小さかったのか)、密輸船の取締に威力を発揮した。

ヨーロッパに戦雲立ち込めもはや戦争が回避不能となった1939年8月31日、BATORYは海軍に徴用され「ORP(Okręt Rzeczypospolitej Polskiej、「ポーランド共和国艦艇」) BATORY」となる。
翌9月1日午前4時40分、ドイツ軍はポーランドに侵攻する。
ORP BATORYは要塞のあるHel半島で防空戦闘に参加、ドイツ軍の進出で本土と切り離された半島から負傷者を運び、本土との連絡を保ったが9月10日には完全に制空権を失ったために行動不能となり、武装は降ろされ乗組員は要塞守備隊に組み込まれた。
ソビエトの参戦により戦いは一方的なものとなり1939年9月28日には首都ワルシャワが陥落。
10月1日夜、敵による鹵獲を潔しとせずにORP BATORYは深い霧を味方に脱出。翌日、Hel半島は降伏した。

中立国スウェーデンに抑留されたBATORYは1945年10月にポーランドに返還される。
返還後、BATORYは名前を激戦の地にちなんで「Hel」と変更したが、すぐに共産党のとっても偉い人たちが名前を「ジェルジンスキー(ソ連秘密警察の創始者)にしましょう!」「いやいや、11月7日(10月革命の新暦での日付)にしましょう!」とゴチャゴチャグダグダと名前を変えまくり、結局は「KP-1(Kuter Patrolowy、哨戒艇1号)」という、とっても無難な名前に落ち着いた。
KP-1は1957年12月に軍籍が抹消され、その後は軍の補助組織である民間防衛隊「LPZ」や「LOK」で訓練船として使用されるが、1969年にはさすがに老朽化し、この補助任務からも外される。
KP-1は非公開の記念艦としてHelの海軍基地に繋留されていたが、2009年にグディニアのポーランド海軍博物艦に寄贈された。現在は公開に向けて修復中とのことである。

さて、それではポーランド海軍史を語る上で避けることのできない重要アイテム、追跡艇 BATORYの姿をGPM社公式ページの完成見本写真で見てみよう。

7870_2.jpg

全体像は表紙写真で見ていただくとして、ここでは細部のアップ写真を。
三脚に乗ってるのはBATORYの主武装、ドイツ製MG08機関銃だ。これを前に1丁、後ろに1丁装備している。と、言うか、置いている。
手すりが艦首を完全にカバーしておらず、ぐっと狭まって前が開いているのが特徴的だが、これは臨検の都合などのためだろうか。
なんとも素っ気無い感じのキャビンの構造にも要注目だ。

7870_3.jpg

小さな船体に不釣合いな高パワーを連想させる3基のスクリューが頼もしい。よく見ると積んでいるボートにもサイレンっぽいものがついているのも見逃せない。あと、よく考えたら密輸取り締まりに機関銃2丁は重武装過ぎる気もしてきたぞ。

GPMの新製品、ポーランド追跡艇 BATORY は海ものとしては異例のビッグスケール50分の1だが、それでも完成全長は42センチと手頃なサイズ。難易度は3段階評価の「2」(普通)、そして定価は60ポーランドズロチ(約2千円)となっている。
当キットは密輸取り締まり船ファンのモデラーだけでなく、「艦船模型は完成しても置く所がない」「対空機銃の山を見ただけで自分には無理」「手すり細かすぎ」と、これまで海ものを敬遠してきたモデラーの「海もの入門キット」としてもオススメと言えるだろう。
また、ポーランド海軍ファンなら、同名の大西洋航路客船「BATORY」とスケールなんか一切無視して並べてみるのもおもしろそうだ。



画像はGPM社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
スポンサーサイト

テーマ : 模型・プラモデル・フィギュア製作日記
ジャンル : 趣味・実用

コメントの投稿

非公開コメント

展開図公開中
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
プロフィール

のとっちょ

Author:のとっちょ
カードモデル初心者が苦闘するさまをご覧あれ。

検索フォーム
リンク(順不同、敬称略)
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード