WAK ミニスケール飛行機セット Battle of Britain 1940

いきなりだが、カードモデルは楽しい。これは何者も曲げることのできない真実である。
だが、このホビーに免疫のない者を引きこもうとすると、ほぼ間違いなく「いや、難しそうなのでちょっと……」と言われてしまうのもまた真実である。
確かに、最近のポーランドカードモデル界のキットはそのクオリティに比例して難易度が天井知らずのインフレ上昇を続けている、ということは認めざるを得ないだろう。このままでは「新製品の難易度は5段階評価で53万です……ですが、もちろんベルト式履帯もセットになってますのでご心配なく」という日が来るのも近いのではないだろうか。
「新規参入者の参入を拒んた時点で、そのホビーは終わる」これもまた、過去より繰り返されてきた真実である。
さりとて見た目のパーツが少ないからと言って、2000年以前にキットを安易に人に薦めるのも危険だ。時として手書き展開図を完成させるのにはHalinskiの内部再現モデルを完成させるのよりも高い技能を要求される。と、いうか、三面図を参考に自分で展開図を起こしなおした方が早い場合もある。正直。

「初心者にも薦められるパーツ構成で、クオリティは現在のキットと遜色なく、できればチェコのトラクターとかじゃなくてメジャーなアイテムのキットが欲しい。あと、ポーランド語読めない」
一昔前なら、「それは贅沢というものだよ」と鼻で笑われてしまったこんな期待に応えるべく、ポーランドWAK社からリリースされた新製品、ミニスケール飛行機セット 「Battle of Britain 1940」を今回は紹介しよう。

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今回のキットは、タイトルの通り「バトル・オブ・ブリテン」を題材に、いつもの航空機統一スケールの33分の1ではなく、50分の1というミニスケールの4機種セットとなっている。
プラモデルの単発戦闘機なら標準スケールともいうべきサイズである48分の1に近い50分の1で「ミニスケール(原語では「Mikrolo tnictwo」マイクロ航空機)というのは納得いかないかもしれないが、ペーパークラフト/カードモデルでは単発レシプロ機はこれ以下のスケールは難易度が上がってしまう。
当コーナーでも以前にビギナー向け陸モノキットとしてWAKのT-34とTigerのセットを紹介したことがあるが、WAKは以前からこういったビギナー向けキットを多くリリースしており、「マイクロ航空機」セットは今回の「バトル・オブ・ブリテン1940」が2作目にあたる。ちなみに1作目は「1939年 9月」という、PZL37ウォシとポリカリポフI-16、メッサーシュミットBf109の3機セットだったが、ポーランド以外のビギナーモデラーはあまり欲しがらなさそうな内容なのと、出来もちょっとアレだったので当コーナーでは見送らせていただいた。それにしても「1939年 9月」といえば、ドイツ軍とポーランドの戦いを想像しがちだが、セットにソ連軍のI-16が入っているのが、東側からなだれこんできてポーランドの東半分を奪ったソビエトのことを未だにポーランド人は許していないんだな、と感じさせる。そう言えば、ポーランドのプラモデルメーカー、RPMからもソ連軍装甲車BA-20装甲車がポーランド軍の豆戦車TKSを蹴散らしているという、やたら微妙な車両チョイスのジオラマセット「赤い電撃戦」が発売されていた。

今回のキットのセット内容はドイツ軍からメッサーシュミットBf109戦闘機、ユンカースJu88爆撃機、イギリス軍からホーカー・ハリケーン戦闘機、スーパーマリン・スピットファイヤ戦闘機の4機セットとなっている。
それぞれの機体はメジャー過ぎて改めて説明することもないので、さっそく公式ページの完成見本写真を見てみよう。

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まずはメッサーシュミットBf109 E-4だ。
なぜか写真は恥ずかしがって斜め後ろからだが、雰囲気は良さそうだ。尾翼に並ぶ撃墜マークと、葉巻を咥えて斧とピストルを持った凶悪なミッキーマウスのパーナルマークでわかる通り、塗装はアドルフ・ガラント乗機となっている。

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お次はユンカースJu-88 A-1。第54爆撃航空団「トーテンコフ」所属機。機種右側の「髑髏マーク」が入っているかは、この写真ではちょっとわからない。あと、紙が妙にツヤツヤしてるのはアート紙なのだろうか。機種のクリア部分は水色での表現だが、簡易的とはいえ機内もあるので腕に覚えのあるモデラーならクリア部分を透明フィルムに置き換えるのもいいだろう。

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イギリス機からはホーカー・ハリケーンMk.I。こちらは亡命ポーランド人中隊で編成された第303中隊のZdzisław Henneberg大尉(最終階級)乗機。Henneberg大尉はポーランド降伏の際にルーマニアに脱出、そこからフランスへ渡ってドイツへの抵抗を続けようとしたが、あてがわれた飛行機がフランスきっての駄作機MB-152だった上に、ドイツ軍の電撃戦に驚いたフランス人地上クルーがとんずらしてしまったので仕方なく乗機でイギリスに渡ったという人物。ちなみにフランスからイギリスへ乗機ごと脱出したポーランド人は彼だけだそうだ。
バトル・オブ・ブリテンでは8機のドイツ機を撃墜しているが1941年4月12日、北部フランスのドイツ軍飛行場への攻撃で乗機が被弾、イギリス海峡上空で機を捨てた彼は着水時には生存していたことが僚機によって確認されているが、2日間に渡る捜索も虚しく発見できず、「MIA」(戦闘中行方不明)となった。

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最後を飾るのは、スーパーマリン・スピットファイヤMk.I。パイロットは英国空軍John Dundas大尉。
1940年11月29日、すでに10機を撃墜していたDundas大尉はこの日、イギリス海峡上で56機撃墜のドイツ空軍のスーパーエース、Helmut Wickを撃墜する。Wickは全軍で4番目の「柏葉付き騎士十字章」の受章者(終戦までに約900人しか受章していない)であった。
しかしその直後、ドイツ空軍の2人編隊で互いをカバーしあう「ロッテ戦法」でWickとペアを組んでいたRudolf PflanzによりDundas大尉は撃墜され脱出できないまま海面に激突、戦死した。最終スコアは12機。
なお、Dundas大尉を撃墜したPflanzも1942年7月31日、フランス上空で英国空軍第121中隊の多数のスピットファイヤに取り囲まれ、1機を撃墜するも撃墜され戦死した。最終スコア52機。うち45機がスピットファイヤだったと言われる。

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キットのテクスチャは汚しのないスッキリしたタイプだ。ドイツ機尾翼のカギ十字は有り/無し2種類のスキンからの選択式のようだ。

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組み立て説明書は面をグレーに塗ったライン表現で、クローズアップとステップ・バイ・ステップの中間的な方式。このサイズの飛行機のスタンダードである、「ブツ切り隔壁方式」がよくわかる。

WAKのミニスケール飛行機セット「Battle of Britain 1940」はスケールは前述の通り50分の1、難易度は5段階評価の「2」(易しい)となっている。お値段もなんとお手軽4機セットで30ポーランドズロチ(約1000円)となっている。さらに英語解説まで入っており、これはカードモデル入門キットの決定版と言えるだろう。
また、コレクションが多くなりすぎてもう保管場所がないと嘆いているベテランモデラーにも、これ以上住環境を悪化させずに完成品を増やすためには見逃せない一品である。



写真はWAK社サイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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